第242話 交互に
目次
前話第241話 消えたカムイあらすじ
森
杉元とアシリパはエゾヤマザクラの花を見ていた。
それはカリンパニと呼ばれ、鹿の毛が生え代わる時期を示しているので肉が美味くなる知らせといわれていると解説を始めるアシリパ。
サクラの樹皮は、弓に巻いて強度を増したり、マキリや矢筒、船の板を綴じ付ける時にも使うと続ける。
さらにアシリパは、すぐそばにあるオンコの木は、それを使って弓を作らないと弦の張力に負けてしまうため、「弓の木」という意味のクネニと呼ばれていることや、マユミの木(カスプニ)は杓子やヘラに使う杓子の木、さらに銛の先や熊送りの儀式で使用する花矢(ヘベラ)に使われると説明していく。
花矢は子熊をカムイの住むところに導くものだというアシリパに、それは確かに大事だと杉元は同意する。
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海賊房太郎の探り
木陰で寝転がる白石。その隣には海賊房太郎が座っている。
白石が杉元たちと組んで第七師団や土方と命の危険を顧みずに張り合っていることについて、房太郎は白石の性格上、それには違和感があると感じていた。
それに対し白石は成行きだと答えるが、房太郎は勝算があるということではないかと続ける。
「あのお嬢さん のっぺら坊と同じ深い青い目をしているよな?」
ロシアの血が混ざったアイヌは珍しくないと白石。
しかし房太郎は、白石の返答を信用していなかった。
信用出来ないのはお互い様だが、手を組むなら情報は何でも共有しないと命は張れないと房太郎。
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白石は杉元と砂金掘りの作業中の会話を思い出していた。
白石は杉元に、実はすでに金塊の暗号を解く鍵を教わったかと問うが、杉元は、いや、と呟くのみ。
その様子から、白石はそれ以上踏み込むことをやめていたのだった。
(樺太でのことが無駄じゃなかったらいいけどな)
白石は、俺だってそこまで信用されているわけじゃねえよ、と房太郎に答える。
これを見ろよと言って房太郎が取り出したのは金貨だった。
房太郎は支笏湖で砂金と一緒に沈んでいたと言って、続けて問いかける。
「その刻印…俺たちの入れ墨に似てないか?」
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解読の鍵を教えない理由
杉元とアシリパは木の幹を降りていくエゾモモンガ(アッカムイ)を愛でていた。
アッカムイは子守のカムイと呼ばれ、人を助けるカムイなのだとアシリパは説明する。
そしてホロケウカムイもまた人を助けるカムイなのだとアシリパ。
レタラを見つけたのもこのあたりの森だったと続ける。
アシリパは幼い頃、父と一緒に夜空の星を見ていた時のことを思い出していた。
ウイルクがアイヌ独自の星座を教えている。
ホロケウカムイの星座の説明をしていると、アシリパがホロケウとはどのようなカムイかと問いかける。
「『消えてしまったカムイだ』って」
ウイルクが答えたまま、口にするアシリパ。
しかしアシリパは続けて、でもこの森でレタラに会えたと続ける。
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アシリパはウイルクのアイヌ名ホロケウオシコニが暗号を解く鍵だとほぼ確信していた。
アシリパの母がつけたアイヌの名前をわざわざ暗号に入れるような人が、果たしてアイヌを大勢殺して砂金を奪うだろうかと考えていた。
だからキロランケはアチャを殺したのか、そもそもどうしてふたりは死ななければならなかったのかについても、埋蔵金を見つければ答えがわかるかもしれない。
埋蔵金が父やキロランケをはじめ、みんなの運命を狂わせた。
本当に金塊は見つかった方が良いんだろうか、とアシリパ。
(杉元に暗号解読の鍵を教えなければ杉元は私から離れない 私が杉元の弾除けとなれる)
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「杉元 お前はもし金塊を見つけられたらどうするんだ?」
「故郷に戻って好きだった人と暮らすのか?」
(埋蔵金が見つかったら杉元は 私の元から)
「あれなんだ?」
杉元は木を指さす。その木の幹には横に一本の切れ込みが走っていた。
周辺の木に同様の切れ込みがあることを確認して、アシリパはここから離れた方が良いと呟く。
「あッ!!」
木が倒れはじめる。
倒れた木は隣の木にもたれかかり、ドミノ倒しのようになっていく。
「森が倒れてくる」
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第241話 消えたカムイの振り返り感想
今後のストーリーに繋がっていく
既に札幌には各陣営のみならず、囚人も集まっている。
これから激しい戦闘、駆け引きが起こることは必至だ。
ラストでとんでもない事態が起こっている。
切り口があまりにも綺麗すぎる。
チェーンソーでも使わないと無理じゃないの? こんな切り方。
大木のドミノ倒しとか実際にあるのかな……。
ひょっとしてこれも囚人による仕業なのか?
今回は全体としては嵐の前の静けさという感じだった。
しかし、探りを入れる海賊房太郎、杉元からの信頼に疑問を持つ白石、アシリパさんの杉元への気持ちなど、今後のストーリー展開に繋がるような要素がふんだんに含まれていたように思う。
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特にアシリパさんが、暗号解読の鍵を杉元に教えなければ、杉元が自分から離れないから彼の弾除けになれるという想いを密かに抱いていたとは……。
これまでも所々でその気持ちは伝わってきていたが、改めてこうしてみると健気だと思うわ。
杉元もアシリパも互いを大切にしており、そして守りたいと思っている。
これはもはや恋人同士と言っても良いのではないか。
いや、冗談抜きで、血がつながっていたとしても、ここまで互いを思いやれる関係性ってそうそうないだろう。
杉元とアシリパさんの関係性は美しいと思った。
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白石と房太郎
白石は杉元がアシリパから暗号の鍵を教えてもらっていると思い込んでいる。
でもマジで知らないんだよなぁ……。
このすれ違いが問題を生まなければ良いんだけど。
以前、白石は杉元に殺されると恐れるあまり、杉元が白石を助けようとしているのに本人が拒否してしまう事態が起こった。
その時は互いに一時的に別れるだけで済んだが、それはあくまで結果的にというだけの話。
あの頃よりは互いに信頼しているはずだから、同様のことがそう簡単に起こるとは思わない。しかし、一瞬の判断が鈍る危険性はあるのかなと思った。
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海賊房太郎の探りが不気味だ。房太郎は今後も、今回のように白石に対して仕掛けてくるような気がする。
房太郎の恐ろしいところはその肉体の強靭さより、知能だろう。
今回の房太郎の白石との会話の裏からは、隙あらば出し抜こうという意思が潜んでいるように思えてならない。全く油断が出来ない相手だ。
房太郎が見せた、刺青の模様に似た装飾が施されている金貨……。
なるほど。これがあることも、金塊が存在することに対して、房太郎の確信度が高い理由なんだろうな。
確かにこんなの見つけたら関連性を見出さずにいられないわ。
金塊はこの刺青の模様を装飾された金貨が大量に集められている形で隠されているのかもしれない。
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ドミノを仕掛けた人物とは……?
木のドミノ……。
かなり太い幹の木にどうやって深い切り口を入れたのか。
まさか熊がこんなことやれるわけないだろうし、人による仕業と断定して良いだろう。
これは相当なパワー系の人物による仕業なのか?
杉元やアシリパが気付かない内に、いつの間にか仕事が行われていた?
元々切り込みを入れてあったのであれば、なぜこのタイミングで倒れるのか。
次回が気になる。気になり過ぎる。
札幌に行く前に、大木ドミノを起こした一戦交えることになるのか。
241話の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。
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第242話 交互に
告白
杉元は倒木からアシリパを庇う。
大量の木が一気に倒れたのを目撃し、何が起こったのかと焦る白石。
海賊房太郎は、これが北海道での伐採方法だと答える。
白石は杉元たちがこの大量の倒木に巻き込まれている可能性を考え、二人を探し始める。
杉元とアシリパは倒木の下敷きになり身動きがとれずにいた。
アシリパは額から血を流している。
意識が若干朦朧としている彼女を杉元が気遣う。
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(故郷に戻って好きだった人と暮らすのか?)
杉元は以前アシリパから聞かれたことを思い出していた。
「……梅ちゃんっていうひとがいるんだ」
おもむろに語りだす杉元。
アシリパは静かに耳を傾ける。
杉元は、自分が梅子と一緒になるはずだったこと、しかし家族が結核で死んだことで彼女から離れることになり、幼馴染の寅次が梅子と結婚したこと、梅子が目の病気を発症し、その治療のため高額な治療費が必要であること、そして戦地で自分が寅次の犠牲によって命を救われたことを淡々と語る。
「約束を守るために故郷へ戻って寅次の奥さんにカネを渡さなきゃならない」
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救助
白石は必死に杉元とアシリパを探し回っていた。
その様子を見た海賊房太郎は、アシリパが金塊争奪戦における勝算だからかと白石に問いかける。
「うっせーな んなことどうでもいいんだよ!!」
白石はそう吐き捨て、必死に杉元たちを探す。
杉元の話に、じゃあ埋蔵金はどうしても必要だな、とアシリパ。
杉元はアシリパを真っ直ぐ見据える。
「俺は埋蔵金が見つかってもアシリパさんがこの事件に納得が出来るまで相棒のままでいるから」
(本当に聞きたかった答えはそれじゃないんだけどな……)
まず今はここから脱出することが先決だと考え直すアシリパ。
杉元は、白石たちがきっと助けに来ると確信していた。
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白石たちも下敷きになっているかもしれないとアシリパ。
「それでもモゾモゾと木の中から出てくるんじゃねぇの?」
あいつなら一生懸命俺たちを探してくれるさと言う杉元に、白石はよほど金が欲しいんだろうなと返すアシリパ。
杉元はそれに同意するが、白石は自分との約束を守って、樺太でアシリパのそばにいてくれたと続ける。
そうだな、と笑うアシリパ。
「本当はもっと早く教えても良かったけど言いそびれてしまったな」
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「『アッカムイ(モモンガ)』が助けに来た」
アシリパは白石が倒木の隙間から顔を出してこちらを見ていることに気付く。
白石は必至で泣くのをこらえていた。
「樺太でのことが無駄じゃなくて良かったよう……」
白石が杉元たちの位置がわかったのは、杉元やアシリパのことを見ていたヴァシリのおかげだった。
海賊房太郎は木を倒した張本人たちに、木の下敷きになっている杉元たちの救助を呼び掛けていた。
かくして杉元とアシリパは、無事に木の下から救助されるのだった。
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アシリパの得た確信
杉元は、木が伐採され尽くしてしまい、見渡す限り切り株だらけとなった光景を前に呟く。
「ここにいたカムイはどこに行ってしまったんだろうな」
「森のこっち側はこんな有様だったのか」
気付かなかったと白石。
「私達の生活だって樹を切る 和人と一緒に鹿も熊も 狼だって殺して毛皮を売った」
アシリパは淡々と続ける。
「裕福に暮らそうとするのは誰にも責められないと思う 取りすぎなければいいだけなんだ」
狩りで得た獲物の肉を少し山に返すことをはじめ、来年も採れるように山菜を残しておくことなど、既に実践してきたとアシリパ。
「全部取らずに残しておけば私達のカムイは消えない… アチャがそう言ってたのを思い出した」
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白石は海賊房太郎に呼びかける。
「さっきの金貨をアシリパちゃんに見せてやったら? この子はのっぺら坊の娘だ」
それを咎めようとする杉元に、白石は、海賊房太郎がすでにそのことに感づいていると答える。
房太郎は支笏湖に沈んでいたと説明し、アシリパに持っているようにと金貨を手渡す。
そこに刻まれている模様が刺青と似ていることから、金貨はウイルクが作ったものだろうという推測を述べる白石。
アシリパは、金貨に刻まれている模様がアイヌの文様だと『交互に』『交差』を意味すると答える。
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アシリパは、ウイルクがかつてロシアでソフィアに対して、アイヌや極東の少数民族は団結すべきだと言ったこと。
そして支笏湖に沈むまでこの金貨を持っていたのは『ひとつになって守ろう』という想いが変わっていなかったことだと言って、救おうとしていた人たちを殺そうと思うはずがないと前置きしてから結論する
「アチャはアイヌを殺してない…そして私はアイヌのためにやるべきことがようやくわかってきた」
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第242話 交互にの感想
倒木のドミノ倒しは、敵ではなく事故だった。まぁこういうこともある。
しかし危険な伐採方法だなぁ。
杉元とアシリパさんが巻き込まれたのは、辺りが木こりの仕事場だと気付かなかった事や、まさに木を倒す直前のタイミングに折悪しくぶつかっただけだった。
しかしある意味、そのおかげで杉元とアシリパさんは深い話が出来たともいえる。
杉元の動機の深いところや、もし埋蔵金が手に入ってもアシリパが納得するまではそばにいるという決意を知って、アシリパさんは色々と思うところがあったに違いない。
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確信
アシリパさんは父がアイヌ殺しなどやっていないと信じ続けていた。
杉元や白石を含めて、登場人物のほぼ全員がアイヌ殺しはのっぺら坊、ウイルクの仕業だと判断しているのに、アシリパさんはただ一人それを疑い続けたわけだ。
確かにアシリパさんは賢い。でもそれ以上に父のことを信じていたんだな。
そしてこれまで自分が得てきた情報を組み合わせて、父の思想とアイヌ殺しが繋がらないと結論した。
杉元や白石には言えなかっただろう。
ずっと孤独に悩み続けていたと考えると心が痛い。
しかし、ようやく父の無罪を確信できた。
同時にアシリパさんはこれから自分がどう動いたら良いか定めていることができたようだ。
物語が着実に進んでいるのを感じる。次号が楽しみ。
以上、ゴールデンカムイ第242話のネタバレを含む感想と考察でした。
第243話に続きます。