第248話 教会
目次
前話第247話 決まり事あらすじ
2枚だけ
アシリパは土方の所有している刺青一式を確認していた。
アシリパは暗号の鍵を思い出してから見てきた刺青の暗号に共通していることがあることに気付いていた。
土方は、江渡貝の屋敷にあった刺青を、偽物の可能性が高いと指し示す。
やはり偽物は、アシリパが気付いた決まり事を満たしてはいないのだった。
関谷、用一郎の本物以外の写しである牛山、家永、土方、都丹、鈴川は決まり事を満たしていた。
尾形が茨戸の賭場で入手した刺青人皮も、それが本物か否かは怪しいものの、刺青の暗号は決まり事は満たしている。
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夏太郎が油問屋で手に入れた刺青は、手に入れた本人も、土方も本物だと主張する。
しかしアシリパは、決まり事が守られていない以上、偽物ではないかと考えていた。
剥製屋が作った贋作は6枚あった。
その内の5枚は有古一等卒が持ち出したものであり、偽物の可能性が高いと説明する土方。
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アシリパはそれらを眺めた後、本当に偽物なのかと土方に念を押す。
土方は可能性は非常に高いと答えるものの、2枚が決まり事を満たしている。
アシリパは父の名が暗号を解く鍵なのか確信できずにいた。
アシリパに、暗号を解く鍵を教えろと土方が迫る。
わからない、と答えるにとどめるアシリパ。
アシリパは、全ての刺青人皮を入手して、その上で、偽物の判別法を見つけなければ暗号は解けないと考え始めていた。
札幌に向けて鶴見中尉は馬を走らせていた。
鶴見中尉は暗号解読の妨害のために有古一等卒にわざと2枚の本物の刺青人皮を入れていたのだった。
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夢
杉元たち、そして牛山たちは一緒に酒宴を楽しんでいた。
海賊房太郎から金塊を手に入れたらどう使うのか訊ねられた牛山は、世界中から集めた強者の中で1番強い奴を決める大会の賞金にすると答える。
自分は羊の牧場を経営すると夏太郎。
羊なんて絶対失敗する、と言う白石に、海賊は、どんな夢があるのかと問いかける。
しかし白石は、飲んで遊んでと無難な答えをしたあと、寝転がって、物思いに耽るのだった。
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アシリパは有古一等卒に、苫小牧で殺された7人のアイヌの中に有古の父がいたのかと訊ねる。
有古一等卒は、温厚だった父がまさか蜂起しようとしていたとは気付かなったと答えるのだった。
アシリパは、自分も一時はウイルクがアイヌを殺害したことを信じていたものの、今ではアイヌの未来のために力を尽くしていると信じていると続ける。
アシリパから海賊の金貨を手渡された有古一等卒が呟く。
「アシリパ お前は強いな……」
札幌で殺人犯を探していた宇佐美上等兵は、その後全く犯人と接触できずにいた。
その様子を見ていた石川啄木は、宇佐美上等兵の呟きにインスピレーションを受けていた。
そして啄木は、持っていた地図と教会の実際の場所との間に違和感を覚えたかと思うと、何かを閃くのだった。
「わかったぞ!!」
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第247話 決まり事振り返り感想
贋作の有効利用
アシリパさんの見抜いた刺青人皮の暗号解読の決まり事である「ホロケウオシコニ」が含まれているかどうかは正しかった。
しかし偽物の可能性が極めて高いはずの刺青5枚の中の2枚にだけ決まり事が含まれていることがアシリパの確信を弱めてしまう。
これは鶴見中尉のナイスプレーだわ。
まさか偽物だけではなく、本物まで有古一等卒に持たせたとは思わない。
完全に盲点を突いている。
これは中々気付けないんじゃないかな。
それこそアシリパが考えたように、全ての刺青人皮を集めて、なおかつ偽物の判別方法を調べなければ……。
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鶴見中尉が使ってきたのは、100%の精度で偽物と判別できる方法を知っているのが自分だけであるというアドバンテージだった。
土方は鶴見中尉が偽物を持っており、それをここぞという場面で使ってくると踏んでいた。
実際使って来ているわけだが、まさかその中に本物が混じっているとは夢にも思っていない様子だ。
アシリパは2枚が他の本物と同様に決まり事が含まれていると気づいた。
つまり少なくともその2枚に関しては、偽物と切って捨ててはいけないものだと知っている。
しかしそれを土方に教えるわけにはいかない。当然その理由を問われることで、杉元にすら話していない暗号の鍵を白状しなければならなくなってしまうからだ。
アシリパさんの頭脳なら、鶴見中尉は自分を惑わせるために偽物の中に本物を混ぜていたのではないか、と誰にも相談することなく気付けるかもしれない。
しかしそうなるにしても、この分だと時間はかかるだろう。
土方とアシリパさんが互いの情報を全て出しあい、話し合えれば鶴見中尉の策を見破れる可能性は高いのではないかと思う。
しかしアシリパさんは、土方がホロケウオシコニについて以上の価値がある情報を持っていないと判断しているし、そもそもホロケウオシコニの情報を口外するつもりはないわけだ。
鶴見中尉の一手は効果覿面だった。恐るべし。
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第247話の感想記事です。
第248話 教会
啄木ピンチ
深夜の札幌。教会前。
「間違いない…明日の殺人現場はここだッ」
石川啄木は興奮しながらメモを走らせる。
その啄木を不意に殴りつける宇佐美上等兵。
宇佐美上等兵は現場検証中の官憲の周りにいた啄木の顔を覚えていた宇佐美上等兵は、啄木が口走った言葉を聞きつけていたのだった。
啄木もまた、宇佐美上等兵の顔を見て、彼が現場にいたことに気付いていた。
自分から情報を引き出し、手柄を横取りしようとしている官憲だと察知した啄木は、宇佐美上等兵が拾おうとした自分のメモ(地図)を口に放り込む。
宇佐美上等兵は啄木の腹を蹴り上げて口からメモを吐かせると、必死にそのメモを守っている啄木を何度も殴りつけて奪おうとするのだった。
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業を煮やして、啄木に銃を向ける宇佐美上等兵。
啄木はその銃が南部式大型自動拳銃であることから、目の前の男が官憲ではなく第七師団だと気づく。
銃を発射する直前に、巡回中の官憲が近づいてきたことに気をとられる宇佐美上等兵。
その隙をついて、啄木はその場を走り去っていた。
逃げながらメモを破り捨てる。
啄木は追ってくる宇佐美上等兵に見つからないよう、身を隠す。
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生還
翌日、杉元・土方たちは私娼窟の、隠れて売春をしている曖昧屋と呼ばれる店の立ち並ぶエリアで私娼たちから聞き込みをしていた。
私娼たちは、昨今の連続殺人について、自分たちを狸狩りと称して取り締まる役人が犯人だと睨んでいた。
私娼窟には営業税をとれない公娼以外の私娼、街娼が公娼の倍いることから、連続殺人犯のターゲットになりたくなければ道庁が認める「貸座敷」で客をとるように仕向けているのだと述べる私娼たち。
門倉は貸座敷や曖昧屋は従業員に顔を見られてしまうので、犯人が狙うのは道で客をとる街娼だと推理する。
それを裏付けるように、実際にこれまで殺害された四人は街娼だった。
街娼に片っ端から声をかけていけば獲物を探す犯人の犯行現場を絞り込めると口にする永倉。
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その頃、犯人の刺青人皮を持つ男は上機嫌で凶器の刃物を弄んでいた。
犯行が本日中に行われる可能性が高いのに、それまでに街娼に片っ端から声をかけるなど無理だと海賊房太郎。
土方は、今夜を逃せば犯人は姿を消すと檄を飛ばす。
しかし有力な手掛かりを見つけることが出来ないまま、無情にも日は暮れていく。
次の現場を当てることなど半ば諦めかけたその時、顔をぼこぼこに殴られ、ほぼ裸状態の啄木が現れる。
永倉に近づき、縋りつくように膝を折る啄木。
どうしたのかと問われた啄木は、次の殺害現場が分かったことを第七師団兵に気付かれたこと、その兵に追われたため、ドブに隠れていたと答える。
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お手柄
杉元たちは啄木を連れてアジトに戻っていた。
啄木は犯人がジャックザリッパーの真似をしているので、実際の犯行まではまだ時間があると前置きして説明を始める。
広げた地図を指差し、ここが豊平川、貧民窟にある教会、四人の殺害現場だと啄木が説明を続ける。
土方はその地図が札幌の地図ではないと気づいていた。
それがどこのものかと問われた啄木は、ロンドンのホワイトチャペル、セイントポトルフ教会だと答える。
犯人が模倣しているジャックザリッパーの被害者たちは教会の周りをぐるぐると回って客を取っていたため、その殺害現場は教会を中心に存在していた。
それらの現場の位置と、札幌で起きた殺人現場の位置は一致していた。
そのことから啄木は犯人がジャックザリッパーの犯行現場の位置まで再現しようとしていると喝破し、札幌で起きるであろう次の第五の殺人現場の位置を札幌麦酒(サッポロビール)工場だと特定するのだった。
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それだけ伝えると、もはや限界だったため、脱力していく啄木。
啄木に休むよう促す永倉。
「お手柄だ 見直したぞ!!」
啄木は永倉に視線を向けて答える。
「あんたらの蝦夷共和国ってのが面白そうだからどうしてもそれを見届けたくてね」
感涙する永倉。
白石は何気なく、啄木のノートに挟まっている写真を取り出す。
そして、その被写体が東京から札幌の薄野遊郭に出張中の話題の花魁であることから、この事件を解決したお手柄であわよくば……という魂胆だったのかと啄木に問いかける。
「だって花魁は…!! 大金積んでも好かれないとヤレないんですよ?」
さきほどまで啄木の行動に感動していた永倉は急速に冷めていた。
「あ~あ… 死んでバッタに生まれ変わればいいのに」
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第248話 教会感想
石川啄木のお手柄
石川啄木が大活躍!
イギリス、そしてジャックザリッパーについて知識のある啄木だからこそ次の殺人現場に気付けた。
危うく宇佐美上等兵に口を割られそうになるものの、啄木はしぶとく立ち回り、杉元・土方たちに次の殺人現場の予測を納得できる推理と併せて伝えた。
これで杉元たちは、宇佐美上等兵の超人的な本能によって犯人を捜そうとして、今一歩辿り着けていない第七師団に一歩リードしたわけだ。
ボロボロになりながらも、土方の蝦夷共和国構想への共感を示す啄木の姿は、これまでの彼のゲスなイメージを払拭した……と思いきや、今回の啄木の行動の裏には花魁への欲望があった。
やはりどこまでいってもその性根は変わらなかったようだ。
永倉による辛辣なツッコミが相変わらず最高の切れ味。良いオチになっている。
一方最初はラッキーパンチで犯人と遭遇できた宇佐美上等兵だったが、広い札幌で次に犯人が出現する地点を探り当てるのは本能のみに頼る彼には無理だろう。
土方たちは、啄木によって齎された第七師団に対しての優位性を活かせるのだろうか。
犯人の刺青人皮を持つ男は、これまで娼婦を残忍な手法で殺害した鋭い刃物を打ち付けて、次の殺人への興奮を高めている。
異常者との戦いが始まる。
以上、ゴールデンカムイ第248話のネタバレを含む感想と考察でした。
第249話に続きます。