第146話 ロシア式蒸し風呂バーニャ
目次
第145話のあらすじ
スチェンカ開始。
日本兵、岩息+ロシア人の両陣営で殴り合う。
岩息以外のロシア人を全て倒した杉元たちの前に岩息舞治が立ち塞がる。
四人同時に殴ってこい、と興奮する岩息の四方を取り囲みタコ殴りにする杉元たち。
岩息は杉元たちの猛攻に耐えに耐えて、ダブルラリアットを繰り出して四人を吹っ飛ばす。
地面に倒れる四人をよそに、歓声に沸く客に向けて自身の強さを誇示する岩息。
うっとりとしている岩息に、杉元がハイキックをお見舞いする。
杉元は目の前に立った谷垣も、鯉戸少尉も、月島軍曹も構わず殴りつけていく。
ヒートアップした観客が場内になだれ込み、杉元たちを襲う。
杉元は観客たちや谷垣を手当たり次第に、滅茶苦茶に殴りまくる。
暴走する杉元に火を入れられたように場内は観客同士でも殴り合い、熱気で溢れる。
これが「妙案」なのか、と鯉戸少尉が杉元に訊ねると、杉元は壁にかけてった鎌を鯉登少尉に向けて振るう。
何が起こったのかわからず、静まり返る場内。
杉元の尾形に撃ち抜かれた頭の傷から脳汁がこぼれる。
月島軍曹は、杉元があまりにも殴られ過ぎて気が触れてしまっている事に気付く。
鎌を振り回す杉元から蜘蛛の子を散らしたように観客が逃げていく。
場内の異変に気付いた岩息に、杉元が鎌を振り下ろす。
ギリギリで避けた岩息は、杉元が「金塊」と呟いたのを聞き、杉元たちの狙いに気付いてその場から逃げる。
岩息にバレて逃げられるという恐れていた事態が起きたのを悟った月島軍曹。
スチェンカ会場から脱兎の様に逃げ出す観客に混じって逃走する岩息を追う谷垣、月島軍曹、鯉登少尉。
岩息に逃げ切られる事を避けるために杉元を放って岩息を追いかけるが一行は見失ってしまう。
一息ついている岩息の上空からクズリが襲い掛かる。
脊髄を攻撃されて防戦一方の岩息。
その悲鳴を聞きつけて駆け寄る谷垣、月島軍曹、鯉戸少尉は岩息の背中からなんとかクズリを引き剥がす事に成功する。
負傷した岩息に谷垣が肩を貸して一行は森の中を逃げると小屋を発見する。
追いかけて来るクズリから身を守る為に小屋に入る一行。
そこはバーニャというロシア風蒸し風呂だった。
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第146話 ロシア式蒸し風呂バーニャ
チカパシとエノノカのイソホセタ救出作戦
パカパシはエノノカ、リュウと共にに犬橇のリーダー犬(イソホセタ)をさらった”おしゃべりロシア人”を尾行して、彼の家を発見する。
チカパシは灯りの点いた部屋の中を窓から恐る恐る覗く。
犬がいるかというエノノカの問いに、チカパシは「いない」とだけ返す。
おしゃべりロシア人の部屋の中での行動を見守るチカパシとエノノカ。
ロシア人は、イソホセタの餌を入れているらしき器を持ち、外の納屋に向かう。
ロシア人が納屋の中に姿を消すと、ワンワン、と犬の鳴き声が聞こえてくる。
「犬 あそこだ」
家の壁に身を隠してロシア人の行動をエノノカと監視していたチカパシが呟く。
ロシア人は鼻歌を歌いながら納屋から家の中へと戻っていく。
それを確認したチカパシとエノノカは納屋に駆け寄る。
しかし、扉には南京錠がかけられている。
チカパシは背負っていた谷垣の銃を取り出す。
「谷垣ニシパの銃で撃って壊す」
銃の重さにヨロヨロしながらエノノカに作戦を提案するチカパシ。
エノノカは銃は音が大きく、危ないと反対する。
再び窓から家の中を覗くチカパシ。
すると、テーブルの上に納屋の南京錠のものらしき鍵を発見する。
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バーニャにて
クズリから身を隠す為にバーニャの小屋に逃げ込んだ谷垣、月島軍曹、鯉登少尉、そして岩息。
クズリは一向に小屋から離れる気配はない。
追い払う為の武器になるものは無いかとバーニャ内を探そうとするがバーニャの暑さに参ってしまう谷垣たち。
岩息は一人、腰を下ろして落ち着いている。
月島軍曹は、残してきてしまった正気を失った杉元の事も心配し、態勢の立て直しを考えるが、顔から大量に汗を流して暑さに朦朧としてしまう。
暖炉の傍らで落ち着いていた岩息はタライの水を柄杓のような道具で掬って暖炉にかけていく。
「オイお前ッ 蒸気を発生させるな!!」
月島軍曹の注意も虚しく暖炉にかかった水は猛烈な勢いで蒸発し、バーニャ内の温度と湿度を高めていく。
月島軍曹、鯉登少尉、そして東北生まれで暑さに弱い谷垣はそのあまりの暑さに悶絶するのみ。
「これは白樺の葉を束ねたもので『ヴェニク』というッ」
手に持った葉っぱの束を谷垣たちに見せる岩息。
岩息はヴェニクを鯉戸少尉の背中に思いっきり振り下ろす。
「いだっ」
バチッ、という音と同時に悲鳴を上げる鯉戸少尉。
岩息は谷垣や月島軍曹もしばいていく。
しばきながらヴェニクで叩くと血行が促進され、バーニャ内の空気をかき交ぜて体感温度を上げるという効能を説明する。
谷垣は外にいるクズリに対応するためにここは協力しなくてはいけない、と岩息の行動を諫めようとする。
協力だと? と岩息は谷垣たちをつぶらな目で見つめる。
「あんたら私を殺して刺青をひっぺがすのが目的だろう!!」
何も言うことが出来ない谷垣。
岩息は、誰が先に我慢できずにバーニャから飛び出すかな? と谷垣たちを煽る。
バチィッ
「ぷあッ☆」
鯉戸少尉にヴェニクでしばかれて悲鳴を上げる岩息。
「全員同時に来て欲しいッ」
岩息は壁に両手をつき、谷垣たちに背を向ける。
バチッ
もっとォ、と叫ぶ岩息。
月島軍曹は岩息の要求に応えるようにヴェニクを振る。
バチッ
「んもっとォ」
(俺は何をやっているんだ?)
ヴェニクを岩息に振り下ろし、その悶える声を聞きながらふと思う月島軍曹。
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罠
ずっと待機していたチカパシとエノノカは、おしゃべりロシア人が酒を飲んでテーブルに突っ伏して寝たのを確認して、テーブルの上にある納屋の鍵をとろうとしていた。
少し開けた窓から棒きれを挿し込むチカパシとエノノカだったが、チカパシが操作をミスして、眠っているロシア人の顔を棒で突いてしまう。
「もっと右 もっと下」
「チカパシ違う もっと左」
伸ばした棒の先に鍵を引っかけたいのに、何度もロシア人の顔を突くチカパシたち。
流石に起きたロシア人は、窓の外にいるチカパシとエノノカを発見して捕まえようと玄関へと駆けていく。
逃げるチカパシとエノノカ。
ロシア人が走って玄関から出ようとすると、足元にあらかじめ張っておいたロープに引っかかって派手に転ぶ。
さらにロープの先に仕掛けておいた落石の罠が作動して見事にロシア人の頭にヒットする。
「よし」とポーズをとるエノノカ。
チカパシはエノノカに谷垣の銃を支えてもらいながら、銃口を納屋の南京錠に近付ける。
撃つよ、とエノノカに声をかけて、チカパシは南京錠を撃ち抜く。
パァーン……
未だに正気を失っている上半身裸の杉元がその銃声に反応する。
その頭部からはまだ脳汁が垂れている。
その頃、バーニャの小屋では岩息が谷垣たちの振り下ろすヴェニクを一身に受けていた。
「この流れも杉元の『妙案』なんだよな?」
バーニャ内の暑さに朦朧としている様子の鯉登少尉が問いかける。
絶対違います、と即否定する月島軍曹。
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チカパシ絶体絶命
チカパシとエノノカが、ロシア人から取り戻したイソホセタに引かせた犬橇で雪上を滑っていく。
その傍らには並走するリュウ。
チカパシは前方に杉元の姿を発見する。
上半身裸の杉元は鎌とハンマーをそれぞれの手に持ち、ふうふうと息をつきながら歩いてくる。
その異様に直感的に危険を感じ取ったチカパシは、エノノカに犬橇を止めてはいけないと声をかける。
「うううう」
通り過ぎた杉元がチカパシたちの犬橇を追いかける。
背後に迫る杉元の圧力を感じたチカパシ。
「杉元ニシパがおかしくなったぁ!」
ワンワン、という犬の声に、まだバーニャの前にいたクズリが気付く。
限界を口にする谷垣だったが、ふと外を見るとクズリが犬橇に向かって走っていくのを目撃する。
「クズリが…」
迫るクズリに気付いたイソホセタは進路を大きく変える。
急な進路変更にバランスを崩し、犬橇から振り落とされて雪上を転がるチカパシ。
犬橇を操作する手綱を持っていたエノノカは振り下ろされずに住んでいた。
「チカパシッ」
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チカパシ、男になる
クズリがリカパシを襲う。
うおらあッ、と杉元がクズリに向けて鎌を振り下ろす。
クズリは唸り声を上げながら間一髪で避ける。
「猛獣と怪物が戦っとるぞ」
鯉戸少尉が、一緒に窓から杉元たちを覗いていた月島軍曹に向かって呟く。
杉元とクズリが吠える。
チカパシはその様子から目を離すことなく、谷垣の銃を取り出して排莢する。
杉元がハンマーを振り下ろす。
カカカカッ、と声を上げるクズリ。
クズリは急にチカパシに視線を移し、チカパシに向けて突撃する態勢をとる。
チカパシは銃に次の弾を込めようとしていた。
しかしクズリの気配に焦り、中々作業が完了しない。
ジャキン…
全裸のまま外に出た谷垣がチカパシの体を抱えるようにして銃を持ち、弾込めの作業を引き継ぎ、素早く装填を完了させる。
「一発だ! 勝負は一発で決めるぞ」
谷垣はクズリに視線を合わせたまま傍らのチカパシに指示する。
「そのまま引金を引け チカパシ」
チカパシの放った銃弾は見事にクズリの眉間を捉える。
ダァァァン……
クズリから視線を離す事無く荒く息をつくチカパシ。
「谷垣ニシパ! これが…これが勃起?」
そうだチカパシ、と即答する谷垣。
「これが勃起だ!」
谷垣と同じくバーニャの外に出ていた岩息は全裸のまま堂々と杉元へと歩み寄っていく。
「あなたとはケリを着けておきたい」
杉元は接近してくる岩息に駆け寄っていく。
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感想
逞しくなっていくチカパシ
チカパシはエノノカと一緒に、きちんとイソホセタの救出というミッションを成し遂げた。
チカパシたちによるイソホセタ救出は、杉元の「妙案」を構成する作戦の一つだった。
杉元たちがスチェンカに出場した理由も、そもそもはイソホセタ救出の為ということであり、救出はとても重要な作戦になる。
そう考えるとチカパシたちを信用して任せた杉元も大したもんだ。
人手が足りないという台所事情も影響していると思うが、この重要な局面を乗り切ったチカパシは杉元たちのような良い男に近づいたはずだ(笑)。
今のところ、最終的にチカパシは年の近いエノノカとくっつくんじゃないかと予想しているが、ぜひ良い男になってエノノカを守って欲しい。
チカパシは今後も杉元たちとの旅の中で成長していく姿を見せてくれるだろう。
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バーニャで遊ぶ人たち
谷垣はいつも通りだけど、鯉登少尉も、そして月島軍曹まで……。
とりわけ、バーニャの暑さに朦朧としていたとはいえ月島軍曹がおかしなことになっていたのには笑った。
杉元と同道すると、特に男に関しては誰でも変態にならざるを得ないんだな、と思った。
これもゴールデンカムイの神(作者)である野田先生の意向なんだからしょうがない(笑)。
ヴェニクで3人から打たれまくることを望んだ岩息に関しては、慣れてるんだなとしか感じなかった。
おかしいなんて思わない。さもありなん、な行動だった(笑)。
バーニャ自体に慣れてるのに加えて、杉元たちとのスチェンカで昂っていたし、その後クズリに襲われてアドレナリンが出てるわけで、この先どんな行動に出てもおかしくは無いと思っていた。
ヴェニクで叩くのはおかしくないんだよね。
血行を良くする為、という目的があるわけで。
しかし、バーニャでヴェニクを互いの体に振り下ろしている様子があまりにも酷過ぎる。
これ、何の漫画? って思ってしまう(笑)。
ゴールデンカムイだよ、って言われたら、あ、やっぱり、って返すけど(笑)。
むさくるしいにも程があるし、読者にツッコミ入れさせまくりの展開だけど、最後はきちんと谷垣とチカパシの良いシーンで決めるからまとまってるんだよなぁ。
チカパシから銃を奪うのではなく、チカパシを銃ごと支えるようにしてチカパシにクズリを仕留めさせた谷垣が素晴らしい。
全裸だったこともあり、バーニャで熱された局部が雪上をジュウウ~、と溶かしていたのは笑ったけど。
個人的には、カッコイイだけで終わらないという在り方もまたカッコイイと思う。
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谷垣とチカパシ
クズリとの実践を通してチカパシに銃を撃たせた谷垣。
これはもう父と子だな。
チカパシが何をやろうとしていたのかをすぐに理解し、前述したが、クズリが迫るという危険の中でチカパシにクズリを仕留めさせた。
きっとチカパシは生涯この経験を忘れないだろうな、と思った。
天涯孤独の身であるチカパシに谷垣は大きな存在だ。
男としての理想だと思っているかもしれないし、実際それで間違ってない。
チカパシが谷垣の背中を見て、良い男に成長することを願わずにいられない。
そして、果たして岩息と杉元の対決の結果は如何に。
杉元はいつ正気に戻るのか。というか、頭が大丈夫なのか(笑)。
以上、ゴールデンカムイ第146話のネタバレを含む感想と考察でした。
第147話に続きます。
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