第261話 消防組
目次
前話第260話 あらすじ
海賊房太郎にビールに引きずり込まれた鯉登少尉。
駆け付けた月島軍曹は鯉登少尉の行方をアシリパに訊ねる。
逃げようとするアシリパを捕まえるが、鯉登少尉の安否が気になる月島軍曹は、すぐに鶴見中尉の元へ戻れずにいた。
近くのビールからゴボゴボというあぶくが生じていることに気付いた月島軍曹は、そこにいるのか、と鯉登少尉を呼ぶ。
引きずり込まれたとだけ呟くアシリパ。
月島軍曹は鯉登少尉を救助に向かいたいが、アシリパを確保する方が重要だと自らに言い聞かせていた。
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鯉登少尉は海賊に髪で首を絞められながられ、ビールの中に仰向けで沈んでいた。
必死に抵抗する鯉登少尉だったが、意識を失いかける。
その瞬間、月島軍曹が海賊の顔を踏みつけるのだった。
水面から顔を出す鯉登少尉。
月島軍曹が海賊に向けては放った銃弾は海賊の右脇腹に当たる。
海賊は水中で体を翻し、鯉登少尉と月島軍曹から逃げるのだった。
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アシリパは既に鯉登少尉たちから逃げていた。
アシリパそっちのけで助けに来たのかと憤る鯉登少尉。
「どちらを優先するべきか間違えるな!!」
逃げていたアシリパを発見したのは二階堂だった。
二階堂はアシリパを確保し、鶴見中尉の元に戻る。
そこにやってきた鯉登少尉と月島軍曹。
月島軍曹が報告しようとするのと同時に、鯉登少尉が流暢に報告を開始する。
「……よくわかった 鯉登少尉」
しまった、という表情で固まる鯉登少尉。
鶴見中尉は刺青の暗号はもう十分なので、あとはアシリパを死守しつつここから撤収すると部下たちに指示するのだった。
建物内を歩く海賊を発見した杉元は、怒りの形相で銃剣を構えて海賊に突進していく。
「アシリパさんを返せ!!」
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土方たちは建物の外で白石たちを待っていた。
門倉の安否を不安そうに訊ねるキラウシ。
門倉は煙でいっぱいになった建物の中で自分の命の終わりを悟っていた。
門倉のいる建物が破壊され、門倉が寝転がっていた床も壊れていく。
しかし門倉は壊れた外階段を転がり、フックのようになった部分に服の襟が引っかかったまま安全に地面に降りていく。
干してあった布団に身体が当たり、外階段のフック状の部分が門倉の身体の上に掛布団をかけていく。
枕元にビール瓶が落ちる。
門倉はまるで晩酌して布団で気持ちよく寝ているだけの状態になっていた。
第260話の感想記事です。
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第261話 消防組
尾形とヴァシリの読み合い
炎上するビール工場の敷地では消防組による消火活動が続いていた。
アシリパを探して回っていた菊田特務曹長の頭に銃が突きつけられる。
失礼と謝り銃を引く第七師団兵。
鶴見中尉、鯉登少尉、アシリパを拘束している月島軍曹、二階堂や他の兵たちが白い布に包まれた宇佐美上等兵の死体を囲むようにして立っていた。
鶴見中尉は菊田特務曹長に、自分たちは土方、杉元たちとの余計な戦闘を避けて撤収し、アシリパ護送を最優先させる方針を説明する。
そして宇佐美を倒した狙撃手には最も警戒すべしと言われ、菊田特務曹長は宇佐美上等兵の死を知るのだった。
尾形は思考はヴァシリの動きを読むことに集中していた。
自分があのロシア兵なら煙の少ない工場の風上へ位置をとる、と尾形。
一方ヴァシリは、尾形がその思考に至るであろうことを読んでいた。
風上に来たヴァシリの側面に回りこむべく風下から煙の中に紛れて出て来ると思考を走らせる。
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決着
海賊を発見し、怒りを爆発させながら銃剣を構えて突っ込む杉元。
海賊は頭を素早く振り、長い髪を鞭のようにして杉元の目にヒットさせる。
杉元の渾身の突きをかわした海賊は、銃身を掴む。
「どっちか死ななきゃ収まんねえか」
杉元の鼻先を足裏で突くように蹴る。
しかし杉元は倒れず、素早く右ストレートを、続けて銃の持ち手の底面を海賊の顔に叩き込むのだった。
たまらず崩れ落ちた海賊に、杉元はすかさず銃口を向ける。
「降参!!」
微かに笑みを浮かべて、手を上げる海賊。
ダァン
海賊に向けて発砲する杉元。しかし間一髪で駆け付けた白石が銃身を持ち上げて銃弾は空中に飛んでいく。
白石は海賊を殺してしまったらアシリパの行方が掴めなくなると必死で杉元を説得する。
海賊はその流れに乗るように、アシリパが第七師団に連れて行かれたので、もう一度手を組んで取り戻そうと提案するのだった。
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拘束されていた男たちの正体
ふざけるなと吐き捨てる杉元。
杉元からどっちへ行ったと問われた海賊は、胸元から刺青人皮を取り出すと、自分たちの手元にある分の刺青人皮や、自分がアイヌから仕入れた情報を使って暗号が解けるかどうかを試そうと持ち掛けるのだった。
海賊を信用できないと怒り心頭の杉元は、白石にこの場を離れるよう呼びかける。
杉元は第七師団がアシリパを連れて行こうとするならヴァシリがそれを放っておかないはずなので、第七師団は工場からは逃げられないと読んでいた。
自分の読みを信じて位置取りを済ませたヴァシリは尾形の出現を待っていた。
尾形は建物の中から、窓の外へ双眼鏡を向けている。
杉元は拘束されている男を発見し、近寄っていく。
男の口の拘束を解き、どうしか? と問いかける杉元。
男の背後には同じ格好の男たちが、やはり同じように拘束されていた。
口の拘束を解かれた男が答える。
「俺達は薄野(すすきの)区の消防組だ」
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秘密兵器
炎上を続ける工場。
それを尻目に、第七師団は消防組から奪った衣装や蒸気ポンプを運ぶ馬車で消防組に扮し、撤退を開始していた。
防火帽と蒸気ポンプが奪われたと男から聞いた杉元は、鶴見中尉達がヴァシリをかいくぐっていることに気付く。
そして馬車で逃走している鶴見中尉達に追いつくべく、馬がいないかと男に問う。
「杉元!!」
白石に肩を借りて杉元に追いついた海賊が呼びかける。
「さっき中で良いものみつけた」
海賊が指示した建物から出てきたのは、杉元と白石を乗せて海賊が運転する、ビール瓶を横に倒したデザインが施されたビールの宣伝用の車だった。
海賊は1年と少し前にエディーと意気投合して車の運転の仕方を習ったのだという。
杉元たちは車で鶴見中尉達を猛追するのだった。
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感想
杉元VS海賊
杉元VS海賊は杉元に軍配が上がった。
杉元と戦う前から海賊がかなり負傷していたとはいえ、それでも海賊はそれを感じさせない戦いぶりだった。
海賊は前の話でも長い髪で首を絞めたりしていたし、今回は鞭のようにして杉元の顔を叩くなど、巧みに髪の毛を戦闘の補助として使う戦法だった模様。
あの長い髪は邪魔じゃないのかなと思っていたけど、無意味どころか重宝していた武器だったわけだ。
右腕がほぼ使えず、本気で殺しに来た杉元の攻撃に圧倒されるかと思いきや、銃剣の突きをかわしてカウンターとして杉元の顔面に蹴りをくらわすという戦闘能力の高さを海賊は見せた。
しかし一切怯まずに右ストレート、続けざまに銃の持ち手で海賊を殴打してノックアウトする杉元。やはり近接格闘はピカ一の強さを誇っている。
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降参した海賊に向けて間髪入れずとどめの発砲をしているし、杉元はかなり殺す気満々の本気だったと思われる。
しかしまさか白石が海賊を救うとは……。それも杉元が発砲しようとしていた銃を間一髪で持ち上げて軌道を大きくずらすと言うファインプレイで……。
海賊房太郎ファンは胸を撫でおろし、白石に感謝したことだろう。
前回は杉元にやられてしまうのではないかと思っていた。
だから、海賊がここで白石に救われ、それどころかアシリパ救出のために再び杉元・白石と一緒に行動することになって良かった。
しかしまさか海賊にエディーや若山親分と面識があり、車が運転出来たことがアシリパ救出の希望を繋ぐとは……。
海賊がいなかったら完璧に逃げられていた。
杉元が頼りにしていたヴァシリは尾形との戦いに集中しており、アシリパのことは考える余裕などない。
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海賊の運転が最終的にアシリパさんを救うことに繋がればいいな……。
ただ、アシリパさんの死守のために無駄な戦いは避ける方針である第七師団の手からアシリパさんを救い出すのはかなり困難なミッションだと思う。
車だから鶴見中尉達には追い付くかもしれないけど、対七師団は守りに徹している。
それこそ、土方陣営が第七師団を足止めするとか、何かしらの助力がないことには無理ではないか。
杉元たちだけでアシリパさんを取り返せる気があまりしない……。
ただ、アシリパさんは煙のダメージがかなり抜けているように見える。
逃げ出す気力が回復しているから、チャンスがあればアシリパさんが自分で逃げ出せるかもしれない。
海賊のおかげでかろうじて希望は繋がっているし、アシリパさん自身の行動も期待できる。まだチャンスはある。
果たして杉元たちはアシリパさんを救い出せるのか。
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ヴァシリVS尾形
ヴァシリと尾形のスナイパー対決が本格的に始まった。
以前の樺太での戦いは尾形が勝った。あの戦いは尾形の粘り勝ち。非常に見所がある良い勝負だった。
そして今回もまた、お互いに姿が見えない状況から互いの動きを逐一読み合う頭脳戦の様相を呈している。
相手の姿を先に発見すれば圧倒的優位に立てる一流のスナイパー同士の戦いは、必然的にそういう方向に流れていくものなのだろう。
今回も非常に良い戦いが期待できそう。ワクワクする。
尾形に敗れてはるばる樺太から杉元たちに同行したヴァシリがリベンジを果たすのか。
それとも尾形がそれを跳ね返すのか。
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戦いの予想は難しい。現状ではヴァシリが尾形の思考の一歩先を行っている感じだけど、それは尾形の思考が「自分がヴァシリなら風上にいる」というところで止まることが前提になる。
前回の商社である尾形が、そんな簡単な敵であるわけがない。
今回の話の流れだと、次号では尾形の読みの一歩先をいっていたヴァシリのさらに一歩先を尾形が上回っていく感じがする。
そうじゃないと話が面白くならないから。ヴァシリの読み通りに尾形が動き、ヴァシリが勝利するなんて、そんな安直な展開はまずないと考えられる。
尾形がヴァシリの今回の思考の上をいき、ヴァシリの出現地点を予測して狙撃するのではないか。
ヴァシリが尾形に勝つところを見てみたいけど、でもここで尾形に負けて欲しくないという気持ちも強い。
どっちが勝っても死者は無しで終わって欲しいな……。どっちもここで死ぬには惜しい。
以上、ゴールデンカムイ第261話のネタバレを含む感想と考察でした。
第262話に続きます。