ゴールデンカムイ作品全体としての感想、評価

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次々出てくる敵(変態)との息をつかせぬ戦いの連続とグルメと歴史ロマンと北海道の自然と変顔が面白い

2014年にヤングジャンプ誌上で連載が始まった野田サトル先生の漫画ゴールデンカムイは、連載当初の比較的早い段階から、ネット上において話題になり、その評価も「面白い」という感想が大勢を占めていた。

熾烈な漫画業界において連載を勝ち得ても話題になることもなく露と消えゆく作品が五万とある中、順調なスタートを切ることに成功し、連載を重ねるにつれて徐々に堂々たるポジションを築くことに成功している漫画といえるだろう。
amazonのレビューも刊行されている巻はほぼ99%が星5と異例の高評価を得ている。

ゴールデンカムイという作品が目指す理想

どこで読んだかは失念したが、作者の野田サトル先生と担当編集者は

30年経っても読める漫画

を目指してこの漫画に取り組んでいるという。私は、一人の漫画フリークとしてこの発言はものすごく嬉しく、感銘を受けたし、野田サトル先生と担当編集さんの創造という行為に対する真摯で誠実な姿勢を感じた。
そして、その志は着実に結実に向けて進んでいると言えるだろう。
完結の際には傑作エンターテイメントとしてその名を不動のものとしている事を今からとても期待している。

ゴールデンカムイのスタートダッシュが決まったのも(もちろん集英社や担当編集者による地道なプロモーション活動などもあるだろうが)、秀逸な設定を、端的かつ魅力的に、スピーディーに壮大な物語の興りとして表現することに成功したからだろう。

要するに掴みはOK過ぎるくらいOK、ということだ。

1巻の1話と2話を読めば一攫千金サバイバル漫画であるゴールデンカムイの面白さに引き込まれるずにはいられない。
以下に、拙いながらも要約した。
わずか2話の中に端的に必要な要素が無駄なく詰まっており、つくづく美しい「物語の興り」だと私は感じた。

ゴールデンカムイその壮大な物語の始まり

日露戦争時の伝説の激戦地である二〇三高地までも生き残った軍人で、不死身の杉元の異名を持つ【杉元佐一(スギモトサイチ)】が日本への帰還後、北海道に渡って、川で砂金を掬っている場面からストーリーは始まる。

杉元が川で砂金を掬っていると、傍らで一升瓶を片手に酔っ払っている妙なオヤジから8万円(現在価値にして8億円)相当の金塊の存在を知る。

当時、日本人から抑圧を受けていたアイヌ達が、抵抗するための軍資金として集めていたその財宝は、ある男により強奪され、アイヌ達は皆殺しの憂き目に遭ってしまう。間もなく男は警察に捕まり厳重な網走監獄に入れられた。

財宝は捕まる直前に男だけが知る場所へ隠されたため、金塊のありかを知っているのは犯人の男のみ。男は刑務所の外に仲間がいて、財宝のありかを何とか伝えたかったが、看守までも含んだ、文字通り誰もが狙う中で容易に刑務所の外に伝えることはできなかった。

そして男は一計を案じる。同房になった死刑囚達の体に金塊の場所を示す暗号として刺青を彫り、脱獄に成功した者に財宝を半分与えることを約束した。なお、財宝の場所は全ての刺青が集まることで、しかも外の仲間にしか解読できないため抜け駆けは出来ない
ある日、刺青の暗号の噂を聞きつけた屯田兵が財宝を探すべく死刑囚達を移送中、この機を狙っていた死刑囚達は護衛の兵隊達を皆殺しにして全員見事に脱走に成功するのだった。

ここまでのあらましを語った酔っ払いオヤジは、杉元に銃を突き立てていた。酔った勢いで話してしまったことを恐れて杉元に銃を突き立てる親父の姿に杉元の脳裏で、にわかに財宝の存在は真実味を帯びていく。

逃げたオヤジのあとを追うと彼は何者かに殺され雪に埋められていた。死体を雪から引きずり出すと羆(ヒグマ)の仕業か、内臓がごっそり無くなっており、その背中には例の刺青があった

ここで杉元は、さきほど聞いた財宝の存在を確信する。

実は幼馴染で未亡人の妻を救うためにどうしても金が必要な杉元は、脱獄死刑囚のオヤジの死体の刺青を放っておくわけにもいかず、背負って山を行くと羆に襲われる。そこをアイヌの少女【アシリパ】に救われる。

羆にオヤジを喰われるわけにはいかない杉元は、協力を得るためにアシリパに財宝の話するが、話をするうちにアシリパの父は財宝の強奪にあって皆殺しにあったアイヌ抵抗勢力に所属していたことがわかり、羆との苦しい戦いに勝利した後に刺青人皮(イレズミヒンピ)収集の協力を要請する。

かくして、杉元は、アイヌの娘アシリパと共に財宝を手に入れるべく刺青を背に持つ脱獄死刑囚の行方を追うことを決意した。
しかし、同様に刺青人皮を追う勢力が次々に興り、各勢力入り乱れ、北海道は血で血を洗う財宝の争奪戦の場へと変貌していくのだった。

1巻の前半、正確には7話収録中の1話と2話で既にこの物語の舞台に完全に引き込まれる。
一切の出し惜しみなく緻密に計算された魅せ方だろう。
野田サトル先生の技量は素晴らしい。






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ゴールデンカムイの見どころ

ゴールデンカムイの見どころは3つある。

魅力的なキャラ群による、勢いがある戦闘描写
美味しそうなアイヌ及び北海道料理のグルメ描写
アイヌと開拓使、道民の日常生活を描いた丁寧な時代考証及び描写である。

安定した絵柄と勢いある戦闘描写が好きだ。特に好きなのは日露戦争の帰還兵で主人公の杉元が見せる、窮地に陥ってむしろ逆に生命力輝く気迫溢れる立ち回りで、不死身の杉元の異名は伊達じゃないことを読者に教えてくれる。

他の味方や敵のアクション一つ一つのディティールも特徴的で面白い。
例えば木にナイフを突き立てて、そのナイフに銃身を乗せて狙撃のための安定を得る尾形上等兵や、土方歳三の襲撃を受けて直前まで抱いていた遊女の足を掴んでまるで木刀を振るうかのように横薙ぎにする丑山、尋問中に団子の串をスギモトの右頬から左頬にかけて貫通させる鶴見中尉など、そのどれもがキャラクターを象徴するアクションとして成立している。

脱獄死刑囚達や、杉元と同じく彼らを追う立場である他の勢力、そして、まるで北海道の大自然の象徴として襲い掛かってくる羆(ヒグマ)など、強敵との見ごたえある戦闘描写がありつつも、その合間に閑話休題的にアイヌや北海道の当時の食文化を中心に日常生活の場面も差し込まれる。
グルメパートのお約束として、アシリパによって有無を言わせずグロ食材を食わされる杉元のリアクションアシリパの変顔はストーリーに笑い添えてくれる。
グルメ要素が適当に描かれたものではなく、本当に美味しそうなのだ
割合として描かれる食はアイヌ料理が多いが当時の北海道で食べられていた食事も登場する。
アイヌ部族の日常や信仰、生活の知恵が丁寧に描かれているのも新鮮な要素だと思う。
立派な文化があり、自然の一部として生きている様子が生き生きと描かれている。

ゴールデンカムイはバトル漫画であり、グルメ漫画であり、ギャグ漫画である。
そのどれもが高い次元で絡みあい、本作を独特のポジションに押し上げている。
決して読者を飽きさせることなく、内容の濃いエンターテイメントは次々と展開されていく。
刺青人皮を持つ脱獄死刑囚の数は24名。
まだ出てきていない者も含めて個性的で憎めないヤツばかりであり、つまりは「変態」ばかりであることが期待できる。
当然刺青人皮を狙うライバルも出てくるだろう。
完結までの道のりはまだ長いだろうが、完結の際にはぜひ漫画界において押しも押されもせぬ傑作としての評価を勝ち得ている作品であることを期待したい。

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