第77話 まがいもの
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江渡貝の館。強く玄関のドアが閉められる。
「んも~…何度言えばわかるんだろッ 育ちが悪いんだきっと…」何かを腕に装着する江渡貝。
「今帰ってきたのは誰ですか?」
「月島さんですか? 前山さんですか?」
「【扉は静かに閉めてください】って僕いつも言ってますよね?」
腕の長さを延長するような奇妙な服を着て怒る江渡貝。
「それにあなた達お風呂入ってきてくださいッ 気が散ってしょうがないですよッ」
「作業のジャマです!! キー」
相変わらず狂った服装を見せつけてくる江渡貝。
扉の開閉音が気になるのはすごく共感できる。
一度気にし始めるようになるとずっと気になるんだこれが。
江渡貝みたいな天才は繊細な部分もあったりするから余計に気になってしまうのかなと思った。
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「ふたりとも謝ってくださいッ 鶴見さんに謝ってくださいッ」
「江渡貝くんそんなの作ってないで仕事しなよ」と前山。
「鶴見さんに!! あやまって!!」
鶴見もどきの剥製に抱きつく江渡貝。剥製の両目から目玉が飛ぶ。
江渡貝なんてもの作ってるんだ。
もはや鶴見中尉を崇拝しているといっても良いかもしれない。
今まで全然理解されなかった江渡貝が、これまでに無いレベルで自分が理解されたと感じた鶴見中尉の存在は本当に大きなものなのだろう。
場面転換。夕張。
「その熊の胆お嬢ちゃんが獲ったの? 日高の赤毛?」
差し出された何かの内臓らしきものを見て言う行商。
「本物かい? 調べていい?」
「どうやら本物みたいだな」「重さは…」
「一匁 これくらいこんなもんかな?」そろばんをはじく行商。
「だめ? 安いって?」鼻でため息をつきつつ続ける。
「こういうもんは普通顔なじみの漁師からしか買わねえよ」
「ましてやアイヌのがきんちょなんか……」
「これ盗品じゃないの? 買い取ってもらえるだけでも感謝しなよ」
アシリパさんが先の熊との戦いで得た戦利品を売ろうとしている場面。
海千山千の商売人は安く買って高く売るのが正義だからここでもきっちりその原則を遂行している。
アシリパさんはどんな交渉をするのだろう。知識があるから騙されたりはしないと思うけど。
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「足元見てんじゃねえぞコラあああああん?」
「え?」行商、不穏な空気に青ざめる。
「舐めてんのかよ?」キセルを加えたキロランケ。
「舐めてんのか!?」行商の顎を掴む杉元。
「いえいえ…とんでもない」杉元らに絡まれるまま立ち尽くす行商。
杉元もキロランケも好戦的!
これまでの二人を思い出すに、これは演じてる可能性もあるんじゃないかと感じた。
でも、アシリパさんが不当な扱いを受けている様子を見たことによる素直な反応という方が自然かなと思う。
どこかコミカルな感じがするから演じてると感じたのかもしれない。
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「ほれほれ手荒い真似はおよしなさいって…」
味のある表情をした白石が杉元とキロランケの肩を抑えながら続ける。
「すみませんねぇ こいつら戦争帰りで手加減ってもんが出来ませんで」
「……猛獣ですわ」
白石の顔面にパンチを入れる杉元。
「うるせえすっこんでろ」
「オホホイ落ち着けやぁい!」笑顔で殴られる白石。
「薬売りのおにいさん 日高のエディー・ダンって紳士はご存知?」
「あの大牧場主の?」
「ええ…彼ね 私のダチ……ですわ」得意顔で自らを親指で指しながら言う白石。
「エディーちゃんに聞けばその【熊の胆】の出どころは保証してくれますんで」
「さっさと計算しなおせよ」行商にすごむ杉元。
「ほれほれ落ち着きなさ……」杉元を諫めようと近づいた白石が杉元に引き倒される。
「痛った~ ヒヒヒッ ……猛獣ですわ」
白石本当に笑わせてくれる(笑)。
この表情、この物言い。マジでムカツク(笑)。
これは、すごむ役の杉元、キロランケを諫めて、行商に優しくする役の白石が交渉を有利に進めていくという作戦なのか?
刑事ドラマの取り調べのすごむ役と容疑者にやさしくする役を二役分けて、容疑者から話を聞き出しやすくする作戦を思い出した。
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場面転換。森の川辺。
杉元、アシリパ、白石の三人が笑い、キロランケは一人何かをしている。
「獲れた」キロランケが蛇のような生物を高く掲げる。
「アイヌが【ウクリベ】と呼んでいる カワヤツメだ」
「水の下の岩のくぼみに吸い付いているから中指を外に出して掴んでみろ」
白石試すも失敗。
「そっちでアシリパたちと遊んでな」
「クーン」妙な返事をしてアシリパの方に行く白石。
白石大丈夫か(笑)?
さっきの行商とのやりとりの時といい、表情が豊か過ぎる。
面白すぎ。
「私たちがプヤプヤと呼んでいるスナヤツメだ」
「川底の砂に足を潜らせて探って捕まえるんだ」
「スナヤツメって美味いの?」と白石。
「美味しくない!プヤプヤは捕まえて遊ぶだけ」とアシリパ。
「あ…これかな?プヤプヤいたかも!!」と杉元。
「捕まえたッ」
微笑ましいといった様子で笑うアシリパ。
「あれ?」白石の足の小指を挟んでいた杉元。
こけて水びたしになる白石。その頭には何かが吸い付いている。
「シライシの頭にヤツメウナギが吸い付いているぞ」
「え~?うそ!?」驚く白石。
「気持ち悪~い」捕まえたヤツメウナギの頭を見ながら言う。
「お、シライシも捕まえたか じゃあそろそろ飯にしよう」
なんて微笑ましい光景。
とてもアクション漫画とは思えない脱力っぷり。
この緩急がキャラの色々な側面を読者に見せて、
キャラを魅力的に、そして話自体を魅力的にしているんだなぁと思う。
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薪をくべて調理の準備をしている一同。
「アシリパさん達ってヤツメウナギはどうやって食べてるの?」と杉元。
「アイヌは背割りにして乾かしてから焼いて食べるだけ」と薪を用意しながら言うアシリパ。
「背割りか…関東風だな」と白石。
「関西じゃウナギは腹割りなんだよな」
「関東じゃ腹割りは切腹を連想するからやんないとか…」
「せっかくだから蒲焼きにしようぜ」と白石。
「醤油に砂糖に酒でタレを作って」
「熊の胆が高く売れたおかげで白米もたくさん買えたし」
「山わさびを見つけたからすりおろして薬味にしよう」
「白樺の樹皮で作った四角い器にご飯をよそって」
「カワヤツメのうな重だ!!」
セリフが誰のものかを示すために顔マークが付けられている時があるが、
ここらへんの怒涛の白石の顔マーク攻勢には吹いた(笑)。
特に、セリフの吹きだし自体が白石の顔マークになるのは地味に笑えるし
カワヤツメのうな重だ!!の大ゴマはうな重のバックが一面でかい白石の顔マークで
野田サトル先生が確信的にやってることが分かる。
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「はむはむ…ウナギよりちょっとかたいけどぷりっぷりだねヒンナヒンナ」食べながら白石。
「軟骨がコリコリしてる」と杉元。
「見た目はウナギに似てるけどヤツメは骨が全部軟骨なんだよな」と白石。
「アイヌの伝説にこういう話がある」とキロランケ。
「神様が獲った熊を解体して石狩川を舟で運んでいたら転覆してしまい」
「流されたヒグマの腸がウクリペになった だからヤツメウナギには骨がないんだって」
「シライシも体の関節がぐにゃぐにゃなのは」
「ヒグマの〇ンポがシライシになったからかもな」会心の笑顔で言うアシリパ。
「やだぁ!アシリパさん」
笑い合う一同。
最後、アシリパさんとんでもないこと言ってるのに良い顔し過ぎ。
野田サトル先生はアシリパに何を言わせてるんだ(笑)。
多分、アシリパさんは作中で一番下ネタを口に出しているキャラだと思う。
もうこのポジションは確立した感がある。
「ついに出来たぞ…」六枚の偽物の刺青人皮を目の前にして震え声で言う江渡貝。
「完璧な贋物の刺青人皮だ ひろまず六枚分…!!」
「これなら鶴見さんも喜んでくれるッ」鶴見もどきの剥製に抱き着く江渡貝。
「よしよしなでなでしてくれるッ」
江渡貝、かわいいじゃないか……。
というより江渡貝の心をこうもわしづかみにした
鶴見中尉のカリスマ性が恐ろしい。
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バタンッと大きな音。
「ちょっと!前山さんですか?」扉を開けながら江渡貝。
「何度言えば扉を静かに閉めて頂けるんでしょうかね?」
そこには頭部を撃ち抜かれて仰向けに倒れた前山がいた。
窓ガラスが割れている。
「……!!」驚愕の表情をする江渡貝。
「前山さん?」
驚きの展開。窓が割れていたことからも外部からの狙撃に間違いない。
驚きの人物が参戦。
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