第280話 決意の号砲
第279話の感想記事です。
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第280話 決意の号砲
菊田のミス
菊田特務曹長の腹部を撃ち抜いた鶴見中尉は、菊田特務曹長に一本の煙草を見せる。
それは中央のスパイとして活動している菊田特務曹長が状況を報告するため、札幌の中島遊園地のベンチの足元にわざと落としたものだった。
後から着た中央の人間がその煙草を拾うはずだったが、その前に煙草を見つけた爺さんが拾われてしまっていたのだった。
鶴見中尉は煙草の巻紙を剥がし、びっしりと文字が書かれているのを菊田に見せつける。
「私がそばにいないからと油断してしっぽを出した」
「これは宇佐美上等兵の手柄だ」
煙草は宇佐美上等兵が使っていた人材によって得られたものだった。
宇佐美上等兵は命が絶える前に、刺青の写しと一緒に煙草を鶴見中尉に渡していたのだった。
「あなたもお終いです 鶴見中尉殿」
椅子に力なくもたれかかる菊田特務曹長。
「必ず殺されますよ」
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言いたいことは分かっている、と鶴見中尉。
鶴見中尉は、情報の受け渡し時に菊田特務曹長の生存が確認できない場合、中央は自分の暴走を止めるべく制圧しにやって来ると読んでいた。
「菊田特務曹長を撃った銃声は我々が今!! ここで自ら退路を断ち是が非でも金塊を手に入れにいくのだという決意の号砲なのだ!!」
「俺が言ってんのは中央のことじゃねぇ あんたを倒すのはノラ坊さ」
菊田は呼吸を荒くしながら、鶴見中尉をじっと見据える。
「ノラ坊?」
「地獄行きの特等席……俺にとなりを空けておきますよ」
胸元からに二丁の拳銃を取り出す菊田。
ドンッ
菊田特務曹長の頭を撃ち抜いたのは月島軍曹だった。
「鶴見中尉殿のとなりは私の席だ」
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判明
「杉元…! ……解けたみたいだ」
杉元はアシリパに呼ばれ、床一面に広げられた刺青を前にしているアシリパの元へ向かう。
鶴見中尉はその場にいる部下たちに、各地の部下へ、暗号の場所にと一刻も集まるようにと伝えるようと指示を出していた。
「武器弾薬を軍馬に満載して不眠不休で来いと!!」
「え? これが金塊の在り処? ほんとに?」
杉元たちは刺青の前で困惑していた。
どう見ればいいの? と杉元。
都丹庵士の目にも刺青人皮が示す金塊の場所は見えていなかった。
「この線…ほかの線を突っ切ってるこの線だ… みんなわかるか?」
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床に広げられた無数の刺青人皮が重ねられている。
刺青人皮の模様の中にある、ひと際目立つ、どこにも交わらない太い線は、複数の刺青人皮との組み合わせで大きな星の形を形作っていた。
「五稜郭だ」
「よりにもよってここか……」
土方が呟く。
「面白くなって来たなぁガムシン」
杉元たち、鶴見中尉達は、ほぼ同時刻に暗号の解読に成功していたのだった。
「あ…ちょっと待てよ」
門倉が胸元から出した自分の背の刺青人皮の写しを、床一面に地図を描いている刺青人皮の最適な位置に配置しようとしていた。
「あ…ここピッタリ」
その場にいた全員が心の中で全く同じことを考えていた。
(有っても無くてもいい!!)
汽車は函館への到着を告げている。
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感想
残念……
やはり菊田特務曹長は退場か……。
前回ラストの鶴見中尉からの不意の一撃で、すでに死は免れないであろう状態に見えた。
しかしその上で月島軍曹の容赦なき止めの一発によって、完全に生存の道は絶たれてしまった。
杉元は菊田と次に再会した時は本気で戦わなければならないかもしれないと覚悟を決めていたが、その時はもう永遠に来ない。
出来れば、二人には笑って再会してもらいたかったんだけどな……。
二人の過去の話が良すぎた。まだあどけなさが抜け切れていない杉元と、そんな彼の面倒を見る気のいいあんちゃんの菊田。二人の相性ってかなり良いと思うし、こういう関係性って人生の宝物だと思う。
杉元には菊田の仇をとってもらいたい。菊田は、最期に鶴見中尉に向かって言ったように、杉元が鶴見中尉を倒すことを望んでいる。
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菊田特務曹長の最期、鶴見中尉への一言からは、自分の所属する組織ではなく、杉元こそが鶴見中尉の暴走を止めることを確信しているように見えた。
ノラ坊という杉元と菊田の間だけで成立していた単語が、果たして何を指しているか、鶴見中尉にはわかるはずもない。
仮にそれが杉元のことだとわかったとしても、おそらく今の鶴見中尉はその存在を歯牙にもかけないのではないか。
菊田が中央からのスパイだと知り、鶴見中尉の脳裏にはこれから起こるであろう中央との激突に意識が向かっているのかもしれない。
だとすると、杉元はその間隙を縫って金塊に一番乗りできたりするのだろうか?
ただそれには中央がこの時点で動いていないといけないわけで、やはり、ほぼ同時に金塊の隠し場所を知った二つの勢力による争奪戦になりそうだ。
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まさかの場所
しかしまさか金塊の暗号が示した場所が五稜郭とは……。
土方にとっては特に運命を感じざるを得ない場所だろう。
史実では五稜郭の戦いで戦死しているが、ゴールデンカムイにおいては生き残った。しかしこれからその因縁の場所へと舞い戻るわけだ。
多くの仲間を失い、自分もまた彼らの後を追いたいと考えたかもしれない。しかしそれをこらえて、虜囚としての辱めにも耐えた末、脱獄後は以前と変わらぬ独立という目的のために邁進している。
もし本当に金塊が五稜郭にあるのであれば、そこが旅の終着点になるのか………?
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特に土方にとっては、次こそは勝利するという執念が沸き上がることで、彼の持っている力を最大限に引き上げたりするのではないだろうか。
五稜郭での土方には注目したい。
それに、今は一緒に行動しているけど、杉元陣営と土方陣営がぶつかり合う可能性もある。
そうなった時に、その戦いは鶴見中尉との戦いよりも激しくなるのかもしれない。
いよいよ佳境に入ってきた感がある。ここからの展開を楽しみたい。
しかし今回は、ラストの門倉に救われた。菊田の死で重苦しい気分だったけど、門倉の刺青が全然意味がないと判明して、ふふっと笑えた。
でも、実は門倉の刺青が実は決め手になった……みたいな展開になったら最高に面白いな。
以上、ゴールデンカムイ第280話のネタバレを含む感想と考察でした。
第281話に続きます。