第223話 二階堂 元気になる
目次
前話第222話 刺青人皮のあらすじ
インカラマッと鯉登少尉
ベッドで横になっている鯉登少尉を占うインカラマッ。
インカラマッの腹部に受けた重傷は快方に向かっており、すでにベッドから起きることができるようになっていた。
インカラマッから今日の運勢が吉だと言われ、鯉登少尉は「キエ~イ!!」と奇声を上げて喜ぶ。
鯉登少尉に月島軍曹の運勢も占うように言われたインカラマッは占った結果を「凶」と告げる。
「キエ~イ!!」
鯉登少尉に煽られて、プイとそっぽを向く月島軍曹。
インカラマッはその光景を微笑ましく見つめていた。
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苦悩する谷垣
谷垣は菊田特務曹長に金塊争奪戦から降りると言ってその場から立ち去ろうとしていた。
歩き出した谷垣の行く手に立ち塞がった鶴見中尉は、インカラマッを網走から別の場所に移したと告げる。
抜けるなら女を殺すというのか、という谷垣に、まさかと首を振る鶴見中尉。
「そんなむごいことをさせないよな? 谷垣源次郎は…」
谷垣は自分が金塊探しも政権転覆にも向いていないこと、庶民であろうとすることは悪なのかと問いかける。
その問いに対して菊田特務曹長は命懸けで戦った兵士を見捨てるのかと問い返す。
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谷垣は自分がいれば士気を下げるだけ、とこれ以上の鶴見中尉への協力をやんわりと断ろうとするが、鶴見中尉は折れない。
「『あの女のことだから回復すれば自分で逃げ出すだろう』とたかをくくってるんだろうがもうそれは難しいぞ」
「インカラマッに何かしたんですか?」
声を荒らげる谷垣。
「谷垣源次郎の子を宿している」
思わぬ答えに呆然とする谷垣。
そして鶴見中尉は谷垣に、アシリパを連れ戻せば谷垣とインカラマッを解放すると持ち掛けるのだった。
そもそも谷垣の役目はフチの元へアシリパを帰すことだったので、それをやれば全ては丸く収まると鶴見中尉は谷垣を説得する。
「谷垣…お前なら杉元佐一に警戒されずに近づけるはずだ」
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本来の目的
平太の刺青人皮を剥いだ杉元たち。
新しい刺青人皮を手に入れたことで本来の目的である金塊探しに立ち直れたと杉元。
アシリパは金塊に辿り着けばアイヌの金塊強奪事件の真相も明らかになるかもしれないと答える。
砂白金をちまちま集めている場合ではないと表情を引き締める白石と杉元。
しかしアシリパが平太が腰に下げていた熊の掘られた入れ物を開けて、その中から平太がそれまで収集してきた砂白金が転がり出てくると途端に杉元と白石の血相が変わる。
奇声を上げて砂白金を奪い合う杉元と白石をアシリパは黙って見つめているのだった。
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合流
門倉とキラウシは花札を楽しんでいた。
門倉が弱すぎる、賭け事に向いてないと笑うキラウシ。
門倉はそんなキラウシの隙をついてチラッと山札の一番下の札を覗き見る。
「いま『尻のぞき』した~!!」
キラウシに不正を気づかれた門倉だったが、あくまで不正を認めない。
「尻の穴のぞき野郎が!! 『尻のぞき』するって…!」
門倉を心の底からバカにするキラウシ。
「うるせえこの野郎」
そんなキラウシに飛びかかる門倉。
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「こいつら毎日ダラダラと…」
揉み合う二人に呆れた視線を向けるのは、牛山を伴い帰ってきたばかりの永倉だった。
「おや」
牛山は、尾形がまるで猫のように火鉢の近くで寝転がっていることに気付く。
「のら尾形が帰ってきてる」
続けて現れた土方は尾形に、網走監獄から今日まで何をしていたのかと訊ねる。
尾形は、あの夜、杉元とのっぺら坊は流れ弾に当たって倒れたこと、アシリパの記憶を呼び覚ますことを期待してソフィアに会わせるために樺太に向かったキロランケに自分がついていったこと、樺太で杉元に追いつかれてアシリパを奪われたこと、キロランケを殺され、自身も負傷したことを簡潔に報告するのだった。
どうして杉元がキロランケを、と疑問を口にする牛山。
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永倉は、杉元がアシリパ奪還のために鶴見中尉らと協力して樺太に来たからだと答える。
そして杉元たちが集めていた刺青人皮は全て鶴見中尉に奪われていると考えられるが、鶴見中尉を樺太で裏切り、アシリパと一緒に北海道に逃げ帰ってきていると続ける。
樺太土産は二つある、と尾形。
一つは、アシリパを奪いに樺太からやってくるソフィアという新興勢力の存在について。
そしてもう一つは、アシリパが金塊の暗号を解く鍵を思い出したということだった。
一刻も早くアシリパを探さなくちゃ、と門倉。
それに対して尾形は、杉元たちも刺青人皮を集める以上、向こうからくる、と淡々と火鉢に手をかざす。
「刺青人皮の枚数はもはや土方陣営か鶴見陣営かの二極化しているんだからな」
土方陣営は9枚、鶴見陣営は14枚、そして杉元陣営は2枚。
刺青人皮の残り枚数はいよいよ残り4枚となっていた。
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第222話 刺青人皮の振り返り感想
あと4枚
また重要そうなタイトルだと思ったけど、実際、見所がたくさんある回だった。
まず刺青人皮について。
残り4枚ということは、変態囚人の枠のストックが残り4人なのか。
ちょっと寂しくなった。
段々終わりが近付いてきているんだな……。
とはいえ、まだまだ金塊争奪戦がどうなっていくか、展開は想像できない。
確かに杉元陣営は鶴見中尉にそれまで集めていた刺青人皮を奪われた。
しかし、まだ鶴見陣営と土方陣営の手に渡っていない平太の刺青を手に入れたことで金塊争奪の戦線に復帰できた。
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今回手に入れた刺青で現在2枚と他の二陣営と比較して収集数で圧倒的に負けており、なおかつ戦力でも負けているとは言え、金塊の暗号を解く鍵であるアシリパも同行している杉元陣営にもまだチャンスはある。
状況をまとめると、今のところはやはり鶴見陣営が刺青人皮の総所蔵数14枚とトップを走っている。
次点の土方陣営は9枚。
両陣営で被っているのは鈴川、家永、都丹の3枚。
さらに杉元陣営も含めてすべての陣営が持っているのが白石の刺青。
杉元陣営は圧倒的に数が少ないが、平太の刺青と暗号の鍵を所有している。
鶴見陣営と土方陣営のぶつかり合いは激しくなっていくだろうし、引き続き杉元陣営も鶴見陣営の追跡を警戒しなくてはならない。
それに今回、尾形が土方と合流したことでアシリパが暗号を解く鍵を知っていることが土方陣営にも知れ渡った。
今後、アシリパは両陣営から狙われることになる。
果たして全ての刺青を最初に集めきるのはどの陣営なのか。
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鯉登少尉生きてた
鯉登少尉が生きてて良かった。
あの流れであっけなく死ぬこともあり得た。
しかし月島軍曹のその後の対応が早かったんだろうな。
しかし、鯉登少尉が「キエ~イ」って月島軍曹を煽るのには笑った。
元気で結構。
今後、鯉登少尉と月島軍曹はどう動くのだろう。
元々鯉登少尉は鶴見中尉に従い続ける事に疑問を抱いていたし、鯉登少尉が刺された後の鶴見中尉の冷淡さに月島軍曹もついに我慢の限界が来ているような印象を受けた。
正直、今後鯉登少尉と月島軍曹が以前の様な忠誠心で鶴見中尉の手足として動くとは考え辛い。
かと言って土方陣営はもちろん、杉元陣営に合流して鶴見中尉に敵対するまでいくか? と考えるとそこまでではない気がする。
今後の二人の動向には注目したい。
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苦悩の谷垣
もはや第七師団兵として鶴見中尉の為に戦う意味を完全に失った谷垣だったが、ここにきて杉元の敵として復帰か?
さすがに自分の子を宿しているという愛しの女性を人質にとられてしまっては、谷垣も鶴見中尉に従う他ないと思う。
しかし鶴見中尉は上手いと思う。
谷垣にはあくまでアシリパ奪還の一点のみを命じている。
土方陣営には一切関わらせるつもりはないようだ。
それも谷垣がフチの元を旅立った際の動機である「アシリパをフチの元へ連れ戻すこと」を引き合いに出し、ただそれを実行するだけ、と行動する心理的なハードルを下げている。
さらに鶴見中尉は成功の暁にはインカラマッと谷垣を解放するという餌を谷垣の鼻先にぶら下げた。
インカラマッを人質にとられている以上、谷垣としてはここはひとまず従うしかないだろう。
しかしインカラマッと我が子を守るためとはいえ、本当に谷垣に杉元たちを裏切ることができるのか?
谷垣の葛藤の日々が始まる。
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尾形の報告
尾形が土方陣営に合流。
確かに元々土方陣営にいたし、おかしくはないんだけど、なんというか、土方陣営を利用しようと色々と脳裏で画策している感じがする。
土方たちへの報告の中で、網走監獄では杉元とのっぺら坊があくまで流れ弾に当たったと嘘をつく尾形はやはり不気味だ。
一匹狼と言えば聞こえは良いが、結局尾形は誰も信用せず、他者を迷いなく踏み台にして自分の目的のために邁進するサイコパスに過ぎない。
尾形は、今のところ作中の人物の中で鶴見中尉の次にヤバイ奴だと思う。
機を見て土方陣営を皆殺しにすることも考えられる。
尾形は自分が杉元とのっぺら坊を撃ったという点以外は、アシリパが暗号を解く鍵を思い出したことまで、樺太で自分の知り得た情報を推測まで含めてほぼ全てを報告している。
いくら土方が頭がキレるとはいえ、今回の尾形の報告に特に違和感はないだろう。
ただ土方は頭が切れるし、尾形に限らず他のメンバーに関しても100%信用し切っていないのかもしれない。
今後の尾形と同時に土方の行動にも注目したい。
222話の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。
第223話 二階堂 元気になる
ハイテンションな二階堂
鯉登少尉の病室に訪問する二階堂。
二階堂は、自分のテンションの高さの理由を、有坂中将からもらった新薬のおかげだと答える。
有坂中将は、友人の薬学者が作った薬、メタンフェタミンだと解説する。
鯉登少尉は家永の診察を受けている。
鯉登少尉の腕を噛もうとする家永の頭に銃口を押し付ける月島軍曹。
「お前も刺青人皮にしてやろうか」
医者の代わりはいるが自分のような名医はめったにいないと家永。
「鶴見中尉もそうおっしゃっていたでしょ?」
二階堂は元気に病室内を走り回っている。
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用心
家永が第七師団に捕まっているなら、彼がかつていたことがあるこの場所も危険なのではないかと尾形は疑問を口にする。
永倉は、家永にとっては滞在先のひとつでしかないと思うが? と返す。
牛山も、すでに殺されているかもと答える。
彼らに対し尾形は、鶴見中尉をなめてる、と釘を刺すのだった。
「あの男は網走から全ての滞在先をたどってここまで見つけ出すぞ 死神から逃げ続けるのは簡単じゃねえ」
それまで沈黙していた土方が呟く。
「尾形が正しい 鶴見中尉相手に用心しすぎるということはない」
外に出た尾形。
飛び立とうとするマガモを狙撃する。
しかし銃弾はマガモに当たらない
「………」
尾形は遠ざかっていくマガモをじっと見送っていた。
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海賊房太郎
土方たちは尾形の懸念を元に根城を寺に移動していた。
色々な人物が出入りする寺なら逆にいいかもしれない、と夏太郎。
門倉は土方と永倉に向けて、看守仲間のツテで聞いた話だと前置きすると海賊房太郎について話し始める。
網走監獄が破壊されたことによる囚人の補填、そして監獄の再建のための作業員を兼ねて樺戸監獄から大勢の囚人が移送された。
しかし、その内の何人かの囚人が脱走したのだという。
そしてその囚人とは、24人の刺青囚人の一人である海賊房太郎の側近なのだと続ける。
海賊房太郎とは強盗殺人55件をはじめとした各種犯罪を犯してきた重犯罪者であり、網走脱獄囚24人のひとりだった。
門倉の話を黙って聞いていた土方が呟く。
「海賊房太郎 あいつが動き出したか」
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尾形はオオハクチョウを獲って寺に戻ってきていた。
それを見て、食えんのか? と牛山。
門倉も、何でもかんでも獲ってくるなよ、と冷たい反応を示す。
「尾形上等兵…!?」
有古一等卒が尾形に気付き驚く。
お前もか、と尾形。
「お前が鶴見たちを裏切るとは…分からんもんだな」
「私もあなたが裏切るとは思いませんでした」
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キラウシはレタッチリ(オオハクチョウ)は親父たちがたまに食べていた、と話し始める。
今の時期の白鳥は太っているために飛べず、鉄砲を使わなくても簡単に捕まえられるものの、アイヌには白鳥を食べると白髪になるという言い伝えがあり、子供は絶対に食べさせてもらなかったため、自分もその影響で食べないのだとキラウシは続ける。
夏太郎は、土方さんたちしか食えねぇじゃん、と呟く。
「オレも白髪ヤダからやめとくわ」
「都丹の頭は完全に白髪だぞ」
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牛山の指摘に驚く都丹。
「オレ白髪になってる? 昔は真っ黒だったのに…」
「美味そうだな…」
牛山は白鳥の肉を大鍋で炊いているのを見ている。
「老いがそんなに怖いか鼻垂れ小僧どもは…」
永倉はそう言って、うまいうまいとハクチョウを食べている。
土方は、誰にでも平等に死は訪れる、と呟く。
「どうぜ逃げきれんのならビクビクと待つより美味いものを食って楽しむ」
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唾を吐く永倉
門倉たちは布団を並べて横になって会話していた。
その話題の内容はハクチョウの言い伝えに関してだった。
老人たちで美味いものを独占したくて子供たちが食べないようについた方便だろ、と夏太郎。
それを聞いた牛山は、狂言の狂言の附子みたいな話だ、と呟く。
牛山の言葉にピンときていないキラウシに、和尚が小僧に黒砂糖をトリカブトだと偽って食べさせない話だと門倉が説明する。
翌朝、ハクチョウの残りが入っていた大鍋は空になっていた。
「なんだ 結局お前ら残ってた白鳥鍋全部食べたのか」
永倉が夏太郎たちに声をかける。
「まったく…食い意地がはっとるな」
白鳥を食べたら白髪になるというのが本当なら、ハゲ頭にはならないことだと思いやしてね!! と笑う門倉たち。
永倉は彼らと一緒になって笑ったあと、ふと真顔になって唾を吐くるのだった。
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第223話 二階堂 元気になるの感想
どうなる尾形
尾形の狙撃の命中精度低下は、利目が潰れれば当然のことではあるんだけど、でもショックだよなー。
以前は狩りの際の狙撃は百発百中だった。
しかし今のマガモにすら命中させることができない射撃精度は、彼の戦闘能力低下を実感したわ……。
とはいえ杉元と戦った時のことを振り返れば、接近戦も出来ていた。
しばらくは狙撃以外の技術で戦うしかない。
海賊房太郎はおそらく次回以降のエピソードに絡んでいくのかな?
どうやらこいつはこれまでの囚人の中でも大物のようだ。
囚人の側近もいるらしいし、簡単には倒せないのではないか。
気になるのは、海賊房太郎と戦うのは土方たちか、それとも杉元たちか。
刺青人皮の数では圧倒的に負けている杉元たちに狙っていって欲しい。
鶴見陣営や土方陣営の刺青を手に入れるよりは楽なんじゃないかな……。
以上、ゴールデンカムイ 第223話のネタバレを含む感想と考察でした。
第224話はこちらです。