第296話 武士道
第295話の感想記事です。

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第296話 武士道
刺青施術中の土方
網走監獄の房で、のっぺらぼうは土方の身体に刺青を彫っていた。
24人の囚人の身体に刺青を入れるなどという回りくどいことをせず、自分にだけ金塊の隠し場所を教えたらどうかという土方に、のっぺらぼうは問う。
「…あんたが本当に土方歳三か 証明できるかね?」
そして、看守の門倉も、土方と面識があるのは門倉の父だと続ける。
土方から、お前さんこそ本当にアイヌかね、と問い返されたのっぺらぼうは、自分の目が青いのは、父が樺太に流刑にされたポーランド人だからだと答える。
土方は、ポーランドが百年前から武装蜂起を繰り返しており、のっぺらぼうは北海道の金塊を帝政ロシアと戦うための軍資金にしようとしているのではないかと指摘する。
看守の足音を聞いていた都丹庵士が、声を抑えるようにと警戒を促す。
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土方はのっぺらぼうと自分の共通認識が、ロシアの南下を食い止めるために北海道を多民族国家にして独立国にすることにあると確認して、のっぺらぼうが脱獄できないなら自分が誰であれ託すしかないのではと指摘する。
それじゃ困る、とのっぺらぼう。
「土方歳三にしか出来ないこともあるんだから」
アイヌのためにに動いてくれるか確信が持てないと言うのっぺらぼうに、土方は答える。
「自分のためだけなら簡単に諦めがつく 何かのためになら命をかけて戦える 武士道だ」
「函館戦争で負けて賊軍と言われ 地の果ての監獄に閉じ込められても日本の未来のことを考えている」
「愛する家族や育てられた故郷 その延長にある日本という国土をどうやって守っていくか その中には当然アイヌも含まれる」
「個人的にアイヌには恩もある」
アイヌの誰にとのっぺらぼうの問われ、土方は答える。
「アイヌの男たち キムシプ……という男がいた」
のっぺらぼうは、『コチョウベアスコ』という娘に会え、と切り出す。
「私のことがわかるはずだ」
脱獄後、土方はコチョウベアスコ――アシリパの村へ行き、アシリパと顔を合わせていた。
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鶴見中尉を探せ
土方は第七師団兵を右手で持った刀で袈裟斬りにしながら、左手でライフルをぐるりと回転させて派手にコッキングする。
刀を地面に刺し、ライフルで別の兵2人を撃つと、今度は刀を地面から引き抜いてさらに別の兵の腹部を斬り、また別の兵の顔を下から斬り上げる。
コッキングしてライフルを撃つが、今度は別の兵の銃撃を右腕あたりに食らう土方。
木の幹に身を隠し、ライフルだけを出して敵兵に撃つ。
しかし完全に死角となった背後から別の敵兵による銃の柄による打撃を背に食らう。
即座に振り向き反撃しようとするが、先に敵兵の銃剣が土方の右腹を貫いていた。
「土方歳三がいたぞッ」
そう叫んだ兵の首を、この場に駆けつけた杉元が一突きにする。
杉元と土方は互いに背を預け合う形で敵兵に向けて銃を撃つ。
パルチザンと第七師団兵の戦いは第七師団兵の優位で推移していた。
杉元は、むこうの兵隊のほうが強く、状況はかなり厳しいと戦況についての自分の見解を述べる。
鶴見中尉を倒せば勢いは消えるという土方に、こんな状況で探し出すなんてと杉元。
杉元の死角から、馬に乗った第七師団兵が杉元の左腹を銃で撃ち抜く。
しかし杉元は臆することなく、即座に敵兵の顔面に銃身を叩きつけるのだった。
白石は屋根の上から戦場を観察し、アシリパに状況を伝える。
「南口も東口も陥落 侵入した兵士たちは北口を襲ってる 北口がやられたら全勢力が俺たちに襲いかかる」
「逃げよう 権利書を守るため」
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感想
土方の強さの根源
土方かっこいいな……。
今回ページ数を割いて描写される、刀と銃を自在に操っての大立ち回りも魅力的だけど、なにより若い頃と全く変わらず土方の心に息づいている武士道が最高にかっこいい。
何かのために命を懸けているからこその強さ。
監獄に閉じ込められても土方は心の内でその火を絶えず燃やし続けていたんだな……。
一生出られないかもしれない、酷寒の獄中で、絶望に打ちひしがれることもなく、ただただ日本の未来のことだけを考え続けるとか、かっこよすぎるわ。
土方が信じている武士道の在り方こそが、土方の強さの源なんだろう。
アシリパの和名コチョウベアスコというワードは、ウイルクに刺青を彫ってもらっている時に聞いたんだな。
そりゃあウイルクも土方に心動かされるよ……。
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この回で、ようやく杉元と土方が真の意味で共闘できたように思う。
この関係を待っていた! という読者もいることだろう。少なくとも自分は待ってました(泣)。
これまでも杉元陣営と土方陣営で協力関係だったが、杉元と土方とで互いに警戒し合っていた部分はあった。
特に土方から杉元を出し抜こうという意思が読み取れていたし、おそらく杉元はそれを感じていたからこそ土方に対して警戒を解かないという構図だった。
だが今回、杉元はピンチの土方を救い、二人は互いの背を守り合う形で第七師団兵たちとの戦いを乗り切ろうとしている。
杉元はもちろん、土方も戦闘力からこれまで生きて来た背景まで、主人公っぽさがあるキャラクターなのでいつかぶつかり合う時があったら互いに無事では済まないだろうな……と怖かった。
だから敵の敵は味方、追い込まれて仕方なく……、という状況ではあるけど、互いに決して警戒を解かなかった二人がこうして背を預け合っている絵は、ここまでこの物語を追ってきたいち読者として感慨深いものがある。
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独立国家の建設という大望を抱く土方にとっては金はいくらあっても足りない。
だから金塊を独占しようとして、この戦いの後に杉元たちと敵対する可能性もないわけではないと思っていた。
しかしこの感じなら、戦いを乗り切ったあとも協力的関係はこの戦い以前よりも強固なままなのではないか。
もちろんこの最終局面を杉元や土方が生き残れれば、という話だ。
杉元も土方も負傷してきている。杉元は左腹を撃ち抜かれ、土方も右腹を銃剣で貫かれている。
二人とも負傷してもなお戦意も戦闘能力も衰えていないが、長丁場になれば危ない。
互いの陣営が抱えている兵隊の戦闘力という点において第七師団の方に分があると杉元は評価していることから、鶴見中尉という第七師団の要を倒すことで、この戦争の短期決着を狙おうとしているが、決して浅くない傷を負っているという理由からも、土方と杉元はその戦略でいくのが正しいのだろう。
とはいえ、強力な兵隊に次々と味方たちが制圧されようとしている状況で敵将をピンポイントで探し出して始末するというのは至難の業と言える。
果たして土方と杉元がどのようにそれを成し遂げようとするのかが楽しみだ。
以上、ゴールデンカムイ第296話のネタバレを含む感想と考察でした。
第297話に続きます。
