第298話 ウイルクの娘
前話第297話あらすじ
第七師団が徐々にパルチザンを制圧していく。
ソフィアは塹壕のパルチザンたちに交じって戦っていたが、第七師団兵が投げてきた手投げ弾が、ソフィアに当たる軌道で飛んでくる。
しかし数名のパルチザンがそれに素早く反応し、ある者はソフィアを守るべく手投げ弾の前に身を晒し、別の者はソフィアを手投げ弾から庇う。
爆散したパルチザンの血と肉片に塗れながら、ソフィアはすぐさま第七師団に向けて銃を撃ち始めるのだった、
五稜郭北側にあった馬小屋が炎上する。
それは、五稜郭を脱出する判断を行った場合の白石『合図』だと叫ぶ杉元。
そして杉元は、自分たちもここから一旦退き、立て直すことを土方に提案する。
鯉登少尉は第七師団兵に杉元たちを追うべく、師団兵たちに指示を飛ばしていく。
馬で駆ける第七師団兵を白石だと見破った鯉登少尉は、兵たちに白石を止めるよう命令する。
何とか銃弾を逃れながら、白石を乗せた馬は五稜郭の外につながる橋に向かう。
その時、行く手から四名の第七師団兵がやってくるのだった。
「うえっ 何で今ごろ橋の向こうから……!!」
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足を止めた白石に追いついた鯉登少尉は、アシリパと権利書が入っていると睨んでいた白石の背負った袋の紐を切る。
次の瞬間、白石の行く手を塞いでいた第七師団兵の背後から現れた永倉が、三人をあっと言う間に切りふせていた。
橋の欄干の上に乗り、川に落ちそうになっている袋の中身は、アシリパではなく縄だった。
アシリパは塀の縁で待機しており、堀を越えた白石がアシリパに向けて縄を投げて、アシリパが掴んだ縄を馬で引っ張って堀を渡る作戦だったが、作戦は頓挫したのだった、
塀の縁で白石が縄を投げるのを待っていたアシリパ。
双眼鏡で様子を窺っていると、丹庵士の遺体を発見する。
双眼鏡を下ろすと、数十メートル先に何者かが立っていることに気付く。
猛スピードでアシリパに向かっていくのは鶴見中尉だった。
その頃、橋の上では永倉と鯉登少尉の戦いが始まろうとしていた。
第297話の感想記事です。
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第298話 ウイルクの娘
北口へ
永倉は鯉登少尉の初撃を刀で受けて、その衝撃で転がる。
即座に追撃しようとする鯉登少尉。
白石は逃げようとしていた方面からさらに馬の乗った第七師団兵がやって来たことに呆然としていた。
鶴見中尉から逃げていたアシリパは転んでしまう。
それは、頭部から血を流して倒れている第七師団兵に足を掴まれていたからだった。
アシリパに肉薄する鶴見中尉。
馬に乗った杉元が駆けつけて、馬上からアシリパに向けて手を差し伸べる。
アシリパを乗せる杉元。
合流した白石の提案で北口に向かって馬を走らせる。
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白石は南の橋の方から今頃になって兵が走って来るのは、おそらく北口のソフィアの抵抗によって北口から入れないからであり、北口の橋の向こうには兵が少ないはずだと白石。
「大事なのは脱出した後だ 逃げ切るぜ」
鯉登少尉の二撃目、上段から振り下ろされた刀を、永倉は刀で受け流し、逆に鯉登少尉に向けて振るう。
かわした鯉登少尉をさらに追い、刀を振るう。
その時、鯉登少尉が橋の欄干に身体をぶつけたことで、欄干の上にあったアシリパが身に着けていた袋が堀に落ちていく。
その袋の中身を権利書だと睨んでいた鯉登少尉は袋を追って堀に飛び込む。
そして袋に向かって刀を投げて、柱に刺すことで袋を落水から救うのだった。
破れた袋から出て来た縄を頭に受ける鯉登少尉。
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ソフィアの叫び
北口に到着した杉元たち。
戦っているソフィアに脱出を促すが、ソフィアは首を振るう。
杉元はソフィアを、負けて逃げるのではなく権利書を守るために引くんだと説得しようとする。
しかしソフィアが一向に逃げようとしないのは、親分がまっさきに逃げられないってことだろと白石。
ソフィアは第七師団兵を撃って、早く行けと杉元たちに視線を送る。
「ここ止める アシリパ 安全な場所へ」
「アシリパ ウイルクの愛する娘」
遠ざかる杉元たちに向けて叫ぶソフィア
「でも…未来はあなたが選んで!!」
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アシリパは、馬を駆る杉元の後ろで、呆然とソフィアを見つめていた。
戦い続けるソフィア。銃の照準を一人の敵に合わせる。
その敵に、ソフィアは長谷川の姿を見ていた。
引き金を引くことが出来ず、照準を合わせたまま硬直する。
その間にその敵——鶴見中尉はピストルをソフィアに向けて二発発射する。
銃弾は二発ともソフィアの腹部を貫くのだった。、
膝から崩れ落ちていくソフィアを見て、アシリパは言葉を失っていた。
第七師団兵が杉元とアシリパが乗る馬の足を銃撃する。
バランスを崩して馬から投げ出されるアシリパ。
「アシリパさん」
杉元は慌ててアシリパに手を差し伸べる。
権利書を入れた矢筒を持ったまま、堀に落下していくアシリパ。
その矢筒を掴み、アシリパを堀への落下から救ったのは馬で五稜郭まで駆けつけてきた谷垣だった。
「これでフチに恩を返せる。」
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感想
永倉VS鯉登少尉
やはり杉元がアシリパさんを救ったか。
アシリパさんの足を掴んだ兵士の執念がすごい。
頭部の怪我はおそらく致命傷っぽいのに、立ち上がることの出来ない状況の中、確かな意思を以て、今自分に出来ることでアシリパさんが逃げるのを邪魔しているように思える。
こんな奴らで構成された軍隊なんて相手にしたくない。怖すぎる。
そして永倉VS鯉登少尉。見応えのある立ち合いだった。
鯉登少尉の渾身の初撃を受けきった時点で永倉のペースとなった。
次の鯉登少尉の一撃を、永倉は見事に刀で受け流しつつ、上段を振るって反撃する。
それでペースを掴んだ永倉が次の一撃。
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欄干から落ちていく袋を鯉登少尉が追わなければ、おそらく戦いは永倉有利で進んでいただろう。
せっかく水に落とさずに済んだ袋の中身は権利書ではなくただの縄だったわけだけど、鯉登少尉は命拾いしたのかもしれない。
永倉も鯉登少尉も良いキャラだから、双方ともに傷つかなくて良かったと思ってしまう。
しかし土方といい、永倉といい、幕末から大暴れしてきた新選組隊士たちが強すぎる。
戦いの趨勢は第七師団が有利だから、土方も永倉もここで命を落とす可能性はある。
特に土方はかつて函館戦争で仲間たちが逝った場所が死に場所なら上等と考えて、無茶しそうなんだよな……。
ここまでの戦いで傷ついているわけだし、土方にも永倉にも無茶して欲しくないところだ。
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ソフィア……(泣)
都丹に続き、ソフィアまで逝ってしまった。
先週の戦いの様子を見て、予感はあったけど、こんな形で最期を遂げてしまうのか……。
長谷川を名乗っていた頃と今の鶴見中尉は風貌も雰囲気も異なっている。
にもかかわらず、ソフィアは鶴見中尉を一目見て長谷川だと分かってしまった。
激戦の最中で闘争本能がMAXの状態なのに、一瞬で冷や水を浴びせかけられたかのように撃つのを躊躇ってしまう。ソフィアはそれほどまでに長谷川の生活を破壊してしまったことへの罪悪感を抱えていたのだと思った。
それに対して鶴見中尉は何の躊躇もなくソフィアを撃つ。
ソフィアだと気付いていても、そうでなかったとしても、鶴見中尉からすれば撃たない理由はなかったのだと思う。
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悲しいが、ソフィアが一方的に鶴見中尉にやられてしまったのは当然の帰結と言えるだろう。
幾多の戦いを生き抜いてきた烈女ソフィア、五稜郭で力尽きる、か……。
アシリパとの別れ際のソフィアの言葉が泣けるね。
ソフィアが愛したウイルク。その娘に対する最後のメッセージ。
未来はあなたが選んで、か……。アシリパは、自分やウイルクが抱えて来たものに縛られる必要などないということだ。
ひょっとしたら、アシリパのことを娘のように思っていたところもあるのかもしれない。
ソフィアだけではなく、パルチザンたちの戦いや命を無駄にしないためにも、杉元たちは権利書を死守しなくてはならない。
そして、ソフィアやパルチザンの戦いぶりを伝えていかないといけないと思う。
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心強い仲間
そんな大切な権利書が堀に落ちようとしたのを拾ったのが、まさかの谷垣……!
谷垣はインカラマッと生まれたばかりの赤ん坊のそばについててあげても良かった。でもここで登場しなかったらゲームオーバーだったかもしれなかった。
これ以上ないタイミングで登場したと思う。一体どこで情報を得て、五稜郭まで駆け付けてこれたのか……。
ごく自然にアイヌの装いで登場するあたり、谷垣はつくづく阿仁マタギの精神を心の内に宿しながら、アイヌ民族の一員となったんだなと感じる。
心強い仲間の登場で杉元たちも勢いがつく……と思ったけど、戦況自体は不利であることに変わりはない。
五稜郭脱出の可能性は高まったと言えるが、ここから犠牲者がさらに増えないとも限らないんだよな……。
まさか谷垣がやられてしまうことはないと思いたい。
以上、ゴールデンカムイ第298話のネタバレを含む感想と考察でした。
第299話に続きます。