第128話 新月の夜に
第127話のあらすじ
フチの13番目の妹の住むコタン。
鮭を丸ごと一匹使った「真のチタタプ」を作る杉元たち。
夏太郎も素直にチタタプと唱えながら作業する。
以前は決してチタタプとは言わなかった尾形もチタタプと一言呟くがアシリパ以外聞いておらず、アシリパは悔しがる。
料理が出来、みんなで食べていると、牛山がインカラマッに「いい人がいるのか」と問いかける。
それを聞いたチカパシが谷垣のまだ料理の入った食器を奪い取り、インカラマッに手渡す。
男性が食器の料理を半分食べ、残りを女性が食べると婚姻が成立するのだと説明するアシリパ。
アイヌにとっての求婚のようなものかと納得する杉元。
谷垣はおもむろに席を立ち、インカラマッは追いかける。
谷垣はインカラマッに、のっぺら坊はウイルクではないと言いつつ、ウイルクかもしれないと期待しているから網走まで来たのではないかと問う。
インカラマッは肯定するが、ウイルクへの気持ちは谷垣へのそれとは違うのだと言う。
運命から逃れられないと思っていた自分を救った谷垣にプロポーズするために、ウイルクへの気持ちにケリをつけたいのだとインカラマッは谷垣に説明する。
谷垣もまた、アシリパをフチの元へ返す役目を終えることが先決であり、それからインカラマッに自分の料理を半分食べた食器を渡すと宣言する。
門倉看守部長に見つかっていた杉元とキロランケは通報される事無く話を聞かされていた。
明治新政府と敵対していた旧幕府軍側の出身だと杉元とキロランケに告白した門倉看守部長。
犬童がのっぺら坊をどこの監房に移すのかが予想できると杉元とキロランケに売り込み、杉元達に協力を持ちかけるのだった。
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第128話
犬童四郎助の監視の中、のっぺらぼうが監獄舎内を移動させられている。
門倉看守部長はその様子を見ていた。
(今日は第二舎の第四房か・・・)
(今日の予想も当たった)
「門倉の旦那」
囚人が、今のがのっぺらぼうかと話しかける。
監獄内で、第七師団がのっぺらぼうを狙っていると噂になっており、第七師団兵が網走監獄に攻め込んで来た際には証拠隠滅により収監されている囚人は皆殺しになるのだという。
「そん時は銃を渡すからお前らで北鎮部隊と戦ってくれよな」
門倉が言葉を返す。
「俺は全力で逃げるから」
作戦会議
門倉の宿舎。
「次の新月の晩にのっぺらぼうがいる房はここ…」
門倉が指し示す。
「第四舎第六十六房だ」
「俺の脱獄の鉄則としては新月に関わらず すべての音をかき消す嵐の夜なんだが…トンネルが川のすぐ側だ」
白石が続ける。
「雨とか川の増水で塞がれる危険がある 今回はオレ一人じゃねえしな…」
白石は、看守はもちろん誰にも気付かれないように侵入し、アシリパをのっぺらぼう会わせて静かに立ち去れば大成功だと目標を掲げる。
「失敗すればここのトンネルはすぐに見つかりその瞬間に門倉はお尋ね者だな」
土方が指摘する。
門倉は、この仕事に執着は無いと即答する。
「その時は土方さんにお供します 死んだ親父も喜ぶ」
キロランケは、土方と内通している看守は門倉だけかと問う。
肯定する門倉。
刺青人皮を持つ囚人の集団脱獄事件を契機に看守はほぼ入れ替わったのだと答える。
新しく雇った中には、制服を着用しているが、単に警備増強の為だけに裏金で雇ったモグリの看守も大勢いるのだという。
夜中であっても看守の数は樺戸監獄の2倍はいると推測する門倉。
「侵入して見つかれば容赦なく撃ってくるぜ」
杉元が問う。
「もし…のっぺらぼうがアシリパさんの父親だとして…連れ出すのは難しいのか?」
門倉は、のっぺらぼうは片足の腱を切られており、常に看守に支えられているため連れ出すのは困難だが、不可能と言うまででもないと答える。
危険を冒してまで連れ出す必要はない、とアシリパ。
「父が本当にのっぺらぼうなら…」
土方は前を見たまま、本来誰もいないはずの方向に向かって声をかける。
「…そこで盗み聞きしとらんで上がってこい」
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尾形の動機を訝しむ土方
杉元が開通させたトンネルの出口からにゆっくり、ひょっこりと尾形が顔を出す。
「谷垣源次郎から聞いているぞ」
土方が続ける。
「尾形百之助は自刃した第七師団長の妾の息子であるというのは公然の事実であったそうだな?」
金塊目当てで軍を出奔しただけというにはその出自がやっかいだと指摘する土方。
「父親を越えたいがゆえに動いてると?」
尾形は動じる事無く答える。
「第七師団の上に立つなんて冗談じゃねえよ 面倒くせえ」
「テメエらだってお互いに信頼があるとでも言うのかよ」
尾形はそれだけ言い捨てて、またトンネルに引っ込む。
一方、犬童は広間で竹刀を振るっていた。
手首には鍵がかかっている。
エィアッ、と気合を入れる犬童。
まるで何かの予兆を感じ取っているかのよう。
昼行燈を演じていた門倉
杉元は、のっぺらぼう眼は本当に青いのか? と問いかける。
問われた門倉は見えなくもないが、と何とも微妙な返答をする。
七年間のっぺらぼうを見てきてそりゃねえだろ、と杉元が突っ込む。
門倉はアシリパに手を伸ばしながら答える。
「その娘だって近くで見て『青いかな?』って感じだぜ」
伸ばした手を杉元が叩き落とす。
門倉は、そもそものっぺらぼうをジロジロ見てたら犬童典獄に怪しまれる、と続ける。
現在の網走監獄内の看守の中では自分が一番の古株だと言う門倉。
刺青人皮を持つ囚人による集団脱走の後、関与を疑われた看守は軒並み追い出された。
それにも関わらず門倉だけが残ったのは、無能で無関心のボンクラタヌキ、昼行燈を演じていたためだと言う。
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拮抗するインカラマッの占いの結果
別日。
杉元とアシリパは双眼鏡で監獄の様子を窺っている。
双眼鏡は土方に買ってもらったものだった。
白石がインカラマッに、のっぺらぼうは本当にアシリパの父なのかどうかを占ったことがあるのかと問う。
何度もやりました、と答えるインカラマッ。
何度もやっちゃたんだ? と返す白石。
インカラマッは、何度もやって、ずっと出ていた結果は『のっぺらぼうはアシリパの父親、ウイルクではない』というものだったが、最近ではどんどん『アシリパの父である』という結果が追い上げているのだという。
白石は、今のところはどちらが優勢なのかと問う。
インカラマッは、この間、ちょうど千回中五百回目の『アシリパの父である』という結果が出たのだという。
じゃあ最後にもう一回占ってくれる? とお願いする白石。
インカラマッが骨の占い具を手からゆっくりと落とす。
占い具が地面に落ちる寸前で受け止める白石。
「白石さん?」
インカラマッが白石の行動に対して短く問いかける。
白石は答える。
「やっぱやめよう 迷いはいらねえ」
「俺たちは確かめに行くだけだ」
決行
月の光も差しこまない漆黒。
何もかもを闇に溶かすような新月の夜を迎えた一同。
杉元が作戦の確認をする。
インカラマッ、チカパシ、永倉、家永はコタンで待機。
尾形は山に隠れ、狙撃で侵入したグループを援護。
谷垣、夏太郎は川岸に用意した丸木舟で待機。
キロランケ、牛山、土方は宿舎で待機。
アシリパ、白石、杉元が囚人の舎房へと侵入。
敷地内は全て消灯されており、互いが見えない真っ暗闇に包まれている。
その暗闇の中を突っ切って舎房へと近づくという。
杉元が言う。
「先導するのは都丹庵士」
「風の音が強いが周囲の建物の位置関係などは把握できる」
都丹庵士が暗闇の中を行く。
「遠くへ伝わる舌の音もかき消してくれるだろう」
よし…行こう!! と杉元。
都丹庵士を先頭に、白石、杉元、アシリパが宿舎を出る。
潜入組は、宿舎の外に出てすぐに、灯りを持った二人の看守に遭遇する。
「何だお前ら」
ばっちりと顔を見られた潜入組。
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感想
まさかここで早くも都丹庵士が再登場するとは……。
都丹庵士が協力してくれたのは、おそらく土方のカリスマ性によるものだと思う。
そして、拳を交わし合った杉元にも一目置いたからでもあると思いたい。
そっちの方が熱いから(笑)。
いやー、これはもう本当に熱い展開だと思う。
かつては生死を争った敵が、心強い味方になる。
これこそ往年のジャンプの王道!
門倉もやはり土方のカリスマに従った男だった。
昼行燈を装って網走監獄に残り続けていた強靭な精神力を持つ男だったとは……。
以前、犬童に散々言われっ放しで可哀想だったけど、まさか忍耐の真っ最中だったなんて。
正直かっこいいわ。
門倉はあくまで監獄の内部に詳しい内通者であり、戦闘能力は期待できそうには見えない。
ただ、都丹庵士の、聴力で視覚を補う能力は使える!
尾形に壊された耳当ても新調してたし(笑)。
ただ、潜入したはいいがここまで速攻で見つかってしまうとは……。
野田サトル先生は本当に引きが上手い。
先が気になってしょうがない!
そしてインカラマッの占いがのっぺらぼうがウイルクである、そうではないの結果がそれぞれ500で拮抗するようになったというのも中々先が読めなくなって面白い。
果たしてのっぺらぼうはウイルクなのか?
仮にウイルクじゃないとしたら誰なんだ、という展開がマジで楽しみ。
ここから数話で物語の核心に触れていくことになるんだろうな。
刮目して読んでいきたい。
以上、ゴールデンカムイ第128話のネタバレ感想と考察でした。
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