第134話 教誨堂
第133話のあらすじ
鶴見中尉に追い詰められた杉元。
金塊の在り処を聞けていないことを盾に、のっぺらぼう（偽）に銃口を突きつけて鶴見中尉を脅す杉元。
杉元の剣幕に動じない鶴見中尉。
その背後から、突如、憎しみに我を忘れた二階堂が杉元に向けて発砲する。
二階堂は狂人の如く怒り狂っていた。
のっぺらぼう（偽）と共に杉元は房に隠れるが、二階堂の銃撃はのっぺらぼう（偽）の頭を捉えていた。
さらに房の隅で上がる火の手は房中に煙を満たしていく。
窮地に追い詰められる杉元と白石。
宇佐美上等兵が、ふと背後に目をやると、視界にこっそりと逃亡しようとする門倉を発見する。
嬉々として門倉を追う宇佐見上等兵は、逃げる門倉を銃撃。
左肩を撃ち抜く。
門倉を追い詰めた宇佐美上等兵は、門倉が妙なレバーを握っているのに気づく。
門倉がレバーを引くと、網走監獄中の房の扉が同時に開く。
それは、樺戸監獄で考案された、火災時の備えた一斉開房装置だった。
房の外に出た700人の囚人たちは第七師団兵の元へ一気に雪崩込む。
迎え撃つ第七師団。
銃撃で先頭の囚人はやれられていくが、後に続く囚人の勢いは衰える事無く第七師団兵に肉薄していく。
ついには、第七師団兵と囚人との間で肉弾戦が始まるのだった。
二階堂は一人戦闘から抜け出し、杉元を追って房の中に入る。
そこには倒れたのっぺらぼう（偽）の死体のみ。
杉元と白石は、白石が開けた床下の通風口を通って脱出を図っていた。
杉元は土方が現在の、杉元とアシリパとの引き剥がし工作を仕組んだ張本人だと喝破する。
通風口から外に出るための方法に窮した杉元は、先に抜け出た白石にアシリパを追うように発破をかけのだった。
一方、土方は犬童典獄が剣の稽古を行うなどして頻繁に出入りする教誨堂こそが本物ののっぺらぼうの隠し先だと踏んで犬童典獄が教誨堂に向かうのを監視していた。
教誨堂に現れた犬童典獄がのっぺらぼうを動かすその時を襲うべく、土方たちは待ち構える。
一方、白石はアシリパを探し、連れ戻すべく監獄の敷地内をひた走る。
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第134話
駆逐艦の砲撃音に都丹庵士は苦んでいた。
大丈夫か、と都丹庵士を心配して振り返る土方に、都丹庵士は早く建物に入ることを促す。
土方が傍らを見ると、そこにいたはずのアシリパの姿が見えない。
都丹庵士も揃って辺りを見回すがやはりその場からアシリパは立ち去っていた。
敷地を必死に駆けるアシリパ。
土方はアシリパが杉元の元へ戻ったと判断し、のっぺら坊の居場所を聞き出すまで自分のところにいたアシリパを強かな娘だと呟く。
連れ戻すかと問う都丹庵士に、土方は犬童を逃がさない事を優先すると答え、アシリパと撮っていた写真を手元で広げる。
「これでなんとか信じさせるしかないか…」
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アシリパ、白石、キロランケが合流
杉元の元へ向かっていたアシリパの口を、建物の陰から伸びた手が塞ぐ。
「静かに」
キロランケが、機関銃を持って敷地内を走り回っている見張りからアシリパを匿っていたのだった。
キロランケとアシリパの前を白石が走っていく。
シライシ？ とキロランケが声をかけると白石は走るのを止めてキロランケ達に近づいていく。
「アシリパちゃーん！！」
杉元の頼みであるアシリパとの合流を果たした白石。
アシリパは開口一番、杉元は？ と白石に問いかける。
白石は、杉元は舎房の床下、通風口から出られずにいると答える。
舎房に向けて駆けだそうとしたアシリパを、兵士がうじゃうじゃいる、と白石が引き留める。
そのやりとりを見ていたキロランケが、自分が助けに行くと宣言。
アシリパはキロランケに、のっぺら坊が教誨堂にいると伝え、杉元を教誨堂へ連れてきてと頼む。
白石は、アシリパと正門で待つように言われているとそれを拒否する。
教誨堂にいるという本物ののっぺら坊が、果たして本物なのかを自分が会って確かめないといけないと主張するアシリパ。
白石は杉元とアシリパを引き剥がそうとしている土方の元に行くことがダメなんだと説く。
「杉元から？」
アシリパが少し落ち着いた様子で聞き返す。
杉元を助けたら教誨堂に行く、とキロランケが駆け出す。
正門までのっぺら坊を連れて来ると言うキロランケをアシリパが引き留め、腰から外したものをキロランケに渡す。
「これを杉元に！！」
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メノコマキリ
火の手が上がっている舎房。
杉元は白石が脱出した通風口から必死の形相で頭だけ出して強引に抜け出そうとしている。
「ふぬぬ…どうやったら肩を外せるんだよォ」
「杉元！！」
杉元に駆け寄っていくキロランケ。
「馬鹿かよオマエ 出られるわけねえだろ！！」
何やら杉元の目の前で作業を始めたキロランケに、どうすんだ？ と問いかける杉元。
キロランケは壁と土の隙間に手投げ弾を詰め込むと言って建物に接している地面の土を掘っていた。
地面に掘った穴にキロランケの手投げ弾が詰めこまれる。
導火線には火が点いている。
「どこかに身を隠せ」
唐突なキロランケの言葉に戸惑う杉元。
ドンッ
舎房の壁が手投げ弾で破壊される。
二階堂が杉元たちの痕跡を探しているのっぺら坊（偽）の房内。
のっぺら坊（偽）がうつ伏せに倒れている死体のお尻の辺りから煙が噴き出す。
「え！？ おなら？」
房の中で杉元たちを探していた二階堂がのっぺら坊（偽）の死体に注目する。
のっぺら坊（偽）を動かすと、そこだけ床板が外れているのを発見する。
舎房の床下から抜け出した杉元。その身体は黒く汚れ、煙を纏っている。
「教誨堂に？」
キロランケから教誨堂に行くと聞いた杉元が問い返す。
キロランケは、これをのっぺら坊に見せろって、とアシリパから預かっていたものを杉元に差し出す。
それはアシリパの、父親が作ったというメノコマキリだった。
杉元はキロランケに、白石だけでは心配だから正門で待っていてくれと告げる。
「俺がのっぺら坊を連れて来る 必ず会わせるとアシリパさんに伝えてくれ」
了解し、キロランケは正門に向けて駆けだしていく。
杉元は教誨堂に向けて敷地を駆けていた。
駆逐艦の放った照明弾が夜空を照らす。
杉元がふと建物の壁に映った自分の影を見ると、背後から自分の首元に銃口を突きつけられているのに気づく。
ドバァン
弾が放たれる。
杉元は左手を大きく振り上げながら素早く回転し、銃口を自分から逸らしていた。
杉元に銃を突き付け、銃撃したのは二階堂だった。
二階堂は身を屈めて左手で腰元の銃剣を手に取り、杉元の顔に向けて突き出す。
杉元は口を開けて銃剣を左頬から突き抜けさせ、銃剣の刃を噛んで固定する。
頬から突き出た銃剣の刃は左耳までも切り裂いている。
刃を噛んだまま、杉元は鬼気迫る表情で二階堂を睨みつける。
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教誨堂
教誨堂内部に潜入した土方と都丹庵士。
頭を傾け、床下から物音を感知した都丹庵士は、土方に何か聞こえると伝える。
地下室があったのか、と呟く土方。
犬童典獄はランプを片手に石壁に囲まれた狭く暗い地下室に入っていた。
階段を降りた先にある鉄格子の内には何者かが胡坐をかいている。
犬童典獄は鍵を開けて、出ろ、と短く命令する。
ピストルを構えた都丹庵士が呟く。
「俺が犬童の両目をぶち抜いてやる」
都丹庵士は、教誨堂内部を土方と分かれて探索する。
ライフルを構えた土方は扉を開けて入室する。
ゴッ
鈍い音が響く。
都丹庵士は、土方とは別の扉を開けた瞬間、鉄球を前頭部に受けていた。
鉄球に繋がった鎖を振り下ろしていたのは犬童典獄。
ドンッ
都丹庵士は崩れ落ちながらも前方に向けてピストルを発射する。
その銃声に土方は前の部屋に戻る。
そこにいたのは、頭部から血を流し、仰向けに倒れている都丹庵士。
その傍らには壁にもたれて力なく座り込んでいる犬童典獄。もたれた壁には犬童典獄の血が擦り付けられたような軌跡を描かれている。
土方は都丹庵士に近寄り、その首元に手を当てて生存確認をする。
すぐ近くに何者かの気配を感じ、振り向いた土方の視線の先には囚人服を着た男が杖に縋って立っている。
「のっぺら坊…」
のっぺら坊はその場に立ったまま、土方をじっと見据えている。
ガチンッ
ライフルを持つ土方の左腕、手首に素早く囚人を拘束する錠を付けた犬童典獄は腕を振る。
鎖の音が鳴り、土方の持っていた銃が床に投げ出される。
錠をはめた犬童典獄の左手首、そして土方の左手首は、互いに鎖で繋がっている。
ジャギィッ
互いに腕を引き合う。両者の間で鎖はピンと張り詰める。
犬童の右腕にはサーベルが握られている。
「死が…ふたりを分かつまで…」
犬童典獄は満身の力をこめ、手首を引き絞る。
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感想
ついに出た！！！
本物ののっぺら坊！
教誨室内が暗くて分からないが、その目はアシリパに似ていると言えば似ている。
醜い面相だが目だけが爛々と輝き、とてもきれいに見える。
過去に描かれたアシリパやインカラマッの記憶の中のウイルクの目に似ていると言えば似ていると思った。
のっぺら坊がウイルクである可能性は十分に感じられる描写になっている。
都丹庵士と犬童典獄の鬼気迫る命のやり取りを見てもひと言も声を漏らさない、その落ち着き様からも偽物のような小物感は全く感じられない。
恐らく、これは本物ののっぺら坊だろう。
問題はそれが本当にアシリパの父、ウイルクなのか？ ということ。
それとも別の誰かなのか？
来週、もしくは再来週にはこの正体が分かるのだと思うと今からドキドキする。
ここからの展開は見逃せない。
都丹庵士は死んでしまったのだろうか。
土方が都丹庵士の首元を触っている場面から受けるのは、既に事切れているという印象ばかり。
すぐに呼びかけたり救護処置に入っていないし……。
結構いいキャラだったのに、ここでの退場は惜しいなぁと思った。
残念だけどしょうがないか……。
都丹庵士を仕留めた、犬童の振り下ろした鉄球。
これは、犬童の得意とする戦法を実現する使い慣れた武器なんだと思う。
のっぺら坊は足に鉄球をつけられていないし、そもそも前の話を読み返したら、教誨堂で犬童が稽古している際に左手に鉄球をつけて、右手に剣に見立てた棒を持っている描写が為されていた。
そもそも、土方の左手首に素早く錠をつけ、その錠と鎖で繋がった自分の腕につけられたを引っ張ってライフルを落としたところからも、これが犬童の戦法であると推測できる。
その使用用途は鎖鎌における分銅に近い。
監獄のトップ、それも土方を閉じ込めておく事に対しては並々ならぬ執念を抱いていた犬童らしい武器だと言えるのかもしれない。
犬童対土方の勝負の行方も楽しみだ。
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普通、刃物を顔に突きつけられて口を開けられるだろうか？
杉元にとっては慣れてしまっている事なのかもしれないが、やはり相当クレイジーだ。
二階堂の銃剣の刃を歯で噛んで固定したが、二階堂にはまだ杉元の知らない武器がある。
足の仕込み銃を二階堂がどうやって運用するかに注目だろう。
知らない武器での攻撃とはすなわち奇襲だと思う。
一回だけだが、完全に相手の虚をつける。
二階堂は杉元を倒せるような器量ではないと思うけど、二階堂の内で熟成された杉元への怨念はバカに出来ない。
ひょっとしたら杉元は重傷を負ってしまうかも……。
何とか二階堂を撃破しても、その後教誨堂に行ったら犬童か土方と戦うことになる。
無事にウイルクに会って、アシリパから託されたメノコマキリを見せる事が出来るのだろうか。
そして、腱を切られて移動に不自由なのっぺら坊と共に無事に正門まで行けるのか？
そもそも、正門で待つというアシリパ、白石、キロランケは、第七師団が攻め込んできている最中で、果たして無事でいられるのだろうか。
来週も見どころがいっぱいで楽しみ過ぎる！
以上、ゴールデンカムイ第134話のネタバレを含む感想と考察でした。
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