第103回 あんこう鍋
前回第102の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。
「獲れた!」
アシリパは、岩で押しつぶす罠に引っかかったネズミをつまみ上げる。
「そのネズミ下山するにつれてだんだん獲れなくなってきたな」と杉元。
「山の上にはいっぱいいたのに」
「高いところにしかいない変なネズミなのかもしれない」
ネズミのような見た目の生き物はナキウサギで、標高の高めの涼しく乾燥したところにいるという。
「またネズミかぁ」嘆く白石。
杉元は白石に我慢しろと諫める。
銃声などで存在を知らせるような真似をしたら、折角進路を外してまで追っ手を撒こうとした意味がない。
「少ないけど尾形も食べろ」
調理したネズミをアシリパは尾形に差し出した。
無言で食べる尾形。
「尾形ぁ「ヒンナ」は?」もぐもぐ食べている尾形に尋ねるアシリパ。
「……」変わらず沈黙。アシリパをひたすら無視する尾形。
「ほっときなよ」と尾形を睨む杉元。
アシリパは怒ることなく、むしろ、まるでお母さんの如く微笑む。
反抗期の子供を優しく見守る母親というか、反応をむしろ楽しんでいるというか……。
何か前にもこんなアシリパさんと尾形を見たような(笑)。
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シパシパ笑うアシリパ。
「好きな食べ物ならヒンナ出来るか?」
「尾形の好物はなんだ?」
尾形はその質問に答えることはなかった。
しかし人は質問されると自動的に答えを出すもの。
尾形が思い浮かべたのはあんこう鍋だった。
ほー、あんこう鍋ってうまいのかね。
鶴見中尉と鯉登少尉と月島軍曹が一堂に会している。
「旭川で飛行船に乗っていたのは間違いなく尾形百之助だったんだな?」
はい、と鯉登少尉が月島軍曹に耳打ちし、実際に「はい」と発声する月島軍曹。
この癖はもう直らないのか(笑)。
「尾形の父である元第七師団団長」
「花沢幸次郎中将の自刃に泥を塗る行為であります、と」
「私の父ですら花沢中将の自刃を第七師団の責任とした中央へ強い不信を持っているのに尾形は一体どういうつもりなのか、と」
尾形の父と鯉登少尉の父はなんと同じ薩摩の出身で盟友であることが明かされる。
なんという因縁か。
世間は狭いというより優秀な男は引かれ合うとでもいうべきか。
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鶴見は、その無念を晴らすために、名誉の回復のために尾形は第七師団の強い力となってくれると信じていた。
尾形は期待されていたのね~。
その高い能力ももちろんだけど、因縁があるから簡単には折れないという地力があるというところかな。
火鉢の前で静かに語る尾形。
「当時…父上は近衛歩兵第一連隊長陸軍中佐」
「近衛は天皇に直結する軍ですからね…」
「世間体を考えれば浅草の芸者とその子供は疎ましく感じたでしょう」
「本妻との間に男児が生まれると父上は母のもとにぱったりと来なくなったと祖母から聞きました」
「祖母は母とまだ赤ん坊の俺を茨城の実家に連れ戻したそうです」
「母はよくあんこう鍋を作ってくれました」
美味そうなあんこう鍋の煮え立つ様。
「西のふぐに東のあんこうってね」
「あんこうは安く手に入りました」
「地元の庶民的な鍋です」
「俺も好きで食べてました」
「でもね…それが毎日なんですよ」
「あんこうがとれる冬の時期はね」
「母は毎日」
語る尾形の手が赤く汚れている。
「あんこう鍋を作ろうとするんです」
「父上が美味しいと言ってくれたから」
「また食べに来てくれると信じて」
こういう行動に心当たりがあるわ~。
祖父母の家で用意されているお菓子を大げさに喜んで食べると次回訪れた時はもっとたくさん用意されているとか。
これって「喜んでくれるだろう」っていう愛が根底にある行動なんだよね。
わかりやすすぎて受け止められない人は忌避しがちだけど。
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「頭がおかしくなってたんです」
「俺は祖父の古い銃を持ちだして畑へ行って鳥を撃った」
幼い尾形少年が猟銃を持っている。
「鶏肉があればあんこう鍋を母は作らないと思って…」
「でもいくら鳥を撃ってもあんこう鍋を作り続けるんです」
尾形少年が着物を着崩した母の背後で獲った鳥を差し出している。
母は尾形を見ようともしない。
「だから俺は祖父母が留守の時」
「殺鼠剤をあんこう鍋に入れて母に食べさせた」
「葬式なら父上が来てくれるだろうと」
「母は最期に愛した人に会えるだろうと」
「でもあなたは来なかった」
雁字搦めに縛られ、横たわった状態で、腹部を切られている男。
息が荒い。
話の流れから、拘束されているのは父。
尾形の暗い過去。
疲弊して歪んでしまったけど母への愛から父に向き合っていると言えるのかもしれない。
ただ、これは親子の関係としては歪んだ形。
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震え声で尾形に呼びかける父。
「貴様も頭のおかしくなった母親が哀れで疎ましかったのだろう?」
確りとした目で尾形を見据える父。
「私と同じじゃっ」
さすがに胆力がある、というか開き直っているというか。
確かに正気を失ってしまった人と付き合っていくのには多大な犠牲を払うことになるかもしれない。
しかし苦労をする素振りすら息子に見せられなかったのは父の失態だと思う。
目を合わせる事無く、父の言い分を一切意に介することなく言い放つ尾形。
「愛という言葉は神と同じくらい存在があやふやなものですが」
「仮にあなたに愛情があれば母を見捨てることはなかったと思います」
「愛情のない親が交わって出来る子供は何かが欠けた人間に育つのですかね?」
「どんなにご立派な地位の父親でも」
尾形のやっていることは復讐を理由にした犯罪だが、尾形の気持ちや境遇を考えると必ずしも責められないと感じてしまう。
「互いに愛し合って生まれた子だ」
「花沢少尉が二〇三高地でどうやって亡くなったか…本当のことはご存知ないでしょう?」
軍服に身を包んだ花沢少尉の遺影。
「俺が後頭部を撃ち抜きました」
旗を掲げている兵の後頭部が血しぶきを上げている。
狙撃手から恨みを買うと怖いってことだな。
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「冷血で出来損ないの倅じゃ」
腹を裂かれた状態の父を放置して屋敷を後にした尾形。
馬車で迎えに来ていたのは鶴見中尉。
鶴見中尉が協力していたんだな。
その協力の度合いがいかほどのものかはわからないけど。
「我々にとって厳しい時になるが耐え忍ぶのだ」
「外敵を作った第七師団はより結束が強くなる」
「第七師団は花沢中将の血を引く百之助を担ぎ上げる」
「失った軍神を貴様の中に見るはずだ」
馬車の中で隣の尾形を見据えながら言う鶴見中尉。
「よくやったぞ尾形」
(「たらし」めが…)尾形は鶴見の言葉に絆される事無く冷静に反応していた。
尾形の心を掴もうとする鶴見中尉の人心掌握術の巧みさ。
しかし、ここですかさず愛想笑いで応じる尾形の賢さがそれを問題なく跳ねのける。
簡単には軍門に下らない尾形の賢さや気位の高さはかっこいい。
過去に悲しみを背負ってるのもポイント高いと思う。
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「ほら見てみろこの新聞の記…」
鯉登少尉を呼ぶ鶴見中尉。
鶴見中尉の間近に迫る鯉登少尉。
「近い近い」
「ちょっと近すぎるぞ鯉登」
「網走の脱獄犯刺青の24人のひとり」
「…稲妻強盗が動き出した」
「刺青人皮をエサにすれば罠にかかるかもしれませんね」と月島軍曹。
前回登場した凶悪犯罪者カップル。
あの危険で一筋縄ではいかないであろう二人をどうやって制するつもりなのか。
囚人は皆刺青を掘る際に金塊のことは聞いているわけだから、それを餌にするという話かな。
バッと勢い良く服をめくり、下に来ていた刺青人皮を見せる。
鯉登少尉に耳打ちされた月島軍曹が鯉登少尉の意思を口頭で伝える。
「私の刺青人皮を使ってください、と」
「ふー」
鶴見は深くため息をつき、そして首をフリフリ振る。
「本物をエサにして万が一奪われてしまったらどうするんだ!?」
「そこは当然江渡貝くぅんの贋物を使うに決まっているだろ」
ここで贋物が発動するわけか。
どうやって使うか楽しみだわ。
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「きええええええッ」尊敬する鶴見に指摘され、感情が処理しきれず、発狂したかのように叫ぶ鯉登少尉。
バリバリと畳に爪を立て掻きむしる。
(猿叫)ってなんだ(笑)。
クールガイかと思ったら鶴見に対しては取り乱しまくる。
それもあって、余計に鶴見中尉が可愛がっているということも言えるかもしれない。
「ばりばりやめなさい」
時々お母さんみたいになるな(笑)。
確か二階堂に対してもこんな感じだったような。
(鶴見中尉殿と同じ畳の上で申し訳ないッ)
(畳を掘って頭を下げたいッ)
ひたすら畳をばりばりする鯉登少尉。
「お茶をぶっかけろ月島」
匙投げた(笑)。
「小樽…お金持ちがたくさんいそうね」お銀が言う。
「お銀……お前をこの街の誰よりも金持ちにさせてやる」と静かに闘志を燃やす坂本慶一郎。
凶悪な二人と鶴見たちが小樽の街で激突するのか!?
バトル楽しみ~。
以上、ゴールデンカムイ第103話のネタバレを含む感想と考察でした。
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