目次
前話第172話 阿寒湖のほとりでのあらすじ
関谷輪一郎
土方と牛山を探す為に旅館を出た門倉とキラウシ。
キラウシはいなくなった二人が阿寒湖周辺に潜伏している囚人を追う内に返り討ちにあった可能性を指摘する。
それを聞いた門倉は、その囚人には戦闘力はないものの、狡猾な男であると振り返ってみせる。
キラウシからその囚人に事を問われ、門倉は自分が元看守であると答える。
「あいつのことは顔より〇門のシワのほうがよく知ってるくらいだ」
〇門のシワ? と問い返すキラウシ。
門倉はその囚人に関して説明を始める。
その囚人”関谷輪一郎(セキヤ ワイチロウ)”は、元々は北海道の各地の牧場で家畜獣医として馬などを診ていた。
監獄に収監された罪状は殺人で、その方法は毒殺だった。
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エゾオオカミ駆除に用いられたストリキニーネや青酸カリ、ヒ素など豊富な毒を使い、本人曰く30人は殺したのだという。
ある日、門倉は関谷の監房で囚人が倒れているのを目の当たりにしていた。
関谷は門倉に、苦みは味噌で誤魔化せる、と説明を始める。
「試しに3つある味噌汁の一つに『毒』を入れてみたんですよ」
「トリカブトは苦いんですけどね 『変な味がする』と言いながらも食べましたよこいつ…」
関谷は傍らで泡を吹いて仰向けに倒れている囚人に目もくれず、淡々と説明を続ける。
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その光景に言葉を失う門倉。
「馬鹿野郎ッ ふざけるなてめえ!!」
一緒に食卓を囲んでいた若山は語気を荒げて関谷を指さす。
その表情は青ざめている。
「やっぱあんたはヤクザの親分さんだけあって『引き』が強いね」
関谷は全く悪びれずに答える。
「俺は運を見るのが好きなんだ 運の悪いやつを殺してきたのさ」
関谷が外での作業の際にこっそりトリカブトを抜いて持ち帰っていたことを知った門倉は、それ以来、外から戻る度に尻の穴まで調べることを自分の仕事のルーティンとしていたのだった。
それを聞き、キラウシは突っ込む。
「『スルク』を〇の穴に入れたら毒で大変なことになる そんなとこに隠すわけ無いだろ あんた馬鹿だな」
門倉を指さす。
「無駄に〇の穴を見たな」
無言でキラウシをじっと見つめたあと、門倉が呟く。
「無駄に〇の穴を見ちまったぜ」
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阿寒湖で聞き込み
湖面の凍結した阿寒湖では、ところどころで人々が湖面に小さな穴を空けて釣りをしていた。
キラウシが一人のアイヌに話しかける。
「ノイポロ トコムシ ポロ オッカイ ネワ オトピ タンネ ワ レタラ シサム エヌカラ ソモ キ ヤ?(おでこにコブのある大男と長い白髪の和人を見なかったか?)」
アイヌの男は、ウワ(知らない)と言って首を横に振る。
連れてる? と門倉も釣りをしている一人に話しかける。
釣り人はその質問に、ぼちぼちだね、と答える。
釣り人が何匹もワカサギを釣っているのを見て、天ぷらで食いたいな、と呟く。
そしてその釣り人から離れてキラウシに近付いていく。
「キラウシ! ずっと向こうにもアイヌがいるから聞いてこいよ」
キラウシは少しムッとした様子を見せる。
「命令するな! 〇の穴のぞき野郎のくせに」
俺はお前の雇い主の部下なんだぜ、と呟く門倉。
「いつだって管理職だな俺は…」
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スケート少年
「そこのポッチャリ少年 ちょっと止まりなさい」
門倉は、今度は氷上をスケート靴で軽快に踊りながら滑っている少年を呼び止め、白髪をなびかせた妖怪のようなおじいちゃんを見なかったか、と問いかける。
少年は質問には答えず、踊り続ける。
「どう? これ」
なにが? と門倉。
少年は、かつて函館で異人の踊りを見たことがあると切り出す。
「スケートをしながら踊ったら素敵だと思わない? すごい発明でしょ?」
門倉は、あそ、とだけ言って少年に背を向ける。
「ぼく見たよそのおジイちゃん」
少年は門倉の背に言葉を投げかける。
「昨日ちょうどそのへんに立ってたよ 遠かったから何してるかわからなかったけど」
門倉は、このへんに? と聞き返す。
そして、自分の足元に白い何かがある事に気付き、それに注目する。
「これは…」
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駆け引き
氷上に、シダを下敷きにして八つの蚕の繭が置かれている。
足元にあるそれを前にして、土方は関谷との駆け引きを行っていた。
関谷は、そのそれぞれの繭の中に丸薬があり、その内四つにはそれぞれフグ毒、ヒ素、トリカブト、ストリキニーネが一つずつ入っている、つまり半分は毒が入っていない”当たり”と説明する。
「どれか飲めば牛山を解放する」
土方はライフルを肩に乗せ、遊びに付き合う気はない、と冷静に答える。
「いまから貴様をどこまでも追いかけて生きたまま皮を剥ぐ」
少し離れた森の中、関谷は木の幹に体を隠しながら土方に話しかける。
「あんた土方歳三なんだってな? あんたのような男が金塊集めて何をしようとしているのか…興味はあるぜ」
土方は何も答えない。
しかし関谷の声が聞こえてくるあたりから合わせて馬の気配も感じ、このまま追いかけても逃げられてしまうと考えていた。
関谷は牛山は現在少量のフグ毒で体の自由を奪った上でチョウセンアサガオで意識を混濁させて棺桶に入れて埋めたと続ける。
「空気穴は開いてるが水も飲めない 俺と追いかけっこをしている時間はないはずだ」
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牛山の刺青は写してある、と土方。
「『土方歳三をさらって埋めた』と嘘を言ったら牛山は毒を飲んだけどなぁ」
関谷の声が聞こえてくる。
「あんたの進む道が正しければ良い運にも恵まれる 『運を呼び込む』ということだ」
「ハズレを引けばその道は正しくない 試してみろよ自分の運を」
じっと関谷の言葉に耳を澄ませていた土方は、口元に薄く笑みを浮かべる。
丸薬を飲んだ土方。
繭が氷上に転がる。
毒に当たり、氷上に俯せに倒れた土方に関谷が近付いてく。
「毒は全部致死量だったのに…すごいぞ まだ生きている」
関谷は土方の症状を観察し、引いた毒がフグ毒のテトロドトキシンだと判断する。
そして、土方の脇に手を入れ、移動を始める。
関谷は土方のためであれば他の仲間はそれまでに収集していた刺青人皮を差し出すはずだと考えていた。
そして、土方の生死はどうでもいいが、見つかってしまうことを避けるために安全な場所へ隠すべく移動を開始するのだった。
少し離れたところでは少年が踊っている。
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探偵門倉
「……これなんだ?」
門倉は氷上に転がっていた繭を拾い上げてじっと見つめる。
そして、さきほど話を聞いたぽっちゃり少年の目撃情報や、謎の白い殻といったピースから考えをまとめていく。
「ふむふむ なるほど…」
そして、一つの結論に達する。
「この事件は迷宮入りだ!!」
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関谷の仕掛け
「よお アンタ」
聞き込みを続けていたキラウシに、先ほど門倉が話しかけていた男が近付いてく。
「ヒメマス狙ってたんだけどワカサギしか釣れなくてよ そんなに食わねぇからもってくかい?」
このチカ(ワカサギ)くれるのか? と問うキラウシに、男は、天ぷらにしてみんなで食べな、と答える。
キラウシは男に、ヒメマスが動き回るのは明け方の暗い内だからこの時間はあまり釣れないと説明する。
「あんた地元の人じゃないね?」
「……ああ」
男は関谷だった。
キラウシは門倉の元へ歩いていく。
「門倉~ チカいっぱい貰った~」
「おお! デカイのいっぱい貰ったじゃん」
門倉は一匹ワカサギを摘まみ上げる。
「旅館でこれ食いながらふたりの帰りを待とうぜ」
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もう帰るのか? とキラウシ。
その光景を関谷は遠くからじっと見つめていた。
関谷はキラウシに渡した何匹かいるワカサギの内の一匹の喉の奥に致死量となるテトロドトキシンを詰めておいたのだった。
フグ毒は煮ても焼いても分解して無毒化することはない。
「祝福を受けるか 裁きを受けるか 俺は貴様らに運命の選択を与えてやる」
門倉は派手に仰向けに転び、持っていたワカサギをぶちまけてしまう。
勢いよく飛んでいったワカサギは氷上に着地すると勢いそのままに真っ直ぐ滑っていくと、釣りのために空けてあった穴に全て落ちていってしまう。
「…え? …あ? うそ…」
キラウシは、目の前で起こった光景に言葉を失う。
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肩の氷を払いながらスックと立ち上がるキラウシ。
「うんうん! すまんすまんキラウシ せっかく貰ったのにな」
その無表情は、もはや諦めを通り越して悟っていた。
キラウシは、いやそうじゃなくて、と声を震わせる。
「うんうんいいんだ 分かってる 俺はそうなんだ」
門倉は全く動じていない様子でその理由を話し始める。
過去、野焼きで自分の家だけ全焼したり、中学生の時に四十人程度の人数で歩いている中、自分だけ雪で隠れていた肥溜めに落ちていた。
「俺はいっつもそうなんだ 俺はそういう星の下に生まれたんだ」
その頃、薄暗い建物の中で、地中から爆発したように土が空に舞う。
地中から突き出した手は牛山のものだった。
「だう~」
牛山は正気を失った様子で穴から這い出ると、両手を前に突き出してふらふらと歩きながら建物の外に出るのだった。
「う~だ~」
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第172話 阿寒湖のほとりでの振り返り感想
新囚人
今回で初登場となった関谷輪一郎は、戦闘力は無いものの、その狡猾さで土方、牛山の作中でも屈指の二強に毒を飲ませて棺に封じ込めてしまった。
タイプとしては変装のプロの鈴川聖弘に近いけど、関谷の持つ凶悪性は鈴川とは比べようもない。
運を試すとか運命がどうとか言ってるけど、土方に仕掛けたゲームは結局は全てが毒入りという完全に不当なもの。
牛山にも同様の選択肢を与えたというが、やはり用意された繭の全てが毒入りだったのだろう。
こいつが言った通り、本当に半分が毒無しだったならまだキャラとして見所もあったのかもしれないけど、とりあえず今回の話を読んだ限りではコイツは小悪党に過ぎない。
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最終的に土方か牛山に無残に殺されるだろう。
少なくとも一時的に仲間になるようなことはないと思う。
多分、普通に土方に斬られて死ぬ、あるいは牛山に投げられたり絞め殺されたりするのではなく、選択肢を提示され、結局毒を選んで死ぬとかかな。
それも全てが毒なのではなく、きちんと助かる道もあった上で毒を選んでしまう展開を希望したい。
運を試してやる、とか、選択肢をくれてやる、という自らの傲慢さが最終的には滑稽になる死に様を期待したい。
でも、土方と牛山の追撃を切り抜けて、また機を見て襲い掛かってくるなんて予想を裏切る展開も面白いかも。多分すぐ決着はつくだろうけど。
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牛山と土方の絆
土方は牛山の刺青は写してあると言って関谷の仕掛けに乗らない姿勢を見せていた。
しかし牛山が自分が捕まっていると関谷から聞き毒を飲んだ事を知ると自分も同様の選択をしてみせた。
土方も牛山も互いを大事なパートナーとして認識していたのかな。
金塊探しのパートナーとして付き合ってきた日々で絆が生まれた?
そして、だからこそ関谷にやられてしまったわけだ。
土方は毒を飲む前に口元に笑みを浮かべた。
ひょっとしたら繭の全てが毒入りだと見抜いていたのかな……。
それとも本当に、関谷の言った運を呼び込む云々の詭弁を、それも面白いと思ったのか……。
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仮に全てが毒入りだと見抜いていたとしても、関谷は土方の症状を見てフグ毒だと判断したし、そもそも棺に入れられて埋められるなんて窮地に追いやられることはないよな……。
牛山がゾンビの如く復活したし、すぐ土方陣営による関谷への反撃のターンが回ってくるだろう。
なんだか地中から這い出て来る牛山を見て、網走監獄の時のフラグクラッシャーぶりを思い出した。
牛山のフィジカルはとにかく普通じゃないんだよなー。
棺に入れられてさらに埋められた状態から手を突きだすだけで脱出してしまうのには笑った。
早く、何故か出てきた牛山を見た関谷の驚きぶりを拝みたいもんだ。
とりあえず次回以降、関谷の狡猾さにいつまでも翻弄され続けるような、フラストレーションが溜まる展開にはならなそうだ。
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門倉の運
門倉とキラウシがメインの登場人物となった。
今話では特に網走監獄の看守だった門倉がキャラとして掘り下げられている。
門倉のキャラは凶運であり、強運の持ち主。
ずっこけて湖の穴に全てワカサギを滑らせてしまったことで、ワカサギに仕込まれていた関谷の毒を無事に回避した。
本人は運が悪いと自覚しているけど、実は土壇場では最高に運が良いという感じ?
門倉がどうでもいいところではハズレだらけだけど、ここ一番の場面では運に恵まれるというのは味方にいると中々心強い……いや、かなり頼りになるんじゃないか。
今後も運に極振りのキャラとして、土方サイドにおけるメインキャラとなっていくのだろうか。
元々個人的には網走監獄での無理をしない力を抜くところでは抜く仕事っぷりは好きだったし、今回の”迷宮入り!!”のセリフでも感じたが、死んでほしくないキャラだわ。というかその特性上、死なないだろ。
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172話の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。
第173話 僕の怪人
出会い
森の中、おかっぱの少年が一人の少年に羽交い絞めにされ、さらにもう二人の少年に囲まれていた。
坊主頭の少年に”マリモを食え”とマリモをおかっぱの少年の頬に擦りつける。
炭鉱会社のボンボンらしいな、ともう一人の少年に言われて、おかっぱの少年は呟く。
「え? 君たちマリモ食べてるのかい? 貧乏だとマリモ食べなきゃいけないのか」
おかっぱの少年の言葉は少年達の怒りを煽るものだった。
おかっぱの少年は、横倒しになっている木の幹に、足がつく高さで吊られるようにして縛られていた。
日が暮れたら凍え死ぬ、と泣きごとを言うおかっぱの少年。
ふと少年が上を見上げると、そこには牛山がいる。
「あうお~ おべ~」
牛山はチョウセンアサガオにより意識が朦朧とした状態だった。
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子分
縛られているおかっぱの少年は、恐る恐る、助けてくれます? と牛山に問いかける。
「べちょ…」
牛山の腹が鳴ったのを聞いた少年は、背を向けて立ち去ろうとする牛山を呼び止める。
そして、ポケットの中にある乾燥させたモモをあげるから縄を解いて、助けて、と持ちかけるのだった。
牛山は、モモ…、と少年の言葉に反応する。
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少年は、モモの乾物で牛山の餌付けに成功するのだった。
おかっぱの少年に、モモを食べた代わりに拘束を解けと要求された牛山は、少年の縄を解くのではなく、吊るされていた木を抱き込み体を思いっきり後ろに反って木を折ってしまう。
「違うけどすっごい!!」
牛山のパワーに驚くチヨタロウ。
牛山に助けられた少年は、自分の名をチヨタロウだと自己紹介する。
名前は? と問われた牛山は、おべんちょ、とだけ呟く。
それを聞き、チヨタロウは牛山の名がオベンチョだと勘違いするのだった。
チヨタロウは牛山に桃の乾物を上げるから今日から子分になれと持ちかける。
「おべんちょ~」
チヨタロウは牛山の肩に乗っていた。
「やったあ!! 僕の子分『怪人ベロンチョだ』」
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連絡
夜。
牛山を埋めていた小屋に戻った関谷は、土方を棺に納める作業をしていた。
これまで数々の修羅場を生き抜いてきた土方の運命はこの程度か、と関谷。
その手には土方の愛刀である和泉守兼定がある。
爆発したような穴が残されていることに気付く関谷。
「あっ!? 牛山がいない!!」
関谷は牛山が自力で土中から抜け出したことを知る。
こんな奴は初めてだ、と驚く関谷。
関谷は牛山に脱出されてたのは彼を甘く見ていたからと認める。
しかし、牛山に与えていたチョウセンアサガオは効果が12時間は持続するため、この場所の記憶はないと推測していた。
チヨタロウが、オベンチョ、と木の根元の穴に呼びかける。
餌を持ってきた、というチヨタロウの言葉に反応し、牛山がウロから顔を出す。
「ミイィ…」
チヨタロウは、スケートを教えるから一緒にやろう、と牛山を阿寒湖に誘うのだった。
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人質
旅館。
門倉は中居から、男から渡せと言われた、と白い布に包まれた棒状の何かを差し出される。
寝ていた門倉は、なんでそいつは俺の名を知ってる? と問いかけるが、中居は知らないよ、と言って包みを置いて行く。
包みを開くと、それは土方の和泉守兼定だった。
門倉はすぐに、永倉を呼ぶ。
しかし、永倉いない、とキラウシが答える。
永倉は「『タヌキ』は役に立たない」と言って一人で土方を捜索し始めていた。
包みには関谷からの手紙も入っていた。
それを目を通しながら、門倉は関谷が土方を拉致したこと、そしてこれが脅迫状だと知る。
土方はフグ毒を飲んだことで仮死状態に近くなっている。
棺の中の空気はもって数時間であり、もって数時間。
土方の居場所は土方の持つすべての刺青との交換という要求だった。
キラウシは、土方が生きている証拠はない、と門倉を諫める。
しかし看守だった門倉は関谷が同様の手口を繰り返していることを知っていた。
「あいつは几帳面に必ず人質を生かしておく」
「人質が生還する運命も肯定しているのさ」
刺青人皮をすべて持っている永倉を探す為、門倉とキラウシは旅館を出る。
「あ~受け渡しまで時間がねぇ 失敗すれば土方さんが死んじまうぞ!!」
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牛山の暴走
阿寒湖では、牛山とチヨタロウが一緒に滑って遊んでいた。
牛山が下駄スケートのゲロリを履いて華麗に踊るのを見て、チヨタロウはうまいうまい、と褒める。
そこに、昨日のイジメっ子がやってくる。
「ここで遊ぶなって忠告したはずだぞ」
「またマリモ食わせてやろうか」
チヨタロウに迫るいじめっ子。
「うだぁ~」
子供たちはいきなり現れた牛山を呆然と見つめる。
「…だれ?」
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「クックッ…オベンチョだよ……僕の子分さ」
チヨタロウは桃を牛山の口元に持っていきながら、不敵に笑う。
「僕の子分さ」
牛山の肩の上に腰を下ろす。
「マリモ食べさせるんじゃなかったの?」
坊主の少年がマリモをチヨタロウに向かって投げつけようとする。
しかし、次の瞬間、牛山は坊主の少年をビンタで吹っ飛ばすのだった。
「え?」
坊主が吹っ飛んでいくのを、チヨタロウは呆然と見つめる。
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牛山は、さらにもう一人の子供の足を体ごと持ち上げる。
チヨタロウに、駄目だ、と制止されても牛山は全く反応しない。そして子供を湖面に投げ捨てる。
最後の一人の子供は手で頭を掴み、握力で締め上げる。
「やめてッ オベンチョもうやめて!!」
チヨタロウは必死に牛山を止めようとしていた。
しかし一向に収まらない。
そこでチヨタロウは思い出す。
「ほら桃だよッ オベンチョの好きな桃だよッ」
口元に桃を押し当てられて、ようやく大人しくなる牛山。
牛山にやられた子供たちは、泣き声を上げながら去っていく。
「なんてことだ…怪人オベンチョがこんな危険なものだったなんて………」
牛山の肩から降りたチヨタロウ。
牛山が夢中で桃を貪っている公開を少し離れた場所から見つめる。
(こいつは…まさに兵器だ!!)
(葬らないと)
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第173話 僕の怪人の感想
牛山ヤバイ
作中一のフィジカルといって過言ではない男、牛山。
そんな人間凶器が朦朧状態で制御が困難だとしたら、こんなに恐ろしいやつはいない。
賢いヒグマが暴れてるようなもんだ。
12時間は効果が続くという話だけど、牛山くらいのフィジカル、体重があるならより早く戦線に復帰できそうなきがする。
熊をぶん投げるような人間やめちゃった系の人が制御不能に近い状態になった上で暴走するとしたら、とんでもないことになる。
牛山は比較的おとなしいように見える。でも少年たちに容赦のない攻撃を仕掛けたのは怖さの片鱗といってよいのかもしれない。子供たちは泣くだけで済んでいたけど、これは柔道家牛山の技によるものと考えたい。
柔道は投げるのが非常に上手ければ、投げられる方が全く痛くないようにすることが出来る。
勝ち目
門倉曰く、関谷はこれまで今回のような人質をとっての脅迫を繰り返し、身代金をせしめてきたのだという。
ちなみに現代では身代金目的の犯罪はほぼ成功しないと言われている。
しかしそれはシステムが発達した現代だから。
まだコンピュータすらなかった時代であるゴールデンカムイ作中では十分通用するってことだ。
牛山を甘く見ていたために逃げられてしまった事以外は、今のところ関谷の主導権でこの戦いは続いている。
果たして土方の運命は。
以上、ゴールデンカムイ第173話のネタバレを含む感想と考察でした。
第174話に続きます。