第274話 こだわり
前話第273話あらすじ
高所で尾形を狙うヴァシリ。
ビール工場の火災を消した火消したちから一人が突然走り出す。
ヴァシリは銃を構えるも、咄嗟に撃つことが出来ない。
窮地を脱する尾形。
ヴァシリは狙撃のチャンスをなくして、荒い鼻息をつく。
民家を土足で潜り抜けた尾形は、門倉とキラウシの背中を見つける。
アシリパを車の後部に乗せが車は進んでいく。
アシリパは撃たれた有古一等卒や、横たわっている海賊房太郎の死体にショックを受け、頭を抱えて崩れ落ちる。
その瞬間、アシリパの体を運転席から手を伸ばして支える杉元。
疎かになりかけている杉元のハンドル操作を補助する白石。
牛山を見つけたアシリパは気を取り直す。
「偽物の判別方法が分かった」
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菊田特務曹長は有古一等卒を担いで、病院に駆け込んでいた。
有古一等卒に声をかけて、目を覚まそうとする菊田特務曹長。
「お前まだ自分のマキリを作ってねえだろ!!」
有古一等卒の傷口を確認しようと上着をめくった菊田特務曹長は、有古一等卒の持っていたマキリが弾を受け止めていたことに気付く。
有古一等卒は菊田特務曹長に助けてもらった恩を伝えると、退院後は中央ではなく、アシリパたちに付くと宣言する。
床一面に広げた刺青人皮を観察する鶴見中尉。
鯉登少尉は自分の薩摩弁では鶴見中尉に振り向いてもらえないと気付き、二階堂に、月島軍曹がアシリパを追跡している事、応援に何名か連れて行かないかと進言させる。
しかし月島軍曹と連れ戻すようにと鶴見中尉。
鶴見中尉はアシリパから聞き出した暗号の鍵が正しいと直観していた。
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鯉登少尉は鶴見中尉のさきほどの話にはアシリパに暗号の鍵を吐かせるための鶴見劇場だったと感銘を受けていた。
しかし二階堂がビールのにおいがきついと他の兵士から指摘されているのを見て、月島軍曹もまた頭からビールを被っていたことを思いだし、鶴見中尉は青ざめる。
強い匂いを放った状態で、鶴見中尉が月島軍曹に気付かなかっただろうか。
鯉登少尉は青ざめる。
そしてソフィアとアシリパに語った話には本当のことが含まれていたのか、どこが間違っているのかと疑心暗鬼になりつつあった。
鶴見中尉の本当の目的はあくまで日本の防衛と繁栄のためだと自分い言い聞かせる。
しかし、何よりすべてを捧げてきた月島軍曹はあの台詞が『飛びつきたいほど』欲しかったはずなんだ、と鯉登少尉は解釈していた。
教会の外に出ていく鯉登少尉。
第273話の感想記事です。
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第274話 こだわり
偽物の判別
アシリパはある女の話を思い出したと杉元に語りだす。
それはケネというハンノキの赤い汁で染めたアットゥシの糸で一着丸ごと縫われた着物の話だった。
ある日その着物を着たまま、雨の中を作業していた男が、腰に斧を差していたあたりが茶色く変色していたことに気付く。
アシリパは、アットゥシ自体にはそのような機能はないことから、アシリパはそれが着物に使っていたアットゥシに含まれていたケネが溶け出した結果で、それは熱に触れた部分によるものだと考えていた。
「こだわりは裏を返せば繊細過ぎる」とアシリパ。
アシリパは誘拐されている最中の朦朧とした意識の中で、水に触れた刺青人皮が金属の窯に触れた結果、黒く変色したものとそうでなかったものとがあることに気付いていた。
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皮をなめす方法についてミョウバンか、もしくはもっと上質な革になめすためにケナの汁を使う方法があると説明を始めるアシリパ。
彼女はかつて熊岸から聞いたことを思い出していた。
良作を凌駕すべく、材料からこだわったという熊岸の言葉を振り返り、革のなめし方にもこだわりがあるとすればケネを使っていた可能性があるとアシリパ。
そして雨の中、線路の上に散らばった刺青人皮の中に、変色したものとそうではないものがあると確認したアシリパは、現状、有古一等卒が鶴見中尉に持たされてきた刺青の中に変色したものが3枚、変色しない本物と言える刺青人皮が2枚あることに気付く。
暗号解読の為に本物を混ぜるとは、と感心する永倉。
アシリパは、暗号を解く鍵はじぶんにあると頭脳回転させる。
「狼に追い付くという意味のアイヌ語」
「ホロケウオシコニで間違いない」
なるほど、と杉元。
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汽車
まだ暗号が解けてない鶴見中尉は、床に広げた刺青人皮の上にあおむけに寝転び、ばたばた駄々をこねるように手足をばたつかせていた。
鶴見中尉がホロケウオシコニを知ったことで、急がなければ先を越されると牛山。
杉元は鶴見中尉達を出し抜くために、海賊が最期に遺したアイヌが最初に金塊を隠したという場所に、暗号を解きつつ、汽車でそこに向かうのだった。
門倉やキラウシにも呼びかけ、汽車には杉元・土方たち一行は汽車に乗っていた。
暗号解読の為に床に刺青人皮を広げられる場所を探す一行。
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席数が少なく、床にスペースがある一等車両に来た杉元たちは、嫌味な言い方で杉元たちを追い払おうとする乗客を車両の外に強引に移すと、早速床一面に手持ちの刺青人皮を広げていく。
「俺らだけの特等席だな」
数少ない椅子に腰かけ、白石が杉元に声をかける。
ああ、と答えた杉元の脳裏には、ロシアへの出征前に、菊田特務曹長との会話した時の記憶が甦る。
「俺は地獄行きの特等席だ」
帽子を外し、杉元に振り返る菊田特務曹長。
「忘れてくれ 花沢勇作のことも全部忘れろ」
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感想
朦朧とした意識の中で、水に濡れた刺青人皮の中に色の変わるものとそうでないものがあるときちんと見分けたアシリパさんの観察力が素晴らしい。
見事に江渡貝の作った、本物以上とも言える偽物を判別することに成功した。
しかし考えてみれば、有古一等卒が鶴見中尉に持たされてきた五枚のうち、二枚が本物だというのもすごい話だ……。
本物の刺青人皮さえ、ライバルを出し抜くための道具にできる。
まぁ、刺青の写しがあれば暗号解読には問題ないわけだけど……。
そしてホロケウオシコニというアシリパさんだけが分かっていたキーワードが鶴見中尉に知れて、さらに今回杉元や白石だけではなく、土方たちにまで共有された。
アシリパさんが暗号を解く鍵が、「狼に追い付く」という意味を持つホロケウオシコニだと確信できたことで、杉元たちの勢力は着実に暗号解読に一歩近づいたようだ。
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一足先アシリパさんからそれを聞き出し、夢中で暗号解読を行っていた鶴見中尉はそれを知っているのだろうか。
少なくとも、床に合向けに寝転んでバタバタしている様子から、現時点ではまだ暗号は解けていないようだ。
しかし何がきっかけで解読が進むか分からない。キレ者の鶴見中尉のことだから、突然閃くということも十分あり得る。
鶴見中尉が暗号を解いて金塊の場所に到着する前に自分たちが先についてしまえばいい。
鶴見中尉を出し抜くため、海賊房太郎が遺した情報を頼りに汽車に乗って次の場所へ……。
さらば札幌。
果たして次の場所はどこになるのか。金塊を廻って、北海道を旅するのも残り少なくなってきたんだな……。寂しい。
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次回は顔に傷がつく前の杉元の回想か。気になっていた菊田特務曹長との関係性も明らかになりそうだ。
「花沢勇作のことも全部忘れろ」
これは一体どういうことだ……。その前に、俺は地獄行きの特等席だ、と言っているのは、花沢勇作を陥れる何かを行ったということ?
忘れてくれ、というのは勇作のことだけではなく、その前に菊田特務曹長が触れていた内容にもかかっている。
それが次回分かるということか……、続きが楽しみだ。
以上、ゴールデンカムイ第274話のネタバレを含む感想と考察でした。
第275話に続きます。