第68話 侵入
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「喰われてたまるかよぉ」
すぐ後ろにはヒグマ。
杉元らがいる家。
「おやぶぅん置いてかないでぇ」と窓枠から外に向けて力なく叫ぶ仲沢。
仲沢親分に惚れてるね。男としてではなく女として(笑)。
「カフッカフッ」
ヒグマが杉元、キロランケ、アシリパらに近づいてくる。
右手に小刀を構え、もう片方の手をアシリパに向けるキロランケ。
「下がれアシリパ!!」
銃に弾を込め、素早くヒグマに向けて撃つ杉元。
「ギャーッ」
ヒグマの口のあたりに当たる。
排莢してもう一発。今度は首の付け根あたりにあたる。
排莢する刹那、肉薄してきたヒグマが吠えて杉元を押し倒そうとする。
「オレは不死身の杉元だッ!!」
目を見開いて開いたヒグマの口に銃剣を突っ込み銃を撃つ。
ヒグマが杉元の顔を爪で攻撃。杉元の顔に3本の爪あとがつく。
「杉元ッ」叫ぶアシリパ。
ヒグマから目を離さず排莢し、ヒグマの顔に左足を当ててヒグマの接近を止めつつもう一発口中に銃をつっこみ撃つ杉元。
排莢しもう一発。
まさに死闘と言って良い戦闘描写。
顔に爪の一撃が入っても一切怯むことなく銃を撃てるのが杉元の兵士として非凡なところだと思う。
守りに入らずむしろ自分を死地に追い込むからこそ勝って、命を拾っている印象。
すぐそばには死体を食うヒグマ。
「キロランケこれか? この柱を切り出すの?」
柱に手を当ててのこぎり片手に叫ぶ白石。
「あっちの鴨居も切って持ってこい」
答えるキロランケ。
「すぐには家も崩れないし文句言う家主もここにはいねぇ」
バリケードを作ろうとしているキロランケ。
頭の回転早いな。
「いいからケツ見せろ」うつ伏せになって嫌がる仲沢のズボンを下ろす杉元。
「テメェは普通のモンモンか!!」杉元、尻を叩く。
「ひゃん」
「さっさと汚いケツしまいな!!」
「親分は良いケツだって言ってくれたよぉ」
泣き叫ぶ仲沢。
「乳首だって色っぽいって言ってくれたよぉおやぶぅん!!」
こう言ったらなんだけど、普通に気持ち悪いなぁ(笑)。
一人バリケードを作っているキロランケ。
キロランケは一人黙々と働く。
仲沢はとりあえず心は完全に女だね。
杉元も最初は手荒だったけど入れ墨が無いと分かると優しくなった。
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「上半身がくりからもんもんで埋まってたからか?」
「とにかくなんとか早くここを出ないとあの親分はヒグマに…」
「おやぶぅん!!」叫ぶ仲沢。
「ウソウソもう泣くな大丈夫だよ」仲沢の帽子を直してやる杉元。
「あの親分なら何とか逃げ切られてるさ」
「タダでは死にそうもねぇ」
(やさしい)心の中で思いながら、
「ヒックヒックそうですよねえ?」
しゃくり上げて泣く仲沢。
場面転換。
若山の上半身が完全に埋められ、太ももから下の下半身だけが土から出ている。
すぐそばで笹を食べるヒグマ。
大丈夫さ、なんて言ったそばからこれだよ(笑)。
野田サトル先生はフリと回収が秀逸過ぎる。
杉元が窓枠から外を見ながら言う。
「ヒグマがいじってどこかに持っていっちまったのかも」
「杉元おまえその顔……」杉元の顔を驚愕の表情で見る白石。
「隠し包丁入れた焼きナスみたいになってんじゃん」
「ヒグマに襲われた傷は不思議と化膿せずすぐに治ると私たちのあいだでは言われている」
杉元が倒したヒグマを解体しながら言うアシリパ。
「でも手当しよう」
「ヒグマから油をとって傷に塗る」
「特に内臓の網油から取れる油が良く効く」
「私も火傷した時ヒグマの油を塗ったら跡も残らなかった」
「湯煎で油を取る」
「冷めた油を傷に塗る」
顔中油まみれで座り込む杉元。
杉元、もうどうにでもしてって表情で笑える。
アシリパさんに塗りたくられたんだろうなぁ。
既に顔に傷はあったけど、それがさらに増えるわけだ。
「腹が減っちゃあ戦えねえ」
「アシリパちゃんヒグマの肉ちょっとだけ食べようぜ」
「私は食べられない…」
グゥ~~と腹を鳴らしながら答えるアシリパ。
「このヒグマはそこの男を殺したウェウンカムイ(悪い神)だから」
部屋の隅の移動させたヒグマに殺された死体を見る。
「アイヌはウェンカムイの歯や爪を切り落として殺した人間の下に埋めたり」
再びグルルルルゥと腹を鳴らしながら続けるアシリパ。
「バラバラに細かく肉片にしてばらまいたりして二度とこんなことをしないように神様に文句を言う」
伝統を守ろうとするのはいいけど腹鳴らしすぎ(笑)。
だからアシリパさんって魅力的。
「このヒグマは爪も目も全部あるだろう?」
「殺したのはこのヒグマじゃないよ? 他の2頭だよ?」
「オレ近くで見たから間違いないもん」
「えぇ~~~? ほんとにぃ~?」
グウッと腹を鳴らしつつニヤけた表情になるアシリパ。
「ほんとにぃ~?」
「でも……あちゃ~!!」自らの額をピシャっと打つアシリパ。
「またニリンソウが…ないんだよなぁ!!」
「肉の味を倍にさせるニリンソウが…」
「アシリパさんアシリパさん!」
杉元がアシリパの耳元でささやくように言う。
「あるんですよ!! ニリンソウが…っ!!」
変な顔をするアシリパ。真顔の杉元。
なんだこれ(笑)。不意打ち過ぎて腹が痛い。
なんなんだこの表情は。
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大量の草を見せる杉元。
「杉元…!!これはニリンソウじゃないぞ」
「え? そうなの?」
「これは……」
「スㇽク……トリカブトだ」
「今の時期のニリンソウはトリカブトとよく似ていて間違えやすい」
「花が咲くまで見分けが難しい」
「トリカブトのほうが揉み潰すとピリッとしたにおいがする」
ニリンソウと嗅ぎ比べる白石。
「でも杉元が間違えたおかげで……残りの赤毛と戦えるかもしれない」真面目な顔になるアシリパ。
「アイヌが矢毒に使うのはトリカブトの根っこの部分だ」
「でも春の若葉にも毒は多い」
杉元思わぬお手柄。
まだピンチであることに変わりはないけどそれでも打開策が思わぬ形で見つかったことは確か。
「すべての葉っぱの水分を飛ばしてカリカリにする」
「すり潰してツバなどを入れながら泥にする」
「矢毒の作り方はみんな秘密にしているからわからないけど」
「私の家では効力を高めるためにと昆虫とか狐の胆とか混ぜてた」
「ヒグマのならあるけど…」と杉元。
「いや…そもそもおまじないで混ぜてるからあんまり意味無い」アシリパ即答。
「スㇽクの強さを確かめる方法としてザトウムシのくちに塗るというのがある」
「毒が強いとあっという間に足がバラバラと落ちる」
「でもまだ寒いからザトウムシがいない」
「他の方法として舌を糸で縛って先っぽに毒を少し乗せるというものがある」
「痺れて耐えられなくなったらマキリで毒をこぞぎ落す」
杉元、白石、中沢がお互いを見つめて「お前がやれよ」と牽制し合う。
密かな攻防があったんだろうな。こういう空気って現実でも実は割とある。
面白い(笑)。
舌を縛って先に毒が乗せられる。
「外に2頭戻ってきてる」とキロランケ。
「ほっ…ほっへ」ダラダラ汗を流しながら言う杉元。
「なに?」と聞き返す白石。
「ほっへふへッ」叫ぶ杉元。
「他にも指の股に挟んでおく方法もあるけどそっちが良かったか?」
自らの指を指しながら言うアシリパ。
「はやふほっへッ」叫ぶ杉元。
最初からそっちを紹介してあげてよアシリパさん(笑)。
面白過ぎるだろ。
「アイヌの毒矢と同じで刺されば毒の置いてある先っぽが体内で外れる仕掛けだ」
「槍の先のくぼみに毒の団子を乗せる」
「毒の固定には松脂が必要だけどここには無い」
「ヒグマの皮を煮込んでニカワを作ったら?」杉元がアシリパに提案する。
「それだと出来るのに一晩かかってしまうな」即答するアシリパ。
「シライシの飴ちゃんを溶かして使ったらどうだ?」とキロランケ。
「なるほど!!」アシリパが感心する。
「シライシ飴ちゃん全部出せ」
「クーン」不満げな白石。
「よしッ!!赤毛どもを斃してここを脱出するぞ」
アシリパと杉元が槍を掲げる。
白石残念だったな(笑)。
それでも飴の提供がこの絶体絶命の状況を脱するための決め手に欠かせないピースとなったんだからよかった。
場面転換。森の中、足だけだして逆さに埋まっている若山親分。
グボッと手を出して起き上がろうとする。
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