第224話 支笏湖のほとりで
目次
前話第223話 二階堂 元気になるのあらすじ
二階堂
鯉登少尉の病室に二階堂が訪問する。
テンション高めの二階堂に、いつになくシャキッとしておるな、と声をかける鯉登少尉。
二階堂は自分のテンションが高い理由を、有坂中将からもらった新薬のおかげだと答える。
有坂中将は、友人の薬学者永井が開発したメタンフェタミンという薬だと説明する。
「この薬は売れるよ絶対!! 元気の無かった二階堂君もおかげでハツラツとしておる 昨日はこれを6時間くらいやってた!!」
二階堂は割り箸で広げた手の間を高速で突いている。
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白衣を着た家永の診察を受ける鯉登少尉。
月島軍曹は、鯉登少尉の若さを羨み、腕を噛もうとする家永の頭に銃を突きつける。
「お前も刺青人皮にしてやろうか」
家永はそれに対して、すでに自分の刺青の写しは鶴見中尉も土方も持っているので剥がしても意味はないと返す。
それに対し、じゃあ財布にする、と月島軍曹。
月島軍曹は、無意味に鯉登少尉から採血しようとする家永に、やめろと注意する。
「お前が逃げずに軍病院にいる目的はそれだろ」
家永は、医者の代わりはいるが自分のような名医はめったにいないとケロッとした表情で返す。
「鶴見中尉もそうおっしゃっていたでしょ?」
二階堂は病室内を走り回っている。
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用心
尾形は、家永が第七師団に捕まったなら以前彼がいたことがあるここも危険ではないかと疑問を口にする。
家永にとっては滞在先のひとつでしかないと思うが? と永倉。
すでに殺されているかもと牛山。
彼らの答えに対して尾形は、鶴見中尉をなめてるな、と釘を刺す。
「あの男は網走から全ての滞在先をたどってここまで見つけ出すぞ 死神から逃げ続けるのは簡単じゃねえ」
尾形が正しい、とそれまで沈黙していた土方が呟く。
「鶴見中尉相手に用心しすぎるということはない」
狙撃精度
飛び立とうとするマガモに発砲する尾形。
しかしマガモは銃弾を受けることもなく、何の問題もなく飛行している。
「………」
尾形は飛び去っていくマガモをじっと見つめていた。
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海賊房太郎
寺に移動した土方たち。
夏太郎は、色々な人物が出入りする寺なら逆にいいかもしれない、と呟く。
門倉は土方と永倉に、看守仲間のツテで聞いた話だと前置きして話し始める。
網走監獄が破壊されたので囚人の補填と監獄の再建のための作業員を兼ねて樺戸監獄から大勢の囚人が移送されたが、その中の何人かの囚人、海賊房太郎の側近が脱走したのだと続ける。
「海賊房太郎?」
オウム返しする永倉に、門倉は海賊房太郎とは強盗殺人55件をはじめとした各種犯罪を犯してきた重犯罪者であり、網走脱獄囚24人のひとりだと説明するのだった。
あいつが動き出したか、と土方。
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寺に帰ってきた尾形。
尾形はオオハクチョウを獲ってきていた。
尾形が手にしている巨大な鳥を見て、それ食えんのか? と牛山。
何でもかんでも獲ってくるなよ、と門倉。
「尾形上等兵…!?」
体育座りをしていた有古一等卒が尾形に気付く。
お前もか、と返す尾形。
「お前が鶴見たちを裏切るとは…分からんもんだな」
「私もあなたが裏切るとは思いませんでした」
有古一等卒が返す。
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キラウシは尾形の獲ってきたレタッチリ(オオハクチョウ)について、親父たちがたまに食べていた、と説明をはじめる。
今の時期の白鳥は太っていて飛べないので鉄砲を使わなくても簡単に捕まえられるが、アイヌには白鳥を食べると将来白髪になるという言い伝えがあり、子供は絶対に食べさせてもらえず、自分も食べないのだと続ける。
土方さんたちしか食えねぇじゃん、と夏太郎。
残念だな、と言う門倉に、もう両脇真っ白で手遅れだろ、とキラウシがツッコむ。
「オレも白髪ヤダからやめとくわ」
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「都丹の頭は完全に白髪だぞ」
牛山に指摘され、え? うそと驚く都丹。
「オレ白髪になってる? 昔は真っ黒だったのに…」
「美味そうだな…」
大鍋で炊いているハクチョウの肉を見て呟く牛山。
「老いがそんなに怖いか鼻垂れ小僧どもは…」
うまいうまい、とハクチョウを食べる永倉。
誰にでも平等に死は訪れる、と土方。
「どうぜ逃げきれんのならビクビクと待つより美味いものを食って楽しむ」
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ペッ
布団を並べて横になる門倉たち。
その話題は、ハクチョウを食べたら白髪になるという言い伝えに関してだった。
ジジババたちだけで美味いものを独占したくて子供たちが食べないようについた方便だろ、と夏太郎。
狂言の狂言の附子みたいな話だな、と牛山。
ピンときていないキラウシに門倉が和尚が黒砂糖を小僧共にトリカブトだと嘘をついて食べさせない話だと説明する。
翌朝、大鍋のハクチョウは空になっていた。
「なんだ 結局お前ら残ってた白鳥鍋全部食べたのか」
夏太郎たちに声をかける永倉。
「まったく…食い意地がはっとるな」
門倉は、白鳥を食べたら白髪になるというのが本当なら、ハゲ頭にはならないことだと思いやしてね!! と言って夏太郎たちと笑う。
永倉は一緒になって笑うと、急に真顔になって唾を吐きかけるのだった。
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第223話 二階堂 元気になるの振り返り感想
ほのぼの
今回の全体を通しての感想としては、ほのぼのとした話だったなぁ。
前回の次回への煽り文が月島軍曹に何か悪いことが起こるみたいな内容だったから警戒していたけど、鯉登少尉の腕を噛もうとする家永の頭に銃口を押し付けてツッコミ入れただけだった(笑)。
冒頭の病院では元気に鯉登少尉や、あと二階堂を中心に賑やかになってきているし、土方陣営もまるで修学旅行の学生かってくらい和気あいあいとしてて和んだ。
都丹庵士の自分の白髪頭にショック受けてる様子とか、キラウシの門倉への両脇真っ白で手遅れのツッコミは笑った。
ゴールデンカムイはシリアスな話でも1話の中にちょこちょこツッコミ入れるポイントを入れてくるんだけど、今回のような感じは久しぶりという印象かな。
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なんだか土方陣営の尾形もちょっと楽しそうに見える。でもマガモに命中させることができない尾形の現在の射撃精度は、彼が直面している戦闘能力の低下という現実を実感した。
やはり右目は利き目だし、いきなり以前と同じような命中精度の狙撃は期待できないのだろう。
1巻で杉元と戦った時は、負けたとはいえ接近戦は出来ていた。しばらくは狙撃以外の戦闘技術で戦うと思う。
何より今回の一番の情報は新たな刺青囚人「海賊房太郎」だろう。
房太郎はこれまでの囚人の中でもとびきり犯歴を重ねているようだ。
それに側近がいるというから、戦うとなったら集団戦になる可能性があるのではないか。
一筋縄ではいかないであろう房太郎を相手にするのは土方陣営か、それとも杉元陣営か。
次のエピソードに向けて期待感が高まる。
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二階堂
二階堂復活か……。
メタンフェタミンって何か聞いたことがあるなと思って検索したらヒロポンだった。
やっぱり覚醒剤だったか(笑)。
思いっきりガンギマリ状態になってて笑ったわ。
はだしのゲンでムスビが中毒になってたっけなぁ……。
第二次大戦の頃はまだ人体に有害だという知識は常識ではなかったはずなので(多分、同時にヒロポンはヤバイという噂もあったと思うが)、明治大正の時代でまだ薬が開発されたばかりだというならきっと二階堂は今後はガンガン使用していくんだろうな。
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人体の武器化+クスリとか益々ヤバイ奴になっていく二階堂。
人体を使ったヘッドギアももはやそれをつけていないと二階堂ではないというくらいに似合っている……。
何より恐ろしいのは杉元への怨みだ。
二階堂の杉元への執念は恐るべきものがある。
いつかはわからないが、今後必ず杉元と二階堂がぶつかる機会があるだろう。
その時、二階堂がどんな姿になっているのか楽しみだ。
223話の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。
第224話 支笏湖のほとりで
「コォーッ」
雨竜川。
夜、杉元たちは雨竜川の川辺で焚火をしていた。
光で目がくらみ、ふらふらと近づいてきたレタッチリ(オオハクチョウ)を狩るのだと杉元はアシリパから説明を受けるのだった。
アシリパの言った通り、レタッチリが近づいてくる。
それと同じタイミングで、トイレを済ませたばかりの白石がレタッチリと並走する形で杉元たちの元に戻ってくる。
アシリパはレタッチリが逃げるのではないかと懸念するも、白石もレタッチリもお互いの存在に気付かず、何事もなく杉元たちの元に向かっていくのだった。
しばらく並走し、ようやく互いの存在に気付く白石とレタッチリ。
白石とレタッチリは顔を見合わせて、コォーッ、と同じような鳴き声を発する。
レタッチリが白石に気をとられている隙を狙うアシリパ。
見事にレタッチリの首を殴打し、杉元たちは獲物を得ることに成功するのだった。
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刺青人皮無しで金塊を得る一発逆転の方法
獲得したレタッチリを食べる杉元たち。
アシリパは、レタッチリを食べたあとは、生まれ変わってくるように、という願いを込めて頭部を木弊(イナウ)に包み、川に流すと説明して、杉元に、だから綺麗に食べてやれ、とレタッチリの頭部をつきつける。
うふふ、と笑ってごまかそうとする杉元。
レタッチリの泣き声を真似ると、再びニコニコと笑う。
「はやく食え」
突っ込むアシリパ。
白石は平太の遺した砂金を調べていた。
「みろよこれ」
平太は砂金の採れた川ごとに砂金の標本を集めていたのだった。
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生前の平太は杉元たちに、砂金には『顔』と呼ばれる粒状、鱗状、板状など採取した場所ごとに特徴が存在すること、そして熟練の砂金掘りであればその『顔』をみるだけで産地が特定できると説明していた。
「地質の関係で北海道すべての川で砂金が採れるわけではないんです」
大昔、アイヌが採った砂金は一箇所に集められ、隠されたんだろ? と確認する白石。
それを隠した者は埋蔵金の存在、噂を風化させるために秘密にし続けた。
それが功を奏し、隠し場所を知る者は年老いてわずかになったのだった。
それが『のっぺらぼう殺人事件』で殺された七人だったわけだ、と白石。
そして白石は、他にも金塊を隠した場所を知る人間がいる可能性はあるはず と杉元に確認する。
だからのっぺら坊はそこから更に移動させたんだろ? と杉元。
白石は、大量の金塊を一人で移動させるのは難しい以上、移動するにしてもそこまで離れた場所ではなかったのではないかと推理を続ける。
そして『元の隠していた場所を知るアイヌ』は砂金の採れた川の近くに今も住んでいる可能性が高いとして、更に絞り込むためには埋蔵金を鑑別することで金の産地を割り出せばいいと結論するのだった。
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隠されている埋蔵金はっをどうやって鑑別する、と冷静に突っ込む杉元。
バカだなぁ、とアシリパも続く。
「谷垣の話忘れたか?」
白石の自信は崩れない。
「のっぺら坊は砂金の一部を持って逃げたが舟は転覆 その砂金も沈んだと…」
「支笏湖か…!!」
杉元は白石の言わんとしていることにピンときていた。
「その砂金を探しに行こうっていうのか?」
アシリパも、真剣に白石に問いかける。
「いまさら刺青人皮とは全く関係ない別の方法で埋蔵金を見つけようっていうことなのか?」
杉元とアシリパの質問に対し、どうしても刺青人皮が手に入らないなら、そういう一発逆転の方法もあるということだと答える白石。
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杉元はこれまで白石が述べてきた案をまとめていた。
支笏湖に沈んだ砂金をみつける。
↓
熟練の砂金掘りに鑑別させ、産地を特定。
↓
砂金の産地周辺で埋蔵金の昔の隠し場所を知るアイヌを探す。
↓
その場所へ行って、のっぺらぼうが移動させた隠し場所を探し当てる。
杉元はこれらの難易度の高さを指摘し、見込みが低いと却下するのだった。
一歩目でつまづく、とアシリパ。
「支笏湖は北海道で一番深いんだ 潜って砂金を見つけるのは絶対に不可能だ」
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潜水
一年前、支笏湖。
湖に浮かべた舟の上に平太ともう一人、男が乗っていた。
平太は、もう少し暖かくなってからにしたらどうかと男に問いかける。
しかし男は、誰かに先を越されたらどうする、と平太の申し出を蹴る。
支笏湖の深さは潜水夫でも無理だと平太。男はそうして平太に止められても、お前の意見は聞いてない、と一切話を聞かない。
そして、砂金を鑑別したら好きな所へ行けと続けるのだった。
「今度はもっと深いところを探してみる 35分を過ぎたら縄を引き上げろ いいな?」
35分も? と驚く平太。
「俺は30分までなら潜水できる」
全裸で、これから支笏湖に飛び込もうとしている男――海賊房太郎(大沢房太郎)は胸腔に一気に空気をとりいれる。
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潜水を開始した房太郎。
その手の指の間は、広げると、まるで水かきがのような形状だった。
それに加えて足は36センチと巨大で、水を蹴って移動するのに適した身体的特徴を持っていた。
房太郎は子供の頃から木材を川で運搬する人夫として働いていた。
その為、水中での動きに長けていたことで、ある頃から人を水中に引き込み溺死させて金品を奪うようになっていた。
その手口から監獄の看守から『監房の海賊』『海賊房太郎』と呼ばれるようになるのだった。
房太郎は水深200メートルに到達していた。
平太は30分経過をカウントする。
もはや房太郎は生きてはいないだろうと、逃げることを考え始めていた。
「支笏湖は北海道で一番深いんだ 潜って砂金を見つけるのは絶対に不可能だ」
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房太郎を捕まえる
「そうでもねえぜ」
白石は杉元たちに平太が残した砂金の標本を見せる。
標本を包む紙には、『支笏湖 海賊さん』と表記されている。
それを見て、すでに見つけられていたのか!! と杉元。
白石は『海賊さん』とは、網走脱獄囚の24人の中の一人で、特に気合が入った強靭な男のことだと説明する。
海賊房太郎は支笏湖の深い場所で木舟を発見していた。
それは湖のさらに深い底に落ちる手前で岩場に横倒しの状態で鎮座していたのだった。
「平太師匠の鑑別も済んでるようだ」
標本の紙には『徳富川 沙流川 空知川 知内川』と書かれている。
白石は、自分たちは見込みの低い方法で埋蔵金を探す必要はなく、今まで通り刺青人皮を集める方向で進めばいい、と明快に語る。
なるほど、と標本を受け取る杉元。
「つまりこの川へ行けば海賊を捕まえられるってことか」
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第224話 支笏湖のほとりでの感想
最短距離で金塊
ここにきて刺青人皮を収集せずに金塊に至る道が出てきた。
といっても海賊房太郎が何をどこまで知っているかにより、その実現の可能性は変わる。
急がば回れ。
結局は刺青を最後まで集めきることが金塊に辿り着く近道だと思うが、刺青人皮収集の競争で鶴見陣営、土方陣営に圧倒的に後れをとっている以上、白石の言うように一発逆転も視野に入れなくてはいけない状態なのだろう。
重要なのは海賊房太郎は一年前にどんな情報を得ていたのだろうか、だ。
支笏湖の200メートルほどの深い場所に沈む木舟を見つけたが、何かヒントがあるのだろうか。
先を越されるという海賊房太郎の発言から、彼が金塊を独り占めしたいんだろうな、誰かと協力して山分けとかしたくないんだろうなと感じた。
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つまり杉元たちと出会ったら戦闘になる可能性が高い。
そもそも刺青囚人だし、杉元たちからしたら標的なんだよなぁ。
刺青人皮の写しを手に入れられれば良し、直接金塊に至る方法を知れれば尚良し、という感じか。
しかし海賊房太郎は白石曰く、強靭な男、とのこと。
これまで様々な敵を退けてきた杉元であっても、苦戦は免れない雰囲気だ。
海賊房太郎は驚異のフィジカルを持ちながらも、何十人も殺してきた残忍さ、そして頭もキレるっぽい。
囚人の部下がいるということから、カリスマ性もあると推測される。
杉元たちは海賊房太郎を倒して金塊争奪戦に復帰できるのかな~。
まだどの陣営も獲得していない刺青人皮を得ることは重要だと思う。
次号に期待。
以上、ゴールデンカムイ第224話のネタバレを含む感想と考察でした。
第225話に続きます。