第250話 打ち上げ花火
目次
前話第249話 それぞれの夢あらすじ
鯉登、月島、二階堂は宇佐美と菊田と合流する予定の時計台に来ていた。
一方、次に犯人が現れる可能性があると啄木が推理した札幌ビール工場に杉元たちは土方たちと一緒に来ていた。
囮役、合図役、仕留め役の三人一組で構成された四つのチームが付近に散り、囮役に近寄ってきた犯人の刺青の有無を確認し、当たりであれば確保する作戦を立てていたのだった。
杉元たちはその作戦の実行のため、工場付近にいる娼婦を排除して回っていた。
海賊は杉元に、今回の作戦に、唯一暗号の鍵について知っているアシリパを作戦に加えるのかと訊ねる。
一緒にいた方が良い、と答えた杉元に同調するアシリパ。
アシリパは、アイヌの未来を守るための埋蔵金だから、自分だけ安全なところで待っていられないと答えるのだった。
そんなアシリパに、未来のアイヌを守るのがアシリパの夢なのかと海賊が訊ねる。
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誰かがやらなければいけないことだからと答えたアシリパに、再び海賊は、それは自分も幸せになることかと問う。
質問責めに辟易とした始めたアシリパに、海賊は自分の夢である『王様になって家族をたくさん作る』ことについて、自分の事を後世まで伝える人を残せたら幸せだと自分の夢の動機を語り、王様になる以外に方法は無いのか参考にしたいのだと答える。
街娼を帰している杉元を見つめているアシリパに、海賊が訊ねる。
「アシリパちゃんの想う未来に杉元佐一はいるの?」
仕留め役杉元、合図役アシリパ、囮役白石の組に山高帽の男が接近していた。
杉元は、白石を街娼と勘違いして話しかけている男の後頭部を銃の持ち手で殴り、男の胸元を確認するが刺青はない。
一方、仕留め役土方、合図役永倉、囮役夏太郎の組にも山高帽の男が話しかけてきていた。
夏太郎はぎこちない日本語での挨拶から、相手が外国人だと理解し、作戦決行前、門倉から話を聞いていた国籍不明の男、マイケル・オストログのことを思い出す。
マイケルは貿易船で日本に密入国後、横浜での娼婦殺人が原因で、日本初の外国人死刑囚として網走監獄に収監されていた。
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啄木は、犯人がロンドンの事件を真似ているだけなのかと疑問を口にしていた。
約二十年前のロンドンの事件があった当時、仮にジャック・ザ・リッパーが二十代だったなら、どこかに姿を消して今は五十代だと推理を進める。
マイケル・オルトログもそのくらい、と門倉。
啄木は、マイケルがかつて自分がロンドンで起こした犯行現場を札幌の街で再現して、自分の聖地を作ろうと考えていたのではないかと結論する。
仕留め役牛山のグループの囮役門倉の背後に立つ宇佐美上等兵。
宇佐美上等兵が持っている地図には、啄木が地図にメモした犯行現場と同様の位置にマーキングされている。
第249話の感想記事です。
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第250話 打ち上げ花火
門倉と宇佐美上等兵
鯉登少尉たちは時計台の近辺で宇佐美上等兵がいなくなった事に気付く。
〇〇探偵でもしているんじゃないですか、と呟く菊田特務曹長に、何の探偵と突っ込む鯉登少尉。
菊田は宇佐美上等兵が新聞記者(石川啄木)から掴んだ情報により次に殺人事件の起こる場所に先に向かっていると説明し、鶴見中尉が到着する前に自分たちで犯人を捕まえると鯉登少尉と月島軍曹に宣言するのだった。
札幌ビール工場の近くの道で、宇佐美上等兵は地図を広げ、街娼らしき女性にビール工場がどこまで続いているのかを確認していた。
しかし街娼の変装をしていた門倉はまさかの宇佐美上等兵の登場に困惑し、こいつはジャックザリッパーよりもヤバいのではないかと宇佐美に恐れを抱いていた。
牛山とキラウシは、その光景を少し離れたところから観察していた。
二人の位置からは、門倉に話しかけているのが第七師団兵だとは分かっても、それが宇佐美だとまでは分からなかった。
犯人の顔を知っているからもし犯人なら合図するだろう、と牛山は落ち着いている。
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無言で宇佐美上等兵から離れようとする門倉。しかし転んでしまい、宇佐美上等兵から大丈夫ですかと声をかけられる。
杉元とアシリパは建物と建物の間から囮役の白石を見守っていた。
アシリパに、月明かりも届かない暗い所にいるように指示する杉元。杉元は尾形がアシリパを狙っていると半ば確信していた。
それに対しアシリパは、土方が言うには尾形は樺太から帰って来ても金塊を追っている様子だったから、自分を狙うのだろうか、と杉元の考えに懐疑的な意見を表明する。
わかんないぜ、と杉元。
杉元は、尾形がキロランケと組んだ理由はあくまで金塊の分け前であること。そしてアシリパから暗号を聞き出す機会を窺っていたが、自分たちに追い詰められた挙句、アシリパを撃とうとしたという見方を示す。
そしては北海道に戻ってきた杉元たちが土方と組んだことで尾形は土方も鶴見の元にも戻れなくなり、独りになった結果、自分が金塊を得られないと悟ってヤケを起こしているのではないかと杉元。
杉元は、尾形がアシリパを滅茶苦茶にしようとしているのかもしれないと警告する。
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「『みんなをがっかりさせたい』」ってことなのか? と杉元に問い返すアシリパ。
その脳裏では、尾形の一言を思い出していた。
(…お前たちのような奴らがいて良いはずがないんだ)
転んだ街娼に手を差し伸べようとした宇佐美上等兵は、その街娼が門倉である事に気付く。
「門倉部長!? なんてことだ 生きてらしたんですか!!」
「男娼にまで身を落として…おいたわしや!!」
悲鳴を上げる門倉。宇佐美上等兵は、門倉の取り乱した様子から、土方が札幌に来ているのかと察するのだった。
振り向きざまに銃の持ち手部分で牛山を殴りつける
しかし全く動じない牛山。無言で襟口をつかみもうとする。
その時、キラウシの手によって花火が撃ち上がる。
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間違い
こんばんは、と街娼に扮した夏太郎に山高帽の男が話しかけながら近づいてくる。
その男の手にはナイフが握られている。
ドンッ
花火が打ち上がる。それはキラウシによるものだった。
花火が明滅している間、土方は刀を手に夏太郎に近づいていく男の顔に集中していた。
「誰だ!! 間違って打ち上げたッ」
困惑する永倉。
杉元、アシリパ、白石や都丹庵士、鯉登少尉たちまでも花火に見惚れていた。
上エ地の回想
幼少期、上エ地は様々な武功を立てた偉大な父親から日々プレッシャーを受けていた。
勉強も、友達も出来ない。
「私をがっかりさせるな「」
上エ地は花火を見ながら、いつしか涙を流していた。
そして楽しそうに笑うのだった。
札幌で起こった花火を少し離れた場所で鶴見中尉も目にしていた。
「狩りかな」
花火を見ながら呟く。
花火の合図に反応した杉元は、打ち上がった方へ移動を開始していた。
「尾形だろうが何だろうが邪魔する奴は全員ぶっ飛ばす」
「ジャックの皮は俺が引っ剥がしてやる」
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感想
キラウシを責めてはダメ
花火が上がり、バトルロイヤルという名の祭りが始まる!
鶴見中尉も札幌にほど近い場所まで来ているようなので、役者の大半が一か所に集結しつつある。
なぜか上エ地の回想も出てきて、ここからどういう展開になっていくのか全く読めない。
今回最も大きかった出来事は、他のチームを集める知らせ用の花火を、間違ったチームが上げてしまったことだろう。
キラウシはなぜ間違って花火を打ち上げてしまったのか?
キラウシには、門倉が本物の犯人に襲われていたように見えた可能性が高い。
どうやらキラウシの位置からは門倉に話しかけていたのが第七師団兵だとは分かっても、それが宇佐美だとはわからなかったようだ。
門倉は犯人の顔を知っているので、牛山と、恐らくキラウシも犯人であれば合図を寄越すと信じて疑っていない。
だから仕留め役の牛山が攻撃を受けているのを見て、犯人だと思い込んでしまったとしても無理はないのではないか。
それに、まさか本物の犯人以外の人間から攻撃を受けるなどとは夢にも思わないだろうし、仕留め役の牛山が派手に戦いを始めたのを確認して、勘違いして花火を上げるという行動に至っても無理ないように思う。
ミスをしたキラウシを責めてはいけない。
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よりにもよって、この夜のこの時間に宇佐美上等兵がピンポイントでビール工場にやって来たことが完全にイレギュラーであり、想定外だった。
もちろん他のチームのところに宇佐美上等兵が現れたらまた違ったかもしれない。
特に土方、永倉という冷静さで他チームに勝るであろう土方チームであれば、このミスは起きなかった気がする。
結局、囮役の夏太郎にナイフを片手に近づいていた山高帽の男こそが本命の犯人オルトログだった。
土方がオルトログに接近し、計画通り犯人を追いつめられると思ったのに、まさかの他のチームによる間違った花火打ち上げ。そりゃ永倉も困惑する。
花火を上げたチームが間違っていることを知っているのは土方、永倉、夏太郎のみ。
このままだと杉元チーム、都丹チームは牛山チームの場所に集まってしまう。
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何とかリカバリーはできないのか
誰かが間違って打ち上げたことに困惑するばかりの永倉だが、ここからリカバリーのために何かできないのだろうか。
他の二つのチームが誤った場所へ向かわないようにするためには、実際に夏太郎がオルトログを引き付けることに成功した当たりの位置を、永倉がどう知らせるのかが大切になってくる。
しかし、ここで間髪入れずに永倉が花火を上げても混乱を招く可能性が濃厚ではないか? そうなると、安易に花火は上げられない?
だとすれば、もう土方チームだけでオルトログを仕留めるしかないのか。
いち早く花火に反応して行動を開始したのは杉元チームだった。
しかし花火が上がった位置にいるのは宇佐美と牛山……。
きっと現場に到着した杉元は、牛山と宇佐美上等兵が戦いの真っ最中という光景に困惑するんじゃないだろうか。
杉元が、花火が上がったのはキラウシによる間違いだったと理解したタイミングで永倉が花火を上げれば、当初の予定通りになるかもしれない。
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しかし永倉はそれを想定してジャストタイミングで花火を打ち上げられるのだろうか。
情報もなくそんな芸当が出来るとしたら、それは運でしかない。
都丹チームはどう動くのか。
音で周囲を見る都丹庵士にとって、突然の花火の炸裂音は苦痛の楊だ。
彼の様子を見ると、数秒から数分くらいの間、都丹庵士の高感度センサーである聴力の回復に必要ではないかと思う。
その、余儀なくされた「待ち」が吉と出るかもしれない
果たしてどう展開するのか。楽しみ。
以上、ゴールデンカムイ第250話のネタバレを含む感想と考察でした。
第251話に続きます。