111話 忘れ形見
第110話までのざっくりとしたあらすじまとめ
支遁が様々な動物と仲良くなろうとするがことごとく逃げられる。
手負いにしたくないため村田銃を使用しない支遁。
アイヌ猟師に囲まれて殺されそうになっている谷垣。
そんな谷垣の元へ駆けつけた尾形が一発銃を撃ち、注意を引きつける。
尾形上等兵、と尾形を呼ぶ谷垣。
鶴見中尉の命令かと尋ねる。
谷垣は尾形に、とっくに金塊争奪戦からは降りたことを主張する。
今の自分は世話になったおばあちゃんであるフチの孫アシリパを連れ戻す役目を負っていると言う。
尾形は谷垣に俺に頼めと命令し、弾を装填。旺盛な戦意を見せる。
そんな尾形を制止しようとする谷垣。
そこにアイヌの長老がやってきて谷垣はアイヌの村へ連行される。
その一方は杉元たちに伝わり、杉元たちもアイヌの村へ。
村で中央に縛られた谷垣はアイヌの村の男たちからつるし上げに遭う。
谷垣に向けて短刀を構えている男の前に立ちふさがる杉元。
杉元は村の男たちにむちゃくちゃに殴られるが大男に一撃いれて昏倒させる。
谷垣の胸毛を引きちぎり、俺達が必ず真犯人の姉畑支遁を捕まえて来ると宣言。
3日の猶予を得た杉元たちは姉畑支遁の追跡を開始する。
110話の詳細は上記リンクをクリック。
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111話 忘れ形見
あぐらをかいて、じっと目を閉じている。
「私と杉本が三日以内に姉畑支遁を連れて戻れなかったときは…」
アシリパが高床式の小屋の前に座っている尾形を見上げる。
「尾形が谷垣を守ってくれ」
「あの小熊ちゃんを助けて俺に何の得がある?」
アシリパに返す尾形。
「奴は鶴見中尉の命令で俺たちを追ってきた可能性が高い」
「鶴見中尉を信奉し 造反した戦友三人を山で殺す男だ」
勘違いしてる。尾形は真実を知らない。
「谷垣と行動していた三人のことか?」
「あいつらを殺したのはヒグマだ」
「俺がその場にいたんだから間違いない」
その杉元の言葉に尾形が反応する
「ヒグマ?」
事実を知らなかった尾形。
「谷垣はマタギに戻りたがっていた」
アシリパが再び尾形に向けて言う。
「足が治ったあとも軍に戻らず フチの家にいたと聞いた」
「谷垣に何かあればフチが悲しむ」
杉元が畳みかけるようにアシリパの援護をする。
「アシリパさんの頼みを聞かねえと…嫌われて獲物の脳みそ貰えなくなるぜ」
いや、それいらねぇって言われれる可能性が高いだろ(笑)。
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「言っとくが…俺の助ける方法は選択肢が少ないぞ」
アイヌの男たちを振り返った尾形の表情は狩猟者そのもの。
一方、アイヌ達はまだ杉元たちとやり合った後の不穏な空気に満ちている。
一人の男がアイヌ達をなだめているが、その男もまた杉元たちを睨みつけている。
相変わらず尾形はクールでかっこいいな。
アシリパが焦る。
谷垣を助けるために必死なアシリパさん。
「無い…!!」
姉畑支遁が焦りの表情を見せる。
「ここにあった鹿の死骸が 誰かに持ち去られている!」
「嗅覚の鋭いヒグマなら死骸の匂いで寄ってくると思ったのに…」
惨殺してその場に捨て置くというのは、快楽目的だけではなく、いちおう、意味のある行為でもあったのか。
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姉畑支遁は2匹のエゾシカをオックオンする。
「あ~いますねえ エゾシカの親子ですね」
「この時期は出産のために草原や湿地帯などひらけた場所に来るんですね」
「その生まれたばかりの子供を狙ってヒグマが来るんですね」
「あの親子を隠れて見張っていたらヒグマに会えるかもしれません」
子鹿の姿に目を奪われた姉畑支遁。
「可愛いですねぇ とても愛らしい…」
「本当に愛らしい…」
姉畑支遁は、鹿の、野生動物としての生存本能を舐めて、無策のままただ飛び出した。
まるで女性に襲い掛かる変質者の如く、下半身丸出しで子鹿に襲い掛かる。
「大好きだぁ~!!」
親鹿が見事に姉畑支遁を撃退する。
倒された後も、何度も鹿から攻撃を受ける姉畑支遁。
「痛い痛いッ」
「やめてッ」
姉畑支遁は、目的を遂げぬまま、ついに鹿から逃げ出す。
「どうしていつも私はッ」
とりあえずお前は学者じゃないな(笑)。
頭が悪すぎる。
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傍らでは鍋を温めている。
「カムイと人間が結婚するウエペケレ(民話)はたくさんある」
アシリパが杉元たちに解説している。
「狼や熊と結婚した男の話や カッコウと結婚した男の話はカムイと子供まで作っている」
それを受けて杉元も返す。
「和人の昔話にも『鶴女房』って話があってね」
「女に変身して人間に恩返しするんだけど」
「鶴の姿を見られたとたんに逃げていくんだ」
「どの話も動物と結婚するときは必ず人間に変身した姿で結婚する」
アシリパが続ける。
「やっぱり動物と結婚するのはいけないことだとみんなわかってるからだ」
「カムイはカムイ 人間は人間とウコチャヌプコロしなきゃいけないんだ」
「悪い狐が悪知恵で人間と結婚しようとして正体がばれて殺される話もある」
「カムイと人間が良くない方法でウコチャヌプコロしようとすると罰を受けるということだな」
アシリパは横になる。
たき火の音がした。
その瞬間、それに反応するかのように、暗闇から音が聞こえる。
杉元は暗くなった草原一面を見渡す。
しかしそこに生物の気配は感じ取ることができない。
「何かいるのかな?」
杉元が反応する。
「ヒグマじゃなきゃいいが…」
杉元は銃を抱えて横になった。。
隣でアシリパはうーんうーんとうなされている。
その寝言は「ウコチャヌプコロ…」。
アイヌにも似たようなおとぎ話があるんだな。
面白い。
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雨が降っている。
姉畑支遁は魚の腸を露出させていた。
その前でため息をつく。
「せっかくイトウを釣ってハラワタを出しても」
「この雨では臭いが遠くへ伝わりませんね」
「先に目の良い鳥が見つけて食べつくしてしまうかも…」
一方、アイヌの村の檻に収監された谷垣は雨に対して何の防護策もないまま雨に晒されている。
尾形も高床式の小屋の入り口の前であぐらをかき、マントで全身を覆ってはいるが、雨ざらしになっている。
杉元たちはハスの葉を傘がわりにしている。
「雨止んだけど もう日が暮れるぜ」
杉元が続ける。
「今日も見つからなかったな」
難航する捜索。手がかりが二瓶の銃だけとなると無茶だよなぁ。
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つまりアイヌ達に約束した期限となる最終日。
「わあッ 良い物みいつけたぁ!」
姉畑支遁の目が輝く。
「ヒグマの〇んちですねぇ」
「前足の足跡が横幅14センチ以下なのを見るにメスか若いオス…」
「おっとぉ? 子供の足跡がこっちにありますね」
「メスの〇んちだあ」
姉畑支遁はヒグマの糞に向けて体ごと飛び込み、腹で糞を押しつぶす。
糞のあった場所で仰向けになり、背中にも残りをなすりつける。
「今の時期はヒグマの発情期の終わりくらいですね」
姉畑支遁が冷静に言う。
「メスの近くにはそれを追う発情期のオスも多いはず」
「メスの糞のニオイで オスになら警戒を和らげられるかもしれません」
姉畑支遁は木の枝を身に付けた。
ヒグマの巣穴に入って仕留めるアイヌの狩猟法を思い出した姉畑支遁は、それをなるべく忠実に実行しようとしていた。
ヒグマは巣の中に入って来た人間を殺さない。なぜならなるべく汚したくないため。
猟師は松の枝を蓑のように着ることで、それを用いてヒグマを巣穴から外へ向けて押し出す。
この方法でヒグマに接近できるかもしれないと考えた姉畑支遁は実行に移す。
「この猟銃は最後の手段…」
姉畑支遁はまるで戦地でドーランを顔に塗るかのようにヒグマの糞を顔に至るまで身体全体へと塗りこめる。
準備の出来た姉畑支遁。
(いざ行かんッ)
その表情はこれまでふざけていたものと違い、真剣さが漂っている。
意外と手ごわい敵なのか。
一応脱獄囚だから荒事も出来るということなのか。
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「ヤバイぞ」
杉元が焦る。
「最終日なのにまったく見つけられねぇ」
黙っているアシリパの表情も固い。
「姉畑がヒグマに銃を使ってくれたら 音でおおよその位置がつかめるかも知れんが…」
「ひとまずコタンに戻って谷垣を逃して時間稼ぎをするしか無いぞ」
「谷垣は尾形が助けてくれる」
アシリパは尾形を信じて疑わない様子で杉元に言う。
「あんなの一番信じちゃダメな奴だよ」
杉元が不安そうな声でアシリパに答える。
アシリパさんの無垢な心に心洗われる思い。
杉元の反応が正しい。
でも尾形はなんだかんだで谷垣を守ると思う。
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どこかから植物を揺らす音がする。
何がその音を立てているのか、その姿は見えない。
「!?」
杉元は素早く銃を構える。
「まただ…」
「ヒグマかも…ずっと俺たちをつけてる奴だ」
アシリパも弓を構える。
「フンフンッ」
そこに現れたのは尻尾を振る犬が1匹。
「あれ? この犬どこかで…」
杉元が思い出そうとしている。
「リュウだ!!」
アシリパが叫ぶ。
姉畑支遁追跡の手がかりさえ掴めていない杉元たちの前に、二瓶鉄造が猟犬として使役していた犬が出て来た。
ここで出て来るとは。
そういえば主人の二瓶を亡くして、あのあとどうしたんだろうと思っていた。
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杉元が思い出したように言う。
「ほんとだッリュウだ!」
「二瓶鉄造の猟犬が何でこんなところに?」
「谷垣たちと一緒に小樽から来たのか?」
「いや チカパシも何も言ってなかった」
アシリパが冷静に答える。
杉元は、ハッ、と口元を押さえる。
「もしかしてリュウ」
「お前まさか…」
「谷垣が持っていった二瓶の忘れ形見をずっと追いかけて…」
二瓶鉄造の猟銃を脳裏に浮かべる杉元。
リュウは谷垣がチカパシと合流した場所、焼け落ちた江渡貝屋敷などこれまで谷垣の通って来たルートを辿っていたのだった。
「クーン…」
「リュウお前なんて健気なイ痛ででででッ」
「ガルルルッ」
杉元が可愛がろうとするとリュウに手を噛まれる反撃を受ける。
「痛えなクソ犬ッ」
リュウをひっぱたく杉元。
「あっち行けよ!!」
このスピード感(笑)。
リュウはお笑いを良く分かってる犬だな。
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アシリパが何か思いつき、杉元を止める。
「姉畑支遁が二瓶鉄造の銃を持っているなら リュウが姉畑を見つけてくれるはずだ!!」
「なるほど!」
杉元の表情が輝く。
一方、姉畑支遁はヒグマを発見していた。
「いたぁ…」
やっと姉畑支遁追跡の糸口を見つけた。
次回、対決となるのか。
支遁はただのヤバい奴だなと思っていたら結構真剣な表情も見せていて驚いた。
あまり白兵戦は強くない印象だけど、杉元たちとどう戦うのだろうか。
見逃せない戦いになりそう。
楽しみ。
以上、ゴールデンカムイ第111話のネタバレを含む感想と考察でした。
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