第286話 タイムリミット
前話第285話あらすじ
第七師団による艦砲射撃に晒される杉元たち。
鶴見中尉は暗号をを解く前に、暗号が解けたらすぐに目的地に向かうべく、あらかじめ鯉登閣下に連絡し、駆逐艦を準備していたのだった。
永倉は、単身、鶴見中尉の元へ交渉に向かう。
金塊はなかったと鶴見中尉に事実を伝えるが、それを一生に付す鶴見中尉。
それを受けて永倉は五稜郭で見つけたアイヌの土地の権利書について話し始める。
そして土下座して、権利書と引き換えに自分以外の皆の命を保証して欲しいと頼むのだった。
しかし鶴見中尉は、永倉が権利書と引き換えに艦砲射撃を封じ込めて、土方たちと合流し、第七師団に抗戦する魂胆を読んでいた。
第285話の感想記事です。
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第286話 タイムリミット
永倉の立ち回り
門倉は駆逐艦の艦砲射撃を何とかしようとある人物の元に足早に向かっていた。
それはソフィアの手下の一人、マンスールという男だった。
門倉は土嚢で陣地を構築中のマンスールを見つけると、行くぞと声をかける。
マンスールは門倉を見て、無言でコクリと頷くのみ。
鶴見中尉は土下座している永倉に、くさい芝居はやめておけと警告する。
「私は人の嘘を見抜くのが得意だ」
永倉はふふん、と鼻で笑うと、頭を起こして鶴見中尉に鋭い視線を向ける。
「ならばどこまでが本当かもわかったかね?」
永倉に銃を向けている兵士が鶴見中尉に指示を仰ぐように視線を送る。
永倉は自分から兵士の視線が外れた隙に、地面に置いた掌に石を握りこむと、投げて兵士の鼻先にぶつける。
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そして、自分を撃とうとしているもう一人の兵士の銃を脇に抱え込んで自分を撃てないようにしながら兵士の顔を殴る。
鶴見中尉は永倉をピストルで撃とうとするが、永倉が逸らした兵士の銃から発射された銃弾が鶴見中尉が乗っている馬に命中し、馬が暴れてしまったことで鶴見中尉は照準を合わせることができない。
鶴見中尉が馬の制御に気をとられている間に、永倉は近くの家屋へ走る。
態勢を整えた鶴見中尉が撃った銃弾は家を囲む塀に当たり、その場を切り抜けた永倉は縁側から家屋の中へと入っていく。
その家屋の敷地の脇には尾形が立っていた。
尾形は突然の永倉の登場にびっくりして、思わず体を震わせる。
しかし永倉は尾形の存在に気付いていなかった。
部屋の中で刀を見つけた永倉は、追ってきた兵士に向けて抜き打ちを浴びせる。
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風
土方は五稜郭が浮かび上がるように並べた刺青人皮をじっと見つめていた。
地面を掘る作業をやめて休憩していた牛山が、駆逐艦に乗れず汽車で移動している鶴見中尉の部下がいつ到着してもおかしくないこと、そして艦砲射撃が止んでいることから、今のうちにアシリパに権利書を持たせて、彼女だけでも逃がしたらどうかと提案する。
白石は掘る手を止めずに同意する。
しかし、私も残る、とシャベルを地面に突き立てるアシリパ。
「みんなの役に立ちたいし 私は見届けなきゃ」
お嬢……、と呟く牛山の肩を杉元がポンと叩く。
「いざというときは俺がアシリパさんを五稜郭から安全なところまで脱出させてくる」
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その時、土方の名を呼びながら門倉が戻って来る。
門倉は建物の入り口に立ち、慌てた様子で、永倉がわざと捕まったことを報告する。
「俺に向かって『あとは頼んだ』って」
そして、艦砲射撃が止まっているのも永倉のおかげかもしれないと続けると、門倉の表情が何かを決意したように引き締まる。
「とにかく!! 手はず通りに行きますよ?」
その時、門倉の背後から屋内に風が吹き込む。
その風は一枚の刺青人皮を舞い上げ、ひらひらと落ちていく先は、ちょうど五稜郭が浮かび上がるように並べられた刺青人皮の上だった。
それを見て何かを閃く土方。
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「よしッ 急いで行ってくれ」
土方はすぐに門倉に視線を送り、指示する。
どうがご無事で、と言ってその場を後にする門倉。
牛山は、門倉をあの決死の任務に行かせたということは、「逃げずに戦う」ってことだよなと土方に問いかける。
何で? と慌てる白石。
土方はアシリパに話しかける。
「お前は残ったことで父の想いを知ることが出来るだろう」
その視線は五稜郭の地図の上に落ちた刺青人皮を見ていた。
「強運の男が運んでくれた幸運の風が我々を勝利に導こうとしている」
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感想
永倉死ななくて良かった……。
そう胸を撫でおろしている読者は多いことだろう。
敵の親玉の前に一人丸腰で身を晒し、2名の兵士に銃を突きつけられているにも関わらず、その場を切り抜けてしまった。
また、その方法がスタイリッシュで無駄がない。かっこいいんだこれが。
さすがは歴戦の勇者といったところか。
飛び込んだ家屋で刀を手にし、いよいよガムシンの本領を発揮するに違いない。
永倉には敵の最前線で手をつけられない存在としての活躍を期待したい。
同時に、永倉に限らず、ここまで生き残ってきたキャラには最後まで生きていて欲しいところだ。
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しかし尾形。この場にいたのかよ!
ほんのわずかだけど尾形が登場するが、その登場の仕方がなんともいえない。
なんでそんなところに立ってるのか。永倉が急に現れてビクッとしてるのがちょっとかわいい。
しかし尾形は、一体何を目的としてこの決戦の場に現れたのか。
中央の息がかかっていることはわかったけど、じゃあその後どう動くかははっきり見えてこない。
尾形は自分の心に従って動いているようにも見える。どちらの陣営に銃を向けてもおかしくないように思える。
引き続き今後の動きに注目したい。
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今回の話の門倉は、普通のキャラなら死のフラグを立てているようにしか見えない動き方をしているんだけど、でもきっと運のパラメータがカンストしている設定だから死なないんだろうな。
門倉が声をかけたマンスールという男。見た目がホビットっぽくて、強そうには見えない。
しかし何か特殊な能力があるからこそ、こうして門倉が頼っているのだろう。
果たしてどんな活躍を見せてくれるのか楽しみだ。
この体形だと、少なくとも接近戦でどうこうするタイプではない。
狙撃か、工作による相手陣地の攪乱か。それとも他の何かか……。
今回の話はマンスールの登場に限らず、色々と仕込まれていて先が楽しみすぎる。
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今回の話のラストで、門倉の背後から吹いた風により浮かび上がった一枚の刺青人皮が、偶然、五稜郭を構成した状態で並べられた刺青人皮の上に落ちる。
その偶然起きた事象を見た土方には、この戦いの勝利が見えているようだ。
その勝利というのが、単にこの場で鶴見中尉率いる第七師団を相手にした戦闘のことなのか。
それとも、金塊争奪戦自体の勝利、即ち残りの金塊の在り処がわかったということなのか。
いずれにせよ土方の存在が心強い。艦砲射撃という圧倒的な不利を追いながらも、勝機が見いだせているのは、今のところ土方と永倉のおかげと言える。
前回から今回の永倉といい、幕末の動乱から維新を維新以降を生き抜いてきた元新選組が頼りになりすぎる。
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このままだと永倉と土方ばかりが活躍し過ぎで、全てを解決しかねない。
あまりにも強すぎるし頼りになり過ぎるから、どちらかが近々負傷して、戦線から離脱することになるかもしれないな……と心配になるくらいだ。
ひょっとしたらこの五稜郭という土方にとって曰くのある場所で、最悪、この物語から退場することもあり得る。
過去の五稜郭の戦いで共に戦った戦友を思い出しながら、壮絶に散る……。
その様子をちょっと想像するだけでかっこいいと思ってしまった。
その後は杉元たちのような、言わば現役世代に委ねると。
ただ、土方と永倉には最後まで全くの無傷でいて欲しいという気持ちの方が強いかな。
『化け物だわ』と最後まで思わせて欲しい。
今後の話の展開が楽しみだ。
以上、ゴールデンカムイ第286話のネタバレを含む感想と考察でした。
第287話に続きます。