第241話 消えたカムイ
目次
前話第240話 菊田特務曹長あらすじ
中央
菊田特務曹長に姿を見つけられ、焦る有古一等卒。
さきほどまで永倉と一緒だったこと、そして鶴見中尉も土方も自分のことを疑っていると有古一等卒が深刻な表情を見せる。
「じゃあ俺につけよ」
有古一等卒は菊田特務曹長からかけられた言葉が何を意味しているのかわからなかった。
そんな有古一等卒に、いいか有古よく聞け、と菊田特務曹長。
「お前を信じているのは俺だけだ」
菊田特務曹長は有古一等卒に対して、アイヌの父親の遺志、鶴見中尉に殺された親戚のことを忘れろと忠告を始める。
鶴見中尉、土方のどちらについていっても破滅しかないと言って、衝撃的な言葉を続ける。
「『中央』は鶴見中尉に金塊を見つけさせて最後には消せといっている」
「あんた…中央政府のスパイか!!」
驚愕する有古一等卒。
札幌の街を、何かを探しながら歩いていた連続殺人犯は、教会に目を止める。
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40日
夏太郎は新聞売子、土方は金魚売り、牛山は虚無僧、門倉は高野行人、尾形は人形を体の前面に設置した”親孝行”の格好をして街に溶け込んでいる。
乞食の格好をした永倉は土方の前に石川啄木を連れてきていた。
啄木は土方に、新聞社に被害女性の腎臓が届いていたこと、その荷物に汚い字で「ジゴクより」というタイトルで、再び殺しをやるという内容の挑発的な手紙が添えられていたこと、それがジャックザリッパーの犯行にそっくりであることを報告する。
そして、ジャックザリッパーとはロンドンで起こった連続殺人事件の犯人とされてきた男の名だと説明を始める。
被害者の体の一部が持ち去られたこと自体は珍しくは無いが、新聞社に手紙を送って警察を挑発、犯行予告をしたことがジャックが行った新しい犯罪の形だった。
その後ロンドンではジャックの模倣犯が増え、同じ地区で殺人が急増したが、実際に本物のジャックが関与したのは五人だった。
最初の殺人からひと月ごとに一人ずつ殺害し、三人目、四人目は一夜の内に犯行を行っている。
それは札幌で起きている連続殺人と全く同じであり、犯人はジャックを信奉しているのではないか。
そしてジャックの犯行の特徴として、犯人が捕まらず消えてしまった事にあると啄木。
ジャック最後の事件である最後の五件目の殺人は、四人目の殺人から40日後に行われたと続ける。
「つまり40日以内に捕まえなければ犯人はどこかに行ってしまう可能性があるな」
土方は冷静に話をまとめる。
お気に入りの遊女が恐怖のために東京に帰ってしまったので犯人が許せないと憤る啄木に永倉が突っ込む。
「クソの塊みたいな野郎だな」
「ところで全くの別件で気になる記事があるんです」
啄木は新聞を開く。
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カミソリ
白石は杉元に新聞の記事を見せていた。
それは札幌を恐怖に陥れている連続殺人についてではなく、北海道各地で子供が消えているという内容だった。
白石の説明を聞きながら、アシリパは江別など自分たちが通ってきた街がその舞台になっている事に気付く。
「子供の誘拐犯…アイツかも」
海賊が呟く。
「名前は上エ地圭二 子供を何人もさらっては庭に埋めてた殺人犯で顔にいたずら描きみたいな刺青を入れた囚人さ」
飴売りだ! とアシリパ。
「上エ地圭二はもちろん網走脱獄囚24人のひとりだ」
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宇佐美上等兵が鶴見中尉からの電報を振りまわりながら菊田特務曹長の元へ駆けていく。
鶴見中尉が札幌に向かっているとハイテンションで叫ぶのだった。
啄木は新聞を読みすすめる。
子供が北海道各地で相次いで行方不明になっていると言って、その被害地域を読み上げていく。
「最近だと旭川 歌志内に岩見沢 江別」
アシリパは、子供誘拐犯が自分たちと同じ方向に向かっていると理解していた。
飴売り私達と同じ方向に向かっていたことに気付く。
「札幌で何が起きようとしているんだ?」
”親孝行”に扮していた尾形は、真剣に仕事をしていた。・
「親孝行の息子です ご報謝願います。
「帰るぞ尾形!!」
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第240話 菊田特務曹長の振り返り感想
網走監獄での戦い以来の激戦の予感
札幌に集う役者たち……。
ここまでキャラクターがひとつの場所に集結したのは網走監獄以来じゃないだろうか。
あれ以来の……、いや、あれ以上の、何かとんでもないことが札幌で起こりそうな予感がしてきた。
きっと様々な勢力が入り乱れて激突するのだろうけど、それがもはやどういう展開になるのか、そしてどんな結果になるのかが全く想像できない。
まさにカオス状態だ。
この札幌での混乱が、刺青収集競争で鶴見中尉や土方に負けている杉元が、彼らの陣営をごぼう抜きして飛躍するきっかけとなるのか。
それとも鶴見中尉、土方が連続殺人機や上エ地を捕え、刺青を得て他陣営に大きく差をつけるのか。
まさか連続殺人鬼が40日間捕まらず、最後の殺人を遂げて逃げるなんてことはないよな……?
上エ地も一筋縄ではいかないような狂気を孕んだ曲者っぽいし、この先、杉元たちは大変なことに巻き込まれる事は間違いない。
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中央からのスパイ
鶴見中尉、土方のどちらに従っても窮地に追い込まれるという、非常に苦しい立場の有古一等卒。
菊田特務曹長はそんな二つの勢力の狭間で翻弄されている有古一等卒に手を差し伸べた。
自分が有古一等卒の立場なら、菊田特務曹長に頼ってしまう。いや、縋ってしまう。
実際、彼の立たされている状況では、菊田特務曹長が言った通りこのままだと人生の破滅は濃厚だ。
しかし有古一等卒がこの状況に絶望し、何もかも諦めかけそうになったところで「自分について来い」と菊田特務曹長に言われたら、そりゃ高確率で従ってしまうよ……。
実はこれは菊田特務曹長の狙いだったりするのだろうか。
かつて戦地で互いに死線を越えた戦友同士、その関係性は非常に濃い。
中央から任命された「鶴見中尉に金塊を見つけさせたらすかさず殺害する」という任務の遂行はもちろん、大切な戦友である有古一等卒の命を救うという二つこそが菊田特務曹長の行動動機だったわけか。
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菊田特務曹長が第七師団に監視のために潜り込んだ中央からのスパイだった。
正直、これは驚きだ。
今回のタイトルになるわけだ。
確かに振り返ってみれば、菊田特務曹長は宇佐美上等兵や鯉登少尉などと比較するとそこまで熱烈な鶴見中尉の信奉者という感じはなかった。
もちろん表面上は忠実な部下なんだけど、鶴見中尉からの命令に少し戸惑っているような場面もあったような……。
その忠誠が、実は中央にあったのであれば納得がいく。
気になるのは鶴見中尉がそれに気づいているかどうかだ。
鶴見中尉の諜報能力は作中でも随一の腕と言って良いだろう。
そんな鶴見中尉のことだから、ひょっとしたら菊田特務曹長に中央の息がかかっていることを知っていてもおかしくない。
それを知りながら泳がせている可能性は十分あると思う。
もし菊田特務曹長が中央からの監視者だと知っていて、札幌に宇佐美上等兵と先行させたとすれば、宇佐美上等兵は菊田特務曹長の動きを逆に監視している立場でもあるのかもしれない。
色々な可能性を考えるほど、この先の展開の予想が困難だとわかる。
こうやって色々妄想できるのがリアルタイムで連載を継続して読む楽しみだよな~。
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囚人たち
刺青人皮収集勢だけではなく、囚人の動きも注目だ。
子供を標的にしている上エ地圭二。
そしてジャックザリッパーを模倣している刺青囚人の連続殺人鬼。
特に連続殺人鬼は40日以内に捕まえなければ札幌から姿を消してしまう可能性が出てきた。
タイムリミット40日後って長くないか?
もし40日という設定が物語でギミックとして活かされるなら、1日、2日で札幌での戦いが終わるわけではないのか?
様々な陣営による散発的に戦いが継続するのか。
それとも互いに様子を窺い合い、緊張状態が続く心理戦へともつれこむのか。
この先の展開が超楽しみになってきた。
実際何かが起こるのはもう少し話数が進んでからかな?
もう少し嵐の前の静けさは続くかもしれないが、激しい戦いに向けて着々とお膳立てが整ってきていることは間違いない。
240話の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。
第241話 消えたカムイ
森
杉元とアシリパはカリンパニ(エゾヤマザクラ)の花を見ていた。
アシリパは、鹿の毛が生え代わる時期に咲くことから肉が美味くなる知らせといわれていると解説する。
サクラの樹皮は、弓に巻いて強度を増すために使うことや、オンコの木は、弓作りに必要であることなどを続けて説明していく。
木陰で白石と海賊房太郎が会話している。
房太郎は、白石が第七師団や土方と張り合えるということは、白石の性格上、勝算があるということではないかと訊ねる。
「あのお嬢さん のっぺら坊と同じ深い青い目をしているよな?」
それに対し、ロシアの血が混ざったアイヌは珍しくないと返す白石。
房太郎は、その返答に納得していなかった。
信用出来ないのはお互い様だが、手を組むなら情報は何でも共有しないと命は張れないと続ける。
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白石は杉元と一緒に砂金掘りの作業をしていた時の会話を思い出していた。
白石は、すでに金塊の暗号を解く鍵を教わったかと杉元に問う。
しかし、杉元はそれに対して、いや、と返すのみ。
白石はそこから先に踏み込むことをやめていた。
それを思い出し、俺だってそこまで信用されているわけじゃねえよ、と白石が答える。
これを見ろよ、と房太郎が取り出したのは金貨だった。
房太郎は支笏湖で砂金と一緒に沈んでいたと説明して、金貨に刻まれた刻印が自分たちの入れ墨に似てないかと問うのだった。
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解読の鍵
杉元とアシリパはエゾモモンガ(アッカムイ)を見ていた。
アッカムイが子守のカムイであることを説明し、ホロケウカムイも同じく人を助けるカムイなのだとアシリパ。
レタラを見つけたのもこのあたりの森だった言って、幼い頃、父と一緒に夜空を見ていた時のことを思い出していた。
ウイルクがアイヌ独自の星座の見方を教えている。
ホロケウカムイの星座の説明にさしかかると、アシリパはホロケウとはどのようなカムイかと問う。
「『消えてしまったカムイだ』って」
アシリパはあの時ウイルクの答えたそのままを口にする。
続けて、でもこの森でレタラに会えたとアシリパは続ける。
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アシリパは父のアイヌ名であるホロケウオシコニが暗号を解く鍵だと確信していた。
母が父につけたアイヌ名を暗号に入れる人が、果たしてアイヌを大勢殺して砂金を奪うだろうかとアシリパは違和感を持っていた。
どうしてふたりは死ななければならなかったのか、埋蔵金を見つければ答えがわかるかもしれない。
しかしアシリパは、大勢の人の運命を狂わせた金塊が果たして本当に見つかった方が良いのかと疑問を持っていた。
そして、杉元に暗号解読の鍵を教えなければ杉元が自分から離れないので、杉元の弾除けとなれるという覚悟をしていた。
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「杉元 お前はもし金塊を見つけられたらどうするんだ?」
「故郷に戻って好きだった人と暮らすのか?」
(埋蔵金が見つかったら杉元は 私の元から)
「あれなんだ?」
杉元はアシリパの問いに答える前に、木を指さす。
その木の幹には横に切れ込みが走っていた。
周辺の木にも同様の切れ込みがある。
それを見たアシリパは、ここから離れた方が良いと杉元に警戒を促す。
「あッ!!」
逃げる前に、木が倒れはじめていた。
倒れた木は隣の木にもたれかかり、ドミノ倒しになっていく。
「森が倒れてくる」
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第241話 消えたカムイの感想
最後のドミノ倒しは、一体誰がやっているのだろう。
杉元やアシリパを狙っているのか?
唐突過ぎる。ひょっとして囚人と接敵しているということなのだろうか。
一体何が起こっているのか。敵だとすればどんな奴なのか。
次回が超気になる。
アシリパさんの、暗号解読の鍵を杉元に教えず、彼の弾除けになるという密かな決意が尊い…。
杉元もまたアシリパを守るために命をかけているから、もはやこの関係性は恋人同士としても問題ないのではないか。
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白石が杉元に信用されていないと思い込んでいることが、この後何か問題を起こしそうで怖い。
今回は海賊房太郎の言葉に揺さぶられることはなかったが、徐々に効いてきそうな予感がする。
房太郎の知略は侮れない。白石も知略においては強者の部類に入ると思う。でも房太郎は狡猾な感じがプンプン漂ってくるんだよ……。
今はまだ味方同士だけど、この感じだと敵同士になりそうだな。
房太郎は今後も白石に対して仕掛けきそう。
とりあえず次回は木のドミノ倒しを行ったのが誰なのかが判明するだろう。気になる。
札幌に行く前に一戦交えることになるのか。楽しみだ。
以上、ゴールデンカムイ第241話のネタバレを含む感想と考察でした。
第242話に続きます。