第90話 芸術家
前回第89話の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。
「熊岸!!」アシリパが叫ぶ。
「くそッ外した」矢を打った男が次の矢をつがえようとする。
杉元は振り向いて男を撃った。
矢の毒の有無を確認するアシリパ。
矢を放った男の矢筒を確認した杉元が叫ぶ。「矢尻に毒がついてある」
「腹に矢尻が残ってしまった」
「毒を肉ごと取り除けば助かるかもしれないが」
「腹に入ってしまっては……」
アシリパには成すすべがなかった。
追撃は免れたものの、熊岸は助からない線が濃厚に。
せっかく会えたのに。
スポンサードリンク
「クポポ エチライケ クス エモンタサアㇱ ナ!(息子を殺した復讐だ!)」
各々武器を使って一人の囚人を集団リンチにするアイヌの女性たち。
その様子を家の陰に隠れて見ている村長。
村長の傍らにいつの間にか解き放たれたヒグマが近づいて来ていた。
壊れた熊の檻の残骸から脱出した牛山の耳に悲鳴が聞こえる。
そこには村長がヒグマに襲われる光景があった。
村長の服は背中が破かれており、そこには刺青人皮が。
「なにぃ?あのニセ村長…網走の脱獄囚だったのか!!」
ヒグマに近づいていく牛山。
「オイそこの熊」
「ジジイを離せ」「その入れ墨をズタズタにされると面倒だ」
牛山はヒグマの目の前まで進み、ヒグマも立ち上がる。
両手を牛山に振り下ろそうとするヒグマ。
牛山はそれを両手で防ぎ、ヒグマの胸の毛皮を、
まるで柔道着を掴むかのように強烈な握力で捉える。
「ふん」
投げを放ってヒグマを一回転させた。
投げ捨てられたヒグマは弾みながら坂を転がり落ちる。
坂の上の牛山は「かかって来い」と言わんばかりにヒグマを手招きする。
上にはオーラを放つ牛山。
傍らには美しい清流と豊かな緑。
これまで閉じ込められていた環境に比べれば天獄のような自然。
「………」
ヒグマは牛山との戦いではなく自然に帰ることを選び、森の奥へ去っていく。
「仲間の熊に伝えるがいい…【不敗の牛山】という神話を……!!」
ニセ村長は24人の脱獄死刑囚の一人だった。
それを知るや否やニセ村長を救った牛山は見事な判断力だった。
そして今回の話の一番の見どころ。
ヒグマの毛皮を強引に掴んでぶん投げるとか現実では絶対にありえない(笑)。
牛山は真正面からぶつかったら絶対に勝てない相手だと思う。
不敗の牛山の名は本物だった。
スポンサードリンク
「剥製屋……作ったものには共通する……こだわりがあるかもしれない」
「私が贋作を作るときはいつも…そうだった」「真作を凌駕してやろうという執念があった」
「材料から真作よりもこだわったものを使ったり…」「貧しさゆえ贋作に手を染めても芸術家であろうとした…ちっぽけな意地さ」
「本物の作品を作りたかった」
「本物が作れたら贋作なんて作らなくてよかったのに」
「観た人の人生を……ガラッと変えてしまうような……本物の作品を……」
白石の持つシスター宮沢の絵のカット。
熊岸は知る由も無いが、白石の人生は熊岸の絵によってガラッと変わった。
それを教えてあげたらちょっとは安らかな気持ちで逝けたのかなと思うと切ない。
「死んでしまった…」アシリパ外に出ると死体の群れ。
「杉元のやつ…ほとんどひとりで偽アイヌ共を皆殺しにしやがった」と尾形。
「おっかねえ男だぜ」
言葉を失うアシリパ。
「アシリパさん」
「アシリパさん怪我はないかい?奴らに酷い事されなかった?」
杉元の心配そうな顔。アシリパの肩に手が置かれる。
アシリパさん、大変な虐殺劇に顔を歪ませてる。
窮地を脱するために、そして捕らわれたアシリパさんのために
しょうがなかったとはいえ、これだけの殺傷をやってのける杉元。
アシリパさん、ひょっとして、杉元に若干恐怖してないか?
そういえば人を殺すなって言ってたっけ。
スポンサードリンク
宿屋の一室で話す土方、永倉、家永、キロランケ、白石。「夕張へ行ったことで贋物が存在するということが分かったのは大きい」
「鶴見中尉にとっては大誤算だったろうな」とキロランケ。
「こんなにあっさりバレるとは思わなかったろ」「そうでもない」と土方。
「判別法さえバレなければ大した痛手ではないだろう」
「仮に我々が今刺青人皮の新しい情報を手に入れたとして」
「それが本物だろうが贋物だろうが現地へ行って確認しなければならないのは一緒だ」
「鶴見中尉が罠のエサに使うかもしれねぇな」とキロランケが受ける。
「当てにしていた熊岸長庵も死んだ」永倉。
「判別法がわからなければ刺青人皮を全て集めても暗号が解けない」
判別法何て存在しないかも、と家永。
「そうなれば本当に残念なことだが…」永倉目を瞑る。
「やはりこの男に頼るしか無い」
足をV字におっぴろげた白石に目線をやる。
「僕ッ~!?」すっとんきょうな表情の白石。
「この役立たずが最重要人物になるとは……」と家永。
「まぁあんな脱獄物語聞かされたら期待するしかないよな」と笑うキロランケ。
なんと状況的に白石が最重要人物へと成り上がってしまった。
皆の期待を一身に背負う白石。
V字に伸ばした両足を手で固定している白石の顔は笑える。
あまりにムカツク顔で(笑)。
スポンサードリンク
「おしっこ!」便所に向かうために階段を下りる白石。
「白石……」
「おお~~!!杉元着いたのか!!よくここが分かったな」
外にある馬で分かったという杉元。
話があると白石を宿の外へ連れ出す。
「他の奴らは?」
「思い出したんだよ……シライシ」構わず続ける杉元。
「え? 何を?」
「辺見和雄が死んだあと……鰊番屋で変なジイさんに会っただろ?」
「間違いなくあのジイさんだ……」
真っ白な表情の白石の頬に汗が伝う。
「お前……土方と内通してたのか?」
「すっと土方にこっちの情報を流してたんだろ……」
「いや違う!鰊番屋では酔っていて」
「まだ俺を騙すのか?正直に言えば許したのに…」
逃げ出す白石。
杉元が伸ばした右手は白石の服を掴む。
「スギモト……」恐怖におののく白石。
杉元は持っている銃剣を何度も白石の背中に刺すのだった。
「やめッ……」布団から起き上がる白石。
傍らで寝るキロランケの顔を見て安心するも
いつ現実になってもおかしくないことに気づく。
(やばいどうしよう…)
(スゲー怖くなってきた)
(殺されたら金塊どころじゃねえぞ)
なんだ夢オチか。
しかし直前に鬼神の如く偽アイヌを虐殺した杉元の姿があるから
まさかと思ってしまった。
白石、杉元らに後ろめたいんだろうな。
そして杉元の強さをしっているからそれも相まって恐怖になり、
こういう悪夢となったと。
許してくれるんだろうけど、万が一と思うと怖いわな。
宿をスパイ映画よろしくアクロバティックに脱出する白石。「オイお前白石だろッ」
着地したそこには第七師団の兵の集団がいたのだった。
白石の何もかも諦めた顔に笑った(笑)。
第91話の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。