第132話 蹂躙
目次
第131話のあらすじ
網走監獄に向けて鶴見中尉と鯉戸平二少将率いる第七師団が駆逐艦を進めていく。
非常事態を知らせる鐘が監獄中に響くなか、杉元と白石は想定外の事態にただただ戸惑う。
門倉は再び銃を一発撃ち、杉元達をその場に釘付けにする。
谷垣はインカラマッが鶴見中尉と通じていたことをインカラマッに確認していた。
インカラマッは金塊が鶴見中尉の手に渡ろうともアシリパを網走監獄から連れ出せるからと鶴見と通じていたことを告白する。
谷垣はアシリパを守るために金塊など簡単に放棄でき、堂々と敵と内通していたインカラマッに二瓶の女は恐ろしい、の一言を実感を以って思い出すのだった。
犬童典獄は鶴見中尉の駆逐艦に向けてマキシム機関銃で十字砲火を指示。
谷垣たちは急いで身を隠し、アシリパを抱えて本当のアシリパの父の元へと向かっていた都丹庵士は爆音に耳をやられてアシリパを離してしまい、アシリパは杉元の元へと駆けていく。
駆逐艦から小舟に乗り換えて網走監獄に向かう鶴見中尉と第七師団兵。
第七師団兵は中央に突っ込まれたらどうするのかと鶴見中尉に不安げに問うが、鶴見中尉はバッタのせいにすれば中央は動かないと踏み、事後報告で十分と答える。
上陸した第七師団兵たちは看守を次々に撃ち殺して監獄を制圧していく。
急いで舎房に向かう鶴見中尉。
攻め込まれて劣勢の犬童典獄は第七師団の目的が金塊の在り処を知るのっぺらぼうの身柄確保と監獄の存在消失、つまり自分たちの皆殺しにあると見抜き、最後まで戦うことを決意していた。
131話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。
スポンサードリンク
第132話
網走監獄の敷地内の宿舎は第七師団の砲撃で半壊していた。
監獄の外からの穴を通じて宿舎に逃げてきていた谷垣、夏太郎、インカラマッ組。
小屋に崩落の気配があることを悟った夏太郎は外に出ろと谷垣を促す。
谷垣はインカラマッがいないことに気付きインカラマッどこだ、と呼ぶ。
絶体絶命の谷垣とインカラマッ
「谷垣ニシパ…」
足元から微かな声でインカラマッが谷垣に応える。
インカラマッは首だけ外に出した状態で、崩落した屋根に圧し潰されて身動きが取れずにいた。
なお宿舎の崩落は止まらない。
インカラマッは自身の運命を悟り、必死で谷垣に、逃げてください、と呼びかける。
谷垣はインカラマッに乗りかかる瓦礫を持ち上げようと、屋根と地面の間に手を差し入れて屋根を掴む。
ムウウオッ、と満身の力を込める谷垣。
胸のボタンが弾け飛ぶ。
必死な谷垣を見上げるインカラマッ。
谷垣は見事に屋根を浮かせて、インカラマッが動けるだけのスペースを確保する。
出ろ、と谷垣に促され、インカラマッは何とか谷垣の元へと這い出る。
途端に宿舎は崩落し、直前までインカラマッと谷垣が居た場所に瓦礫が積もる。
谷垣はインカラマッの腕を持って立ち上がらせてその場から一刻も早く逃げようとする。
しかし瓦礫の崩落の波は、必死に外に向かって逃げようとしている谷垣とインカラマッに追いつく。
崩落する屋根に圧し潰されそうになり、谷垣とインカラマッは思わず目を閉じる。
スポンサードリンク
フラグクラッシャー牛山
だが、地面にインカラマッと共に転んだ谷垣を圧し潰そうとした屋根は、その動きを止める。
「牛山!!」
谷垣が叫ぶ。
牛山は、その持ち前の膂力を以って、谷垣とインカラマッを圧し潰さんとした屋根を両手で受け止めていた。
「早くどきな」
苦しそうな表情で牛山が谷垣とインカラマッに呼びかける。
屋根の下から這い出た谷垣とインカラマッ。
インカラマッは牛山に早くこっちに来るように促す。
下を向いて必死に力を発揮し続けている牛山は、屋根を持ち上げたまま視線だけを谷垣とインカラマッに向ける。
「お前ら…幸せになるんだぜ」
「そんな…!! 牛山さんッ!!」
牛山を救おうと近づく夏太郎。
だが谷垣が夏太郎の首に腕を回して引き止める。
崩れ落ちる瓦礫。
「どっこいしょ」
牛山は支えていた屋根を思いっきり、しかし軽々と投げ飛ばす。
「背広が汚れたぜ」
何事も無かったような表情でパンパンと腕をはたく牛山。
牛山さんスゲー、と若干引き気味の夏太郎。
谷垣もインカラマッも呆然と牛山を見ている。
ドドン、と駆逐艦から何かが発射される。
発射された何かは監獄の上空を照らす。
その光に照らされる谷垣と牛山。
谷垣はそれが日露戦争で使用された照明弾だと呟く。
一方、一行から姿を消していた土方は、監獄の塀に沿って悠々と歩いていた。
スポンサードリンク
進撃する第七師団
上陸を遂げた第七師団は、さらに監獄内へと攻め込んでいた。
攻め込む第七師団と監獄を守る看守とで激しい銃撃戦の様相を呈している。
看守たちは銃だけではなく、機関銃でも第七師団を迎撃する。
鶴見中尉は傍らの月島軍曹に、やれ、と命じる。
「はい!!」
月島はおもむろに手元の爆弾のピンを抜く。
尻側にある布の部分を掴んで回し、その遠心力で看守に向かって爆弾を放る。
「なんか投げたぞ」
看守が隣で機関銃を撃つ看守に注意を促す。
「え?」
緩やかな放物線を描き飛んでいく爆弾は、機関銃を撃っていた看守のおでこに、しかもちょうど信管がヒットする。
看守の二人は爆発に巻き込まれる。
第七師団は鶴見中尉の、前進して蹴散らせッ、という号令を合図に一気に攻め込んでいく。
慌てる杉元たち
のっぺらぼう(偽)の独房では、白石が床をのこぎりで切断していた。
何やってんだ? と尋ねる杉元に、白石は、全ての監房の床下には通気の為に狭い空間があると説明する。
あーッあーッ! とのっぺらぼう(偽)が杉元たちに視線を送りながら叫んでいる。
作業を邪魔され、うるせえなマジで!! とのっぺらぼう(偽)に罵声を浴びせる白石。
杉元も、おとなしくしてろよ、と怒る。
しかし、のっぺらぼう(偽)は叫ぶのを辞めない。
のっぺらぼう(偽)が、その両手の人差し指で必死に指し示した方向では布団から炎が上がっていた。
杉元と白石ものっぺらぼう(偽)と同じ調子であーッあーッと叫ぶ。
スポンサードリンク
アシリパを誘う土方
アシリパは都丹庵士の「父親に会いたくないのか?」という言葉に、一度は杉元の元へと向かった足を止めていた。
アシリパは都丹庵士に向かって、都丹庵士も門倉も監獄内ののっぺらぼうが偽物だと知っていたのかと問いかける。
都丹庵士は、24人が脱獄した後すぐにのっぺらぼうは犬童によってすり替えられたのだと答える。
門倉は七年のっぺらぼうを見続けていたため、すり替えに気付かないほど間抜けではないと続ける。
「知ってて杉元たちをあそこに送り込んだのか!?」
都丹庵士に向かって必死に問いかけるアシリパ。
「おとなしくついて来い アシリパ」
都丹庵士の背後から土方が現れる。
「機を逃すぞ」
のっぺらぼうの房へと突き進む鶴見中尉
監房が第七師団の爆撃に晒され入り口が破壊される。
門倉の元にまで爆風の余波が伝わる。
「何やってる早く逃げろッ」
門倉は逃げながら、必死で傍らの看守に呼びかける。
ドン
鶴見中尉の狙いすました銃撃が看守の顎にヒットする。
「来たッ」
その銃撃音の近さに、いよいよ第七師団の手が近いことを悟った杉元と白石。
「のっぺら坊は?」
銃を片手でジャキッ、と排莢する鶴見中尉。
その表情は歪んだ笑顔を浮かべ、脳汁が眉間を流れる。
ギンギンになった鶴見中尉のその全身からはオーラが立ち上る。
生き残った看守は素早くのっぺらぼう(偽)の監房を指し示す。
第七師団は一気に看守の示した方向に駆けていく。
門倉は見張り部屋の中に身を潜め、第七師団が通り過ぎるのを息を殺して待っていた。
通り過ぎていく第七師団兵の中に、頬のほくろに棒人間を描き足した宇佐美がいるのに気づき、門倉はギョッとする。
第七師団は鶴見中尉を先頭に、ズカズカと監房を行く。
鶴見中尉は一つの監房の扉が空いて、のっぺらぼうが立っていることに気づく。
そののっぺらぼうの傍らに杉元の姿を確認し、鶴見中尉は呟く。
「不死身の杉元」
スポンサードリンク
感想
牛山最高(笑)。
自分、好きなキャラなんすよ~マジで。
膂力がハンパじゃない。こんなフィジカル、男として憧れないわけがない(笑)。
ゴールデンカムイ作中でもかなりマッチョな部類に入る谷垣ですら、牛山が屋根をさも簡単そうに放り投げてた姿に引き気味だったのには笑った。
そして、読者としてはこの流れは快感でもあった(笑)。
幸せになれよ…、という牛山のフラグ台詞からのフラグブチ折り屋根投げ飛ばしの流れは、実は来るかな? とページをめくる前から思ってたけど、いざ来たらやっぱりと思って笑った(笑)。
そもそも熊すらも見事に投げ飛ばしてたし、武器を用いない素手での戦闘ならゴールデンカムイ作中で最強間違いなし。
しかし、そう考えると、杉元はそんな牛山と組み合って決して負けてなかったんだから筋肉の質量なんかを考えるとやはり杉元は異常なんだと思う。
メインウェポンが銃及び銃剣だから忘れやすいけど、杉元はフィジカル相当あるよね。
当サイトでは各キャラの紹介と共に戦闘力を、感覚でではあるけど相対的に数値化している。
杉元の戦力評価をちょっと上方修正、及び他のキャラの数値を下方修正しなければならないかなと思った。
あと、普段一緒に行動することが多くなっていたから忘れかけていたけど、杉元と土方は第七師団に対抗する為に組んでいたのであって、お互いに利益が反するところもあるんだった。
土方は、どうやらアシリパだけ本物ののっぺらぼう――ウイルクの前に連れて行きたいようだ。
そのために今回の作戦を利用したのだとすると土方は作中でも鶴見中尉に比肩するキレ者だと言える。
都丹庵士や門倉はそんな土方に協力しているわけで、カリスマ性も高い。
あと、第七師団が強すぎる。
網走監獄を防衛する兵たちは戸惑っている内にやられているという印象を受ける。
監獄兵にも戦う覚悟はあっただろう。
それでも、虚をついてきた鶴見中尉率いる第七師団の奇襲に完全に切り崩され、そしてその後は一方的に攻撃を受ける側になっていた。
鶴見中尉は相手に立て直す隙を一切与えず、電撃的に監獄内へと攻め込んだ。
おそらくここまで、時間にして数分だろう。
そもそも兵隊の個々人の能力が高いのに加えて、鶴見中尉というキレ者+カリスマ性というチート指揮官が率いているのだから、最強部隊なのも納得。
個々人の能力。例えば、月島軍曹の投擲爆弾の精度の高さがその能力の高さを物語っているように思う。
本当に見事に信管をおでこにヒットさせてたもんなぁ。
狙ってこの結果なら相当優秀な軍人だよ。
機関銃に対する攻め手として鶴見中尉が素早く月島に命じただけでこの結果なんだから、やはり第七師団の練度は高く、でたらめに強い。
杉元はこんな集団を相手にしようとしてるんだから驚く。
果たしてこの雪隠詰めとも言える状況を杉元は無事に切り抜けられるのか。
あと、132話では全く出てこなかったが犬童はこのままやられっ放しとは考え辛い。
次回、何か兵器を使って第七師団を強襲しそうな気がする。
そうしてますますバトルロイヤル感が増してきてくれることを期待したい。
以上、ゴールデンカムイ第132話のネタバレを含む感想と考察でした。
133話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。