第264話 小樽の病院で見た女
前話第263話 あらすじ
消防服に身を包んだ3人の第七師団兵が馬を走らせる。
それを追う土方は、その内一人の抱える大きな布袋を掴み、取り上げる。
兵の一人が土方に発砲し、その銃弾が布袋に命中すると、中には大麦が詰まっていた。
囮だと悟った土方は、襲い掛かってくる第七師団兵を迎え撃つ。
鶴見中尉の操る馬車に乗り移った杉元と後部に乗っている菊田特務曹長とで揉み合いが続く。
海賊房太郎と白石は車の中で会話していた。
自分を弾除けにしなかった理由を問う白石。
俺の事を忘れず、子供に伝えろ、と海賊房太郎。
そして持っていた全ての刺青人皮を白石に渡すと、続けて襟を掴み、引き寄せて耳打ちする。
その内容は、海賊が手に入れていたアイヌの金塊を最初に集めた場所についてだった。
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鶴見中尉の馬車では、菊田特務曹長と杉元の揉み合いが続く。
杉元は菊田特務曹長が突きつけようとしてくる銃を持つ手を掴む。
「アシリパさんを返せ!! テメェら全員地獄へ直行させてやる!」
菊田特務曹長は顔と手を押さえつけられながらも不敵に笑う。
「上等だよ それなら俺は特等席だぜ!!」
そのセリフを聞いた杉元は菊田特務曹長を顔をしばし眺めてから呟く。
「え……? 菊田さん?」
菊田もまた、杉元の顔をじっと見ていた。
「!! 不死身の杉元って…『ノラ坊』だったのか?」
鶴見中尉の発砲で生じた隙を突く形で、菊田特務曹長は杉元を馬車から蹴り落とす。
転がり落ちた後、杉元はすぐに立ち上がって鶴見中尉たちを追う。
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鯉登少尉、月島軍曹、二階堂のグループは合流地点に向かっていた。
鯉登少尉は乗っている馬を狙撃され、落馬する。
月島軍曹の名を呼び、合流地点に向かうよう促す鯉登少尉。
大きな布袋を運搬する役目だった月島軍曹は馬を止めて狙撃手を探していた。
ドスン
月島軍曹の馬にソフィアが飛び乗る。
第263話の感想記事です。
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第264話 小樽の病院で見た女
ソフィアVS月島軍曹
月島軍曹の馬の背に飛び乗るソフィア。
馬の尻を叩き、馬を走らせる。
袋に入ったアシリパを運んでいると睨んでいた月島軍曹の馬が離れたことを確認して、ソフィアの仲間が銃で二階堂を狙う。
ソフィアの仲間に反撃すべく迅速に動いたのは鯉登少尉だった。
月島軍曹が抱える袋の紐をナイフで切るソフィア。
続けてソフィアはピストルを月島軍曹の頭に突きつける。
ソフィアが発砲した瞬間、月島軍曹は後頭部を逸らし、ソフィアの顎に頭突きをヒットさせつつ銃弾をかわす。
続けざまにソフィアの顔面に肘打ちを食らわせつつ、月島軍曹はソフィアのピストルを持つ手を馬の頭部に突きつける。
ソフィアがもう一発発砲した銃弾は馬の頭部に直撃する。
絶命して崩れ落ちていく馬の背から、大きな袋が勢いよく地面に落ちていく。
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ソフィアはその袋にアシリパが入っていると睨んでいた。
馬から飛び降り、袋を大切に抱きしめて地面を勢いよく転がっていく。
脳天を電柱にぶつけてしまい、ソフィアの脳天から血が流れだすが、ソフィアは気にする様子もなく袋を開けて中身を出していく。
しかし袋の中には月島軍曹の持ち物が出て来るだけでアシリパは入っていなかった。
急いで足元にあるピストルを拾おうとするソフィア。しかし月島軍曹はピストルを蹴り、それを妨害する。
ソフィアはすぐに行動を切り替えて、月島軍曹の顔面を思いっきり殴りつける。
吹っ飛ばされる月島軍曹。
すぐに駆けだすソフィアだが、電柱にぶつかったことによる頭部へのダメージによって気を失い、その場にうつ伏せに倒れてしまう。
頭部から血を流しているソフィアを見つめて呟く月島軍曹。
「何者だ? この女は」
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捕虜
鯉登少尉とソフィアの仲間2名とで銃撃戦が続いていた。
そこに鶴見中尉と菊田特務曹長を乗せた蒸気ポンプ車が現れ、ソフィアの仲間に銃弾を撃ち込んでいく。
鶴見中尉たちはうつ伏せに倒れたままのソフィアの元に来ていた。
この女はロシア語を話していたと報告する月島軍曹。
菊田特務曹長は、ソフィアの仲間らしき男たちも日本人ではなかったこと。そして小銃はスイス製だったと報告に付け加える。
「小樽の病院で見た女だ」
思い出す月島軍曹。
鯉登少尉はソフィアとその仲間たちが亜港監獄から追ってきたことに気付く。
アシリパを追ってきたこともあるが、相当な恨みを持っていると月島軍曹。
二階堂は、目を覚ます前にソフィアを殺すことを提案する。
それに対し鶴見中尉は、彼女がキロランケの仲間なら情報を引き出せると考え、捕虜にすることを決定する。
さらに本来向かうはずだった月寒の兵営までは遠過ぎるので、近くにアシリパをかくまうと方針を打ち出すのだった。
アシリパが拘束されている袋は、蒸気ポンプ車に載せられていた。
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追跡
走り続けて疲労困憊の杉元に、自動車に乗った白石が乗るようにと声をかける。
しかし歩いているネコに追い抜かれるほど速度が出ない。
業を煮やした杉元が白石と運転を代わるが、速度の上げ方がわからない。
クラッチとアクセルを組み合わせて動かすようだと白石から聞いた杉元は、車を加速させることに成功するが、障害物にぶつかってしまう。
その勢いで海賊房太郎の死体が外に飛び出してしまう。
「ごめんな ボウタロウ!!」
後ろに載せてやれ、と白石。
杉元はガクガクとぎこちないながらも車を走らせながら、二丁拳銃の男、菊田について以前に見たことがあるかと問いかける。
鶴見中尉しか記憶に無いと白石。
続けて杉元からの海賊が最期に何か言っていたかという質問に対し、白石は答える。
「脱獄王なんかやめて身を固めろってさ 『俺のことを子供に伝えろ』って…」
「『王様になる』なんてぶっ飛んだ話をしていたけどよ 失った家族と帰る故郷を取り戻したかっただけなんだよな この男は」
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杉元は菊田の後ろ姿を思い出していた。
(ノラ坊…お前 故郷はどこだ?)
「……」
アイヌの情報は聞き出せなかったのかと杉元に問われた白石は答える。
「いや…しっかり教えてくれたぜ」
その頃、鶴見中尉達は教会に身を寄せていた。
アシリパとソフィアは後ろ手に縛られ、身動きがとれない状況におかれていた。
鶴見中尉は鯉登少尉、月島軍曹、菊田特務曹長に、追跡者たちを排除するように指示する。
そして旭川からの応援が来るまでは教会に隠れるとの方針を示すのだった。
月島軍曹は、鶴見中尉にソフィアの所持品の中にあった写真を見せる。
それはウイルク、キロランケ、ソフィアの映った写真だった。
鶴見中尉の額から脳汁が漏れだす。
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感想
ソフィアに気付いた鶴見中尉
月島軍曹をぶっ飛ばすソフィアの爆迫力すげぇな。
電柱に頭を直撃した直後にこの一撃を繰り出せるとは……。
さすが、岩息と真正面から殴り合えるだけのことはある。
肉弾戦は作中でもトップクラスだと思う。
月島軍曹が驚くのも無理はない。
気を失ってしまい、第七師団の捕虜となってしまった。
しかさし殺されずに済んだことはむしろ運が良かったと思う。
電柱で完全に失神した隙に銃弾を撃ち込まれてしまうんじゃないかとヒヤヒヤしたが、情報収集に貪欲な鶴見中尉のおかげで助かった。
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ソフィアが所持していた写真は、かつて鶴見中尉が撮影したものだろう。
過去の自分を知る彼女に対して、果たしてどのように対応するのだろうか。
鶴見中尉の長谷川写真館時代を知るソフィアは、言わば鶴見中尉の心の最も柔らかい部分を知っているということ。
脳から漏れ出た汁が涙の比喩だとすれば、鶴見中尉の脳裏には心の奥深くに封じ込めたはずの妻と子の思い出が呼び起されているということなのだろうか。
これが鶴見中尉のさらなる狂気を引き出す結果となるのか。
それとも、目標達成に邁進する為、捨て去って来た人間性を取り戻すきっかけとなるのか。
まさか、いきなりソフィアを撃ち殺すなんてことはないと思いたいけど……。
そして、ソフィアは鶴見中尉が長谷川だと気付くのだろうか?
以前とは容姿も雰囲気もかなり違うから気付かない可能性も十分ある。
ソフィアが鶴見中尉の姿を見て、どんな反応をするのか楽しみだ。
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追いつける最後のチャンス?
房太郎の亡骸を前に、白石から彼の望みを聞いた杉元は菊田特務曹長のことを思い出している。
失った家族と帰る故郷を取り戻したかったという言葉にで菊田を連想するということは、菊田もまた同じような想いを持って行動しているということなのだろうか。
過去に、杉元にはそれを打ち明けていた?
杉元と菊田特務曹長の関係性は気になる。過去にどういう状況で出会い、何を語り合ったのか。
かなり仲が良かったように見える。これが金塊争奪戦にどのような影響を及ぼすのか。
そして鶴見中尉達はアシリパさんをかくまうべく、ひとまず近くの教会に身を寄せた。
これは杉元たちからすれば、鶴見中尉達にギリギリ追い付ける希望が繋がったということだ。
もし真っ直ぐ月寒に向かわれていたら、車の運転に手間取っている杉元たちには追い付く術はなかったはず。
しかし鶴見中尉たちが教会に留まっている間に車を加速させることさえ出来れば追い付ける可能性はある。
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現状は歩いている猫に抜かされるくらいの超低速での徐行なので、どれだけ早く加速の操作に気付けるかが重要になってくる。
周囲を見回して、乗れそうな馬がいればそっちに乗り換えるのもありだろう。
果たして杉元と白石は鶴見中尉達が足を止めているこのチャンスをものに出来るのか。
クラッチ操作は、誰かに教えてもらわないと習得は難しい。
今は何とか車を走らせているが、加速させるどころか、エンストさせてしまうこともあるんじゃないか。
今も何とか走らせてはいるが、杉元たちが鶴見中尉に追い付けるのか?
そもそも鶴見中尉達が教会にいることを突き止められるかどうか……。
果たして杉元たちはアシリパさんを救えるのか?
以上、ゴールデンカムイ第264話のネタバレを含む感想と考察でした。
第265話に続きます。