第239話 発射
目次
前話第238話 好きな人にあらすじ
共闘
上川丸は船の外輪を破損したため江別の岸に着岸できず、沿岸で他の外輪船が来るのを待っていた。
その原因となった海賊を睨みつける船長に、白石は自分たちが強盗の一味ではなく海賊を追っていたのだと説明し、海賊を連行するために船から立ち去ると続けるのだった。
さて、と前置きして、アシリパ、白石、海賊に向かって話を切り出す杉元。
「海賊房太郎と手を組もう」
「は?」
杉元の唐突な話にムッとする白石。
海賊は自分を助けたのは若山親分の刺青人皮が役に立たないという情報を聞いて、自分の持っている情報欲しさに自分を助けたのかと問う。
刺青人皮探しは継続する、と答えた杉元に、囚人探しを手伝えと? と海賊。
「俺は暗号解読に期待してないと言っただろ?」
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それに対し杉元は、若山親分の話は理解できないことはないが、鶴見、土方といったキレ者で刺青人皮の大半をおさえている勢力が未だに刺青人皮収集を継続している事実を無視できないと答える。
鶴見、土方といった陣営から刺青人皮を獲る人出が欲しいだけだったのか? という海賊の問いに杉元はすぐには答えない。
白石は杉元に、海賊の身の上に同情したのかと問いかける。
杉元はじっと感情の伴わない冷たい目で海賊を見つめながら、それを否定しつつもその理由を説明する。
海賊房太郎に会うまでは自分たちは圧倒的に不利だったと杉元。
しかしこれは自分の勘だと前置きして、埋蔵金の地域を特定出来れば、それが鶴見、土方を一発逆転で出し抜く唯一の方法になるかもしれないと主張し、しかしその情報を聞き出すためには手を組むよりほかないと続ける。
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杉元の説明に納得した海賊は、自分が持っている情報は刺青人皮が集められたら教える、と杉元たちに告げるのだった。
後悔すんなよ、と白石。
「いざ金塊が見つかったら独り占めされるかもよ」
「それお前の話か?」
アシリパからツッコミに白石は閉口するのだった。
そのまま待機を続けていると、ヴァシリを乗せた小舟が流れて来るのを白石が発見する。
杉元たちはヴァシリの小船に海賊も含めて杉元時寧全員が乗り込み、そのまま川が続く先である札幌に向かい始める。
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チョウザメの卵
アシリパはチョウザメ狩りのためにキテと呼ばれる銛の穂先部分を使って銛を作ろうとしていた。
アシリパの作っているものを見て、クジラを獲る時に使用していたものかと問う。
チョウザメを獲る気なのかという杉元に、旬のものを食べたいだろ? とアシリパ。
やりとりを見ていた海賊は、アシリパとどういう関係なのかと杉元に問いかける。
北海道の案内人だと答えた杉元に海賊は答える。
「ふ~ん でもめちゃくちゃ怒ってたじゃんさっき…『危ねえだろアシリパさんが!!』って よほど大切な人かと思ったぜ」
アシリパは杉元たちに背を向たままだったが、耳を真っ赤にしていた。
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集う
獲れたチョウザメの卵を取り出す。
アシリパは魚卵の食べ方を説明しつつ、脳みそを食べるためには硬い骨を破る必要があるのでちょっと待てと言って、杉元にゴメンな? と繰り返すのだった。
「んも~早くしてぇ?」
作業が終わり、皆で食べ始めた時、海賊がアシリパにチョウザメの脳みそが好きなのかと訊ねる。
動物の脳みそなら何でも好きと答えたアシリパに海賊はニコリと笑って答える。
「好きな人には自分の好きなものを好きになって欲しいもんねぇ」
再び耳を真っ赤に染めたアシリパは恥ずかしさを紛らわすためか、匙で一杯掬ったチョウザメの卵を海賊の口元に押し付けるのだった。
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杉元は生だと塩漬けよりうまいと暢気に白石と語り合っていた。
「チョウザメの卵はウォッカが合うのよね」
その頃、小樽の沿岸に停泊していた船の中ではソフィアが大勢の部下たちと腹を割いたチョウザメを囲んで笑いあっていた。
手で器を作り、そこに流し込んだウォッカを豪快に飲み干すソフィア。
ひとしきり仲間たちと笑いあった後、ソフィアは一枚の写真を見つめながら長谷川写真館を思い出していた。
写真に写っているのは椅子に座った自分と、その背後に立つキロランケとウイルク。
ソフィアの顔が引き締まる。
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探偵
宇佐美上等兵と菊田特務曹長は夜の札幌で連続娼婦殺害事件の現場に来ていた。
菊田特務曹長は宇佐見上等兵が、犯人は殺人現場に戻って来るという主張を聞き入れて現場に来たものの、市内に二か所ある殺人現場で一日中張り込むよりは、娼婦に聞き込みをした方が良いのではないかと提案する。
「宇佐美?」
宇佐美上等兵は局部をしごきつつ、殺害現場をうろうろしていた。
「違うなここじゃない ここかな?? いや…もっとこっちだ」
「おい…」
「黙っててくださいッ 声をかけるなッ」
宇佐美上等兵は集中してしごき続ける。
「ここだ こっち向きのこの位置が落ち着く!! しっくり来る!!」
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「どの建物からも見えない位置だし通りからかげになってる 顔を見られずに逃げ道が確保出来る」
宇佐美上等兵は限界に来ていた。
「あはッ… ひひぃん」
「……ひひぃん?」
ドン引きする菊田特務曹長。
宇佐美上等兵は地面にうつ伏せになり、夢中で場所を探っていた。
「どこだ? どこへ飛んでった?」
マッチの灯りを使い、何かを発見した宇佐美上等兵は菊田特務曹長を呼ぶ。
気持ち悪い、と少し離れたところに立って拒否する菊田特務曹長。
宇佐美上等兵は地面で犯人の精子を発見していた。
「やっぱり犯人はここに戻っていたッ そして自慰行為をしていたました!!
「ふむふむこの状態から見るに………」
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推理、分析を続ける宇佐美上等兵にそれに触れるな、病気になると菊田特務曹長。
犯人は2日おきに来ています、と自信たっぷりに主張する宇佐美上等兵。
「しかしも最後に来たのは二日前…犯人はここに現れます!!」
その自信たっぷりな態度に気圧されつつ、脱帽する菊田特務曹長。
「なんてこった こいつはとんだ精子探偵だぜ」
そして鶴見中尉が言っていた、宇佐見が役に立つという言葉を思い出す。
「このことだったのか!!」
そして宇佐美上等兵は再び確認すると言ってその場を離れ始める。
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「もう一度再現してみます 今度は距離と高さで犯人の身長や年齢が割り出せるかもしれない」
お前にそんな特殊能力があったとは、と呆れ半分の菊田特務曹長。
そして宇佐美上等兵は、すぐそばで山高帽の人物が自分と同じように局部をしごいていることに気付く。
そして自分のものをしごきながら、犯人と思しき人物に対して臨戦態勢をとるのだった。
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第238話 好きな人にの振り返り感想
宇佐美の特殊能力
宇佐美(笑)。
本当にとんでもねえ特殊能力を持っていたもんだ。
これも犯人と同じ異常者としての本能が成せる業とでもいうのだろうか。
犯人の思考と行動をトレースするあたり、まさに探偵の仕事だ。
餅は餅屋? いや、蛇の道は蛇と言った方が適切かな。
宇佐美上等兵の、今夜犯人が現れるという推理は正しかった。
彼の見事な仕事を見れたわけだけど、しかしラストのコマが酷過ぎる。
犯人らしき山高帽の人物を顔をキリッとさせて見据えつつ、自身をしごき続ける姿のインパクトはすごかった……。
そして精子探偵なんて字面、生まれてこの方、初めて見たよ……。
おそらく今後も他作品で目にすることは無いだろう。
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精子探偵宇佐美が、実にナチュラルに自身のそれをしごき始めるという異常な光景を目の当たりにした菊田さんがバリバリに引いてて笑ったわ。
菊田特務曹長もあらゆる修羅場をくぐってきて、色々と凄惨な現場も見ているはずだ。
それにもかかわらず宇佐美上等兵の一連の行動はそんな菊田をドン引きさせるのに十分だったようだ。
いや、本当に精子探偵ってなんだよ……。地味にネーミングセンスが良いな。
このまま次回もこの流れで宇佐見上等兵が活躍するとしたら、再度菊田特務曹長による新しいニックネームが生まれるかも?
そして、宇佐美を札幌に向かわせた鶴見中尉の見立てがあまりにも確かであることに、改めて彼の人を見る力の凄みを感じた。
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一発逆転を狙う杉元
結局、杉元は海賊と手を組むことを決めた。
刺青人皮収集の競争で鶴見陣営、土方陣営に負けていることから、このまま海賊の力を取り込むことなく自力で金塊争奪戦に勝つことは難しいと判断したようだ。
仮に海賊の情報が正しく、金塊のおおよその位置が特定できれば一気に逆転可能の目が出てくるという狙いらしい。
確かにここから強力な敵である鶴見、土方から刺青を奪い取れる可能性は限りなく低いだろう。
かと言って海賊が若山親分から聞いたように、刺青人皮があったところで無駄という主張にも、鶴見、土方が刺青収集の手を緩めていない以上、納得することは出来ない
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刺青を集めつつ、海賊から情報を得て逆転の機会を窺う方が金塊争奪戦にかつ可能性はあると思う。
繰り返しになるが、埋蔵金が埋まっている地域を特定できるてるならそれが一発逆転に繋がる唯一の方法だと杉元は言った。
杉元はそれをカンだと前置きしているものの、実際はその考えに確信に近いものを持っているように見える。
個人的にはそれが合っているかどうかより、まずはこうやってきちんと決めて、その実現のために動くことが重要なんじゃないかなと思う。
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一番ダメなのはどうしたら良いか考え続けるばかりで何も決められず、動けないこと。
間違っていたら修正すればいい。既に金塊争奪戦で不利な状況にある杉元たちには、積極的に仕掛けていく必要がある。
手を組むようになって早々に、海賊房太郎はチームに馴染み始めているように見える。
アシリパさんを照れさせる技術に長けてるなあ。
実はこれまでの杉元チームのメンバーの中でそういう奴はいなかったように思う。
ヴァシリに続き、これまでとは異なるタイプの仲間を加えて杉元たちの旅は続く。
238話の感想記事は上記リンクをクリックしてくださいね。
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第239話 発射
発見
宇佐美上等兵は怪しげな人物を発見していた。
同時に菊田特務曹長もその人物を見て、何なんだこれは、と声を上げる。
「こいつが犯人です!!」
宇佐美上等兵はそう叫びながら、自身の汁を犯人に向けて飛ばす。
犯人はそれを避けると、宇佐美上等兵に全く同じ方法で反撃する。
華麗に回避する宇佐美上等兵。
菊田特務曹長は逃げる”犯人”に発砲する。しかし命中することなく、”犯人”はその場から花手氏逝ってしまう。
菊田特務曹長は宇佐美上等兵に”犯人”を追い詰めるよう指示を出しながら、自身も”犯人”を追う。
逃げる”犯人”の背中に発砲するが、弾は当たらない。
”犯人”を追いかけていた宇佐美上等兵は、馬に乗った”犯人”とぶつかる。
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逃走
菊田特務曹長は”犯人”の姿を見るなり銃撃する。
銃弾は咄嗟に屈んだ”犯人”の被っていた山高帽を撃ち抜く。
そうやって”犯人”の動きが硬直したスキに、菊田特務曹長は”犯人”につかみかかり、馬に乗っていた。
左手で構えた銃を”犯人”の後頭部に突きつける。
「獲った」
しかし菊田特務曹長は、”犯人”が自分の〇〇〇を菊田特務曹長に向けつつ、激しくしごいているのを目撃する。
この後起こるであろう事態に気付いた菊田特務曹長は、銃を突き付けていた左手で自身の顔を守る。
次の瞬間、”犯人”の汁を顔に浴びせられ、菊田特務曹長はたまらず馬から転がり落ちてしまうのだった。
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「大丈夫ですか 菊田特務曹長どの」
追いついた宇佐美上等兵。
目に入ったともがき苦しむ菊田特務曹長。
二人は”犯人”に追いつくべく、札幌を駆けまわっていた。
女性の悲鳴が聞こえる。
二人が向かった先には”犯人”の姿はすでになく、事切れた売春婦の遺体が残されていた。
「あいつがやったのか?」
菊田特務曹長は女性の死体を見つめて呟く。
「俺たちから逃げ回りながら」
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被害者は二人
「旦那さんどこ行くの? そんなに急いで」
息を切らし、急ぎ足の人物に売春婦が声をかけていた。
その人物は女性の首にすでに血の滴っているナイフを突き立てる。
翌朝、事件現場は新聞記者や野次馬が集まっていた。
現場近くに来ていた宇佐美上等兵と菊田特務曹長が会話する。
「一晩にふたりも殺しやがった」
菊田特務曹長が続ける。
「逃走のための攪乱だったのか? それともおちょくって楽しんでいたのか…」
自分たちに関係なく『やるって決めていたこと』だったのかもしれない、と宇佐美上等兵。
菊田特務曹長は”犯人”が再び来るのかどうかについて懐疑的だった。
そしてこれから、殺人現場に張り込むとしても、その現場が二か所増えてしまい、四つになったことで二人で行うことが難しくなってしまったと自身の考えを口にする。
宇佐美上等兵も、今後も増えるかもしれない、と菊田特務曹長に同意するのだった。
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菊田特務曹長は、”犯人”を逃がしたものの、横顔は見たと呟く。
もう一つの現場に行くことを促す宇佐見上等兵。
菊田特務曹長は用があるから一人で先に行くようにと返す。
「有古力松一等卒」
菊田特務曹長は野次馬の中に変装した有古一等卒を発見していた。
「振り返るな」
硬直する有古一等卒に続ける。
「その見慣れたガタイの良さで俺にバレねぇと思ったかよ」
菊田特務曹長は有古一等卒が札幌にいることについては鶴見中尉から聞いていないとして、土方歳三と行動を共にしているのかどうかを確認するのだった。
オホーツク海沿岸で部下と共にアシリパ捜索にあたっていた鶴見中尉は、部下を集めていた。
菊田特務曹長から電報があり、これから二人にはアシリパ捜索を続行させて、残り全員は自分と共に札幌に向かうとこれからの方針を示す。
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第239話 発射の感想
ひどい撃ち合い
口にするのもはばかられる。
史上最低の『撃ち合い』のシーンがここに爆誕した(笑)。
こんなの描いちゃっていいのか……。
今回の扉ページから既に嫌な予感は漂っていたが、まさかのこの内容……。
ちょっとジョジョっぽい表現で笑ったわ。
まだ犯人がその正体を現していないのにも関わらず、この強烈な変態の雰囲気……。
次回以降、近々その正体は明らかになるのだろうが、果たしてどんな人物なのだろうか。
”犯人”は今回、二人の売春婦を殺害した。
これまでは一人ずつだったのに、今回は二人であることに意味がありそうなんだよな……。
ひょっとしたら同一人物ではなく、模倣犯なのかな……。
前回からの流れから考えれば、宇佐美上等兵の”やると決めていたことなのかもしれない”という直観はおそらく正解なのだろう。
果たしてその推理が活きるのか。
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前述した通り、もしかしたら一人目と二人目の被害者と今回の三人目、四人目の被害者は、それぞれ別々の犯人による犯行という可能性もあったりして……。
菊田特務曹長は”犯人”が逃げながら犯行を実行していることに関して違和感を抱いているように見える。
必死に逃げながらも犯行を行うほど強烈な動機を以て行っているということなのか。
いずれにせよ、その動機を知ったところで常人には理解は出来ないに違いない。
そして今回登場した有古一等卒……。
土方陣営に加え、鶴見中尉も札幌に集まりつつあるようだ。
いよいよ札幌に血の嵐が起こる予感……。
鶴見陣営、土方陣営、犯人の三つ巴のバトルロイヤルの時は近いか?
すごく楽しみだ。
以上、ゴールデンカムイ第239話のネタバレを含む感想と考察でした。
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