第249話 それぞれの夢
前話第248話 教会あらすじ
石川啄木は翌日の殺人現場を閃き、興奮気味にメモを走らせていた。
そこに現れたのは宇佐美上等兵だった。
宇佐美上等兵は啄木の口を割るべく暴行したり、啄木のメモを奪い取ろうとする。
啄木は、巡回中の官憲に気をとられた宇佐美上等兵の隙をついてその場を脱出するのだった。
逃げながらメモを破り捨てると、追跡してくる宇佐美上等兵から身を隠すのだった。
翌日、杉元・土方たちは私娼窟エリアで私娼たちからの聞き込みを続けていた。
店だと従業員に顔を見られてしまい、犯行の邪魔になる。実際四人の被害者は全員が街娼だった。
よって犯人が狙うのは道で客をとる街娼だと方針の固めていく杉元たち。
街娼に片っ端から声をかけていけば犯人の犯行現場を絞り込めるが、本日中に大勢の街娼に声をかけることは時間的に無理だった。
しかし、今夜を逃せば犯人は姿を消してしまう。
有力な手掛かりを見つけることが出来ず、半ば諦めかけたその時、宇佐美上等兵から逃げてきた啄木が現れる。
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啄木は犯人が殺人方法だけではなく、殺人現場の位置までジャックザリッパーの真似をしていることを指摘する。
ロンドンのホワイトチャペル、セイントポトルフ教会の周りをぐるぐると回って客を取っていた娼婦が狙われたため、殺害現場は教会の周囲にあった。
それらの現場の位置と、今回、札幌で起きた殺人現場の位置が一致していることから、啄木は次に札幌で起きる第五の殺人現場は札幌麦酒工場だと杉元・土方たちに伝えるのだった。
永倉は大きな働きをした啄木を、見直したと讃え、感涙する。
しかし白石が、啄木の奮闘はこの事件を解決したお手柄であわよくば花魁と……という魂胆だったためと見抜いたことで、永倉の感動は完全に冷めていた。
「あ~あ… 死んでバッタに生まれ変わればいいのに」
いつも通り、辛辣な言葉を啄木に投げかける。
第248話の感想記事です。
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第249話 それぞれの夢
海賊の質問
鯉登、月島、二階堂の三人は宇佐美、菊田との合流地点予定地点の時計台に来ていた。
月島軍曹は鯉登少尉に明日到着予定の鶴見中尉に、これまで通りに接することができるのかと問いかける。
お前こそ、と鯉登少尉。
札幌ビール工場に勢揃いする杉元陣営と土方陣営。
一行は囮役、合図役、仕留め役の三人一組で構成された四つのチームで付近一帯に散らばり、犯人をおびき寄せて刺青人皮を確保する作戦を実行するため、工場付近にいる娼婦を排除していた。
海賊は杉元に、唯一暗号の鍵について知るアシリパを作戦に加えるのかと訊ねる。
それに対し、一緒にいた方が良い、と杉元。
「土方は一度裏切った 裏切った奴は何度でも裏切る」
私も杉元から離れない、と言ってから、相棒だからと付け足すアシリパ。
そして、アイヌの未来を守るための埋蔵金だから、自分だけ安全なところで待っていられないと続ける。
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未来のアイヌを守るのがアシリパの夢なのかと訊ねる海賊。
誰かがやらなければいけないことだから私がやると決めたというアシリパに、海賊は再び質問する。
「それは自分も幸せになること?」
人に夢ばかり聞く海賊に辟易をし始めるアシリパ。
海賊は、参考にしたいのさ、と悪びれることなく返す。
「『王様になって家族をたくさん作る』以外にもっと良い方法があればそっちに舵を切る」
自分が一人になった時に、このまま自分が死ねば家族の記憶も全てこの世から消えることの寂しさから、自分のことを後世まで伝える人を残せたら幸せだと自分の夢の動機を語る海賊。
杉元と白石はじっと聞いていたが、やがて杉元は無言で駆け出し、街娼にこの場から去るようにと忠告していく。
杉元の様子を見つめているアシリパに、海賊が訊ねる。
「アシリパちゃんの想う未来に杉元佐一はいるの?」
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作戦開始
仕留め役の牛山、合図役のキラウシは、囮役の門倉を少し離れたところから見守っていた。
娼婦に扮装した門倉の姿に、こないだ抱いた街娼にそっくりだと感想を漏らす牛山。
仕留め役土方、合図役永倉、囮役夏太郎。
仕留め役都丹庵士、合図役有古、囮役海賊。
有古は海賊の立ち姿を見て、街娼にしては背が高過ぎると呟く。
有古の方が良かったんじゃねえのと都丹。
仕留め役杉元、合図役アシリパ、囮役白石の組は、白石の背後から山高帽の犯人らしき男が接近していた。
杉元は、白石を街娼と勘違いして話しかけている男の背後から銃の持ち手でいきなり後頭部を殴りつけると、男の服をはだけさせて刺青の有無を確認する。
刺青が無いのを確認した杉元は、合図の為の花火に火をつけようと待ち構えていたアシリパに、手のひらを向けて、首を振って見せる。
土方組の囮役、夏太郎に山高帽の男が話しかける。
そのぎこちない日本語から、外国人だと直観する夏太郎。
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犯人像
作戦決行前、杉元陣営、土方陣営は門倉から刺青囚人の一人で犯人の可能性が高い国籍不明の男、マイケル・オルトログについて情報を得ていた。
マイケルは貿易船で密入国し、横浜で娼婦を殺したことで、日本で初めての死刑囚となって網走監獄に収監されていた。
札幌農学校には雇われた外国人が大勢いるため、外国人自体は珍しくは無いが、貧民窟を歩くような外国人には注意が必要だと門倉。
札幌の地図を前にして啄木は、犯人がロンドンの事件を真似ているだけなのかと疑問を口にする。
「ロンドンの事件は約二十年前 ジャック・ザ・リッパーが犯行当時二十代と仮定してどこかに姿を消しているとしたら五十代……」
マイケル・オルトログもそのくらいだ、と門倉。
遠く離れた故郷ロンドンを想ったマイケルが自分の起こした思い出の犯行現場を真似ようとしたのではないかと推理を披露する啄木。
「札幌に自分の聖地を作ろうと……」
街娼に扮した門倉の背後に宇佐美上等兵が立っていた。
その手には地図を持っている。
その地図には、啄木が地図にメモした犯行現場と同じ位置に印がしてある。
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感想
予想外の犯人
もし連続殺人の犯人が外国人だったとして、その候補として名前が出てきた刺青囚人マイケル・オルトログ。
そのマイケルが、まさかの切り裂きジャック本人説が濃厚になってきた。
予想外だったけど、でも考えてみれば、切り裂きジャックの熱烈な信奉者が遠く離れた国で犯行を模倣するよりも無理がないように感じる。
刺青囚人の一人が切り裂きジャックか……。面白い設定だ。
イギリスの警察の手から逃げて、日本に来ていたということなのか。
仮にマイケルが切り裂きジャック本人だとして、その戦闘能力はどんなものなのだろう。
無力と言って良い娼婦を狙っているわけで、その残忍さは伝わってくるものの、果たして強いのかどうかはわからない。
杉元たちなら不意を突かれたりしない限りは対処できるのではないだろうか。
まだ戦いは始まってすらいない以上、マイケルの戦闘能力は未知だが、結果的に今回の戦いは、広い札幌の街でどう犯人を探すかこそが実質的な戦いだったと言われるようになるのかもしれない。
そのくらい今回の戦いは、犯人捜索に比重が置かれている。
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ただ、仮に切り裂きジャックの戦闘能力がそこまで恐れるほどではなかったとしても、宇佐美上等兵がいるんだよな……。
宇佐美上等兵は、なぜか啄木がメモをしたのと同じような地図を持っていて、囮役の門倉に接近している。
札幌ビール工場付近に来ているという事は、ただ犯行のあった箇所を地図にマーキングするだけではなく、それに加えて切り裂きジャックの犯行についての知識がなければいけない。
地図+切り裂きジャックの犯行に関する知識があって初めて、杉元たちのいるビール工場付近に辿り着くことができるはずだ。
切り裂きジャックと似たところがある宇佐美上等兵の勘が、当たりを引き当てたということなのか。
おそらく切り裂きジャックとの戦いだけなら、数の観点からも杉元たちの勝利は固い。
しかし宇佐美上等兵をはじめとして、第七師団の強者たちが集結したなら戦火は一気に大きくなる。
つまり今は、切り裂きジャックとの戦いがそのまま杉元+土方VS第七師団の抗争へとスライドしかねない緊張感溢れる場面と言えるだろう。
果たしてどのような展開になるのだろうか。楽しみだ。
以上、ゴールデンカムイ第249話のネタバレを含む感想と考察でした。
第250話に続きます。