第127話 本当のチタタプ
第126話のあらすじ
網走刑務所の門倉看守部長が部下に監獄の外壁にある掘立小屋を使っている人間を注意しに行けと命じる。
その命令の実行を渋る部下。
漁の時期で使用されているために煙が出ていることから小屋の存在が看過できない門倉看守部長。
杉元たちは網走監獄への侵入経路を広げた地図の前で話し合っていた。
ただの監獄としては異常なまでに重武装されていることから、どこからであっても侵入が難しいことを確認する一行。
侵入経路は比較的警備が手薄な網走川に面した堀しかない、とする白石。
白石は鮭の獲れる時期だからこそ、アイヌの小屋が活用できると考えて、掘ったトンネルの入り口をアイヌの小屋で隠すことを提案する。
白石のアイデアに従いトンネルを掘る杉元たち。
本格的な工法で掘り進めていく。
その時、門倉看守部長が部下の看守を伴ってやってくる。
こんなところに小屋を建てては困るよ、と注意する門倉看守部長。
谷垣がアイヌを演じながら姿を現す。
そこで、門倉看守部長の前で、その部下の看守への鮭のワイロを告白する谷垣。
ワイロのことを知らなかった門倉看守部長は、谷垣に鮭を5匹持ってこい、と暗にワイロを認める。
一方、第七師団は斜里にいた。
有坂中将の銃の披露につきあう鶴見中尉。
鯉登少尉と宇佐美はじゃれている。
掘り進めていく杉元の頭上に穴が開く。
杉元が穴から顔を出すと、そこには、それを予期していた門倉看守部長。
目が合ってしまった杉元と門倉看守部長。
「ここは?」
問いかける杉元とキロランケ。
「俺の宿舎だ」
門倉看守部長は答えた。
126話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。
スポンサードリンク
第127話
フチの13番目の妹がいる網走近くにあるコタンにて。
「アイヌにとって主食だった鮭はシペ(本当の食べ物)と呼ばれ川に鮭が極端に少ない年は餓死するものが出たほど重要なものだった」
アシリパは続ける。
「だから私達は鮭一匹を余すこと無く利用する」
鮭の皮はチュプケレという冬靴の材料に利用できる。
大人の靴を一足作るのには鮭4匹の皮が必要と説明するアシリパ。
秋に作って大切に履いてもひと冬しかもたず、犬に食べられてしまうこともあると続ける。
鮭を食べる準備だ、とアシリパ。
頭を切り落とし、上顎の真ん中の氷頭という軟骨のある部分を切り取る。
「この部分を主に使う珍味な料理があるけど杉元! 何か分かるか?」
「えええ~? うそ」
杉元が反応する。
「まさかまさかぁ?あれなのぉ?」
チタタプで心を一つにする
「チタタプだ」とアシリパ。
「ハイ出ましたチタタプ!!」
ノリノリの杉元。
そんな杉元のハイテンションな声に驚くキロランケ、チカパシ、そして永倉。
アシリパは、本来のチタタプとは鮭のチタタプだと説明する。
「チタタプの中のチタタプ!!」と杉元。
谷垣が抓られた痛みで痛がる。
「エラを外してよく洗って血を抜く」
アシリパが説明を続ける。
「エラと氷頭をチタタプする チタタプすればするほど美味しくなる」
チタタプ言えよ夏太郎、と夏太郎に迫る杉元。
「チタタプ チタタプ」
素直に従う夏太郎。
チカパシは日本刀を手にしながら問いかける。
「これでチタタプしてもいい?」
チカパシは土方と一緒になって刀でチタタプを行う。
土方は、チタタプ、チタタプ、と呟きながら作業をする。
内心で、うわぁ、と引き気味の永倉。
アシリパが、尾形~、と呼ぶ。
黙っている尾形。
アシリパは、みんなチタタプ言ってるぞ、と尾形に呼びかける。
鮭で実践する「本当のチタタプ」で「チタタプ」と言わないのならいつ言うんだ? と続ける。
みんなと気持ちをひとつにしておこうと思ったんだが、ともっともらしいことを付け加えるアシリパ。
「チタタプ」
尾形がぽつりと言う。
「・・・!?」
驚愕するアシリパ。
「言った!!」
杉元と谷垣に向けて問いかけるアシリパ。
「聞いたか? いま尾形がチタタプって」
しかし杉元も谷垣も真顔。
アシリパのような感動を示さない。
アシリパが残念がる。
「んも~~ 聞いて無かったのか!?」
調理は続く。
アシリパが白子を調理する。
「白子を加えてさらに細かく叩き 最後に砕いた焼き昆布を混ぜ塩で調える」
「これが鮭のチタタプだ」
新鮮な鮭が手に入るいまの時期しか食べられない、と続ける。
「身は串焼きにする」
「米とヒエを炊いたおかゆにイクラを入れたチポプサヨ」
「塩煮したジャガイモを潰したものにイクラを混ぜたチポロラタシケプ」
スポンサードリンク
谷垣の食器をインカラマッに渡す意味
杉元達一行は、完成した料理を味わう。
「柔らかくて滑らか 生臭くなくて美味い・・・これが本当のチタタプか」
杉元が興奮している。
「捕れたてだから臭みがないんだ」
ヒンナヒンナ、と唱えるアシリパ。
フチの13番目の妹が、その場にいる全員に串焼きを配っていく。
「串焼きも脂がのってるな」とキロランケ。
「インカラマッさんっていったかね?」
牛山がインカラマッに話しかける。
「あんたいい人いるのかい?」
話を聞いていたチカパシがすかさず谷垣を見る。
チカパシは谷垣の食器を奪い取り、インカラマッに手渡す。
谷垣は、おい、とチカパシを注意しようとする。
構うことなくチカパシは、はい、とインカラマッに向けて谷垣の食器を差し出す
何のつもりだチカパシ、と声に出す谷垣。
「女が男の家に行ってご飯を作り」
アシリパが続ける。
「男は半分食べた器を女に渡し、女が残りを食べたら婚姻が成立する」
「アイヌにとっての求婚のようなものか」と杉元。
チカパシがあっさりと言い放つ。
「本当の家族になれば?」
「いいねえ おアツいぜ」
夏太郎が冷やかし始める。
(ヒュゥ~~)
「…チカパシ 返しなさい」
谷垣が席を立つ。
「おっと……まだ微妙な関係だったか」
牛山がぽつりと呟く。
谷垣の後を追うインカラマッ。
「あの…谷垣ニシパ…」
「川の向こうから網走監獄を見ていただろう?」
谷垣が続ける。
「のっぺら坊はウイルクではないと言いつつもウイルクかもしれないとどこかで期待してるから網走まで来たのでは?」
おっしゃるとおりです、と答えるインカラマッ。
「孤児で放浪していた私は流れ着いた小樽でウイルクに出会いました」
インカラマッが続ける。
「ウイルクと過ごしたその時間が美しすぎて…現在も囚われているのです」
だが、自身の占いによるとウイルクとは二度と会うことは無いと信じていたというインカラマッ。
普段の占いが的中するその度にウイルクとの悲しい運命を確信してきたという。
「そうなるとなおさら会いたい想いは募りました」
「そんな時ウイルクの死を耳にした」
「そんなはずはない なぜなら私の占いで彼に会えないという理由は…私が死ぬからです」
淡々と続けるインカラマッ。
北海道の東で自分が死ぬと、ウイクルと別れたときにそう分かっていたというインカラマッ。
しかし、ウイルクの死について調査を進めていくと、ウイルクの遺留品を持つという鶴見中尉に出会ったのだという。
インカラマッは、監獄にいる「のっぺら坊」は、金塊のありかを知るキロランケの仲間だと聞いていた。
「指紋の証拠も掴んだ私は『占いの解釈が間違うこともある』と納得しました」
ウイルクは死んでいるのだろうと覚悟したインカラマッ。
「ならせめて忘れ形見のアシリパちゃんを無事に帰そうというのも正直な気持ちです」
うんうん、といつの間にか出現した泥酔した白石が頷く。
「でも屈斜路湖で溺れた時…やっぱり やっぱり私の占いは正しかったと感じました」
インカラマッ自身は、屈斜路湖で死ぬ運命のつもりだった。
しかし自身を湖から力強く救い出した谷垣は、自分の占いによる運命を覆した。
「運命は変えられる! 占いは絶対ではないと思い直しました」
霊感を交えた話で谷垣に理解してもらえないかもしれないが、今の自分にはウイルクと再会できる期待があるのだとインカラマッは熱弁を続ける。
「でもそれは…! 愛しい人に会いたいというものでなくて美しい過去に囚われて旅をしていた自分にケリをつけたいから…」
インカラマッが続ける。
「私は谷垣ニシパと未来へ進みたい!!」
堂々とプロポーズする。
「俺にもまだ役目が残ってる アシリパを無事にフチの元へ帰す役目が」
インカラマッからプロポーズを受けた谷垣が真剣に答える。
「時が来たら…俺から改めて半分食べた飯の器をインカラマッに渡す…!」
谷垣が家の中へ戻る。すると酔った白石が谷垣の残りを食べていた。
「こいつ谷垣ニシパのご飯食べてるッ」
焦ったチカパシは、ペチンッ、と白石を叩く。
スポンサードリンク
門倉の意外な申し出
門倉看守部長の部屋にいる杉元とキロランケ。
「典獄というのは歴代…」
門倉看守部長が続ける。
「福岡藩とか長州藩とかの出身者がなるもんでね つまり明治新政府の人間だ」
説明を続ける門倉看守部長。
逆に看守は地元の人間が採用される…。
戦争により北海道へと流れ着いた士族の成れの果て。
屯田兵も囚人もみんな元はそんなもんだと続ける門倉看守部長。
「看守ってのは昔から典獄よりも囚人たち側の人間が多かったのさ」
自分の父は土方さんと共に戦った旧幕府軍だった、という門倉看守部長。
「犬童典獄の指示によって毎日独房を移されるのっぺら坊が再来週の新月の夜にどこの監房へ移動されているのか俺は正確に予想ができる」
門倉看守部長が杉元たちを利用しようとして、杉元達の”舟”へと乗り込んでくるのだった。
感想
門倉は杉元達を捕まえることよりも自分の利益を最優先しようとしている。
犬童への反発もあるのだろうけど、元々、明治新政府の人間が気に入らなかった。
門倉はこういうチャンスをずっと待っていたのかもしれない。
杉元達という仲間を得て、門倉が今後、一体何をするのか。
楽しみ。
以上、ゴールデンカムイ 第127話のネタバレ感想と考察でした。
第128話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。