第313話 終着
第312話の感想記事です。
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第313話 感想
ついに戦いに決着がついた。しかしこれは果たして杉元の勝利……なのか?
鶴見中尉はやはり恐るべき敵だった。
最後まで杉元をここまで苦しめるとは……。
まず今回の話における鶴見中尉の表情の描写の凄まじさに触れないわけにはいかないだろう。
前回のラスト、鶴見中尉が杉元の斬撃を受けて、肩にかけていた権利書が入った矢筒の紐が切れ、同時に鶴見中尉の懐から妻と娘の指の骨が宙を舞う。
この二つの内、鶴見中尉が手を伸ばして掴み取ったのは権利書だった。
選ばれなかった指の骨が列車の車輪に巻き込まれていくのを見つめる鶴見中尉の表情。
正直、この1ページ丸ごと使った鶴見中尉のアップが、今回の話で最も印象に残った。
これはおそらく今回の話を読んだ読者の多くが一致するところではないだろうか。
確かに後述する杉元の決め台詞のシーンも最高に格好いいんだけど、今回ばかりは鶴見中尉の表情に軍配を上げざるを得ないと思う。
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ここで指の骨を選ばないのが鶴見中尉なんだな……。
確かに指を選んだところで何の実利もない。痛むのは自分の心だけ。
権利書こそが自身や兵たちの未来を拓くし、何より妻と娘の無念を晴らす為の足掛かりになると冷静に判断したのかな……。
でも権利書を選ぶという決断を下した直後の、この何とも寂しそうで、申し訳なさそうな、複雑な表情をする人間の心の内に、計算高さや冷徹さだけがあるとはとても思えない。
骨の破砕を見届けた後、杉元の手から刀を奪い、躊躇なくその胸に突き立てた後、アシリパを見据えて呪詛にも近い言葉を吐いた鶴見中尉の表情は完全に常軌を逸していた。
妻と娘の指の骨が、鶴見中尉に残されていたかつて普通に人を愛することができた心の残滓の象徴なのかな、と思うと、何とも切なくなる。
仮に権利書を手にしたままこの場を切り抜けたとしても、鶴見中尉の人生には虚しさを抱えてただ生き続けるという苦行だけが待っていたのではないか。
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腹部にピストルの弾を受けた鶴見中尉と、刀を深々と胸に突き立てられた杉元。
互いが互いの持つ武器を利用して、言わば相打ちの状態のまま、暴走列車は杉元と鶴見中尉もろとも海中へと沈んだ。
いくら不死身という二つ名があるといっても、鶴見中尉に刀を奪われた杉元が刺されたのは心臓に近い部分。
それも刀の先が背中側に完全に貫通し、外に露出するという常人ならば死は免れないであろう深手を負っている。
鶴見中尉もまた、深手を負わせた杉元の渾身の反撃により手中のピストルの制御を奪われ、腹部に銃弾を受けたわけだが、それにより背中側から血が噴き出している。こちらも杉元と同じく傷は深い。
杉元が列車と馬で並走していた谷垣と白石に向けてアシリパさんを放った直後、杉元は笑みを浮かべて自らの決め台詞を呟いた。
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ムチャクチャかっこいいが、まさかこれが最期なのか?
それとも最後の最後まで不死身の杉元として、生還するのか?
この流れなら後者だと思うんだけど、でも杉元がこのまま死んでしまっても、それはそれで絵になるラストではあるんだよなぁ……。
ラスト1話だが、まさかこういう形で読者に最後の最後まで安心させてくれないとは……。
個人的には、というかこの物語を追ってきた人は、やはりこの物語には明るい最後を望んでいると思う。
確かに最終局面になって、この物語を牽引してきた魅力的なキャラたちは立て続けに退場していった。彼らがいないのに物語が大団円を迎えた、という表現はちょっと寂しいものがある。
とはいえ、もう彼らの死という事実は動かせないわけで、それならばせめて今生きているキャラ達がなるべく生き残って欲しいところだったんだけど、最期の敵である鶴見中尉は仕方ないとしても、まさか杉元まで死ぬことになったら辛いな……。
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いよいよ残すところ、ラスト1話となった。
どんな最終回となるのか楽しみだが、もうこの物語の魅力的なキャラたちの新しい活躍が見られないと思うと寂しいな……。
最後は明るく終わって欲しいところだが果たしてどうなるのか。
やはり気になるのは杉元の安否だ。
杉元が生存しているか否かでラストの流れは全く異なるものになるだろう。
生きてて欲しいなぁ……。アシリパさんや白石、谷垣とバカやってて欲しい……。
ラスト1週間、結末をあれこれ予想することを楽しみながら待ちたい。
以上、ゴールデンカムイ第313話のネタバレを含む感想と考察でした。
第314話に続きます。