ゴールデンカムイ最新第270話全ての元凶ネタバレ含む感想と考察。鶴見中尉の語りに、徐々に追い詰められていくアシリパ。

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第270話 全ての元凶

前話第269話あらすじ

アイヌたちは同士討ちの末、絶命していた。

その場から一人逃げたアイヌのラッチも、腹部の負傷により息絶える。

そのラッチの死体を抱え、第七師団が向かった先にはウイルクを含む六人の生首が地面に置いてあった。

生首はいずれも目をくり抜かれ、顔の皮が丸ごと剥がれるようになっており、中身が入れ替えられていた。

鶴見中尉は六個の生首の中の一つは、キムシプで、ウイルクはその遺体を利用して自分の死を偽装したのだと推理する。

ウイルクを追跡していた鶴見中尉は、顔面を包帯で巻いた、目が青い人物を発見する。
目の色から即座にウイルクだと直観する鶴見中尉。

鶴見中尉は支笏湖を小舟で渡って逃げようとするウイルクを狙撃する。



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肩に銃弾を受けたウイルクは湖に落ちるが、湖を渡り切って監獄部屋に逃げ込むと、自分はアイヌの金塊について知っていることを明かして、第七師団と対立している監獄側に匿われ、網走監獄ののっぺら坊になるのだった。

一方、キロランケはウイルクを追跡するためにキムシプを探していた。
しかし七人のアイヌの死体が発見され、現場でウイルクの生首を目撃してウイルクが死んだものだと落胆する。

その後、家族を持って、日露戦争から帰還したある時、殺された七人のアイヌの中にキムシプが含まれていたという噂を耳にするキロランケ。

ウイルクたちはキムシプとは行動を共にしていないと思い込んでいたキロランケは、もしキムシプがいたのであれば、どこかの誰かがアイヌを殺したわけではないと確信するようになる。

さらに土方がアシリパを探しに来たことや、網走環濠ののっぺら坊の噂、白石の体に彫ってある入れ墨の暗号といった情報が、のっぺら坊とはウイルクのことではないのかというキロランケの確信を深めていく。

キロランケはアシリパを含めた北海道アイヌの未来を案じれば、ウイルクのような弱腰の姿勢では帝政ロシアにも明治政府にも勝てないという結論に至っていた。

(やはりアイツが変わってしまったのだ)

かくしてキロランケは、網走監獄にて尾形に指示を出し、ウイルクの頭を撃ち抜かせるのだった。

(ウイルクは群れの中の弱くなった狼だ)

(かつてのウイルクが憧れていたはずの狼のやり方で彼を殺してあげた)

第269話の感想記事です。

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第270話

教会に乗り込む有古一等卒

杉元、白石と合流した有古一等卒は、アシリパが第七師団と共に教会にいると知る。

自分が教会に行って、状況次第ではアシリパを救うという有古一等卒に、杉元と白石は不安を覚える。

「向こうだってお前を信用してないだろ」

杉元の言葉に白石が続く。
「正直俺らもお前が『どっちの人間』かわかんねえけどよ」

それに対して有古一等卒は、アシリパがアイヌのことを自分よりも真剣に考えていて恥ずかしくなった、だから力になりたいと返す。

「……よし 俺はイポプテに賭けた」
杉元はその言葉を信じ、教会に向かう有古一等卒を白石と共に見送るのだった。



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フィーナとオリガの命を奪ったのは……

アシリパはインカラマッから聞いた、キロランケの指紋がアイヌたちの遺品から見つかったことに関して、それはインカラマッに自分たちの動きを伝えさせるための嘘だったのかと鶴見中尉に問いかける。

彼女は自分の過去にケリをつけたくて我々を利用した、お互い様だと鶴見中尉はアシリパの問いかけを暗に認める。
「全ての元凶はどこにあると思う?」

そもそもウイルクが最初から正直に身の上を明らかにしていれば七人のアイヌは殺し合わなかったと鶴見中尉。
「もっと言えば北海道アイヌの金塊を当てにして日本に渡ってこなければキロランケも…さらに言えば…フィーナとオリガも」

フィーナとオリガの名が出て、アシリパはソフィアが青ざめるのを横目で確認していた。



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鶴見中尉は、フィーナは勘の良い女性であり、おそらく自分がただの在留邦人ではないと気づいていたが、それでも離れて行かなかったのは私の愛だけは信じていてくれていたからだと呟く。
そしてフィーナの死に際、自分の名を彼女に知ってもらいたくなったと鶴見中尉。
「決して『裏切りの告白』などではない 勘のいい妻なら分かってくれたと信じている」

「二人の骨も今日まで捨てられなかった 諜報活動を命じられた軍人として失格だ」

かつて私的な感情を捨て去っていた月島軍曹は、鶴見中尉の言葉に怒りを感じていた。

「『家族を愛してしまったがゆえに弱くなった』と考えればウイルクを理解できなくもないが……」

そして鶴見中尉はここまで話してくれたソフィアに礼を言う。
「お礼に良いことを教えてあげる 長年に渡る罪悪感からあなたを解放してあげよう」
そう言って荷物から一発の銃弾を取り出す。
「これは娘…オリガの頭の中から見つかった弾丸だ」



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この弾丸はあの時ソフィアが持っていたベルダンの弾ではなく、ユルバルス(キロランケ)の使った機関銃でもなく、拳銃の弾だと鶴見中尉。

長谷川写真館にやってきた秘密警察の持っていた銃S&Wだと44口径と、もう少し口径が大きくなるのに対して、ウイルクが持っていたシュミットM1882は7.5ミリ弾だと言って、鶴見中尉は結論を出す。
「私の妻と娘を撃ったのはウイルクだ」

「オリガとフィーナを殺したのはお前の父親だよ アシリパ」
指から弾かれた弾丸が床を転がっていく。

アシリパは呼吸は荒くして、その弾丸を目で追っていた。



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理解するアシリパ

「アシリパ」
名前を呼ばれ、アシリパは鶴見中尉の方を向く。

鶴見中尉は、回収していたウイルクの顔の皮を被っていた。

「ううう……」
恐怖するアシリパ。

ソフィアも言葉を失っている。

「アシリパ…」
鶴見中尉はウイルクの皮を被ったまま立ち上がる。
「私の 愛する娘 アシリパ 私の娘」

「長谷川サン…」
ソフィアは鶴見中尉に憐れみを含んだ視線を向けていた。

(ああ そうか…)
アシリパは理解する。
(アチャが鶴見中尉をこんな哀しい人にしてしまったのか)

ソフィアは、これまでの全ては恨みによるものだったのかと問う。
「オリガとフィーナ殺した男 ウイルクの希望 私達の未来アシリパ…メチャクチャに壊すために」

月島軍曹は怒りを堪えていた。
(それが本当の目的ならぶっ殺してやる)

鯉登少尉も、扉に耳をくっつけて、固唾を飲んで鶴見中尉の話の続きを待っていた。



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アシリパを追い込む鶴見中尉

ウイルクの皮を脱ぎ捨て、椅子に座り直す鶴見中尉。
「復讐ならばいくらでも機会はあった 樺太で殺しても良かったし 網走監獄を砲撃で更地にすることだって出来た」

「あくまでも私の目的は日本国の繁栄である」
ロシアの南下から日本を守るために戦い続ける軍資金が必要だと鶴見中尉は続ける。
「我々が進むべき道のかたわらに自分の小さな個人的な弔いがあるだけ」

「満州で眠っている戦友たち ウラジオストクで眠っているフィーナとオリガ 彼らの眠る土地が日本の領土になればという祈り」

「だがその個人的な弔いだけのために道をそらすなどということは断じて無い」

鶴見中尉のきっぱりとした主張を聞いた月島軍曹は、安堵の表情を浮かべていた。



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扉に額をくっつけていた月島軍曹は、肩を叩かれ振り返る。
得意げな笑みを浮かべた鯉登少尉が月島軍曹を見下ろしていた。

日露戦争では大勢のアイヌの兵も最前線で戦い、勇敢に散ったこと、金鵄勲章を賜ったアイヌもいると鶴見中尉。
そして、和人との断絶を画策した一部の過激なアイヌたちだけは尊重し、日本社会の中で生きる事を選び、地位向上のために命を懸けたアイヌたちの魂は無視されるのかと続ける。
「日本の分断は軍人として私は許せない」

「父から金塊を託されたアシリパにはアイヌと和人の未来を選択出来る」

「父親の罪を償えるのはお前だけだ」

鶴見中尉の言葉がアシリパに重くのしかかる。



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感想

鶴見中尉が怖い

鶴見中尉の北海道独立の動機について、彼個人の私的な復讐などではなく、あくまで日本の繁栄だと聞いて月島軍曹も鯉登少尉もほっとした様子を見せた。

しかし、これまでの鶴見中尉のやり方を見ていると、鶴見中尉の言っていることに一貫性は感じても、果たしてそれをそのまま鵜呑みにして良いのかという思いに囚われる。

果たして素直に信じ切って良いのか?

あまりにも見事に、話を聞いている人たち、つまりソフィアもアシリパさんも月島軍曹も鯉登少尉も、鶴見中尉に心を動かされ過ぎではないかと感じる。

話の始めは、さも鶴見中尉の個人的な復讐が動機であるかのように告白しつつ、しかし今回、最後にはそれらを全て綺麗に否定し、改めて第七師団を自由に動かすにふさわしい大義を、盗み聞きている二人に教え込んでいるような……。

前述したように、鶴見中尉の言っている事には非常に一貫性を感じる。話を聞いている誰もが圧倒されているのも当然の内容だった。



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しかしどこかに巧妙な嘘があってもおかしくはないかなと思った。
最も怪しいと思ったのは、やはりオリガとフィーナを死に至らしめたのがウイルクの放った弾丸であるという話だ。

ウイルクが自分の妻と娘を葬った、全てはウイルクが原因だという話を、聡明なアシリパさんは理解してしまう。
それにより、アシリパさんのみが知っている金塊の暗号を解く鍵について、口を割らせようという狙いではないのか。

鶴見中尉のソフィアとアシリパさんを巻き込んだ一連の話は、全てそれを狙ってのことだったとしても、何の不思議もないと思う。

ウイルクがオリガとフィーナを撃ったというのは、あくまで鶴見中尉がそれっぽく主張しただけで、それが本当がどうかを確かめる術はもうない。
鶴見中尉が嘘をついていたとしても、バレる心配はない。



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効果的に嘘を吐く方法は、本当のことの中に紛れ込ませることという話は良く聞く。
情報の扱いに長けた鶴見中尉にはこのくらいお手の物だろう。

そして、ついでにこの機会を利用して、月島軍曹と鯉登少尉という有能なコマの再生を図ったんじゃないか?
鶴見中尉がこのような形で盗み聞きを許すとは思えない。話を始める前に部屋の外を確かめたのはどこかわざとらしい。月島軍曹と鯉登少尉が扉で聞き耳を立てているのは知っているような気がしてならない。

今回の一連の会話が、鶴見中尉から離れ気味だった月島軍曹と鯉登少尉の心を、改めて自分に惹きつけ直すための演出のような気がしてしまう。



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ソフィアに、罪悪感から解放してあげると甘いことを言うのも鶴見中尉の人心掌握であり、さらにアシリパさんと微妙に距離をとらせる一手のように感じられる。
オリガとフィーナをウイルクが殺していないのであれば、再び自分が二人を殺してしまったのではないかという罪悪感との戦いを続けなくてはならない。
ウイルクがオリガとフィーナを殺したという鶴見中尉の説得力のある説明は、ソフィアにとっては福音だった。
ウイルクが犯人であることを否定しないということは、ウイルクの娘としての自覚が強いアシリパさんに罪悪感を抱かせる。

それによって都合が良いのは、アシリパさんから金塊の暗号について聞き出したい鶴見中尉だ。
アシリパさんが感じている、ウイルクが鶴見中尉の妻と娘を殺したという罪悪感は、彼女に口を割らせるための一手と成り得る。

もし本当にウイルクがオリガとフィーナを死なせていたとしても、当時生まれてすらいなかったアシリパさんが、娘だからといってそれを償わなければならないということはないはず。

しかしアシリパさんは賢いから、こういうあまりにも嫌らしい搦め手が効いてしまうんだな……。



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もし鶴見中尉の今回の話に、アシリパに罪悪感を抱かせて金塊の暗号を解く鍵を聞き出すことの他に、月島軍曹と鯉登少尉の自分への信頼を取り戻すことといったもう一つの意図があったとしたら、やはり鶴見中尉は化け物だ。

ウイルクの皮を被って恐怖を煽ったことなど、全てはただの演出に過ぎない。彼の本当に恐るべきところは、接する人間の心を自由自在に操る悪魔の技術だと思う。

有古一等卒がアシリパさん救出に向かった。果たしてそれは達成できるのだろうか。

鶴見中尉の化け物っぷりを改めて実感してしまうと、彼を出し抜いてアシリパさんを救い出せるとは到底思えない……。
有古一等卒には、せめて無事にこの場を切り抜けてもらいたいという思いしかない。

以上、ゴールデンカムイ第270話のネタバレを含む感想と考察でした。

第271話に続きます。

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