107話 眠り
前回第106話の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。
夏太郎が辺りを伺う。
「稲妻はどこだ?」
ここまで夏太郎とともに馬を駆って来たお銀の体が崩れ落ちていく。
「どうしたお銀!!」
夏太郎が駆け寄る。
「どこか撃たれたのか?」
第七師団兵らの弾はお銀の腹に命中していた。
おびただしいしい出血が腹部を濡らしている。
「いいから行って」
夏太郎に向け言うお銀。
やはり無傷ではいられなかったか。
悪人とは言え、お銀、男前なんだよなぁ。
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「いたぞお銀ッ」
「あそこに稲妻が…」
夏太郎はお銀に呼びかける。
「慶さん!!」
叫ぶお銀。
坂本もまたその声でお銀に気付く。
「お銀…」
しかし次の瞬間。
鶴見中尉の機関銃から飛び出す連続した鉛玉。
蜂の巣にされる坂本。
目の前にはお銀。
残酷過ぎる。
いかに悪人とはいえ、あれだけ愛し合っている二人にこういう悲劇が襲ってくるとは。
報いなのか。
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鶴見中尉の脳を守るための額のプロテクトから液が噴出する。
なんともいえない快感を得ているような様子の鶴見中尉。
「くうッ」
ここ怖すぎ。
「お銀 まてッ」
寸でで夏太郎がなんとか止める。
「いま行ったらお前も殺されるぞ!!」
しかしお銀は夏太郎の言う生き残りを考えてなどいなかった。
「幸せなまま 終わりにしたいの」
頬を微かに赤く染め、愛する人との人生の終焉を願うお銀がそこにいた。
お銀は本当に坂本のことが好きなんだな。
ほんとになんて表情なんだろう。
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「いっぱい出た……」
鶴見中尉は非常に満足な様子でハンカチで顔を拭いていく。
そして、坂本に寄り添っているお銀を見る。
「マムシ…」
息も絶え絶えの坂本。
「愛してるわ慶さん…」
幸せそうなお銀。
「愛してるぜお銀……」
2人は最期のキスをする。
悪逆の限りを尽くしていた二人に訪れた最期としてはあるいは相応しいと言えるのかもしれない。
しかし心が痛むのはどこか感情移入してる部分があるからだろうなぁ。
「私は貴様ら夫婦の死神だ」
「稲妻安心しろ…お銀も一緒に地獄に落としてやる」
鶴見はお銀の頭へと銃口を向けた。
しかし次の瞬間、お銀は鶴見中尉の足の甲に錐のようなかんざしを突き刺していた。
「!?」
まさか反撃されるとは思っていなかった鶴見中尉。
お銀はさらに、すかさず鶴見中尉の背後へと回る。
「テメェが地獄を案内しなッ!!」
!!
やはりタダではやられない。悪人の底力。
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声にならない叫びを上げる鯉登少尉。
鯉登少尉はお銀と鶴見中尉がもみ合っているその後ろからお銀の首を斬り落とす。
お銀の首が転がる。
なんとその首は鶴見中尉の足に噛みつく。
「おおおッ」
その執念に感動を隠せない鶴見中尉。
「首だけになってまで…まさにマムシ!!」
「稲妻が言ったとおりタダでは死なん女だ」
喜んでいる様子の鶴見中尉。
「美しい死に様を見せてもらったぞ」
「稲妻強盗と蝮のお銀」
なんという執念……。
実際、首だけになってもほんの僅か生きていたという話はあるけど、ここまでのことは無い。
首だけになっても生きていたように見えていたというのは、せいぜい「瞬きした」程度。
でもこの演出は息を飲む。壮絶だね。
そしてそれに戦慄するのではなく心から喜ぶ鶴見中尉。
せめて恐れを見せてくれたら……。
このままではお銀が不憫。残酷だわ。
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鶴見中尉が鯉登少尉に指示する。
「お銀の荷物を調べろ 本物の刺青人皮を持っているかもしれない」
首の無いお銀の背負う背嚢を調べるとなんと声が聴こえる。
「おぎゃーッ おぎゃーッ」
そこには赤ん坊がいた。
刺青があるのではないかと見ていたお銀の背嚢にはなんと赤ちゃん。
坂本がこれを知らないわけはないから、赤ちゃんがいる状態で盗みやらやってたってことか?
……すげぇなぁ。
二階堂はたどたどしい手つきでおむつを交換している。
「子供は親を選べない」
鶴見中尉が感慨深げに言う。
「あの夫婦は凶悪だったが…」
「愛があった」
「あんな親が育てた子供はどんな人間になるのか……興味が有るところだったな」
確かに愛はあったんだよなぁ。
親の仲が良いというのは子供にとってすごく良い環境だとは思うけど、なにしろ家業がねぇ……(笑)。
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「生粋の凶悪な殺人者でしょう」
鶴見中尉は答える。
「時代に合えば英雄になっていたかも知れんぞ」
うーん。
鶴見中尉のセリフの背景にはアシリパさん。そしてのっぺらぼう。
鶴見中尉は何もかもお見通しということなのか。
「どこか信頼のできる人間に託さないと」
なんと、鶴見中尉が赤ん坊の引き取り手にしたのはフチ。
赤ん坊をお金の入った箱とともに家の前に置いていくのだった。
託されたフチは村の女性に頼み、お乳をあげてもらう。
フチは赤ん坊を乗せたお手製のゆりかごを揺らしながら子守歌を歌う。
「ホルルルルッ」
「イテキ チシノ モコロ モコロ」
(泣かずにねんねしな)
「エモコロ ヤクネ エコロ ミチ カ エコロ ハポ カ」
(ねんねしたならお父ちゃんもお母ちゃんも)
「ネプキ ヤクネ ソモ イペルスイ イキ ナンコンナ」
(働けるだろうからひもじい思いはしないよ)
「ニシパ エネ クニ カムイ エヌカラ キ クスネ ナ」
(立派な人になれるように神さま見ていて下さろう)
「モコロ モコロ イテキ チシノ モコロ モコロ」
(ねんねん 泣かずにねんねしな)
これでよかったんだと思わないとやってられん。
フチたちなら立派な人間を育てられる。
そして、フチの子守歌の背景に使われているのは眠っているアシリパ一行の姿。
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夏太郎は馬に乗り、街を出て行くことにした。
その夏太郎の脳裏にはお銀の最期の表情があった。
『幸せなまま終わりにしたいの…』
『お銀… これ』
実は、お銀から刺青人皮を託されていた夏太郎。
「稲妻強盗の刺青人皮は第七師団に獲られたが」
「油問屋にあったやつは手に入った」
「土方歳三さんに渡さないと…」
しかし、そんな夏太郎を第七師団の兵士が尾けていた
それに気づかない夏太郎。
これって月島軍曹が賭場に紛れ込ませていた江渡貝の贋物?
本物じゃないなら放っておくだろうから本物だったのか。
それとも、単に末端の兵士には贋物の存在が明らかにされていないからなのか。
気になる。
「杉元 ちょっとこれ見てみろ」
アシリパが杉元に呼びかける。
「なになに~?」
「今度はなんのウンコ見つけたの~?」
おい(笑)。
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「このエゾシカ…ヒグマにやられたのか?」
驚く杉元。
「ヒグマの傷じゃない 人の足跡がある」
アシリパが辺りの様子を伺う。
「メッタ刺しに殺して そのまんまにしたんだ…」
謎を残して今回の話は引き。
お銀と坂本はやはりボニーとクライドと同じく悲劇的な最期になってしまった。
その内容は以下の記事に詳しい。確認してみて欲しい。
でもその愛は間違いなく本物だった。
彼らの愛の結晶は信頼できる人に託されたのでそこは良かったと解釈するしかない。
月島軍曹の言う通り、生粋の悪人となっていたかもしれなかったから。
生まれながらの悪人なんていないと思いたいけど、生まれ持った環境はその人をたやすくある方向へと導く。
坂本とお銀が改心して普通の暮らしをするなんてあり得なかっただろうから、やはりフチに託された赤子は良かったのだろうね。
個人的には、鶴見中尉が怖すぎた。サディスティックにも程があるよ……。
以上、ゴールデンカムイ第107話のネタバレを含む感想と考察でした。
第108話の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。
コメント
これね、フチの所に行った赤ちゃんを包んでいる布がお銀と稲妻が着ていた着物なんだよね…
コメントありがとうございます。
泣けますね……。
フチの元でならきっと元気に育つはず。
ただ、この赤ちゃんは、父と母がどんな人なのか知る時が来るんでしょうか。
自分の正確な出自を知って欲しいようなそうでないような、複雑な気分です。
再登場はエンディングかな?
ちなみに、この号が発売した当時は、この子供が成長したら、きっと運動神経がとんでもないことになるんだろうななんて思ってました(笑)。