第247話 決まり事
目次
前話第246話 アイヌの偶像あらすじ
格闘
杉元は牛山に投げられるも、床に手をついて叩きつけられるのを避ける。
牛山の髪を掴んでその顔面に膝を叩きこむ。
鼻血を吹きつつも表情を変えない牛山。
杉元と牛山はもつれあって水風亭の入り口から外に出る。
「牛山さん!!」
牛山の背後から現れた海賊房太郎は、店のテーブルを牛山の頭に落とす。
牛山の頭が天板を突き破るが、牛山にダメージはない。
「よう海賊 久しぶりだな」
何事もなかったように言った牛山は、海賊を店の壁に叩きつける。
「やめるんだお前らッ」
門倉がその場を諫めようとやって来るが、不安定な下駄の歯でバランスを崩して足を痛める。
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「牛山離れろ」
土方は杉元にライフルの銃口を向ける。
杉元たちを庇うようにアシリパが土方の前に立つ。
門倉はキラウシに有古と尾形を呼ぶように指示する。
尾形の名に反応する杉元。
「尾形が近くにいるのか?」
杉元は牛山に首を絞められつつも、ヴァシリに向かって声を出す。
「頭巾ちゃん!! 尾形がいるって!!」
尾形は離れた場所にある物見櫓から双眼鏡でアシリパを見ていた。
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杉元は尾形の似顔絵をヴァシリに見せながら、この辺りに尾形がいるとジェスチャーする。
「……」
その意味に気付き慌てるヴァシリ。
尾形はアシリパに照準を合わせていた。
「これ…やったらさぞかし大混乱になるだろうなぁ」
一人笑う。
背後に気配を感じて振り向くも、そこには誰もない。
「…なんだ?」
ヴァシリは梯子で屋根の登つ。
牛山の絞めを食らいつつも、杉元はアシリパに安全な場所へ行くよう促したあと、土方に叫ぶ。
「網走じゃハメてくれたな土方歳三!! 俺をアシリパさんから引き剥がしやがって おかげで俺は尾形に頭を撃たれたぞ」
「網走で殺しても良かった」
土方が答える。
やってみろよくそじじいと杉元。
お前は邪魔になると分かっていた、という土方に、そりゃ邪魔するさと杉元が返す。
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蝦夷共和国
「のっぺら坊と土方歳三はアシリパさんをアイヌの偶像にして新聞で国民を煽り独立戦争の闘士に仕立て上げようとしていたんじゃねえのかよ」
土方は、女子供の兵士は必要ないが、自分の民族の未来がどうでもいいのなら山で呑気に暮らせばいいと答える。
じゃあふたりとも殺し合う必要はない、とアシリパ。
そして土方に、土方が考える未来ではアイヌはどうなっているのかと問う。
土方は、森林資源が枯渇するので蝦夷共和国の経済基盤は炭坑だと答える。
炭鉱開発は諸外国からの移民の働きによって国力増大を目指すこと、そして、そのためには古くから異なる国や民族と暮らしてきたアイヌであれば、多民族国家の『つなぎ』になると土方。
「北海道アイヌと樺太アイヌ そして帝政ロシアに迫害されたポーランド人 それらの血が混ざりあったアシリパこそ多文化国家を象徴する主導役として最適である」
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(蝦夷共和国?)
土方の話に興味を示す海賊。
キラウシに呼ばれた有古と永倉が来ていた。
アシリパは土方に呼びかける。
「第七師団にアイヌの埋蔵金を奪われる事態だけは避けたい 杉元が持っていた刺青人皮はすべて鶴見中尉に網走で奪われた」
「でもこちらには新たに鶴見・土方どちらの勢力も把握していない刺青人皮がある 我々は手を組むしかない」
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刺青を確認するアシリパ
杉元と牛山は戦いのをやめて、アシリパと土方のやりとりを見つめていた。
永倉はアシリパを、見ない間に少し変わったようだと評価する。
「猛者ども相手に渡り合ってる」
アシリパは土方と一対一で会話していた。
海賊房太郎と松田平太の刺青を見せる代わりに土方の持つ全ての刺青を見せて欲しいと頼むアシリパ。
アシリパは、全て揃っていない以上暗号は解けないが、手持ち分を確認してみたいと土方に要求する。
土方は、アシリパにだけなら許そうと答える。
許可を得て、刺青人皮を床に広げて確認するアシリパ。
(刺青人皮にはわたしが思うに必ず決まり事として)
「……そんな」
アシリパはショックを隠し切れない。
(ホロケウオシコニじゃない…!?)
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第246話 アイヌの偶像振り返り感想
合流
アシリパさんの提案で再び手を結ぶことになった杉元と土方。
土方に確認させてもらった刺青の暗号が自分が予想していたものと違ったことにアシリパさんは呆然としていた。
これが、鶴見中尉に仕掛けられたトラップである江渡貝の作った偽の刺青人皮である可能性は十分にあるだろう。
杉元陣営は、まだ刺青人皮に精巧な偽物がある事を知らない。
果たして真相はどういうことなのか。
246話の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。
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第247話 決まり事
2枚
部屋一面に広げた土方の持つ刺青一式を観察するアシリパ。
アシリパは暗号の鍵を思い出して以降、白石、平太、海賊、岩息の刺青人皮の暗号にそれぞれ共通している「決まり事」があることに気付いていた。
土方に、江渡貝の屋敷にあった刺青はどれかと訊ねるアシリパ。
土方が、偽物の可能性が高いと前置きして指し示したそれは、アシリパの見出した決まり事を満たしてはいなかった。
アシリパは関谷、用一郎以外の牛山、家永、土方、都丹、鈴川の刺青は写しだが、決まり事を満たしていることを確認する。
尾形が茨戸の賭場で得た刺青人皮に関しても、アシリパはその刺青の持ち主だった男と面識が誰にもないと土方から説明を受けており、尾形が持っていた以上怪しいと思いつつも、その刺青の暗号は決まり事は満たしていると結論していた。
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夏太郎が油問屋で手に入れた刺青は土方も夏太郎も本物だと説明する。
しかし決まり事が守られていないので、アシリパは怪しんでいた。
土方は茨戸で尾形が手に入れた刺青と、油問屋で手に入れた2枚が本物だと主張する。
剥製屋が作った贋作は6枚。その内5枚は有古一等卒が鶴見中尉の元から逃げる時に持ち出したものだった。よって偽物の可能性が高いと土方は説明する。
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アシリパは、本当に贋作なのかと土方に念を押す。
可能性は非常に高いと答える土方。
アシリパは5枚の内2枚が、決まり事を満たしていることに焦りを感じ、本当に父の名前が暗号を解く鍵なのかどうか確信できず、自信を失いかけていた。
土方はそんなアシリパに、暗号を解く鍵を教えろと迫る。
俯き、わからない、とアシリパ。
アシリパは、全てを入手しないことにに、確信が持てずにいた。
さらに全てを入手した上で、暗号を解くには、偽物の判別法を見つけなければならないと思い至る。
その頃、鶴見中尉は札幌に向けて馬を走らせていた。
鶴見中尉が有古一等卒に持たせた刺青人皮の中には、実は本物を2枚入れていた。
それは刺青人皮に決まり事があると睨んだ上で、解読を妨害するために行っていたことだった。
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酒宴
杉元たちと牛山たちは一つの部屋に集まって酒を酌み交わしていた。
海賊から金塊の分け前の使い道について訊ねられた牛山は、世界中から強者を集めて1番強い奴を決める大会の賞金にすると答える。
夏太郎は羊の牧場を経営すると活き活きとして話し出す。
それに対し、羊なんて絶対失敗すると嗤う白石。
海賊が白石に、どんな夢があるのかと問う。
酒飲んで遊んでといつもやっていることを答える白石。
白石は寝転がって、天井を物思いに耽った様子で見つめていた。
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アシリパは有古一等卒に、苫小牧で殺された7人のアイヌについて問いかける。
有古一等卒は、温厚な父が蜂起しようとしていた事に気付かなったと答える。
アシリパは一時期ウイルクがアイヌを殺しという話を信じていたが、今ではアイヌの未来のために力を尽くしているとアシリパ。
宇佐美上等兵による捜索は暗礁に乗り上げていた。
その様子を密かに見ていたのは石川啄木だった。
啄木は宇佐美上等兵の呟きにインスピレーションを受けていた。
教会と地図と実際の場所に違和感を覚えた啄木。
「わかったぞ!!」
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第247話 決まり事感想
一枚上手の鶴見中尉
アシリパさんは刺青人皮の模様に決まり事があることを見抜いていた。
そして、それはほぼ正しい読み解き方かと思ったら、偽物の可能性が高い刺青人皮の中にも決まり事があるものが混じっていることに気付いた。
しかしまさか、それが鶴見中尉が偽物の中にわざと本物を混ぜたことによる効果だったとは……。
欺瞞情報を流す為なら、本物の刺青すら手放すというのは、ただ単に頭が良いだけではなく、度胸もないと実行はできない。
そんじょそこらの軍人とは全く次元が違う。情報将校の地位は伊達じゃない。
こんな奇策をさりげなく実行できてしまうところに凄みを感じた。
そして、やはりアシリパさんが見出した決まり事は正しいということだ。
まさか偽物の中に本物が混じっている可能性には中々思い当たらないだろうから、鶴見中尉の打っていたこの一手はかなり効果がありそう。
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偽物の判別方法を知っているのは自分だけというアドバンテージを、鶴見中尉が最大限活かした形になるわけだ。
アシリパさんは賢い。
だから、もしかしたら偽物の中に本物を混ぜていたのではないか、と独力で気づけるかもしれない。
しかしそれ以上に鶴見中尉の策を見破れる可能性が高いのは土方ではないだろうか。
アシリパさんが土方に暗号の鍵のことを話せば、偽物の中に本物が混じっている事態を受けて、鶴見中尉がわざと本物を混ぜたのではないかと発想出来るかもしれない。
しかしアシリパさんは土方はおろか杉元にさえ「ホロケウオシコニ」を伝えていない。
それならば杉元を差し置いて土方に「ホロケウオシコニ」を伝えるとは考えづらいので、やはり読者としてはアシリパさんが自ら気付く時まで見守るしかないだろう。
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白石の過去
まさか宇佐美上等兵が呟いたフレーズが、啄木の代表的な作品のルーツだったとは……(笑)。
金塊の分け前を手に入れたらどうするか。
牛山の夢はいいな……。スケールが大きいし、何より面白い。
この時代に最強トーナメント的な大会をやる意義は大きいと思う。
ぜひ岩息との戦いが観たい。
そして意外だったのが夏太郎だ。
彼の、牧場を手に入れて羊を飼うという夢は、結構地に足が付いていて良いなと思った。
羊の牧場を手に入れて、それを子孫に継承していけば北海道のソウルフードというイメージがあるジンギスカンを店に供給しまくって富豪の一族に、なんてこともあり得る?
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中でも気になったのは白石の夢だった。誤魔化しているが、何か確固としたものを秘めているように見える。
まだ
白石の過去で明かされたのは、監獄を転々としてきたことくらい。
それ以前の家族とか、知人とか、そういう人間関係はまだ全然情報が出ていない。
白石大ボス説を考えたことがあるんだけど、もしかしたら過去が明かされる時=大ボスとして正体を現す時だったりするかもしれない。
以上、ゴールデンカムイ第247話のネタバレを含む感想と考察でした。
第248話に続きます。