第133話
第132話のあらすじ
第七師団の駆逐艦による砲撃によって、監獄内のあらゆる箇所が崩落していた。
杉元たちが監獄の外から必死に繋げたトンネルの先、監獄内の宿舎もまた崩落の渦中にあった。
共に、自分たちが掘ったトンネル内を監獄に向かって逃げて行った谷垣、夏太郎、そしてインカラマッ。
インカラマッを見失った谷垣は、彼女が足元で屋根に圧し潰されるようにして身動きがとれずにいるのを発見する。
逃げてくれというインカラマッの言葉を無視して彼女を助けようと必死に屋根を持ち上げる谷垣。
屋根は持ち上がり、空いた隙間からインカラマッが這い出すが、谷垣とともに逃げようとした矢先に再度二人の元に屋根が落ちてくる。
圧し潰されるのを覚悟した谷垣とインカラマッを救ったのは牛山だった。
牛山はその驚異的な膂力で崩落する屋根を受け止め、谷垣とインカラマッが逃げたのを見送ってから屋根を放り投げる。
無事崩落から免れた谷垣たちは、第七師団の駆逐艦によって監獄の上空に打ち上げられた照明弾を見ていた。
のっぺらぼうの収監されている監獄へと進軍していく第七師団。
看守側は機関銃を用いて第七師団を止めようとするが、月島軍曹の正確な爆弾の投擲によって第七師団は進軍の速度を落とさない。
のっぺらぼう(偽)の監獄内で、白石は床板をのこぎりで切って床下の通気に使用する空間を伝って逃げようとしていた。
しかし監獄内に火が燃え移り、それどころではなくドタバタとするのみ。
都丹庵士の言葉に足を止めたアシリパは、のっぺらぼうが偽物であったことを都丹庵士も門倉も承知しており、その上で杉元たちを監獄内に誘導したと指摘。
都丹庵士はそれを否定しない。その背後から現れた土方はアシリパにこの機を逃すなと呼びかけ、ついてくるように促す。
ついに鶴見中尉率いる第七師団はのっぺらぼうの囚われている監獄へと足を踏み入れる。
門倉は素早く見張り部屋に身を隠すが、看守の一人は鶴見中尉に撃ち殺され、生き残ったもう一人の看守はのっぺらぼうの監房へ続く道を指し示す。
その先へと駆け出す第七師団。
そこで鶴見中尉は監房の外、廊下に立つのっぺらぼうと、そのわきに寄り添う杉元の姿を発見するのだった。
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第133話
土方、都丹庵士と相対しているアシリパ。
土方から脱出を促されるが、アシリパは杉元と一緒じゃないと脱出はしないと土方に言い放つ。
土方は動じる事無く、ここに来た目的を忘れたか、とアシリパに問いかける。
そもそもこうして網走監獄に侵入したのは、のっぺらぼうが娘であるアシリパを見て金塊の情報を話すことが目的だった。
であれば、杉元もアシリパとのっぺらぼう――父親との再会を望むはずだ、と土方はアシリパを諭す。
アシリパは伏し目がちになって黙った後、どこにいるんだ? と土方に問いかける。
窮地に陥る杉元
「下がれ」
杉元は、扉の陰に隠れてのっぺらぼうのこめかみに銃口をつきつけたまま、まだ金塊の在り処は聞けていない、と肉薄する鶴見中尉達を牽制する。
外で看守と戦っている兵を含めて63名の部下を連れてきた、と言う鶴見中尉。
鶴見中尉の背後には月島軍曹、鯉登少尉が杉元に向かって銃を構え、さらにその背後には第七師団兵が大挙して押し寄せて来ており、その数は監獄の廊下を完全に満たしている。
のっぺらぼうに向けて銃を突き付けることが逃走の成功に繋がると思っているのか、と鶴見中尉は杉元に静かに問いかける。
「試してやろうじゃねえか」
杉元は叫ぶ。
「全員武器を置いてここから…」
ドンッ
杉元が身を隠している扉を銃弾が掠める。
うわっ、と杉元はのっぺらぼうと共に身を縮める。
「二階堂ッ!!」
鶴見中尉が振り向く。
発砲したのは二階堂だった。その目は完全に杉元に対する憎しみで血走っている。
月島軍曹が平静を失っている二階堂の首根っこを押さえる。
「離せッ 俺が殺す約束だろッ!!」
狂人のような形相で叫ぶ二階堂。
「バカヤローッ」
杉元はのっぺらぼう(偽)と共に元の監獄へと身を潜め、扉を閉める。
「のっぺらぼうに当たったらどうすんだッ」
二階堂の凶弾はのっぺらぼう(偽)の頭部を捉えていた。
「う…!?」
杉元は、力なく頭を横たえ、ビチャビチャと頭から血を垂れ流しているのっぺらぼう(偽)を見て呻く。
杉元は焦る気持ちを必死で抑えつけながら、早く全員この建物から出ろ、と鶴見中尉達に向かって叫ぶ。
「のっぺらぼうの頭をぶち抜くぞッ いいのか?」
横目で杉元の様子を窺いながら作業を続ける白石。
のっぺらぼうの房内は煙で満たされつつある。
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門倉の奥の手
「!?」
宇佐美上等兵が背後を見る。
門倉が見張り場所から、腰を屈めてこそこそと出て行くところを目撃する。
「門倉部長殿ぉ!?」
宇佐美上等兵は、お久しぶりでーす、と不気味な笑顔を貼り付けて門倉に向けて一直線に駆け寄る。
門倉は、何なんだよそのホクロッ、と言い捨てて宇佐美上等兵から逃げるために駆け出す。
宇佐美上等兵が銃を撃つ。
「ぐあッ」
銃弾は逃げる門倉の左肩に当たる。
宇佐美上等兵は、門倉部長すみません、と銃を構えたまま歩いて門倉との距離を詰めていく。
「首を狙ったんですけど…」
宇佐美上等兵の表情には何の感情も籠っていない。
暗がりに門倉を発見した宇佐美上等兵は、門倉が何かレバーを掴んでいることに気づく。
「新人…」
門倉は右手で、大きなレバーを手にしつつ、宇佐見上等兵を見ている。
「まだこの装置のこと説明してなかったっけ?」
ガシャン
門倉はレバーを押し出す。
「樺戸監獄で考案された火災時に作動させる一斉開房装置だ」
ガコン、という音を合図に、網走監獄に収容されている囚人たちの房が一斉に開く。
固まる宇佐美上等兵。
「700人の凶悪犯と戦う覚悟は出来てるか?」
額に脂汗をかきつつも、門倉は宇佐美上等兵に向かって冷静に問いかける。
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第七師団兵63人 対 700人の凶悪犯
鶴見中尉達が陣を構えている棟にある全ての房の扉も同時に開く。
中からゆっくりと姿を現す凶悪犯たち。
「おおおおおおおおおおおおお」
雄叫びと共に他の棟から現れた凶悪犯たちが大挙して宇佐美上等兵に突っ込んでいく。
宇佐美上等兵は銃を持ったまま必死に逃げる。
「着け剣ッ」
脳汁を垂らしながら、鶴見中尉が鋭く声を発する。
第七師団兵たちは鶴見中尉に命じられた通り銃に剣を装備する。
「一匹残らず駆除だッッ」
銃口を囚人たちに向ける鶴見中尉。脳汁がどんどん溢れてくる。
ズドンッ
鶴見中尉の銃撃が囚人の顔にヒット。そして素早く排莢する。
他の第七師団兵も表情を変える事無く囚人の群れに照準を定めて発砲する。
囚人にヒットするが、その背後からすぐに囚人が現れ、あっという間に第七師団兵との距離は縮まっていく。
「おおおおおおおおおおおおおおおおお」
第七師団兵は肉薄してきた囚人に銃剣を突き刺す。
「おおおおおおおおおおおおおおおおお」
囚人は第七師団兵に蹴りを食らわせる。
男たちの雄叫びが監獄に響く。
いくらか冷静になっていた二階堂は杉元が身を隠した房の扉を開ける。
そこにいたのは、床にうつ伏せに横たわったのっぺらぼう(偽)のみ。
部屋の隅で上がっている火の手は房内に煙を供給し続けている。
杉元ぉ? と房内を見渡す二階堂。
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本物ののっぺらぼうの行方
杉元と白石は、白石が拓いた床の通気口の内部を這っていた。
杉元は、土方が仕組んだに違いないと呟く。
都丹庵士もグルならアシリパは土方と一緒かも、と返す白石。
自分たちをのっぺらぼう(偽)の房に侵入させて騒ぎを起こす事により、不安になった犬童典獄が本物ののっぺらぼうの元に向かうはずだ、と白石。
監獄内部には男たちの怒号と銃声が響き渡っている。
犬童典獄は阿鼻叫喚となっている監獄を尻目にどこかへと足を進める。
「最初っからそれが土方の狙いだった」
全てを喝破した杉元。
門倉が杉元と白石をのっぺらぼう(偽)の房に釘付けにしている間にアシリパを本物ののっぺらぼう――アシリパの父ウイルクに会わせて金塊の在り処を聞き出して脱出する。
「この機会にアシリパさんから俺を引き剥がすつもりだ」
いつか俺が邪魔になるはずだから…、と冷静な杉元。
「ふぬぬ…」
白石は外に続く通気高から顔だけを出す。
外に抜け出た白石。その肩は関節を外している。
「通風口が思ったより狭かったが両肩を外せば出られるぞ」
出来るかぁ!! と突っ込む杉元。
通風口を壊せるものを探す、とその場を動こうとする白石に対して、杉元は、自分で何とかするからアシリパを探しに行け、と通風口から腕を伸ばして叫ぶ。
杉元は、近づいてきた白石の襟を握って引き寄せる。
そして、アシリパを確保できたら正門で待て、と必死の形相で頼む。
「アシリパさんを頼むぞッ白石!!」
犬童典獄は教誨堂に来ていた。
その後をつけていた土方、都丹庵士、アシリパ。
土方は、やはり教誨堂だった、と呟く。
犬童が毎日稽古で出入りすることから怪しいと思っていたが、門倉が何度か教誨堂を調べても何も見つける事が出来なかったと土方は続ける。
「ここにいるんだな?」
教誨堂を真っ直ぐ見ながら、土方に問いかけるアシリパ。
土方もまた教誨堂を鋭く睨む。
「犬童典獄がのっぺらぼうを動かす瞬間を押さえる!!」
「行けッ シライシ!!」
鋭く叫ぶ杉元。
真剣な表情で駆けていく白石。
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感想
第七師団兵63人対凶悪な囚人700人!!(笑)
超ヤバイ戦闘が始まった!
雄叫びを上げながら第七師団に肉薄する丸腰の凶悪犯に、何故か感動してしまった(笑)。
あくまで流れなんだけど、窮地に陥っていた杉元と白石を絶妙なタイミングで助けたみたいになってて熱いんだよなぁ。
勇敢というよりもバーサーカーモードではあるんだけど、700人の凶悪犯に心強さを覚えた。
当初は、武装した第七師団兵が、凶悪犯とは言え丸腰の相手に不覚をとるはずはないと思った。
しかし、戦争は数だという言葉があるように、10倍以上の人数を相手にしたら果たして武装の優位がそのまま勝利に直結するのだろうか?
そもそも第七師団兵が相対している700人の囚人は、その凶悪性もあってか、前方の囚人がやられても後から後から第七師団兵に向かって素手で突撃していく蛮勇ぞろいで士気は最高。
何人かやられてすぐに士気が消沈するようなら、10倍以上の相手に対しても第七師団兵が勝利することは可能なんだろうけど、700人の囚人はその点全く揺るがない。
閉じ込められていた鬱憤もあるだろうけど、ここで第七師団兵にむざむざと殺されてたまるか、という「なにくそ精神」の現れかなと思った。
何もしないで死ぬよりは戦って生きること、あわよくばこの場を生き残って監獄からの脱出を選ぶ、という事だろう。
鶴見中尉は焦った様子も見せずに囚人たちと戦っていたが、これは中々の窮地だと思う。
鶴見中尉の事だからこの事態も想定していておかしくはないけど、やはり土方に遅れをとった感じが強く見受けられる。
その点、土方は見事な立ち回りで漁夫の利を得たと言える。
剣や銃の腕もすごければ、頭もキレる。
さすがは歴戦の勇士だわ。カッコよ過ぎ。
この辺りは本当にバトルロイヤル感がバリバリでメチャクチャ面白いな~と思う。
第七師団の猛攻にもそこまで動じていなかったように見えた犬童が、意外と何も出来ていない。
大物感が出ていただけで、本当はそこまで優秀でもないのだろうか。
第七師団兵と700人の囚人が戦っている監獄から離れていく犬童の存在の小ささが何か悲しい。
何か奥の手を持っていて欲しいところ。
700人の囚人以外に何かあるとしたら何だろうな~。
現在、金塊争奪戦の状況としては、アシリパを確保し、本物ののっぺらぼうに近い土方が一歩リードしていると言っても良いだろう。
そして、次は白石にアシリパを追わせている杉元たち。
白石のアシリパ捜索は成功するのか? そもそも教誨堂に辿りつけるのか?
毎度のことながら、次回が楽しみ過ぎる。
以上、ゴールデンカムイ第133話の感想と考察でした。
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