第295話 ふたり
第294話の感想記事です。
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第295話
二階堂は杉元の顔に向けて足の仕込み銃から散弾を発射する。
弾は杉元の頬を抉り、マフラーを撃ち抜く。
頬に食らい、仰け反る杉元。しかし即座に銃剣で二階堂の右肩を突く。
二階堂は怒りと憎しみに満ちた表情で杉元を睨みつけながら、銃剣を掴む。
二階堂は、杉元をバラバラにして浩平と洋平のふたりに戻るのだという信念を燃やしていた。
他の兵士が、二階堂の身体が邪魔になって杉元が撃てないため、銃を構えて二階堂にどけと呼びかける。
しかし二階堂は一切それに従わず、杉元に食って掛かる勢いで叫ぶ。
「洋平を返せ!!」
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ごちゃごちゃうるっせぇな!! と杉元。
「殺し合いだろうがよ!!」
そう言って、近づいてきていた別の兵士の顔に銃剣を投げて刺し殺す。
杉元に一瞬生じた隙を突く形で二階堂が足の仕込み銃の照準を杉元に合わせる。
杉元は二階堂の足を脇に抱えると、足の裏の銃口を他の兵士に向ける。
ドンッ
放たれた散弾が兵士の顔を蜂の巣にする。
二階堂は、今度は右手の義手の指からお箸を二本取り出すと、片手で二本とも杉元の顎と首に突き刺す。
しかし怯まない杉元。銃剣で二階堂の腹のど真ん中を貫くのだった。
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決別する鯉登少尉
函館湾では、轟沈した艦の乗組員を救うべく、小舟に乗った乗組員たちが湾に浮かぶ生存者を救助していた。
かろうじて救われた乗組員は、鯉登司令官はどうしたのかと訊ねられ、答える。
「退艦せず『艦に残る』と……」
鯉登少尉は五稜郭内の建物内を探索している途中、蜘蛛の巣だらけの棚の奥に月寒あんぱんがあることに気付く。
鶴見中尉が背後にいるタイミングで、鯉登少尉は、月寒あんぱんのひとがついた甘い罠、と呟く。
そして、自分たち親子がここまで来たのは自分たちの選択だからどうなっても受け入れると続ける。
「鯉登少尉!」
月島軍曹は鯉登少尉のその後の発言を窘めるように鯉登少尉の名を呼ぶ。
この戦が終わって何も勝ち取れなければ部下たちを中央から守るため、とまで言って、いや、と言い直す、
「あなたから守るために私は……」
いいだろう、殺しなさい、と鶴見中尉。
そして、立派に成長した鯉登少尉になら後を任せられると鯉登少尉に呼びかけるのだった。
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鯉登少尉は神妙な表情で、その言葉を聞いていた。
鶴見中尉は隣の部屋に行くなり月島軍曹に向けて問いかける、
「私の味方はもうお前だけになってしまった?」
鶴見中尉と月島軍曹を残し、建物を後にする鯉登少尉。
二階堂は顔中に血管を血走らせて杉元を睨む。
「よくも俺の兄弟を…浩平の身体を返せぇ!」
二階堂の腹部に銃剣を突き刺した杉元は刺さったままぐりぐりとドリルのように回転させて、二階堂の内臓を破壊する。
「兄弟仲良く地獄で待ってろ」
二階堂は右手に何かを握り込んだまま、杉元の左腕を掴む。
二階堂のズボンには、手投げ弾のピンが握りこまれていた。
「ぶっとぼうぜ 杉元!!」
二階堂の股間のジッパーから、点火された手投げ弾がのぞいている。
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杉元は二階堂を肩にかつぎ上げ、近くの塹壕に二階堂を放り込む。
間もなく手投げ弾が爆発し、爆風の勢いで腹部に刺さった銃剣が二階堂を正中線で真っ二つにするのだった。
そして爆風で吹き飛ばされる瞬間、二階堂は真っ二つになった互いの半身と目が合う。
(おや)
(やあ浩平)
(やあ洋平)
半身同士で握手する二階堂。
(また会えたね)
(もう二度と会えないかと)
ドン
塹壕から爆発が上がる。直前まで二階堂だったものがバラバラになって空にぶちまけられる。
杉元は振り向くことなく、爆発を背に立っている。
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感想
杉元と二階堂の因縁の戦いに終止符が打たれた。
最終局面に相応しい、すごく見応えがある戦闘だった。
前話から今回の話にかけて、二階堂はこれまで失った手足の代わりに手に入れてきた仕込み武器を存分に活かした戦いで杉元を苦しめる。
だが結果的に、二階堂の全身全霊の攻撃は杉元の化け物じみた強さをより際立たせたように思う。
前話のラストで放った二階堂の足の仕込み散弾銃からの一撃は、杉元の頬を掠めるどころか抉っていた。
しかし杉元は一切怯むことなく、即座に銃剣で反撃する。
ここのスピード感最高だわ。かっこよすぎる。
一瞬たりとも自分の身を案じていない。
闘争本能に身を委ね、敵を殲滅することだけに集中しているのが分かる。
でも、それは杉元だけではなかった。
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今回、杉元の銃剣を腹部に深々と受けた二階堂もまた、杉元と刺し違えようと手投げ弾で杉元と共に自爆することを瞬時に選んだ。
この自分の身を顧みない闘争本能は、杉元のみならず、この物語に出て来る強者たちが当たり前に持っているものなのだろう。
生き残ることを考えていたら逆に生き残れないということを、数々の戦場や、そこでの戦闘を経験して学ぶものなのかか………。
腹部に受けた銃剣が手投げ弾の爆発の勢いで二階堂を真っ二つにしたけど、実際こんな風にはならないよな……。
自身の半身を向き合わせるという二階堂の最期を演出するための方法だった。
兄弟を失い、杉元への憎しみに囚われ続けていた二階堂はこの演出で救われたのだろう。
二階堂との戦いを終えて、いよいよ残すは月島軍曹と鶴見中尉……、あとは尾形?
杉元のラストバウトの相手が今から気になる。
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そして、やはり鯉登父は艦と運命を共にしてしまったか……。残念。
気骨、そして責任感があるリーダーだから、こうなるだろうなとは感じていた。
しかし残念。鯉登父は生き延びることが出来たはずだった。
鯉登少尉は自分や父に何があろうと、それは自分が選んだことだというようなことを言っていたが、実際鶴見中尉の働きかけがああっての結果であることに間違いはない。
鶴見中尉と知り合わなければこういう方向に人生が向かうことはなかっただろう。
今回、鯉登少尉は鶴見中尉にはっきりと反目する。
鶴見中尉は、自身の信頼できる味方が、いよいよ月島軍曹だけになったとを寂しそうにしていた。
しかし月島軍曹も、いつ鯉登少尉のように鶴見中尉から離れてもおかしくない微妙な立場にある。
果たして鶴見中尉や月島軍曹はどうなるのだろうか。
以上、ゴールデンカムイ第295話のネタバレを含む感想と考察でした。
第296話に続きます。