第300話 再延長戦
前話第299話あらすじ
土方と牛山は五稜郭からの逃亡に成功しつつあった。
白石の合図を知っているはずの夏太郎が逃げおおせているか気にする土方。
その頃、夏太郎は、五稜郭内で土方を探す永倉を第七師団兵の狙撃から救っていた。
数分前、谷垣は、赤子を抱くインカラマッと共に函館で、馬に乗った永倉と会っていた。
永倉は短く一言だけ谷垣に叫ぶ。
「来るなッ」
永倉のただならぬ様子と、その一言で、アシリパが五稜郭にいることを察した谷垣とインカラマッ。
インカラマッは、自分が果たしたい役目と、妻と子を守らねばならないという気持ちの狭間で苦しむ谷垣を気持ちよく五稜郭に送り出すのだった。
スポンサードリンク
谷垣に助けられ、鶴見中尉から離れていくアシリパ。
アシリパは、遠ざかっていくソフィアの様子を気にしていた。
鶴見中尉は倒れたソフィアを見下ろしていた。
ソフィアは胸からウイルク、キロランケ、自分が写った写真を取り出し、鶴見中尉に対して家庭を破壊してしまった後悔と謝罪の念を示す。
「キミを許すよ」
鶴見中尉に許され、ソフィアはハァ…と安心したように目を閉じる。
そして鶴見中尉は、ソフィアの胸に銃弾を三発撃ち込んで止めをさすのだった。
銃弾は全て写真の中のウイルクに命中していた。
スポンサードリンク
何が起こったかを理解し、谷垣の背で泣き叫ぶアシリパ。
鶴見中尉は馬に乗る月島軍曹の背に乗り、狂気の雄叫びを上げてアシリパ達を追う。
谷垣とアシリパ、そして杉元と白石は、五稜郭から脱出しつつあった。
木の枝に座り、その様子を双眼鏡で確認する尾形。
尾形は彼らが逃げ出すなら東か北とヤマを張っていたのだった。
そして自分を狙っているヴァシリも、どこかでアシリパたちを見ているのでれば、自分が動くと期待していると読んでいた。
(この一発は何を撃つ一発か…)
第299話の感想記事です。
スポンサードリンク
第300話 再延長戦
スナイパー対決
杉元たちを馬で追う月島軍曹。その背に同情する鶴見中尉。
鶴見中尉は、月島軍曹からアイヌの矢が数本捨てられていたといいう報告を受けて、権利書がアシリパの矢筒の中だと喝破するのだった。
鯉登少尉も兵を引き連れて馬を走らせる。
尾形は木の上から周囲を探る。
そして目視できる、尚且つ射線が通る位置の木の途中に、太陽光を反射する何かを発見していた。
尾形はそれが、ヴァシリの双眼鏡のレンズに反射した光だと理解する。
(運命は俺に味方した 正解が俺は正しいと言っている)
アイアンサイトを指で跳ね上げ、ヴァシリのいる位置に調整して銃を構える。
スポンサードリンク
光が反射して、撃とうとする尾形。しかし違和感を覚え、踏みとどまる。
(いや…嘘くさい)
光の反射が意図的な動きだと感じた尾形は、ヴァシリが太陽の反射を考慮していないはずはないと気づき、狙いを調整し直してから狙撃する。
尾形はヴァシリが光を反射させていたのは、自分の誤射を誘うための餌だと判断し、光を放っている双眼鏡を持つ腕一本分下の位置を撃っていた。
シュパァッ
ヴァシリからの一撃が尾形の足を貫く。
しかし尾形は、受けた傷を無表情で観察すると、頭を撫でつけて勝利を確信する。
「うん… 仕留めた!!」
「もしお前が無事なら今の一発…足で済んでるはずがない」
尾形が狙撃した木から落下した銃が地面に突き刺さる。その銃に血が滴っていく。
スポンサードリンク
汽車
狙撃に気付いた谷垣はアシリパを自分の腹の側に移動させる。
「子猫ちゃんが逃げちまった」
鯉登少尉に同行する兵に向けて狙撃する尾形。
しつこく追われて焦る杉元たち。
迎え撃とうという土方の提案を、ダメだと一蹴するアシリパ。
「もう戦わずにこのまま走って 向こうの馬だって走り続けていられない」
「おい あれはどうだ!?」
牛山が指さしたのは、黒煙を吹き上げて走る汽車だった。
函館駅行きの汽車だ!! と谷垣。
スポンサードリンク
海へ向かう汽車に乗り、追手の裏をかこうと白石が賛同する。
海へ着いたら乗せてもらえる船を探そう、と牛山。
馬から、走っている汽車に乗り移る杉元たち。
杉元がふと呟く。
「あれ? そういえば函館行きって夕方の一本だけじゃなかった?」
客車の扉を開ける牛山。
乗客は全て師団兵だった。
兵たちからの注目を浴びる杉元たち。
スポンサードリンク
感想
尾形とヴァシリのスナイパー対決決着か?
スナイパー同士の駆け引き、見応えがあった。
ヴァシリは体から離して双眼鏡を持ち、光の反射に気付いた尾形に先に撃たせて位置を探ろうとする。
片や尾形はその意図を読み、レンズの反射した位置から照準を微妙に調整してヴァシリのバイタルを狙う。
その結果、互いに傷を負うが、武器であり相棒でもある愛銃を失ったのはヴァシリだった。
まだヴァシリの様子が描写されていないので生死は不明だが、銃を落として戦闘継続が不能となってしまった以上、スナイパー対決の勝敗は尾形の勝利で決したと言ってよいだろう。
スポンサードリンク
腕を撃たれて木の枝にもたれるようにして身を潜めていると思いたいところ。
頭を撃たれて即死なら反撃はできない。第一印象では腕を撃たれたのかなと思ったが、顎か、もしくは首あたりを撃ち抜かれて意識を失っている可能性も考えた。でも首ならば銃に落ちた程度の出血量では済まない? だからやはり腕か? と思ったけど、でも尾形やヴァシリが身を隠している木は枝が多い。だから大量に出血しても一気に下に落ちることはないように思う。やはりバイタルゾーンに食らってしまったのか……。
姿が見えない状況・演出というのが、どうしても想像を悪い方向に働かせる。
ただ単に身を潜めているだけ、あるいは気を失っているだけで命に別状はないと思いたいが、尾形のヴァシリを仕留めたと確信している様子から、ヴァシリは生きていないのかもしれない……。
ヴァシリの戦いがこんな形で終わるとは思いたくないが、相手の姿が見えない状況で勝敗が決するというのも、THEスナイパー対決といった感じだった。
スポンサードリンク
しかし、ヴァシリからの反撃で足を撃ち抜かれても、顔色一つ変えず、冷静に自分の攻撃の評価に集中する尾形がかっこいいと思ってしまった。
尾形に軍配が上がったのは予想通りだった。でもこのあと尾形がどう動くは全く想像がつかない。今後の動きに注目していきたい。
しかし、杉元たちはせっかく五稜郭を無事に脱したと思ったのに、まさか第七師団兵を運ぶ汽車に乗ってしまうとは……。
果たしてここからどんな展開になるのか。
一斉に銃を撃たれたら終わりだろ……。ギャグっぽい閉め方だけど、最悪誰かが命を落としかねない窮地だと思う。
次回も見逃せない展開が続く。
以上、ゴールデンカムイ第300話のネタバレを含む感想と考察でした。
第301話に続きます。