第195話 有古の庭
目次
前話第194話 硫黄のにおいのあらすじ
銃撃戦
あらかじめ眼帯をしておいて、目を闇に慣れさせていた菊田特務曹長。
都丹庵士は菊田特務曹長が夜の闇の中でも見えていることを察知し、慌てた様子でそれを二人の部下に向けて伝達する。
それを受けて歩みを止める部下二人。
都丹は菊田特務曹長相手に銃撃戦を仕掛けてその足止めをしながら、部下二人に『谷』へ下りるよう指示する。
逃がすかよ、と言ってまぶたから眼帯を取り外す菊田特務曹長。
登別地獄谷は火山ガスが立ち込めている。
その中を都丹がカンカンと舌を鳴らしながら逃げていく。
都丹を追う菊田特務曹長は、いつしか周囲が闇に包まれていることに気づき立ち止まっていた。
周囲を見渡すも、何も見ることができない。
「硫黄の臭いはうんざりだぜ」
耳に音響を聞き取りやすくするためのプロテクターをつける都丹庵士。
「金塊の分け前をもらったら…海の近くで暮らそうか」
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伏兵
山の斜面を転がってくる石に向けて菊田特務曹長が銃を連射する。
弾が切れたところを狙って、都丹の部下は持っていた鉤付き棒を菊田特務曹長の背中にヒットさせる。
そしてそれを捻じって服を巻き込むと、棒に思いっきり体重をかけることで菊田特務曹長の動きを止めることに成功する。
部下が菊田特務曹長の動きを封じると、都丹がカアン、と舌を鳴らして位置を確認する。
同時に撃った弾は、菊田特務曹長の胸にヒットするのだった。
「斃した!!」
声を上げる都丹の部下。
菊田特務曹長と都丹の銃撃音は、山道を歩いていた有古一等卒の耳にも届いていた。
「地獄谷の方向か……」
標的を仕留めたと思っていた都丹の部下は、菊田特務曹長の銃弾を胸に受ける。
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「ふざけやがって俺の大事な戦利品を…」
菊田特務曹長のコートの下には無数の銃がホルスターに入った状態で体を覆い、まるで鎧のように菊田特務曹長を守っていたのだった。
それらは日露戦争時、ロシア軍将校から鹵獲した銃だった。
ナガンM1895という銃を気に入っていた菊田特務曹長は、部下に戦場でそれを探させるほど執着していたのだった。
菊田特務曹長は背後に迫るもう一人の都丹の部下の気配を察知していた。
しかし部下は何者からか、背後より胸を銃剣で突き刺され動きを止める。
「撃たないでくださーい 僕でーす」
都丹の部下を斃したのは宇佐美上等兵だった。
「ほかにも仲間が来てるぞ」
血を吐きながら懸命に叫ぶ都丹の部下。
それは都丹の耳に届いていた。
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追跡
都丹の部下を銃で仕留める菊田特務曹長。
都丹は自分に向けて銃弾が飛んできたことに気づく。
二階堂は義手で器用に銃身を支えながら都丹を狙っていた。
形勢の不利を悟り、カンカンと舌を鳴らしながら山へ逃げていく都丹庵士。
菊田特務曹長の元には有古一等卒が合流していた。
有古一等卒は聞き込みの結果、自分が見た妙な文様の服が、実は刺青人皮であったことを報告する。
都丹を追うことを決める菊田特務曹長。
菊田特務曹長、有古一等卒、宇佐美上等兵の3人は都丹を追って山道を歩いていた。
宇佐美上等兵の助太刀があまりにタイミングが良すぎることと本人に指摘する菊田特務曹長。
菊田特務曹長は、有古一等卒が刺青を目撃していたことを察知していた宇佐美上等兵と二階堂が温泉を張っていて、抜け駆けするつもりだったのだろうと指摘する。
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「いやあ… バレました?」
図星を突かれても陽気に笑う宇佐美上等兵。
その反応を受け、憮然とした表情を見せる菊田特務曹長。
有古一等卒は、そもそもなぜ刺青の囚人が危険をおかしてまで第七師団ご用達の温泉地に潜伏していたのかとの疑問を口にする。
その頃、二階堂は自分たちが仕留めた都丹の部下が自分たちがマッサージを受けていた按摩だったことに気づいていた。
見えてきた都丹の背中に向けて狙撃を行う有古一等卒。
銃弾は木に当たって都丹に当たらない。
都丹の足跡は古い坑道に向かっていた。
小さい頃に入ったことがある有古一等卒は、崩れていなければ、坑道の先には他にも出口がいくつかあると過去の記憶を振り返る。
坑道の奥からはカンカンという都丹の舌の音が聞こえてくる。
一行は菊田特務曹長の意思の元、坑道に侵入していく。
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氷筍
坑道内は真っ暗だった。
「し~~~」
銃身を口元に立てる菊田特務曹長。
銃を構えつつ、慎重に坑道の奥へと進んでいく一行。
一行の足元には氷筍と呼ばれる、地面から生えたつららのような物体が無数にあった。
宇佐美上等兵が氷筍に足をひっかけると、崩れ落ちてパキパキと音を立てる。
途端に坑道の奥から銃声が響く。
銃弾を足に受け、その場に倒れる宇佐美上等兵。
足元に何かがあり、形勢が不利になってことに気づいた一行は、動きを一切停止する。
「形勢逆転だ」
呟く都丹。
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第194話 硫黄のにおいの振り返り感想
逆転に次ぐ逆転
形勢が何度も逆転して面白い戦いだなぁ、と思った。
やはり都丹の戦い方が面白いわ。
闇の中、あるいは視界が不良の中であれば目に頼っている敵は都丹にとっては絶好の獲物でしかない。
一体どうやって戦う技術、というか敵の位置を音で補足する技術を身に着けたんだろう。
回想とかで知れたら面白いんだけど、死ぬときはあっさり死ぬからなぁ……この漫画は。
網走監獄で土方の協力者として出てきたときはまさか再登場するとは、と驚いたが、ここにきてまたフォーカスが当たるんだな。
かなり野田先生に気に入られているようだ。
しかしラストで形勢逆転と言っているのが、フラグにならなければいいんだけど……。
ラストの感じだと第七師団側が窮地に陥った主人公ポジションだし、ここからの反撃は都丹を仕留め得ると思う。
都丹が別の出口から逃げて戦い終了というのが落としどころかな。
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菊田特務曹長の武器
菊田特務曹長は前回まではかっこいいという印象だったんだけど、今回の話でヤバイ奴という評価に一段階グレードアップした感がある。
彼の特徴は二丁拳銃だけかと思ったら、それを遥かに超えてた。
上半身に見えてた分だけで少なくとも七丁はあるようだ。
それがまさか防弾チョッキの役割を果たしているとは。
銃を携帯し過ぎで狂気さえ感じるが、防御を考えれば合理的でもある。
これまたかなりのクセ者だなぁ。
まぁそもそも第七師団の連中はヤバイ奴が多すぎるんだけど……。
いくら気に入ったとしても、部下に探させるほどというのは異常なまでの執着だと思う。
ナガンM1895への執着は象徴であって、菊田特務曹長は気になった対象をどこまでも、執拗に追う性格をしているのではないか。
物語に今後、どう関わってくるのかな。
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宇佐美上等兵と二階堂
二階堂は腕を失ってもきちんと戦えるんだな。
きっと、そうなれるように努力していたのだろう。
全ては杉元を殺すために……。
二階堂が足や腕のギミックを使いこなすとしたら恐ろしい敵になると思う。
次に杉元と戦う機会はいつなのか。
杉元との因縁はもはや運命と言ってもよい。
その時は必ず来るだろう。楽しみだわ。
そして宇佐美上等兵の狂気が怖かった。
戦いの場においても無邪気な様子が崩れない感じが、彼の底の知れなさを感じさせる。
まさかこの戦いで死ぬことはないだろう。
果たして、この戦いはどう決着するのか……。
194話の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。
第195話 有古の庭
敵の正体
洞窟に入った菊田特務曹長、有古一等卒、宇佐美上等兵は、音をたてるとそこめがけて銃弾が飛んでくることから、動きを止めて様子を窺っていた。
有古一等卒は幼い頃この洞窟に来たことがあった。
しかし地面にある氷筍の存在をすっかり忘れていた。
チノイエタッ(松明)を灯せば余裕で氷筍を避けて通ることができる。
しかし当然のことながら、真っ暗な洞窟で灯りを点けたなら敵の格好の的になってしまう。
有古一等卒は構えた銃ごと、周囲の様子を窺うために体を回す。
すると銃身で氷筍を割ってしまう。
その瞬間、洞窟の奥から有古一等卒に向けて銃弾が飛んでくる。
有古一等卒は、その弾を体ごと地面に倒れてかわしていた。
「この野郎ッ」
菊田特務曹長は敵に向かって銃を連発する。
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宇佐美上等兵もまた敵に向かって銃を撃つ。
しかし弾は一向に、都丹に当たらない。
都丹はカンカンと音を立てながら真っ暗な洞窟内を駆けていく。
菊田特務曹長は敵の動きがおかしいと感じていた。
人がどんなに目をこらしても見ることが叶わない暗闇の中を、全く問題ともせず素早く移動している。
それにも関わらず、地面にびっしりと生えた氷筍に触らない。
そしてそもそも、あの囚人はこの洞窟内だけではなく、地獄谷の火山ガスという視界不良の中も、何の苦も無く動いていた。
ある仮説を思いついた菊田特務曹長は、コートを脱ぎ始める。
都丹は舌をカンカンと鳴らし、氷筍を避けながら移動していた。
その最中に鼻が何かの臭いを捉える。
それは、菊田特務曹長が銃剣に巻き付けたコートを燃やす臭いだった。
コートを燃やす炎は都丹の姿を照らし出す。
(松明か…!!)
都丹は自分の置かれた立場に気づく。
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菊田特務曹長の銃撃を左肩に受ける都丹。
菊田特務曹長は都丹の顔を見て、敵が保養所で見た按摩だと気づくのだった。
都丹は自分の形勢不利をすぐに悟り、急いで菊田特務曹長たちから逃げていく。
都丹がカンカンという音で周囲を把握していると、菊田特務曹長は有古一等卒に情報を共有していた。
逃げた敵を追い続けて、菊田特務曹長たちは洞窟の外に出ていた。
少し離れたところから舌を鳴らす音が聞こえる。
都丹に足を撃たれた宇佐美上等兵は、銃を杖代わりにして菊田特務曹長たちに追いついていた。
菊田特務曹長は有古一等卒に都丹の追跡を命じる。
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自然の罠
都丹は肩に埋まった銃弾を取り出そうと考えていた。
しかし有古一等卒が踏み鳴らした枝の音に反応し、逃走を続ける。
その頃、菊田特務曹長は宇佐美上等兵に肩を貸しながら有古一等卒たちを追跡していた。
有古一等卒だけに任せて大丈夫なのかと心配そうな宇佐美上等兵に、菊田特務曹長は有古一等卒が冬季訓練の雪中行軍で199名が死亡した”八甲田山雪中行軍遭難事件”の捜索隊の一人だと説明する。
北海道から招聘されたアイヌのひとりなのか、と感嘆する宇佐美上等兵。
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八甲田山捜索の際、アイヌの捜索隊は凍り付く川に浸かり、雪山を平地のように歩いて遺体を収容していったのだと菊田特務曹長。
そして、有古力松には登別は「庭」であり、逃げることは不可能だと続ける。
都丹は有古一等卒からほたすら逃げていた。
有古一等卒が枝を折る度に、逃げる方向を変えていく。
都丹の足跡に追いついては、わざと枝を折る有古一等卒。
都丹は度々鳴らされる音に、いつしか違和感を覚えていた。
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「なんか嘘くせえなぁ あの枝が折れる音」
そう呟いた都丹に向けて、銃弾が飛ぶ。
弾は雪上に弾着していた。
銃弾の発射された方向を聞き分けていた都丹は、続けて撃ち続けてくる追跡者に狙いを定めて銃で反撃する。
都丹は何発か銃を撃つと、背後からゴゴゴゴ、と音がすることに気づいていた。
そして間もなくその音の正体に思い当たる。
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「そうか 俺は誘導させられていたのか」
「これが起こりやすい場所を知っていたわけだ」
諦めたように棒立ちになる都丹庵士。
勢いよく生じた雪崩は、今にも都丹を飲み込もうとしていた。
「負けたぜ」
雪崩は都丹を飲み込んで、斜面を覆っていた。
その光景を見届けて、有古一等卒は無言で排莢する。
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第195話 有古の庭の感想
都丹庵士は生還できるか?
雪崩はさすがに避けられないわ……。
さすがにこんな一撃を食らったら生き残れないでしょ。
すぐに救助されれば助かると思う。
でもいくら刺青を回収するために都丹を掘り出すことになるとはいえ、必要なのは刺青だけであって、都丹は死んでても構わないわけだから救助を急ぐことはないだろう。
むしろ、わざと時間をかけるのではないか。
都丹の恰好は特に防寒に優れているとも思えないし、生還は難しいか?
これはやはり物語から退場かな……。
せっかく網走監獄で犬童から負った深手から回復したのになぁ……。
空間把握のための舌鳴らしや、銃の撃ち方が独特で、かっこいいから退場は惜しい。
実は誰も予想しないような方法で生きていて、見事に逃げ切るという展開があったら面白いのに……。
しかし都丹が潔く自分の負けを認めていたし、このまま終わるのか。
都丹庵士のラストの佇まいが恰好いいんだよなぁ……。
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有古一等卒の力
アイヌ出身兵士としてそのポテンシャルを遺憾なく発揮してる。
199名も亡くなったような過酷な自然環境にも負けないアイヌの強さこそ、有古一等卒の武器といってよいのではないか。
都丹に対して仕掛けたトラップは、幼少期から親しんできた登別の自然の中だからこそできたのだろうか。
もし、山の特性を熟知しているからこんな攻撃が繰り出せるとしたら、恐るべきことだわ。
他の雪山でも狙って雪崩を起こせるということになる。
さすがにアイヌが全てこんな仙人のような芸当が出来るわけじゃないだろう。
有古一等卒の力が特別に優れているということか。
そして、有古一等卒の才能を知る菊田特務曹長も上司として有能だといえる。
このコンビは杉元や土方を苦しめるのだろうか。
以上、ゴールデンカムイ第195話のネタバレを含む感想と考察でした。
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