目次
前話第163話 指名手配書のあらすじ
慎重なヴァシリ
尾形の姿を視界に捉えたヴァシリは、しかしすぐには銃撃しない。
狙撃手にとって銃を発射することとは自分の位置を特定されて逆に自分が撃たれてしまう危険が生じるということでもある。
その為、銃を撃つのは確実に相手を仕留める時でなくてはならないと考えていた。
銃を構えたままじっと動かない尾形を見下ろすヴァシリ。
ヴァシリは銃口を尾形に向けて構えたまま、じっと尾形を観察していた。
しかし尾形を発見して以降、彼が全く動かない様子に、ヴァシリはどこか妙であると感じ始めていた。
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ロシア皇帝暗殺の瞬間を話すキロランケ
イリヤは意識を失い、口から血を吐きながら痙攣し始めていた。
キロランケはその様子をじっと見つめる。
アシリパはイリヤが落とした手配書を手に取りキロランケに訊ねる。
「これ…キロランケニシパか?」
白石はロシア国境警備隊の狙いがキロランケだったことに気付く。
そしてキロランケに何故ロシアから指名手配を受けているのかと問いかける。
キロランケは誤魔化そうとせず、静かに語り始める。
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15歳の時、サンクトペテルブルグで反体制過激派組織と知り合ったというキロランケ。
ロシア皇帝が馬車で参列の間を駆けていくその瞬間、手に提げていたバッグの中から伸びた紐を引いて爆弾を起動させ、馬車に向けてバッグを投げつける。
爆弾入りのバッグは大きく弧を描いて空を舞った後、皇帝を乗せた馬車を引く馬に当たり地面に落ちる。
しまった、という表情をするキロランケ。
すかさずキロランケと少し離れた位置にいたスーツの男が爆弾バッグに駆け寄り、掴み上げる。
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協力者
キロランケの話を聞きながら、アシリパは手配書に紙が貼りつけられていることに気付き、それを剥がしていく。
キロランケの話は続く。
スーツの男はバッグを掴み上げると皇帝の乗っている場所にそれを載せる。
突然のことに驚き言葉を失った皇帝は、ただただ目の前のスーツの男を見つめるのみ。
スーツの男はウイルクだった。
手配書から余計な紙を剥がしたアシリパが見たのは、キロランケと同じく指名手配犯になっていたウイルクの顔写真だった。
「アチャ…」
アシリパはただただ驚いた表情で呟く。
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キロランケの失敗をカバーしたウイルクが、見事に皇帝を爆殺することに成功したとキロランケが説明する。
そりゃロシア人も怒るぜ、と神妙な表情で呟く白石。
爆発に巻き込まれて顔から出血し気を失っているウイルクの腕を肩に回し、キロランケはウイルクの名を呼びながらその場から逃げていく。
キロランケは、ロシア皇帝暗殺の現場にアシリパの父親がいたこと。
そして自分とウイルクの二人で皇帝を暗殺したと冷たい目で彼方を見ながら言い放つ。
白石とアシリパは、そんなキロランケの表情を横から見つめる。
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どこまでも慎重なヴァシリ
ヴァシリは双眼鏡でかれこれ1時間以上尾形を観察し続けていた。
尾形は動きを見せるどころか、呼吸の為の身じろぎ一つ見せない。
ヴァシリは、イリヤを一発で撃ち抜いたことを高く評価していた。
そして、百戦錬磨の狙撃手にしては、その身の隠し方があまりにも雑であることに気付く。
ヴァシリは現在の位置から尾形を撃つことをせず、移動して監視を続けることを決める。
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決着
辺りが暗くなり始める。
白石は尾形が戻ってくるのが遅いことに不安を感じ、キロランケ、アシリパに尾形の加勢に出ることを提案する
キロランケは尾形から独りにしろと言われたと念を押し、尾形の腕を信じて戦いに決着をつけてくるのを待とうと答える。
その頃ヴァシリは地面に伏せて、先程とは別角度から尾形を双眼鏡で監視し続けていた。
そしてついには夜が明ける。
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小鳥が鳴いている中、昨日と変わらず尾形を双眼鏡で監視していたヴァシリはようやく新しい情報に気付く。
ヴァシリが当初監視していた位置からでは見えなかった”痕跡”が夜が明けた事で見えるようになっていた。
それはまるで、雪の上を歩いて、その足跡を消したような跡だった。
その痕跡が続く先を目で追っていったヴァシリが視界に捉えたのは、樹上に置かれたオロッコの棺だった。
尾形は口中から白い息が出るのを防ぐ為、雪を口に含む。
ヴァシリはここまでで得た情報から、今まで監視してきた尾形は、実は遺体を利用して作った身代わりの案山子であり、本物の尾形はオロッコの棺に潜んでいると確信する。
ドォン
オロッコの棺の端にヴァシリの銃弾が命中する。
ヴァシリは続けざまに同じ位置に銃弾を撃ち込んでいく。
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キロランケ達は何発も続く銃声を黙って聞いていた。
自分が撃ったオロッコの棺をじっと見つめるヴァシリ。
しかし、ヴァシリが身代わりの案山子だと信じていたのは実は昨日から一切身動きしていなかった尾形本人だった。
尾形は立ち上がり、ヴァシリのいる方向を特定して銃口を向ける。
尾形の放った銃弾は見事にヴァシリの顎を撃ち抜く。
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第163話 指名手配書の振り返り感想
ヴァシリの狙撃手としての才能を信じた尾形
今回も面白ぇ~!
尾形とヴァシリとの戦いに決着がついたか?
生きてたとして、反撃出来るのかな……。
ヴァシリが尾形に撃ち抜かれたのは顎だから、どうやら致命傷ではないっぽいんだよなー。
尾形がヴァシリを拘束した後、キロランケ達とヴァシリを尋問する展開か。
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しかし狙撃手同士の戦いを制した尾形が見せた、頭脳と度胸そして忍耐がかっこいい。
やはり頼れるわ。味方ならこれ以上ないくらい頼りになる男だと思う。
おそらくは熟練した狙撃手であるはずのヴァシリでさえ、尾形の策略に見事に騙された。
ヴァシリの思考を完全に操作してる。
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ヴァシリは尾形が優れた狙撃手だと直感していた。
そして、そんな狙撃手があんな無防備な隠れ方をするはずがないと考える。
尾形の周りをよく観察すると足跡がある。その先の樹上にはオロッコの棺。
優れた狙撃手の尾形が簡単に姿を発見させるような場所にいるのか。
そして実際尾形は全く身じろぎしないということは、これは身代わりであり、尾形は樹上の棺に潜んでいる。
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ヴァシリは、尾形が、”尾形の姿をした何か”をわざと自分に狙撃させて、その位置を特定しようとする尾形の策略だという結論に至った。
そしてまんまと尾形の策略に引っかかり、棺に銃弾を撃ち込んで自分の位置を知らせるというミスを犯す。
で、実際は、尾形は当初ヴァシリに発見させた格好のまま一切身じろぎせずに待っており、ヴァシリの位置に向けて狙撃するわけだ。
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今回の話における尾形の行動は、尾形の持つポテンシャルが発揮されていたと思う。
まずヴァシリにわざと自分の姿を発見させる度胸がすごい。
見つかってすぐに撃たれてもおかしくないが、しかし尾形はヴァシリが優れた狙撃手だと信じていた。
ヴァシリが自分を見つけてもすぐには撃たず、暫く観察することを読んでいた。
だからこそ身を晒した。
頭脳と度胸が両方ないとこの戦略はとれない。
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そして、ヴァシリが罠に引っかかるまで少なくとも12時間以上は一切動かずにじっと待つのもまさにスナイパーの才能だわ。
ただ待つのではなく、いつ起こるか分からない銃声を集中して待ち続けなくてはならないのは相当に精神的ストレスを感じる状況だと思う。
ヴァシリが優れた狙撃手だと確信しているからこそ、尾形は自分の仕掛けた罠にヴァシリが気づいて行動を起こすと思っていた。
しかしその行動がいつになるかは相手任せだ。
そもそも前述した通り、尾形のことを案山子だと思わずに撃って来た可能性だってゼロではなかった。
どこまで先を読んでるんだよって話。
非常に高度な戦闘を見れて満足した。
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キロランケとウイルクの絆
この二人からは、ただ単に仲が良いというだけでは説明のつかない強いつながりを感じていたけど、今回の話でその理由がわかった気がする。
ウイルクは、言ってみれば若きキロランケの失敗をフォローしてくれていた。
そしてキロランケとウイルクは二人仲良くロシアに指名手配されていたんだな。
こんな過去があるなら、そりゃあ繋がりも強くなるよ。大仕事を共にやり遂げた最も身近な戦友じゃん。
しかし二人はよく皇帝暗殺の現場から逃げ出せたよなぁ。
混乱していたからといって、警備をかいくぐって脱出するのは相当難しかったのではないか。
ひょっとしたら実行犯であるキロランケ達の逃走の為、仲間達による協力もあったのかな。
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あと、バカバカしいことに、自分はてっきり皇帝を爆破した際の爆風によってウイルクがのっぺら坊化したのかと思っちゃった。でもすぐにそれは時系列的におかしいことに気づいた。
この事件の後で二人で北海道に逃げて、ウイルクとアイヌの妻の間にアシリパが産まれるわけだから(笑)。
爆風によって負ったのは顔の傷だったのね。
あと15歳のキロランケに既にもみあげと繋がるくらい立派なヒゲが生えてた。
ヒゲを剃っても数時間後にはジョリジョリになるくらい濃いという設定だから自然かな。
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アシリパの記憶は刺激されるのか
指名手配書にウイルクの顔写真が載っているのを目の当たりにしたアシリパはさすがにショックを受けるのかな?
今まで知らなかったウイルクの過去が分かって、アシリパが記憶しているウイルクの何気ない行動や言葉から何か金塊のヒントを思い出す展開になる?
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そして、もしアシリパがウイルクの娘だと知ったらロシア政府が放っておくのかな?
ロシア側の誰かが金塊の話を知って争奪戦に参加する展開も考えられる。
その場合間違いなく争奪戦は激化するだろう。
この樺太の旅はキロランケ曰くアシリパの記憶を呼び覚ます為の旅とのことだけど、ロシアに差し掛かっていよいよそれが顕著になってきた。
アシリパが金塊に関する決定的な記憶を思い出すのも近いのだろうか。
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163話の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。
第164話 悪兆
尾形が体調不良でダウン
ヴァシリとの戦いを制した尾形は、飼馴鹿とオロッコの元に戻っていた。
それを見つけたアシリパは、キロランケ、白石を伴って尾形の元へと合流する。
白石が尾形の顔色が良くないと指摘し、アシリパは尾形のおでこに手をあててひどい熱だと診断する。
雪を口にし過ぎただけだと強がる尾形。
その表情には力が無い。
そんな尾形に白石は白湯を勧める。
そして、急いで移動するぞと指示するキロランケ。
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発熱で朦朧としていた尾形の目には白石とキロランケの他に、軍服に身を包んで顔から血を流す、義理の弟の勇作の亡霊が見えていた。
飼馴鹿の橇での移動中、尾形は自分の橇の前に立っている勇作をじっと見つめていた。
「寒くありませんか? 兄様」
勇作は尾形に笑顔を見せる。
尾形は勇作に対して何も答えず、じっと勇作を観察するように見つめる。
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男兄弟とは
尾形は日露戦争への出征前に勇作を誘って街に遊びに来ていた時のことを思い出していた。
尾形からの誘いを受けて勇作は、尾形から誘ってくれたことを素直に喜びを見せる。
「勇作殿…もう一軒付き合って頂けませんか」
尾形の誘いに、勇作は、もちろんお供いたします、と嬉しそうに即答する。
揚屋の一室で、尾形は両脇に遊女を置き、軍服の第一ボタンをはずして酒を傾けていた。
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『処女は弾に当たらない』ので、軍人が陰毛をお守りにしているというゲン担ぎに言及し、それは『童貞』も同じだと前置きして尾形は勇作に呼びかける。
聯隊の旗手を務めることになった勇作は、容姿、成績、品行、全てにおいて優れており、『聯隊の顔』にふさわしい人物だった。
それと同時に勇作が童貞であることも、真っ先に銃弾を受けて死亡する確率の高い旗手として選ばれた理由と聞いている、と尾形は続ける。
そして、ここの女たちは口が堅いそうですよ、と勇作に暗に遊女を抱けと持ちかける尾形。
たとえ童貞でなくなったとしても、まわりが勇作の事を『童貞』と信じていれば良い、と言い、さらにダメ押しの一言を勇作に投げかける。
「男兄弟というのは一緒に悪さもするものなんでしょう?」
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「……」
勇作は重い沈黙の後、答える。
「兄様…申し訳ございません」
そんな勇作の態度を受けた尾形は、傍らの遊女に、勇作を人目につかぬよう裏からお見送りしろ、と指示するのだった。
尾形の治療
キロランケ達はオロッコの従兄弟の家族のテントに辿り着いていた。
尾形はアシリパの手を借りて何とかテントに向かう。
アシリパは尾形にアイヌの風邪の治療法として、スワシ(若い灌木)という木の枝を鍋で煮て、その煮汁を飲むのだと説明する。
さらに、ヤイスマウカレという、コートを頭から被せて湯気に蒸される事で汗をかく治療法を受けさせる。
そうこうしている内に、手に太鼓とバチを持った「サマ」がテントに現れる。
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キロランケは「サマ」とは神と人間の間を取り次ぐ者のことであり、祈願により病気の治療もおこなう存在であるとと説明する。
サマが早速太鼓を打ち鳴らし、治療が始まる。
サマが治療に当たっている様子から、なにか良くないものがとりついているようだ、とキロランケが呟く。
尾形はヤイスマウカレで大量の汗をかきながら、虚ろな表情で俯いていた。
その脳裏には先程の勇作の顔が思い浮かんでいる。
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尾形の決意
場面は尾形の誘惑を断った勇作が揚屋から帰った後。
揚屋から勇作を帰したあと、鶴見中尉が尾形の前に現れていた。
「噂通りのお人柄だな 弟君は…」
鶴見中尉は尾形による勇作の懐柔が上手くいかなかったことと評価する。
「場の腑に気に怖気づいただけかと…」
尾形はさきほどとは打って変わった様子で、ピシッと正座して答える。
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だといいが、と言う鶴見中尉に、尾形は笑みを浮かべる。
「たらしこんでみせましょう。」
鶴見中尉は、勇作の正義感が強い場合自分たちに引き込んで操るのは難しい、と尾形に視線を送る。
「なにせ…高貴な血統のお生まれだからな」
尾形は鶴見中尉に言い返す。
「血に高貴もクソもそんなもんありませんよ」
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脱走
オロッコのテントでは尾形の治療が続いていた。
白石が、トイレに行くと席を立つ。
「アシリパちゃん もう見ないでね」
アシリパと目を合わせた白石は他の人達に分からないよう、こっそりとアシリパに外に出るようジェスチャーを送っていた。
それに従いアシリパも、白石に続いて外に出る。
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アシリパに、どうした? と問われ、白石はシンプルに、逃げよう、と持ちかける。
白石は考えていた。それを口に出してアシリパを説得しようとする。
まず、尾形が弱っている今がチャンスであること。
そして、キロランケの罪が20年前にも関わらず、広い国境線で待ち伏せされている事に関して、つまりは自分たちの行動がに何者かに高い精度で補足されているということに言及する。
白石は、ほとぼりが冷めるまで樺太にいるつもりだったと言いつつ、しかし北海道にいる方がマシだと続ける。
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撃たれたオロッコの爺さんに言及し、キロランケと一緒に行動することは危険だと主張する白石。
白石は、キロランケはウイルクがアイヌの軍資金である金塊を奪い何をしようとしていたのかをキロランケが分からないと言っていたのが嘘だったと言い、ウイルクと一緒に皇帝殺しに関わっていたなら、ウイルクが帝政ロシアとの戦いの為にアイヌの金塊を奪おうとしたことを知っていたということだと続ける。
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インカラマッもキロランケの裏切りを指摘していたとアシリパに逃走を持ちかける。
「荷物は置いていくんだぜ 逃げたことがバレるまで距離を稼がねぇと」
しかしアシリパは自分は残ると白石に意思を示す。
なんで? と問う白石。
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アシリパの考えていたこと
「俺の昔の名前は『ユルバルス』」
白石は背後からキロランケに声をかけられ驚く。
キロランケはおもむろに自身のルーツを語り始める。
タタール人として生まれたが樺太アイヌの血も混ざっている。
曾祖母はツングース系の民族に借金のかたとしてアムール川流域に連れ去られた樺太アイヌ。
そして、ウイルクの母もまた樺太アイヌだと説明する。
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キロランケ達が暗殺したロシア皇帝は樺太・千島交換条約を結んでいた。
ウイルクやキロランケは、その条約に運命を翻弄されてしまうであろう極東の少数民族独立のために戦っていたと説明する。
そして、その中には自分の息子達や、アシリパ達も含まれるはずだと続ける。
「私はもっと知りたい」
アシリパが呟く。
「アチャがどういう人か どうしてのっぺら坊になったのか…」
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アシリパを見つめるキロランケ。
アシリパは、ウイルクの足跡をたどる事で金塊の暗号を解く鍵が見つかるかもしれないこと、その鍵が自分以外には解けないものなのかを確認する必要性を感じていた。
そして、金塊を巡る血生臭い惨劇を潜り抜けて金塊を見つけてたら、その先はどうするのか。
金塊から得られる豊富な資金を使い、更なる殺し合いに連鎖させていくか。
そもそもこの呪われた金塊は、果たして本当に見つけるべきなのか。
それとも、いっそ闇に葬るべきなのか。
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第164話 悪兆の感想
義理の弟勇作
尾形と勇作の日露戦出征前の話。
尾形は日露戦争の前から鶴見中尉は繋がっていたようだ。
第103話、花沢中将の暗殺を鶴見中尉に手伝ってもらったところあたりからの関係かと思っていた。
実際はその前からだったのか。
鶴見中尉はその情報収集能力で尾形が軍に入営した直後には、鶴見中尉は尾形の出自を知っていたのだろうか。
鶴見中尉の力ならそれは何らおかしくない。
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鶴見中尉は、勇作を操る為に尾形を使って懐柔させようとしていた。
しかし勇作は意思が強く、誘惑に負けることはなかった。
たとえ慕っていた尾形からの誘いであっても断れるそのまともさ、それを育んだ花沢中将とその正妻に、尾形は嫉妬していたのかもしれない。
尾形は”たらしこんでみせましょう”と鶴見中尉に自信満々に言い、任務の継続を宣言した。これ以降も勇作の懐柔工作は行っていたのだと思う。
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しかし結局勇作を懐柔することは出来なかった。
それもあって、尾形は戦地で勇作を後ろから撃ったのかもしれない。
「血に高貴もクソもそんなもんありませんよ」
こう言い放った尾形は、勇作と、自分との間にある差を認めたくなかったのだろう。
どうも尾形の姿からは、鶴見中尉から与えられた任務を遂行することに増して、両親に愛された勇作を何とか追い落としたいと考えていたように見える。
自分は今回の話で、尾形の心の闇と同時に弱さを感じた。
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あと、鶴見中尉はやはり恐ろしい。
「なにせ…高貴な血統のお生まれだからな」
という、尾形に対する鶴見中尉のこの一言は、実は尾形を動かそうとしているのではないか。
尾形の心の傷を確信的に弄び、自身の思い通りに状況を操っていく。
策略家鶴見中尉の真骨頂だろう。人間というものを深く理解していると思う。
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アシリパの気持ち
キロランケにさらわれる形で樺太を行くアシリパが、一体何を考えてキロランケについて行っているのかがわかった。
アシリパは、これまでずっと金塊を求めて北海道を杉元と旅していく内に、金塊を見つけるべきなのかという境地にまで至っていたようだ。
果たしてアシリパはウイルクの足跡を追うこの樺太の旅の中で何を得るのだろうか。
以上、ゴールデンカムイ第164話のネタバレを含む感想と考察でした。
第165話に続きます。
自分はゴールデンカムイのアニメをこの方法で観てます。