目次
前話第164話 悪兆のあらすじ
体調不良
アシリパは、既に尾形が飼馴鹿とオロッコの元に戻ってきているのを確認していた。
キロランケ、白石、アシリパも尾形の元に合流する。
白石は尾形の顔色が悪いことを指摘。
アシリパが尾形のおでこに手をあてる。
「ひどい熱だぞ」
ヴァシリとのスナイパー同士の戦いで、潜伏中に雪を口にし過ぎただけだと虚ろな表情で強がる尾形。
白石は白湯を勧め、キロランケは急いで移動するぞと声をかけてくる。
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尾形の視界には白石とキロランケより、ボロボロの軍服に身を包み顔から血を流した、義理の弟である勇作の亡霊が目前に迫っていた。
飼馴鹿の橇に引かれて移動する道中、橇に座っている尾形の目の前にはやはり勇作が立っている。
「寒くありませんか? 兄様」
尾形は何も答えずじっと勇作を見つめる。
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懐柔
回想。
日露戦争への出征前、尾形は勇作を誘って街に遊びに来ていた。
兵営では避けられているような気がしていた、と尾形から誘ってくれたことを素直に喜ぶ勇作。
「勇作殿…もう一軒付き合って頂けませんか」
尾形からの申し出に勇作は、もちろんお供いたします、と嬉しそうに答える。
尾形が両脇に遊女を置き、軍服の第一ボタンをだらしなくはずして酒を傾けていた。
対面の勇作に語り出す。
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『処女は弾に当たらない』というゲン担ぎから、軍人の間ではその毛がお守りとされていた。
そして、『童貞』も同じ意味あいで扱われていた。
聯隊の旗手を務めることになった勇作は、もちろん容姿も良く、成績優秀で品行方正な『聯隊の顔』だったからだというのもあるが、童貞であることも理由と聞いている、と尾形。
旗手は真っ先に敵陣に突入する役目であり、死亡率が最も高い、と前置きする尾形。
ここの女たちは口が堅いそうですよ、と勇作に遊女を抱けと暗に持ちかける。
「ようはまわりが『童貞』と信じていれば良いのです 男兄弟というのは一緒に悪さもするものなんでしょう?」
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「……」
勇作はばつの悪そうに沈黙した後、ぽつりと答える。
「兄様…申し訳ございません」
尾形は笑顔を消して傍らの遊女に、勇作を人目につかぬよう裏からお見送りしろ、と指示するのだった。
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サマ
同行したオロッコの従兄弟の家族のテントに着いたキロランケ達。
アシリパに寄り添われ、尾形はフラフラの状態でテントに向かう。
アイヌでは風邪を引いた際はスワシ(若い灌木)という木の枝を鍋で煮て、その煮汁を飲むのだとアシリパ。
そしてヤイスマウカレという、コートを頭から被せて湯気に蒸される事で汗をかく治療法を受けるよう尾形に呼びかける。
暫くすると、頭に巻いた鉢巻きに植物を差し、手に太鼓とバチを持った「サマ」が現れる。
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キロランケは「サマ」とは神と人間の間を取り次ぐ者のことで、祈願によって病気の治療もおこなうのだと説明する。
サマが太鼓を鳴らし、治療を始める。
なにか良くないものがとりついているようだ、とキロランケ。
尾形はヤイスマウカレによって顔中に汗をかき、虚ろな表情でじっとしていた。
その脳裏には勇作が思い浮かんでいる。
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高貴な血統
回想。
揚屋から勇作を返したあと、鶴見中尉が尾形の前に現れる。
「噂通りのお人柄だな 弟君は…」
尾形による勇作の懐柔が上手くいかなかったことを指摘する鶴見中尉。
「場の腑に気に怖気づいただけかと…」
ピシッと正座して報告する尾形。
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だといいが、と受ける鶴見中尉に、尾形は不敵な笑みを浮かべて見せる。
「たらしこんでみせましょう。」
鶴見中尉は、勇作の正義感が強い場合自分たちに引き込んで操るのは難しい、と尾形に視線を送る。
「なにせ…高貴な血統のお生まれだからな」
尾形はすぐに言い返す。
「血に高貴もクソもそんなもんありませんよ」
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脱走の機会
オロッコのテントの中ではサマによる治療が続いていた。
白石がトイレに行くと席を立つ。
「アシリパちゃん もう見ないでね」
白石はこっそり、アシリパに外に出るようジェスチャーを送る。
白石に続いてアシリパも外に出る。
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どうした? と訊ねるアシリパに、白石は、逃げよう、と提案する。
尾形が弱っている今がチャンスであること。
そして、キロランケの皇帝殺しが20年前にも関わらず、広い国境線で待ち伏せされているのは、つまり自分たちの行動が把握されているということ。
ほとぼりが冷めるまで樺太にいるつもりだったが、北海道にいる方がマシだと白石。
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同行していただけのオロッコの爺さんが撃たれたのと同様に、これ以上キロランケと一緒に行動することは危険だと主張する。
白石は、キロランケはウイルクがアイヌの軍資金である金塊を奪って何をしようとしていたのかに関して、キロランケは分からないと言っていたが、それは嘘だったことも指摘する。
ウイルクと一緒に皇帝殺しに関わっていたのであれば、それはつまりウイルクが帝政ロシアと戦う為にアイヌの金塊を奪おうとしたことを知っていたということ。
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キロランケもウイルクと同様の理由で金塊を持ち出そうとしているとインカラマッも言っていただろうとアシリパに同意を求める。
「荷物は置いていくんだぜ 逃げたことがバレるまで距離を稼がねぇと」
「私は残る」
即答するアシリパ。
白石が、なんで? と問う。
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アシリパの決意
「俺の昔の名前は『ユルバルス』」
キロランケが白石の背後から声をかける。
そして自身のルーツを、タタール人として生まれたが樺太アイヌの血も混ざっていると説明を始める。
曾祖母はツングース系の民族に借金のかたとしてアムール川流域に連れ去られた樺太アイヌ。
そしてウイルクの母もまた樺太アイヌだった。
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キロランケ達が暗殺したロシア皇帝が、樺太・千島交換条約を結んでいた。
ウイルクやキロランケは極東の少数民族独立のために戦っていたと説明し、その中にはキロランケの息子達や、アシリパ達も含まれるはずだと続ける。
黙ってキロランケを見つめる白石。
「私はもっと知りたい」
アシリパがぽつりと呟く。
「アチャがどういう人か どうしてのっぺら坊になったのか…」
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キロランケはアシリパをじっと見つめる。
アシリパはこの旅を続けてウイルクの足跡をたどる事で金塊の暗号を解く鍵が見つかるかもしれないということ、そしてその鍵がアシリパ以外に解けないものなのか確認する必要性を感じていた。
金塊を巡る殺し合いの末に金塊を見つけてその先はどうするのか。
金塊による豊富な資金を利用し、更に殺し合いの輪を広げていくことになるのか。
呪われた金塊は本当に見つけるべきなのか。それとも闇に葬るべきなのか。
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第164話 悪兆の振り返り感想
尾形と勇作
尾形と勇作の話がここで来た。
とりあえず前回尾形が戦ったヴァシリは尾形の銃弾を受けてやられたっぽいな。良いキャラだったのに。
ロシア国境警備兵から情報を得る展開はなかったみたい。
今回の尾形と勇作の話は日露戦出征前。
時系列としては尾形が花沢中将を殺害する前の話になるようだ。
鶴見中尉の額が吹っ飛んでなかったし。
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日露戦争の前から尾形と鶴見中尉は繋がっていたのか……。
てっきり花沢中将の暗殺を鶴見中尉に手伝ってもらったところから関係が始まったのかと思っていたけど、そうではなかったみたい。
尾形が軍に入営した直後には、鶴見中尉はその出自に目をつけていたのかな。
情報将校として卓越した力を持ってるし、いち早く尾形が花沢中将と妾の子だという情報を知っていたも何らおかしくない。
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鶴見中尉は、勇作を操る為に尾形を使って懐柔させようとしていたようだ。
しかし勇作は誘惑に負けなかった。
慕っていた尾形からの申し出であっても断る潔癖さに、とりあえず尾形は勇作に帰りを促して手を引く。
でもこの時点では、鶴見中尉に対して”たらしこんでみせましょう”と自信満々に言い放ったのを見ると、以降も勇作の懐柔工作を行っていたようだ。
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しかし結局無理だったんだろうな。
だから個人的にはこれは本当か疑っている部分もあるんだけど、尾形は戦地で勇作を後ろから撃った。
「血に高貴もクソもそんなもんありませんよ」
こう言い放った尾形は、花沢中将と正妻の息子である勇作と、妾の子である自分との間に差を認めたくなかったのだと思う。
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鶴見中尉から与えられた任務を遂行するというより、両親に愛された勇作を堕としたいという暗い感情が先行している。
尾形の心の闇を垣間見るエピソードとなっている。
あと、尾形の女性関係についてもちょっと垣間見えた部分があった。
今回の話で、尾形は勇作に遊女を抱かせる為に軍服の第一ボタンを外し、両脇に遊女を侍らせて遊び人のような雰囲気を見せている。
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しかし遊女を抱くことを拒否した勇作を返した後、鶴見中尉の前ではすぐに居住まいを正し、もう結構です、と他人行儀に遊女を追い払う。
これは多分、遊び慣れているのだと思う。
姉畑のあたりの話で、男は出すもん出したら~、みたいなセリフがあったし、女を知らないわけではないだろう。
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もし女を知らずに聞いた話をそのまま言っているのだとしたらダサすぎて尾形のイメージに合わない(笑)。
鶴見中尉が来るまでは遊女に腕を組まれたままだったし、その姿に余裕を感じた。
あと、鶴見中尉はやはり恐ろしいと思った箇所がある。
「なにせ…高貴な血統のお生まれだからな」
尾形に対する一見何気ない鶴見中尉のこの一言は、尾形を刺激しようとしているのではないか。
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実際、鶴見中尉の言葉の後に尾形は、血に高貴もクソも、と青い炎の如く冷たく、しかし熱い感情の揺らめきを見せる。
尾形の一番弱い部分を的確に刺激し、その行動を促そうという鶴見中尉の意図を感じる。
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樺太・千島交換条約
懐かしい。高校の時に歴史の授業で勉強した。
でもその内容は忘れてしまったのでwikipediaで調べてみた。
樺太・千島交換条約(からふと・ちしまこうかんじょうやく)は、明治8年(1875年)5月7日に日本とロシア帝国との間で国境を確定するためにサンクトペテルブルクで署名され、同年8月22日に東京にて批准され締約された条約。
~
樺太での日本の権益を放棄する代わりに、得撫島以北の千島18島をロシアが日本に譲渡すること、および、両国資産の買取、漁業権承認などを取り決めた樺太・千島交換条約を締結した。
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キロランケは、極東の少数民族の独立のために戦っていた、と言っていた。
国境付近で生活していたキロランケや属する民族は、この条約に翻弄されて筆舌に尽くしがたい思いをした。
だから今後はそうならない為に民族の独立を志向し、それがロシア皇帝暗殺という結果に繋がると。
授業で習っていた時は、国境付近に生きる人の運命などに全く思いを馳せたことなどなかった。
歴史の授業ってそんなもんだよね。結局年表と条約名など固有名詞を覚えるのに終始するだけ。
でもこうして漫画で読むと俄然その条約の意味が我が事として分かるようになってくるので面白い。
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アシリパの気持ち
キロランケにさらわれる形で樺太を行くアシリパが、一体何を考えてキロランケについて行っているのかがわかった。
アシリパは知りたかった。
ウイルクがどういう人間だったのか。
どうしてのっぺら坊になったのか。
ウイルクの足跡をたどり、金塊の暗号を解く鍵が見つかったら、それが本当にアシリパ以外に解けないものなのか。
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金塊を見つけたとして、それをどうするのか。
そもそも関わった人に死を招く、言わば呪われた金塊は、本当に見つけるべきなのか。
闇に葬ってしまうべきなのか。
色々知りたいし、葛藤があるのを感じる。
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父が金塊強奪犯だなんて信じたくないだろうし、もしそうだったとして、それが何故なのか知りたい。
そして、これまで金塊を追う中で人が多く死んでいくのを見てきたアシリパは、金塊を見つけるべきなのかという境地にまで至っていたようだ。
果たしてアシリパはウイルクの足跡を追う旅の中で何を得るのだろうか。
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164話の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。
第165話 旗手
旅順攻囲戦にて
日露戦争、旅順攻囲戦。
第七師団はロシア軍と203高地の山頂争奪の白兵戦を行っていた。
旗手を務める勇作が兵に号令をかけて敵陣に突撃していく。
ロシア兵の弾が兵のすぐそばを掠めていく。
しかし勇作は全く怯まずに軍旗を掲げて突撃することを止めず、振り向いて兵たちを鼓舞する。
「どうした!! とどまる時ではないぞッ」
その言葉に兵たちは士気を高め、ロシア兵との白兵戦を開始する。
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戦う兵の中には杉元の姿もあった。
尾形は銃を構えたまま、勇作の後姿をじっと見つめていた。
そこに鶴見中尉が現れて、尾形上等兵、と声をかける。
勇作が思った以上に勇敢な人物で、兵隊の心が掴まれていると続ける。
狙撃したばかりの尾形は排莢し、では殺さない方向でということですか、と鶴見中尉の言葉を受け入れる。
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偶像
オロッコのテントの中で尾形は頭に”アーリプトゥ”という病魔を払う鉢巻きを巻いて眠っていた。
尾形の額に手を当て、さっきより熱が下がったと口にするアシリパ。
アグダプシュー(ありがとう)、とキロランケが尾形に処置をしてくれたサマに感謝を伝える。
アヤーアヤー、と言いながら、サマは首を横に振る。
アシリパはサマから”セワ(偶像)”というお守りを受け取っていた。
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それは人形で、尾形が頭痛がすると言っていたので、それを治す為にと用意されていた。
キロランケがその効能を説明する。
続けてセワは、白石に異なる形のセワを渡そうとする。
「シライシには子供の男性器のお守りをあげるといってるぞ」
「いやらしい下品な顔をしているからだ」
アシリパが冷静に突っ込む。
「お前さっきから赤ん坊におっぱい飲ませるのジロジロ見てるだろ」
キロランケも続く。
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「失礼な事言うなッ」
白石は大声で否定するが、次の瞬間には、ほぼ反射的に脇でお母さんが赤ん坊におっぱいを上げているのを見つめる。
テントに一行の笑い声が響いていた。
嫉妬
203高地。
もうすぐ夜明けを迎えようという時間に、尾形は勇作を呼び出していた。
小隊長に見つかったら大変だと心配な様子の勇作を、無数の死体が転がる中、尾形はどこかへと誘導していく。
「……」
その道中、勇作は死体を見て言葉を失っていた。
ここです、と勇作に目的地に到着した事を伝える尾形。
そこには、両手両足を拘束され、口にも布を巻かれたロシア兵がいる。
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「捕虜ですか? どうしてここに?」
不思議そうな様子の勇作。
「勇作殿…旅順に来てから誰かひとりでもロシア兵を殺しましたか?」
尾形が勇作に問いかける。
勇作はその問いに戸惑っていたが、尾形は構わず続ける。
「確かに旗手は小銃すら持たず前線に突撃して味方を鼓舞する役割です」
「ただ他の旗手は刀を抜いて戦っているのに勇作殿はなぜそうしないのか」
それは…、と勇作は答える。
「天皇陛下より親授された軍旗の死守が第一と…」
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尾形は、旗手であることを言い訳に手を汚したくないのかと勇作に問いかける。
それを否定する勇作に、尾形は銃剣を片手にロシア兵の捕虜を殺せと勇作に命じる。
捕虜であることを理由に勇作は断ろうとしていた。
「自分は清いままこの戦争をやり過ごすおつもりか?」
尾形は勇作が逃げる事を許さない。
銃剣を勇作に向けて差し出し、勇作殿が殺すのを見たい、とその手に握らせようとする。
勇作は、出来ません、と声を張った後、その理由を続ける。
「父上からの言いつけなのです 『お前だけは殺すな』と」
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兵士にとって神聖なる軍旗。その旗手となる人間はゲン担ぎの為に童貞を守らねばならない。
さらに、これは軍のしきたりではなく父上の解釈であると勇作は前置きする。
「敵を殺さないことでお前は偶像となり勇気を与えるのだと…」
勇作は尾形を真正面から見据える。
「なぜなら誰もが人を殺すことで罪悪感が生じるからだと…!!」
「罪悪感? 殺した相手に対する罪悪感ですか?」
尾形は勇作の言葉など全く意に介さない様子で答える。
「そんなもの…みんなありませんよ そう振るまっているだけでは? みんな俺と同じはずだ」
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次の瞬間、勇作は涙を流しながら尾形を抱きしめていた。
「兄様はけしてそんな人じゃない きっと分かる日が来ます」
「人を殺して罪悪感を微塵も感じない人間がこの世にいて良いはずがないのです」
尾形は勇作に抱きしめられたまま、じっとその言葉を聞いていた。
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重なる面影
戦地で軍旗を掲げていた勇作の頭を銃弾が貫いていく。
尾形の構えている銃口から硝煙が立ち上る。
その無表情に一切の揺らぎはない。
本来即死の傷を負った勇作。
しかし崩れ落ちかけながら、勇作は尾形に振り向くと、そのままじっと尾形を見下ろす。
尾形もまた、勇作の事をじっと見上げていた。
「尾形 目が覚めたか」
アシリパが尾形に声をかける。
目を覚ました尾形は、自分がたった今夢で目にしていた勇作とアシリパが重なっていた。
尾形は横になったまま何も答えず、アシリパをじっと見つめている。
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第165話 旗手の感想
尾形の感情
普段感情らしい感情を一切見せない尾形だが、今回、勇作に対しては明らかに様々な感情を抱いていたであろうことが分かる。
怒り、憎しみ、嫉妬……。いずれにせよ、プラスの感情ではない。
父である花沢中将から無視されてきた尾形と正反対に、勇作は軍人の息子でありながら敵を殺すことを父から求められなかった。
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軍人としての名誉を守りつつ、罪悪感に囚われることがないように殺すことを勇作に禁じた。
そのあまりにも深い親の愛を目の当たりにし、尾形は自分と勇作との落差に衝撃を受けたはずだ。
それに加えて、人を殺した事のない勇作は既にその手を幼少期から汚してきた尾形に向けて、罪悪感を少しも持たない人間などこの世にいて良いはずがない、とさながら人間失格の烙印を無自覚に押してしまう。
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勇作の処遇に関して鶴見中尉とは生かすという形で合意していた尾形だったが、それを破って勇作の頭を狙撃した最後の一押しとなったのは多分、”罪悪感を微塵も感じない人間がこの世にいて良いはずがない”の一言にだったのかな。
幼いころに母を殺した尾形は、その際に罪悪感など感じていなかった。
そしておそらくはその後も人を殺める際にもそれを感じなかったのだと思う。
果たして尾形は、それが普通なのだと思っていた自分と、大切に育てられ素晴らしい人間に育った勇作との境遇の落差にバカバカしさを感じたのか。
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その立場の違いに全く無自覚な勇作に腹が立ったのか。バカにされたと感じていたのか。
尾形の正確な想いは知り様がない。
尾形のモノローグもないので、あくまでそこまでの文脈や表情から読み取るしかない。
少なくとも自分は尾形の感情の中で”嫉妬”が一番大きいのかなと感じた。
尾形から失われていた人間性
本当に勇作を自らの手で撃ち殺していた尾形。
第103話の時点で死にゆく花沢中将に向かって告白していたからわかってたことではある。
しかし内心でこんなにショックを受けている理由は、自分が心のどこかで尾形が腹違いとは言え実の弟を躊躇なく殺したと思いたくなかったからだと思う。
流れ弾が当たったのを、自分のせいにして花沢中将を煽ったのだという線を少しだけ信じていた。
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でもそれは否定されたようだ。
尾形は間違いなく勇作を撃ち殺した。しかし何の痛痒も感じていないわけではなく、罪悪感に苛まれている。
正直そんなの絶望しかないように思うんだけど、実は少し希望があるようにも思う。
尾形から失われていたと思われていた感情は、きちんと尾形の内に封じ込められているはずだ。
勇作への嫉妬。射殺後から始まる罪悪感。
最後のページで、尾形はアシリパに勇作を重ねていた。
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尾形は今後、勇作を助けるつもりでアシリパを守護、協力していくのだろうか。
ただゴールデンカムイは先が読めないしなぁ……。
138話で、まさかの展開があったし。
次号では尾形がアシリパに対しどう動いていくのかを見せてくれるのだろうか。
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キロランケがアシリパを樺太に連れていく理由は分かってるけど、実は尾形はまだはっきりしてないんだよなぁ。
自分の見落としだろうか。後で読み返すか……。
166話の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。
自分はゴールデンカムイのアニメをこの方法で観てます。
コメント
こんばんは。
自分は悲観的な考え方なので、尾形が清い勇作さんに対する嫉妬をアシリパさんに転移させて、
アシリパさんがサツジンせざるを得ない状況に追い込むとか何かメンタル打撃をしそうで不安です。
コメントありがとうございます!
正直、淡水魚さんの考えた尾形の行動の方が彼っぽさを感じます。
一貫性がある!
もはや戻れないので、行き着くところまで行くという世界線ですね。
自分のめでたい頭はそんな悲しい展開を考えることを拒否してしまってます(笑)。
できればそんなことにはなって欲しくないですが、そっちの方向の方が真実味があるなぁ。
ますます尾形の行動から目が離せなくなりました。