第263話 海賊房太郎こと大沢房太郎
前話第262話 あらすじ
杉元、白石を乗せて、海賊は第七師団に追い付くべくビールの宣伝車を走らせていた。
その様子に気付いた土方は、杉元からアシリパが攫われたことを知る。
海賊は第七師団に追い付くべく宣伝車を走らせていた。
追い付こうとしていた時、海賊は鶴見中尉の放った銃弾で腹部に重傷を負ってしまう。
海賊は真っ直ぐ鶴見中尉のポンプ車を追わず、家の入口から中へと車で突っ込んでいく。
海賊は家の中を通過し、外に飛び出るという無茶な運転を行うが、離されたはずのポンプ車に追い付きつつあった。
しかし 追いつきかけたポンプ車の最後尾で杉元たちを待ち構えていたのは二丁拳銃を持つ菊田特務曹長だった、
菊田特務曹長の連射を食らい、白石は虫の息の海賊と運転を代わる。
徐々に離されていく宣伝車。
しかし杉元は一足先に第七師団のポンプ車に乗り移ることに成功するのだった。
第261話の感想記事です。
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第263話 海賊房太郎こと大沢房太郎
囮
消防服に身を包んだ3人の第七師団兵が馬を走らせる。
その内一人は、人が入るくらいの大きさな布袋を馬の背に載せている。
兵の一人が肩を撃たれて落馬したことで、追手の存在を認識し、警戒する第七師団兵たち。
追っ手として猛烈な速度で兵たちに追い付いた土方は、兵の抱える大きな布袋を掴みながら兵に銃弾を撃ち込む。
しかしその隙に、初めに土方が肩を撃たれて落馬した兵が死角から土方に銃口を向けていた。
放たれた一発は土方が回収した大きな布袋に直撃する。
落下した布袋の中からは大麦が出てきたことから、土方は自分が追っているのが囮役だと知る。
間髪入れず襲い掛かってくるのを兵たち。
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アイヌから手に入れた情報
鶴見中尉の操る馬車に乗り移った杉元は、車の後部にいる菊田特務曹長に向けて銃を振り下ろす。
菊田特務曹長は慌ててピストルを杉元に向けようとするが、杉元を振ってそのピストルを手から弾き落とす。
「不死身の杉元!!」
にやりと笑う鶴見中尉。
鶴見中尉はすかさず杉元に向けて発砲する。
その頃、海賊房太郎と白石はアイドリングしている車の中で会話していた。
なぜ自分を弾除けにしなかったのかと問いかける白石に、海賊房太郎が答える。
「助けたんだから 俺のこと 忘れるなよ お前の子供たちに伝えろ……」
「『お前らがこの世に存在しているのは海賊房太郎こと大沢房太郎のおかげだぞ』ってな」
そして海賊は持っていた全ての刺青人皮を白石に渡す。
「出征しろよテメー 脱獄王で終わるんじゃねえ」
「わかったよボウタロウ わかった」
海賊の願いを聞き届ける白石。
海賊房太郎は白石の襟を掴み、引き寄せて耳打ちする。
その内容に大きく目を見開く白石。
「それがアイヌから手に入れた情報か? そこなのか? そこにアイヌは最初に金塊を集めたんだな?」
海賊は既に事切れていた。
「忘れねえぜ」
白石は車をゆっくり運転して進めていく。
「海賊房太郎こと…大阪房太郎」
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知り合い
鶴見中尉の馬車に取り付き、菊田特務曹長と揉み合いになり、杉元は菊田特務曹長の顔を掴んで、激しく回転する車輪に押し付けようとしていた。
菊田は別のピストルを取り出して杉元に応戦しようとする。
杉元は菊田特務曹長が自分に銃を向けようとしているその手を掴む。
「アシリパさんを返せ!! テメェら全員地獄へ直行させてやる!」
菊田特務曹長は杉元に顔を抑えつけられながらも不敵に笑う。
「上等だよ それなら俺は特等席だぜ!!」
杉元は菊田特務曹長の顔を抑えつけて、その顔を眺める。
「え……? 菊田さん?」
呆気にとられた顔で呟く杉元。
「……?」
菊田もまた、唐突に自分の名を呼んだ杉元の顔をじっと見ていた。
「!! 不死身の杉元って…『ノラ坊』だったのか?」
鶴見中尉が杉元に向けて発砲する。
積載している設備に当たって、杉元はかろうじて銃弾を受けずに済むが、怯んだ隙を突かれて菊田特務曹長に蹴り落とされる。
地面を転がるもすぐに立ち上がり、杉元は走って鶴見中尉たちを追う。
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追っ手
「追っ手はなさそうだな」
鯉登少尉は月島軍曹、二階堂に、合流地点に向かうよう指示する。
大きな布袋は月島軍曹が抱えていた。
ダァン
鯉登少尉の乗っている馬が狙撃される。
「月島ァ!!」
バランスを崩して落馬する鯉登少尉。
「追われていたかッ!!」
敵の姿を探す月島軍曹。
ドスンッ
月島軍曹の馬に飛び乗ったのはソフィアだった。
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感想
面識あり
杉元と菊田特務曹長に面識があったとは……。
杉元は戦地で谷垣と接触していた。
しかし菊田特務曹長との関係は、間違いなく戦地でちょっと接触した程度のものではないだろう。
「それなら俺は特等席だぜ!!」
杉元はこの菊田のセリフを聞いて、それまでアシリパさんを救わんと必死に目の前の敵に挑みかかっていたにも関わらず、敵が菊田であることに気付くと一瞬で戦意を喪失した。
ゴールデンカムイを1話から読んできた人の中には、2話で杉元がアシリパさんから人を食った熊は地獄に行くというアイヌの言い伝えを聞いた際の『人間を殺せば地獄行きだと? それなら俺は特等席だ』というかっこいいモノローグを思い出した人も多いのでないだろうか。
杉元は菊田から影響を受けて、そのセリフを使うようになったのか……? と思った。
それに菊田特務曹長は敵が杉元だと気付き、ノラ坊というこれまで一度も出て来なかった杉元のあだ名らしきものを呟く。
これは過去に少しばかり会話したことがあるくらいの関係性ではまずあり得ない。
杉元のことをもっと幼い頃から知っている感じがする。
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「ノラ坊」呼び、杉元と菊田の互いを認識した直後の態度、そして2話の杉元のモノローグと今回の菊田のセリフ……。
少なくとも杉元は菊田からかなりの影響を受けているだろう。
やはり「ノラ坊」呼びはインパクトがある。
杉元の上官だったのかなと思ったけど、軍に入るくらいの年齢になってからいくら親しくなっても「ノラ坊」とは呼ばないだろう。
郷土が一緒で杉元は子供の頃から菊田と交流があったと考えるほうが自然かなと思う、
仮にそうであったとして、この件が今後の金塊争奪戦に与える影響は果たしてどのようなものなのか。
ただでさえ菊田特務曹長は第七師団で鶴見中尉の下で働きながらも、実は中央の意向で動いていたりと今後の行動が気になる人物だった。
しかし今回の件により、もっと気になる存在になったと思う。
今後、杉元と菊田特務曹長が対面する機会は期待できる。そこでどのような会話が交わされるのか。
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房太郎退場
今回の話のメイン。
前回の話で海賊房太郎が退場する展開になることはわかっていたけど何だか寂しい……。
しかし白石は大沢房太郎って本名をきちんと覚えてやれよ……、大「阪」房太郎と、聞き違えの仕方が絶妙で笑った(笑)。
まさか大阪房太郎で彼の生きざまを語る訳……ないよな。
もしそうなったなら、自分の事を語り継がせたい房太郎にとってはさぞかし無念なことだろう。
房太郎は白石を盾として銃弾を受けることも出来たはずなのに、逆に白石の代わりに銃弾を受けて致命傷を負った。
白石を守ったナイスガイ房太郎が、置き土産に白石にとっておきの情報を伝える。
それは房太郎がアイヌから情報収集した末に辿りついた、金塊が最初に集められた場所だった。
金塊が最初に集められた場所であり、今も金塊があるとは限らない。
しかしその場所を目指すことで何かしらの次への展開は期待できると思う。
札幌での戦いが一区切りとなったら、次は白石の案内で房太郎から聞いた場所へと向かうことになるのかな。
しかしソフィアも参戦して、札幌は完全にカオス状態になっている。
この戦いは一体どう決着するのか。
以上、ゴールデンカムイ第263話のネタバレを含む感想と考察でした。
第264話に続きます。