第314話 大団円
第313話の感想記事です。
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第314話 大団円 感想
やはり杉元は不死身だった。
タイトルを読んだ時から安心していたけど、きちんと生き残れてよかったわ。
あと、さらに冒頭の、戦いから6か月後のアシリパさんの表情で「ああ、杉元大丈夫だったようだ」とほっとした。
確証はもちろん無いが、おそらく杉元が助かっていなかったらこんな表情はしないだろうと思ったから。
しかし、梅子に挨拶に行くのが6か月後ということは、療養期間を要したということだと思う。
おそらく杉元は海から引き揚げられた直後は、生死の境を彷徨っていたのではないか。
頭に銃弾を受けてもさほど間をおかず戦線復帰できてしまう驚異の生命力を以てしても、鶴見中尉から受けた胸の傷は相当なダメージだったのだろう。
それに、そもそも最後の一騎打ちに辿り着く前から激戦の中で体中に傷を負っていたから、血を失い続けていたし……。
本当によく生き残った。
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どうやら梅子は杉元から手術費用を援助してもらうまでもなく手術を無事終えていたようだ。
おそらく再婚した男性に助けてもらったのかなと思う。
でも杉元にとってはそんなことは些末なことだったようだ。
寅次に頼まれた通り、手元に残った金塊を梅子に手渡すことで、これで自分に出来ることはした、胸を張れると杉元はすっきりした気持ちだったのかな。
あくまで別れは爽やか。かといって、梅子に対する想いが全くゼロになったわけがない。
しかしそれは一切悟らせずに立ち去る。かっこいいぜ……。
再会した杉元を前に、終始少し困惑している梅子の反応がリアルだった。
でもだからこそ、梅子に対して出来る限りのことをやったという実感を得たであろう杉元は、もう梅子に会う事も、会いたくもならないと確信できただろう。
杉元がこの心境に至ることが出来たのも、この金塊を求める旅で自分の居場所を見つけることが出来たからだと思う。
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戦争で生じた杉元の心の隙間を埋めたのは、金塊を求める旅の過程で出会ったアイヌ文化、そしてアシリパさんだった。
杉元はこの旅の最初から、大切なものと出会っていたわけだ。特にアシリパさんとの出会いは奇跡だったんだな。
杉元はこれからもアシリパさんとアイヌの文化の中で幸せに暮らしていくんだろう。
アシリパさんは以後、アイヌ文化を次のアイヌに伝えていく役割を担ったようだ。
政府との交渉の矢面に立ち続けて、権利書の土地のいくらかは国立公園、国定公園に指定されたという。
きちんとアイヌの未来を築いていて立派だわ。ウイルクも彼女を誇らしく思っているに違いない。
あと、実際、アシリパさん、そして杉元を通じて日本社会にアイヌ文化がいくらか広まったんだよな……。これは凄いことだと思う。
もちろん、ゴールデンカムイが伝えているのはあくまでアイヌ文化の一部に過ぎない。しかし、自分のこととしてのみ語るならば、この物語を通じて、アイヌにはこういう文化のがあるのか、と身近に感じられるようになったことは事実だ。そして、自分のように感じている読者は決して少なくないだろう。
そういえば、ゴールデンカムイの連載終了の情報が出た後、松野官房長官がその件について「アイヌ文化への関心を高めた」コメントをしていた。
それだけ、この漫画がアイヌ文化にスポットライトを当てたことによる文化的な功績は大きいということだと思う。
今後もこの興味を継続していきたい。
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そして今回は他のキャラについても後日談があった。
夏太郎は牧場主として成り上がり、永倉は落ち着いた余生を送ったようだ。
谷垣のその後は笑った。まずインカラマッとの間に産まれた子供が15人! そしてその内女の子が一人だけというのがさらに笑いを誘う。
あと門倉、キラウシ、マンスールがアメリカに渡り、金塊争奪戦をモチーフにした映画を撮っていたとか、こんなの予想できないわ(笑)。
でも確かに、この三人は一緒に死線を越えた中だもんなぁ。この三人なら何でも出来る! となってアメリカに行ったのかなと思うと、彼らのアメリカでの奮闘を読みたいなと思った。
結局その映画は全然ウケなかったけど、後年カルト映画として再評価というオチが最高。
あと、やはりヴァシリは生きてたんだな……。尾形からの狙撃を受けた後、血が大量に流れたものの、死自体はきちんと死が描写されていなかったから、助かっている可能性はあると思っていた。
でもその後、ヴァシリが一切物語に出て来なかったからやはり助からなかったのかなと思っていた。いやー、良かった。
それも、その後の人生では画家として活動し、かなりの名声を得ていたらしい。
しかも最期まで手放さなかった絵画のモチーフが眠るように死んでいる山猫とは……。
尾形のことを想って描かれたことは間違いない。
尾形との出会いと関係性が、彼の人生においてそれだけインパクトがある事柄だったことが窺える。
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鯉登少尉と月島軍曹もまた、この旅で立派に成長した、あるいは自身の身の置き所を得た人物たちだった。
最後の月島軍曹とのやりとりも堂々としたもの。
鶴見中尉という人生の指針を失い、意気消沈している月島軍曹に対して、鯉登少尉は自身の右腕としての働きを求めることで彼の今後の方向を定めた。
まっすぐ生きる自信をつけた鯉登少尉。その鯉登少尉のまっすぐさに惹かれ、彼を力強く支える月島軍曹。
この関係性、最高。
あと、できれば読者としては月島軍曹についてはいご草ちゃんについて描かれていて欲しかったかな。実は彼女が生きているのを確認して、ほっとした月島軍曹の姿が見られたら……。まぁ、そこまではやり過ぎか。
そして、オチは白石。
杉元とアシリパさんの元からかっこよく去ったと思ったら、その後、井戸に残された金塊を回収して、東南アジアの島で王様になったという……(笑)。
いくらアシリパさんが、アイヌには金塊は不要という結論を出したとはいえ、ふざけんな!(笑)と思ったけど、おそらく房太郎の意思が大いに影響しての行動と考えると、これは白石なりの弔いでもあったのかなと思えて、少し神妙な気持ちになった。
上手いこと自分の欲望と他者を想う心を昇華させたと評価したい。
実際、白石は暴君には到底なりそうもないし、案外国民を明るい方向に導く指導者になったのかもしれない。
白石の顔面が硬貨のど真ん中に彫られたデザインの通貨が、もしかしたら現在でも使われている可能性があると思うとさらに笑えた。
何しろ、国家建設者だもの……。スケールがデカイ! この物語で一番成り上がったのは白石だったようだ。
道中は色々と不遇なことも多かったけど、運よく生き残れたし、最後には報われて良かった。
やはり白石は野田先生に愛され過ぎたキャラだったな。
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なんだかんだでタイトル通りの大団円。良かった。
逝ってしまったキャラ達を想うあまり暗くなる必要はない。彼らの活躍は記憶に鮮明に残っているし、何なら、いくらでも読み返せるのだから。
今回は野田先生によるあとがきもある。
その中には「スピンオフも全然あり」との記載が。
新連載優先とのことだけど、スピンオフも気が向いたら描いて頂けるとありがたいなぁ……。
まずは白石の成り上がりストーリーから読みたい(笑)。
それに他の作者の方に描いて頂くという展開もある。
本編は終わってしまったものの、野田先生の仰る通り、ゴールデンカムイはまだ終わらない。
今後も注目していきたいと思います。
野田先生連載終了おつかれさまでした。最高の物語をありがとう。